fate/break   作:胡狼

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第3話

言峰教会をどや顔で辞した私達は、イリヤスフィールに遭遇した。

言葉にすると至極簡単なのだが、原作ではバーサーカーのクラスで顕現したヘラクレスを連れていた。

それだけの情報でも厄介なのだが、イレギュラーによりもっと厄介な事になっていた。

 

「やっちゃえ! セイバー!」

「了解しました。イリヤ。」

 

セイバー!

アルトリア・ペンドラゴンがアインツベルンにより召喚されていたのだ。

ある意味最強の組み合わせなのではないか?

バーサーカーは何処行ったという話なのだが。

 

凛はすぐさま戦闘態勢に入っており、下がりながらもアーチャーに指示を出している。

アーチャーは双剣を出して、引きの構えである。

ガン、ガンと耳に痛いほどの剣戟が鳴り響く。

よくあんな剛剣をあんな小さな剣で捌けるものだと感心する。

セイバーは騎士道に則っているのか正々堂々と真正面から超高速で接近、上から叩き付ける剣圧でコンクリートの数層を砕いていく。

その姿、まさに竜。

ステータスは凛によるとオールEX(評価規格外)だそうだ。

魔力放出だけで周囲が歪むほどの威を滾らせる。

 

「大変な事になってしまったな・・・」

「そう言うならば加勢してくれないか? アレは手に負えるものではない」

「だそうだ。良いか、衛宮君。」

「やるしかないっていうのか・・・」

「せやな。 戦場に男も女も老若男女も歳も関係ないのさ。二束三文でブチ殺されて、ブチ殺して、ブチ殺される。まあそうならないようには努力するけど・・・な!」

 

私はティアダウナーを手に、近接強化、近接適性のソフトウェアをセットし、セイバーに斬りかかる。

私は生前日本人だったのでこのような経験など無く、斬る様に操縦していたことはあったが、生身に斬りかかるなど、到底出来なかった。

その様な甘さが通じる相手ではないのは重々理解していたが、臥雲、と轟音を立てて剣と剣が交差した。

銀レイアに、骨武器で殴ったかのような弾かれ方をしたが、ダウナーの超重量のおかげか私はそこまで吹き飛ばされなかった。

 

「横から失礼します。この様な場所での戦闘行為は周囲の一般人並びに神秘の隠匿という面で多大な迷惑となります。撤退を要求します。」

 

私はしれっとそう言ってみる。しかしイリヤもこれに返す。

 

「その点なら心配ないよ? 人払いは済ませてあるし、何よりこれからあなた達は死ぬのだから、そんな心配はいらないわ」

「それは無理な注文です・・・アーチャー、私も後衛に回るぞ。」

「・・・わかった。それで良いか、凛」

「勝てるならなんでもいいわよ!!」

「という訳だ、セイバー」

「卑怯とは言うまいね?」

 

私とアーチャーで皮肉と軽口のマシンガンを浴びせたのち、アーチャーは弓を。私はガトリングガンを顕現させる。

GAX-エレファント。通称象さんと言われる黎明期から愛され続けるガトリングで、破壊力と装弾数を重視されている。反動が半端ないが。

弾数を見ると無限の様だ。おまけに熱も溜まりにくい。チート極まる。

それでも、勝てるとは思えないが。

私とアーチャーは跳躍し、アーチャーがセイバーの背面上空に、私は正面側に位置取りをする。

お互い無言だったが掃射はほぼ同時だった。

アーチャーは魔力による弓を乱射し、それはフェイントで本命を数本放つ。

私は正面から撃つ。牛乳瓶よりも大きい弾が毎分1200発程度の速度で吐き出される。

ゲームの性能より上がっている。反動をねじ伏せながら、アーチャーの弓をセイバーが合わせて回避出来ないように制圧射撃を行う。

しかし最優のサーヴァントどころか臨海突破しているアルトリアには問題が無かったようだ。

セイバーは駒の様に廻りアーチャーの魔力弓を身を捻り、小手で叩き落とし、或いは剣先でいなし、ガトリングガンの弾を剣を地面に突き立て地表を起こし、それを楯にして受け切れないものを剣先を斜めにすることによって弾く!

銃弾を、切るという芸当を目の当たりにしたことは一度あるのだがガトリングでそれを行うのは神業としか言いようがない。

引き起こされた地表を砕くもセイバーには弓も弾も届かなかったのだ!!

 

「ええい!連邦のモビルスーツは化け物か!?」

「圧倒的じゃないか! 私のサーヴァントは!」

 

イリヤが思いの外ノリノリであった。

 

「ボーダー! ぼやぼやするな!くるぞ!」

 

アーチャーに怒鳴られ、私ははっとしてその場を離れる。

騎士王から剣による特大の風圧が飛ばされる。

風王鉄槌・・・ストライクエア。しまったな、失念していた。それは私の直ぐ近くを、破壊でもって通り抜ける。

それは周囲をなぎ倒し、かつてのエクスカリバーの通った跡を思い起こさせる。

当たっていたら、即死どころかヘラクレスでも60回は殺されていただろう。

 

「ふむ。何故貴女が私の技を知っているかは分かりませんが、これはストライクエアではない。ただの・・・剣圧だ。」

「なん・・・だと・・・」

 

ネタなのか本気なのかわからないが、アーチャーも驚愕している。

 

「あーもうこりゃ駄目だわ。態勢を整えるぞ、アーチャー、遠坂さん、衛宮君。分の悪い賭けは嫌いじゃないのだが、これはどうにもならない。英雄王連れてこい英雄王。それに赤の陣営全部と黒の陣営全部と、ムーンセルの連中。これちょっと洒落にならんしょ」

「貴様がどういう繋がりがあるかはわからないが、逃すと思うか?」

「そうせざるを得ないだろうね。ほら、セイバー、貴公のマスターに異変が起こっているよ?」

「・・・!?」

「ほえ? 私なんともないけど」

「な、しまった!」

 

私達はほうほうのていで撤退した。

ここは衛宮邸である。拠点として、ここを登録していたのだ。

 

セイバーにあっち向いてホイをしている間に、とあるスキルを持って離脱。

代償として士郎が疲労困憊になるのだが。

 

「ボーダー、アンタ今なにをやったの? 」

「説明しよう!」

 

スキル、回線切れ。

ゲームでは故意にはまず不可能な事象だが、ネットワークから店舗が切断され、その試合は無効の扱いになる。立て続けに起こった場合は、降格が見えてくるのだが。

そこにはコンピューターと自分しか存在しない。

つまり試合にならないのだ。

言葉通りセイバーと我々では試合の土俵に立っていた感じは全くしないのだが。

そうすることにより誰にも気づかれず戦域を離脱する。

回線が切れたとわかるのはプレイヤーだけなのだ。マメにスコア押す人は別だが。

 

「そんなんありな訳・・・?滅茶苦茶じゃない。」

「他にも敵味方の区別を無くしてそれぞれの自由を尊重するカオスタイムというのもあるでよ。まあ今は使えないが」

「ボーダー、貴様は一体何者だ?」

「ただの傭兵でしかない。」

 

 

私は士郎を肩に担いで、これからどうするか考えあぐねていると、凛から衛宮亭で作戦会議という提案がなされた。

二人だけの同盟では、セイバーには勝てないだろう。

その場合間違いなくセイバーは聖杯を手にする。

あの穢れた聖杯を。

そしてイリヤも、聖杯としての機能に移るだろう。

それは死だ。

 

ハッピーエンドに持っていけないだろうか?

戦うことしかできない私に。

 

何かをしようとしても結局何にもならず、ただ夜は更けていく。




セイバー強くし過ぎた感。


スキル
回避切れ
オンラインがオフラインになる。
スキル、仕切り直し に近い特性を持つ。

固有結界

「混沌たる自由を」
カオスタイム。
深夜3時頃のゲーセンでボーダーブレイクをプレイしていた人が知る世界。
勝敗の判定がなくなり、試合終了後の査定も無関係になるため、二束三文の報酬を手に入れるために愚凸したり、銃弾で壁に絵を描いてみたり、味方同士でペナルティのない撃ち合いをしたり、カオスな時間だった。
今では再現不可能。クラン演習にてそれは受け継がれる。

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