目覚めると金剛に…   作:mothership

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人物紹介

上田提督
階級 大将
年齢 37
趣味 金剛 犬
特技 作戦作り
性格 真面目
その他
横須賀事件で殉職
金剛(本物)の猛烈なアピールに最初こそ抵抗していたものの、結局押されて流れで付き合うが、いつの間にか大好きになっていた
横川提督の元上司

柏崎提督
階級 小将
年齢 35
趣味 旅行
特技 布団に入るとどんな時でも10分で寝られる
性格 やる時はやる
その他
横須賀事件の時の階級は大佐
現在彼女はいないものの、以前たまたま会った比叡にやや好意があり…?

安中提督
階級 大将
年齢 55
趣味 釣り
特技 日本地図が頭に入っているため絶対に迷うことがない
性格 温厚
その他
お台場鎮守府の提督
元々霞が関に勤めていたが、お台場鎮守府設置に伴い異動した
見た目は普通のおじさんで、艦娘達からはおじさんとも呼ばれたり呼ばれなかったり
結婚相手は一般人で、鎮守府から徒歩5分のところにあるマンションで一緒に暮らしている




攻防

前日の話

 

開かれている窓から程よい風が送られてくる執務室

海と山に囲まれた土地柄、聞こえてくるのは波の音と虫の声

そして時折聞こえるレールの響きが心地よく、普段であれば仕事をしていても心が安らぐ

 

けれど、今この執務室にいるのは提督の俺と戦艦金剛の2人

その金剛は、朝からほとんど姿勢を変えることなく、終始無表情で黙々と書類を片付けている

この一週間、ずっとこんな感じに機械のように仕事をするものだから、まるでデジャヴでも見続けているかのようだ

 

そんな金剛の態度に、今週ずっと頭を悩ませていた

 

 

はぁ…

真面目に働いてくれるのは確かに良いことだと思う

おかげさまで書類の山も3分の2ぐらい切り崩すことができた

それにはとても感謝している

 

だけど、今の金剛は仕事以外なにもしない

食事は疎か、会話さえもだ

その姿は最早、戦艦金剛というよりはただの名前もない工場のロボットのよう

だったら元のうるさいいたずらをする、人間らしい彼女の方が何倍もマシだ

 

かれこれ金剛に最後にいたずらされたのはもう一ヶ月ぐらい前のこと

そんな過去が既に懐かしく感じる

その当時はうんざりしていた自分だったけど、Mとかじゃないが今考えると実は楽しんでいたのかもしれない

 

 

その問題の当人をちらっと見ついでに時計をみると、もう既に時刻は10時を回っていた

 

 

よし、時間も時間だ

そろそろ仕事は終わらせて、昨日閃いた計画を切り出すとするかな

 

 

「今日は終わりでいいぞ」

 

 

そう仕事の終わりを告げると、金剛はただ「分かったネー」とだけ言い、立ち上がって部屋を出ていこうとした

 

しかし、そうはさせない

昨日の二の舞を演じてたまるか

 

 

「ちょっと待て」

 

 

俺が声をかけると、顔だけ振り向きこちらを見る

その顔は無表情だけれど

どうせ昨日と同じでしょ、大した用事がなければ早く帰してちょうだい

と言っているような気がする

 

「明日、お前と霧島に休暇を与える

だから2人で出かけてこい

これはもう決定事項、異議は認めない」

 

普段あまり出さない威厳を出し、そんな態度の金剛にそう言い放つ

 

「…」

 

当人は少し驚いた顔をしたけれど、すぐに元の感情が無い顔に戻る

そして一礼すると、今度は何も言わずに部屋から出て行ってしまった

 

…まぁ少々強引だがこれぐらいが丁度いいのだろう

ひとまず僅かながらも感情を引き出すことができた

後は明日霧島に任せて、俺が総仕上げをする、と

 

残念ながら大学で心理学は専攻していなかったから、詳しい治癒の仕方は分からない

だけど俺には30年間の蓄積がある

親や同僚、上司、部下の戦死

何度も向き合いたくない現実に当たってきた

でも、こうして今も地に足をつけていられるのだ

だったら今回も乗り越えられるだろう

大丈夫、俺は割と頭が利く方だ いけるさ

 

そうまずは自分を信じ、なんとなく金剛がさっきまで仕事をしていた机を一瞥してから、今日のところは執務室の電気を消すことにした

 

 

 

 

 

当日 午前7時

 

 

頭に響く目覚まし時計の音で目を覚ました

夏至まであと1ヶ月と少しのこの時期

この時間でもとっくに日が高くまで昇っていて、冷房をかけていないこの部屋はまだ5月だっていうのに既に暑い

 

私はいつものように目覚ましを止めると、カーテンを開けることもせずにぼーっとする

なんの変哲もない平日の朝

 

けれど、何も考えずしばらくベットに座っていると、ふと今日が休暇を貰った日だということを思い出した

 

 

…あっ

そういえば昨日、提督に休暇をやるから霧島と出かけて来いって言われたんだっけ

 

 

…面倒くさい

とくに行きたい所とかないし、せっかくの休暇だ

寝ていよう、眠いし

 

眠たいな ああ眠たいな 眠たいな

 

ここ最近はずっと朝から晩まで働き詰めだった

いくら艦娘といえども、流石にそれだけ働いていれば疲れてしまうのも当然だ

だったらこの休暇をありがたくひたすら寝ることに使わせてもらおう

 

そう思い、部屋の鍵が閉まっていることを確認してから、再び今は唯一の友達である布団の中に潜り込んだ

そして目を瞑り、当てにならない神様にもう何度お願いしたか分からないお願いをする

 

 

もしこの手首の傷がなければ

もしイギリスに行っていなければ

そもそも金剛になりたいと願ってなければ

いっそのこと全てが空想であるならば

 

どんなに楽だったことか

 

…もう早くこの苦痛な生活から解放してください

無理だったらせめて今回も何も夢を見ませんように

 

 

し終わってから何も考えずにただじーっとしていると、疲れのせいもあってかすぐに意識が薄れていくのがなんとなく分かった

人間の三大欲求の一つ、睡眠欲に素直に従う 

 

 

 

"コンコン"

 

 

しかし

 

謀ったようなタイミングでドアがノックされて、私の二度寝を邪魔する者が現れた

 

 

「お姉さま、朝ですよー」

 

 

…その声は霧島

恐らく提督の言いつけ通り、私を外に連れ出すために起こしに来たのだろう

 

でも、霧島もせっかくの休暇なんだからいくら提督のお願いとはいえ、私なんかと一緒にいないで何か好きなことでもしていればいいのに

そっちの方が絶対に有意義でしょ

 

「お姉さま? 起きていらっしゃいますか?」

 

よし、じゃあ霧島に協力してあげよう

 

私はこのまま寝た振り…いや、しっかり爆睡

霧島は、私が出てこなかったからどうしようもありませんでした、と提督に報告

これで提督は納得

 

うん、我ながら良い考えだ

 

そうなったら後は寝るのみ

お休みなさーい

できたらこのまま金剛と入れ替わってて、私の魂は跡形もなく消えていることが一番理想的だけどねー

 

 

今日の予定も立ったところで、多少暑いながらも掛け布団を全身に被り、いざ睡眠へ

 

 

が、結果として私の願望が叶うことはなかった

 

 

再び目を閉じしばらく横になっていると、突然ガバっと掛け布団が剥がされる

さらに胸ぐらを掴まれて、強制的に上半身を起こされた

 

「ウグッ…」

 

苦しい…

 

「お姉さま 私も目覚まし時計の音、聞こえていましたよ」

 

ふふ、と怖い笑顔で笑う霧島

 

蛇に睨まれた蛙というのはこういうことか

その殺してやろと言わんばかりの笑顔に、恐怖でビクビクと口角があがるばかりで全く抵抗ができない

というか、どうやって入ってきたんですかね…

 

 

「さぁお姉さま 早く着替えてください♪」

 

「…もしNoと言ったらどうするノ?」

 

それでも何もしないで寝ていたい私は、せめて言葉だけでもと抵抗をしてみた

 

「こうします」

 

もちろんそんな微々たるものは効くはずもなく、霧島はそう言うとどこから取り出したのか、ショットガンを私の頭につきつけてきた

 

 

「…」

 

「司令に、普通に言っても無駄だから多少荒い手を使ってでもいいからお姉さまを引き出せ、と言われましたので」

 

「…Kurt Cobain」

 

…まぁ殺されるのは構わない

でもせめて遺書ぐらい書かせてください

内容はもちろん「錆びつくより今燃え尽きる方がいい」で決まりだね

 

「お姉さま?」

 

あーでも妹にショットガンで殺される姉って世間的にどうなの

 

「…お姉さま」

 

確かに自殺じゃないから、私の中ではクリアーっちゃクリアーなんだけど

 

「お姉さま グズグズするようであれば私が脱がせます!」

 

「霧島?!」

 

私が勝手に殺されること前提に話を進めていると、突然目の前でとんでもない事を言い出す霧島

するとさっきまでの殺人鬼の笑顔はどこへやら

一瞬で今度は金曜日の夜に1人でエロ動画を見るおっさんのような、欲望溢れる顔へ変貌を遂げる

そして躊躇いなく私の服を無理矢理脱がせようとしてきた

 

霧島さん!さっきよりも顔が怖いです!

 

「分かったネー!行きマスから、行きマスから自分で着替えるヨー!」

 

「いいえ、お姉さまはそう言って絶対に逃げ出します

だからこの私にお任せください!」

 

妹にまで信用されない私っていったい何なの…

というか、目がマジな奴が目の前に居る

このままでは身体が危ない!これは本当に逃げないと!

 

身に迫る危機に、私は慌てて霧島の手を振り払いベットから飛び出した

 

しかし、いつぞやと同じように、またしても床にあった何かを踏んづけてしまいすっ転ぶ

 

…うん、日頃からきちんと整理整頓はしておこう

 

そんな哀れに倒れ込んだ私の体の上に霧島が乗っかってきた

そして迷うことなく私の服を剥ぎ取る

 

「お姉さま 大丈夫です、優しくしますので」

 

「Yipes! Pervがいるネー!」

 

「お姉さま、少し落ち着いてください」

 

「こんなの落ち着いていられるわけないデース!

やめるネー!」

 

「いいえ、やめません」

 

「○▼※△☆▲※◎★●ー!!」

 

ジタバタと暴れて抵抗するも、変態と化した自分の妹によって、ものの1分も経たない内に下着以外身ぐるみはがされてしまった

姉の威厳なんてこの鎮守府にはどこにもないようだ

 

 

 

「うぅ…」

 

 

 

下着姿で倒れている女とそれに乗る女

 

 

…恥ずかしい

何が恥ずかしいって、普段使っている部屋で人に下着姿を見られることが恥ずかしい…

別に脱衣場で下着姿を見られようと風呂場で裸を見られようと、同性なら何も感じない

でも、この生活感丸出しの空間はちょっと…

 

 

あまりの恥ずかしさに、倒れたまま胸元を隠し変態を睨む

すると、霧島はようやく我に戻って反省したのか慌てて私から離れる

 

 

「ご、ごめんなさい!お姉さま!やり過ぎました…

…でも、これはこれで何と言いますか、ラッキーです」 

 

 

いや、反省はしていないようだ

 

 

はぁ…ここまできたら仕方ない

さっさと着替えてちょこちょこっと出かけて早く終わらせよう

そして寝る!

 

そう決めるとダルい体を無理矢理起き上がらせ、タンスを開けて適当に手首が隠れる長袖のTシャツと七分丈のパンツを取り出した

そしてそれを着るためにひとまずベットに置くと、ずっと見守っていた霧島が何か訝しいのか口を開く

 

「…お姉さま その格好でお出かけになられるのですか?」

 

「そうデスヨ?」

 

出かけるといってもこの辺にはせいぜい海水浴場しかない

ちょっと遠くに行ったら鴨川シーパラダイスやマザー牧場、銚子などがあるけれど、流石にそこまで行かないだろう

だったらこの格好でもなんらおかしくない

 

「お姉さま これを」

 

しかし、霧島、いや、提督の考えは、私が思っていたほど甘いものではなかった

 

霧島が見せてきたのは4枚の紙切れ

それには勝浦から東京までの乗車券と、わかしお号の指定席特急券と書かれている

 

 

「…」

 

 

…いや、これはきっと夢だ

 

 

そうだ、そうに違いない

まーた悪夢を見ているようだなぁ~

じゃあ早く目覚めよう

頬を思いっきりつねって

 

 

「Ouch!」

 

 

よしっ、これで目覚めたはずー

うんうん、目の前には私の服を持った霧島

そして私は下着姿!

 

 

 

あれ?

 

 

 

「…お姉さま、大丈夫ですか?」

 

 

 

…ふふふ どうやら現実みたい

 

 

 

「Oh no…」

 

 

信じたくないこの現実に思わず膝をついてしまった

 

あぁ…本当に私なんかほっといてくれればいいのに

なんでそんなに私に関わってこようとするの

 

皆優しいからもしかしたら心配してくれてるのかもしれない

だけどその優しさは却って、自分がコミュニケーションもできないいかにちっぽけで使えない奴なんだと教えられているようで、ますます惨めに感じてしまう

 

あー…生きるってなんだろう…

ていうか、そもそも私って何なの?

私って本当に私?

自分という存在が本当になんだかよく分からなくなってきた

 

 

やっぱり出かけたくないなぁ…

引きこもっていたい

もうニートでもなんでもいい

ニート宣言をしてこのまま渋っていたら流石に諦めてくれるだろうか

 

「I`m Japanese NEET」

 

最後の最後の抵抗として、羞恥心も捨てて下着姿で膝をついたままうなだれてみせる

けれど、そんな人としてクズな姉の姿には触れもしないで、霧島は全く諦める様子はなく、腕を組み仁王立ちしたまま動かない

 

 

「どうもー柿崎さんでーす

提督が、金剛ちゃんが遅いから…」

 

しかもそれに加え、私にとって最悪な状況が訪れてしまった

 

 

 

 

 

「「…」」

 

 

 

 

 

「…」

 

 

 

 

 

「「…」」

 

 

 

 

 

「…」

 

 

 

 

 

よりによってこの人か…

 

 

「…金剛ちゃんのずっと見てみたかった谷間というラッキーすけべ

だがしかしこれは…まずい」

 

そう要らない一言を残して逃げだす変態A

 

「ま、待てー!お姉さまの下着姿を見ていいのは私達だけです!」

 

そしてそれを追いかける変態B

 

「…」

 

騒がしかった私の部屋が、一気に静かになった

 

 

 

 

…本当に…もう…嫌

 

 

 

 

 

 

 

グゥーンっと電車はモーターを軽く鳴らして、軽快に線路を走る

現代の技術革新は目覚ましく、新しい電車の音はだいぶ静かになった

今乗っているわかしお号も音からして、まだまだ余裕ですよー?と言っているみたいだ

私個人としては一昔前の、常磐線や武蔵野線の明らかに使用用途がおかしいあの、死ぬ気で頑張ってます!感が好きだったので、なんか物足りなさを感じてしまうけれど

 

 

…ふぁ~

 

 

さて、そんな古い人間の私は口に手も当てないで、起きたばかりの間抜けな大あくびをする

 

あれから結局、霧島と柿崎さんに土下座された私は仕方なしに出かける支度をし、鎮守府を出た

勝浦を9時ちょっとに出発した私達が乗っているわかしお号は定刻通り、今は京葉線の高架を走っている

 

ぼんやりと外を眺めると、通過した駅の看板に新浦安と書かれているのが見えた

勝浦からおよそ1時間ちょっとの僅かな睡眠

でも、不思議と体が楽になった気がする 

しかもちょっとだけ…本当にちょっとだけ、ワクワクしてきた

 

…これじゃあ提督の思惑にまんまと乗せられた感じだなぁ

 

…なんか腹立たしくなってきた

帰ったら提督の部屋にある塩と砂糖を入れ替えてやろうか

 

そんなことを考えていると、電車は傾きカーブにさしかかった

ここを抜ければ、後は舞浜を通過してすぐに橋を渡る

もうあと少しで千葉ともお別れだ

 

そして電車が直線に入り舞浜駅を過ぎると、突然今まで黙って外を眺めていた霧島が声をあげた

 

「お姉さま!西洋風の建物がいっぱい並んでいます!

あっ! お、お城らしきものも見えます!!

ここは一体何なのでしょうか…」

 

霧島が見たお城とは、恐らく夢の国のツンデレラ城だろう

 

え?そんなお城のお姫様嫌だって?

私はありだと思うけど

ツンデレラ城のツンデレのお姫様

 

「べ、別に、あなた達が好きだからこの国を統治してるわけじゃないんだからね!」

って

 

「あれはこれデスヨ」

 

その場所について説明するのは色々と面倒くさそうなので、持っていた携帯でそこのホームページを出し、霧島に見せてあげた

 

「お~!」

 

ページを見た妹はさらにメガネを光らせ、勢いよく画面をスクロールさせていく

 

まぁその気持ちも分かる

ここにくる人のほとんどは、その日本なのに日本ではない非日常世界の光景に心を踊らせる

宇宙だったり地球の中心だったりジャングルの中だったり

 

そのことを売りにしている夢の国からしたら、してやったりという感じだろうか

 

「こんな場所が同じ県内にあったのですね!」

 

「Yes ワタシ達が産まれる前からありますヨー」

 

「へぇ~そんな昔からですか~

行ってみたいな~」

 

 

…行ってみたい、か

 

 

霧島が放ったなんてこともないその一言

本人からしたらは大した意味はないのだろう

けれどその言葉とこの場所で、私はまた1つの過去を思い出してしまった

 

 

(明日の予定覚えてるでしょうね?)

 

(もちろん 忘れるわけないじゃん)

 

(そう言って、こないだ予約したレストランに時間通りに来なかったのはどこの誰だっけ?--君)

 

(いや…あれは仕事で…本当に悪かったって それに今回は朝から一緒だから大丈夫でしょ)

 

(まったく…行ってみたいって言ったのーー君なんだからね

今日の夜はちゃんと帰ってきてよ)

 

(分かってるって あ、今日はモンブラン買ってくるよ)

 

(それ餌付けのつもり? …まぁそれで許すけど)

 

(ふっ、相変わらず可愛いなぁ~ じゃあ電車乗るから電話切るね~)

 

(か、可愛いって…普段言わないくせになんだし! やっぱ今日は帰ってくるなー!)

 

 

それが最後の会話だったっけ

結局、私が死んだことでーー君の希望は果たせなかった

 

 

…帰って来なかったのは誰って話よね

 

 

 

「そうネー…ワタシも行ってみたかったデース…」

 

回想から戻り霧島にそう返答をする

そして私は、表情が崩れそうになるのを隠すようにまた目を閉じることにした

 

 

 

 

 

 

次に起きたのは、既に電車が東京駅のホームに進入しようと、転線している時だった

そして今はわかしお号から降り、私達は地下ホームから長い通路から地上へと向かっている

 

「それにしても地上まで長いですね…

こんな平らなエスカレーターも初めて見ました」

 

「元々新幹線の為のだからデース

成田から新宿まで通すつもりだったみたいヨー」

 

「なるほど それで変な場所にあるのですね」

 

その幻の成田新幹線の東京駅も、今はこうして夢の国や幕張メッセなどの一大施設を通る路線に活用できたことだし、中途半端に終わった工場は一応役にたっているというわけだ

よかったね、国鉄

 

「あ、お姉さま!広くなりましたよ!」

 

5分くらいかけて、ようやく最後のエスカレーターを登りきった私達は、地上の広場へ出ることができた

 

 

…まぁそれにしても人が多いこと

何故平日のラッシュも終わった時間なのにこんなに人がいるのだろうか

辺りにはサラリーマンらしき人や、観光客らしき人、そしてこの時間なのに学生らしき人の姿までいる

鎮守府の近辺ではまずない風景だ

 

そんな風景に霧島はキョロキョロと

私はげんなりとする

 

あぁ…人が多い…

ここに来て一気に帰りたくなってきた

暑いし、人多いし、疲れるし

…もうこのまま総武線のホームまで行ってやろうか

 

そんな卑屈なことばかり考えるも、隣にいるキラキラした可愛い妹を見てしまうと、どうしようもなくなる

 

…まぁ、今日も仕事と割り切ればいっか

霧島に観光案内という名目でやれば乗り切れるだろう

 

「霧島?これからどこに行くのデスカ?」

 

それはそうと、切符は今いる東京駅まで

東京の周辺には私達のような若者が楽しめる施設はこれといってない

せいぜい皇居の辺りを散歩するか、東京駅で買い物するかぐらい

一体どこに霧島、もとい提督は私を連れて行きたいのだろうか

 

「特に決めておりませんので、お姉さまにお任せいたします」

 

私の質問に、そう平然と答えるmy sister

 

あれ?私の聞き間違えかな?

今何も決まってないって言った?

おっかしーなー、昨日耳掻きしたはずなんだけど

でも、艦娘だもの

聞き間違えの1つや2つあるよね

よし、一語一句ちゃん聞き漏らさないようにしよう

 

「Pardon?」

 

「ですから、何も決まっておりませんので、お姉さまにお任せいたします」

 

 

 

…えー

 

聞き間違えじゃなかったよ

私に任せるって

もうそれ、本格的に帰るしか思いつかないけど

 

「もちろん、帰るのは無しで…

痛ッ!痛いです!お姉さま!

頭をつっつくのはやめてください!」

 

当然のことのように私の考えていることを読む妹に、腹いせとして頭をつっついてやった

 

何となくこうなりそうな予感はしていたけど、まさか本当にそうなるとはねぇ

人は悪い予感ほどよく当たるもの

私なんか特にだ

…もしかして運2にも満たないのでは?

 

 

「さぁお姉さま!どこに行きますか?」

 

「さぁ、じゃないネー…」

 

まったく…提督は私に何をさせたいのか

その意図が読めない

このままいけば、恐らく提督の思惑通りに事が運びそうで癪に障る

けれど、今目の前には期待に胸を膨らませる妹がいて、そんな妹に逆らうのはなんとも心苦しい

それに何より、ずっとここに立ちっぱなしっていうのも嫌だ

よし、ここは提督の部屋の電球を全部ピンクにすることで手をうってあげよう

 

「OK 分かりマシタ 行きますヨー」

 

「はい!どこへでも!」

 

私が進み出すと、ピッタリと横を霧島が歩く

数多の人の波をくぐり抜け、私達は再び長いエスカレーターを上っていった

 

 

 

 

 

 

 

既に時刻はお昼ちょっと前

東京駅から30分ほど時間をかけてやってきた場所は吉祥寺

ここに来れば買えないものはほとんど無いぐらいなんでも揃っている便利な街だ

そんな街も平日の昼間の今は、人の流れも落ち着いている

そして元の世界では実家から近い繁華街ということもあり、学生時代はよく遊びに行っていた

だから霧島への街案内には勝手がよいと思いやってきたというわけだ

 

さっそく改札を出て階段を降ると、目の前には大きなロータリーが広がる

 

「おぉ…ここが吉祥寺ですか」

 

「Yes 人気なcityデスヨー」

 

「へぇ~なんだかもうワクワクしてきました!

そもそも千葉以外初めてですし

そんな初めてがお姉さまとだなんて感激です!」

 

「やデスネー霧島、照れちゃうヨー」

 

「真顔で『照れちゃう』って言われましても…

…それでどこに連れて行ってくれるんですか?」

 

霧島は私を覗き込み聞いてくる

私の表情に不平を嘆くも、その顔は完全に緩んでいて実に楽しそうだ

 

「そうですネー…とりあえずあっちに行きマスカ」

 

「はい、お姉さま♪」

 

ひとまず、私達は駅前のロータリーからバス通りを渡り、人気店が並ぶアーケード街に入る

ここには和菓子屋や洋服屋、雑貨屋さんなど様々なジャンルのお店が構えられており、少し奥に進めばレンガ館と名乗るよく分からないレンガ作りの建物までもあって、平日であれば、ただぶらぶらと歩くだけでも楽しい場所だ

 

「あっお姉さま、ちょっとここに寄ってもいいですか?」

 

私の横にピッタリとくっつきながら、ずっと顔を右左動かしていた霧島が目にとめたお店

大手の眼鏡屋さんだ

 

「もちろんいいデスヨー」

 

吉祥寺に来て眼鏡屋さん?と一瞬思ったものの、別に拒む理由もなかったので霧島の希望通り、今はお客さんがまばらな眼鏡屋さんに入った

 

「Oh glassesがいっぱいネー」

 

「鎮守府の近くにもこれぐらいのお店があれば…」

 

私達が入店したこの大手の眼鏡屋さん

普通の眼鏡の種類も豊富にあるけれど、他にもPC用のも花粉用のも負けないぐらいたくさんある

しかも、検査までできるっていうから驚きだ

 

それにしても、こんなに大きい眼鏡屋さんができたのかぁ

今の眼鏡屋さんってこんな感じなんだね、全く知らなかった

前の世界でもこの世界でも視力は良いしパソコンもあまり使わないから、眼鏡屋さんなんて一度たりとも使ったことが無かったし

 

まぁそんなわけで、眼鏡屋さんでの振る舞い方がよく分からない

ここは霧島にすべてを任せるとしよう

 

「Glasses先輩よろしくデース」

 

「…なんか嫌です、そのあだ名」

 

入店するなりすぐに眼鏡を物色していた霧島は、私がそう呼ぶと一瞬ジト目で軽く睨むも、その目線はすぐに眼鏡に戻される

 

「…これはどうかしら」

 

そして今度は一個一個手に取り吟味し始めた

あれこれ種類を問わずに見比べる

でも霧島は、手に取るばっかりでなかなか試してみようとはしない

 

…分かんないけど、眼鏡って見るより実際にかけて試すものじゃないの?いや、本当に分からないけど

それともこれはプロの技?

霧島レベルになると見ただけで似合うか似合わないか分かるってこと?

おぉ、流石メガネプロ、メガネ素人の私には何が何だかさっぱり分からない

 

というか今更だけど、そもそも霧島は眼鏡を買い替えたいってことなの?

 

「新しいのが欲しいノー?」

 

「うーん いいのがあれば買おうかなーと」

 

「そうデスカ…これなんてどうネ―?」

 

どうやら本当に買い替えるつもりだったらしい

そんな霧島に、手元にあったフレームレスの丸眼鏡を渡してみた

 

「…これですか?」

 

え…という表情は見せるが、素直にそれをかける妹

 

 

 

「…」

 

 

 

「…」

 

 

 

「…Goodデスヨ?」

 

「絶対嘘ですよね?!」

 

ギャーと非難の声をあげて、直ぐに丸眼鏡をはずしてしまった

 

いや、ねぇ、眼鏡といえば丸眼鏡でしょ

一応私達の設定は第二次大戦で活躍した戦艦なんだから、昭和風の眼鏡も似合うかな~って

 

でも関係なかったね

 

「お姉さまも試されたらどうですか?」

 

と、ここで唐突に、丸眼鏡を持ったままの霧島にそんな提案をされた

 

「ワタシは目いいデスヨー?」

 

「いえ、こういう度が入っているのではなくて、PC用の眼鏡とかどうかなーと

お姉さまパソコン使ってますよね?」

 

うーん、確かに書類を書くときに使ったりするけど…

でもまぁせっかくだし、かけるだけかけてみようかな

 

「そうネー 見てきマース」

 

ということで、PC用眼鏡が並ぶ所へと向かった

そこでざっと見すると、なんとなくある赤いフレームの眼鏡に目がとまる

 

定番といえば定番の赤フレームの眼鏡

その眼鏡を早速手にとって試着し、鏡で確認してみた

 

 

 

「…Beautiful」

 

 

 

…結果から言うと、自分で言うのもあれだけれど結構似合っている

 

 

なんということでしょう!

大人っぽさが無かった私の顔が眼鏡ひとつで、いかにもキャリアウーマンのような大人な女性に大変身したではありませんか!

これぞ匠の腕ですね!

 

 

…まぁ外見は私じゃなくて金剛さんだからね

それを言ったら元も子もないけれど、そりゃ似合ってるわ

 

 

「霧島~ How about this?」

 

 

それでも一応、他の人の意見も聞いてみたかったので霧島に感想を求めてみた

 

 

 

「…」

 

 

 

「…」

 

 

 

けれど、振り向いた霧島は、振り向いたっきり何も言ってこない

 

…あれ?似合ってない?

もしかして私の勘違いだった?

匠の川流れ?

 

 

…でも似合っていないのならかけていてもしょうがないか

 

何故かちょっと残念な思いを感じつつ、眼鏡をはずそうとした

 

 

 

「待ってください!!」

 

が、突然霧島が叫び、それを阻止する

 

「どうしたノ?」

 

「お姉さま…少しそのままでいてください」

 

言うとすぐさまスマホを取り出す

そして何やら操作をしてこちらに向けたと思ったら、そのスマホからパシャパシャパシャと3回ほどシャッターが切られる音がした

 

いや、なにしてるんですか…

 

「霧島?」

 

写真を撮ったあと、しばらく画面と睨めっこしていた霧島に問いかける

すると、ハッと何かを思いついたような表情をしてようやく顔を上げた

 

「お姉さま!その眼鏡を買いましょう!」

 

ん?

その眼鏡って、今私がかけている眼鏡だよね?

私がかけたのを買ってどうするのよ

それでいいのならいいんだけどさ

 

「…いいデスけど、霧島はかけなくていいノ?」

 

「はい!だってそれはお姉さまの眼鏡ですから!」

 

「What are you talking about?」

 

「いえ、お姉さまにとてもよく似合っていらしたので」

 

いや、意味がわからない

それでなんで私が眼鏡買うことになるのよ…

 

「Thank youネー でもワタシは必要ないデース」

 

「そんなことはおっしゃらずに!

どうせあと9万円ほど残っていますし、ぜひこの機会に買っておきましょう!

備えあれば憂いなしですよ!」

 

「例え買ってもワタシはwearしませんヨ?」

 

「大丈夫です!かけさせますから!」

 

何が大丈夫よ

むしろまたひとつ害が増えてるんだけど

 

「お願いします、お姉さま」

 

渋る私に、両手を握って懇願する我が妹

眼鏡越しに窺える子犬のようなウルウルとした目

 

 

そ、それは卑怯だ…

そんな目をされたら断れるわけがない

くっ、榛名といい霧島といい、どうしてこうも私の弱みにジャストに入ってきちゃうのかな…

 

まるでうちの鎮守府には私の取説でもあるかのようだ

 

 

「…分かったネー 買いマスカ…」

 

 

乗り気はしないものの、こうでもしない限り引き下がってくれる様子もなかったので渋々了承した

げんなりとした態度をする私を余所目に、霧島は私の言葉を聞くとうふふっ♪と微笑み、綺麗にターンを決めてそそくさとレジへと向かう

 

はぁ…結局流されちゃった なんだかねぇ

…でもひとまず霧島が楽しそうでなによりだ

一応休暇なのだから、つまらなかったら本当に何しに来たって話になるし

楽しければいいか

 

 

ってあれ?

もしかして私もこの時を楽しんじゃってる?

 

 

 

…いや、そんなことはない

 

これはあくまで仕事

ただ提督に頼まれて案内をしているだけ

そう、いつもとは少し違う仕事をこなしているだけだから大丈夫大丈夫

 

 

しばらくして、お会計を済ませた霧島がこちらに戻ってきて私達は眼鏡屋さんを後にした

 

 

私の自己同一性は、そう簡単には変わらない

 

 

 

「あそこデース」

 

アーケード街をさらに奥へと進み、十字路にある有名店にやってきた

眼鏡屋さんに入るより行き交う人が増えたお昼時

そのお店には30人ぐらいの行列ができている

最盛期にはお店から50mほど後ろにあった伊勢丹にまで到達していた行列も、今はやや落ちつているみたいだ

それでも平日に行列ができるぐらいだから、まだまだ繁盛しているのだろう

私達はその行列の最後尾に並んだ

 

「この行列はなんでしょうか?」

 

「ここはメンチカツがniceなお店デース」

 

「メンチカツですか、なんか意外です」

 

「Why?」

 

「お姉さまのことだからイギリスの食べ物を扱っているお店に行くのかなぁと」

 

この妹は私をなんだと思っているの…

一応英国産れを名乗ってはいるけど、もう中身は完全に日本人だし味覚も日本人だ

確かにいつも紅茶ばかりのんでいたし日本語もちっとも上手くならないけどさ!

 

「ワタシだってJapaneseなものも食べるネー」

 

「まぁお姉さまですし、よく考えたら不思議なことではないですね」

 

だからこの妹は私を(ry

 

 

その後もなんだかんだ妹とだらだら話していたら、気づくとお会計まであと少しの所まできた

 

「メンチカツだけ買うんですか?」

 

「No コロッケも買いマース

メンチは出来立てだとtoo hotなことがあるネー

だから最初はコロッケをeatして、メンチデース」

 

「ほ~なんだか通い慣れた感がありますね」

 

「…てーとくと行っていましたから」

 

「いらっしゃいませ~ ご注文をお伺いいたします」

 

危ない危ない

ちょっとボロがでかけた

今回はタイミングよく店員さんが注文を聞きに来てくれたから助かったけど、注意しないとね

 

「コロッケとメンチカツを一つずつお願いしマース」

 

「コロッケとメンチ、一つずつでよろしいですか?」

 

「え? なぜ一つずつなんですか?」

 

私が店員さんに注文をすると、何故か不思議そうにこちらを見る霧島

いやだって、私は食べる必要がないからねぇ

あくまで仕事中だし

 

「霧島の分だヨー 」

 

「…お姉さまはお食べにならないんですか?」

 

「Yeah ワタシは大丈夫ネー」

 

「…」

 

「お客様?」

 

「あ!やっぱり二つずつでお願いします!」

 

私達が店員さんをそっちのけに話始めたので、やや困った顔をして再度尋ねてくる

それに対して霧島は驚きなことを言いだした

 

「霧島?!」

 

「コロッケとメンチ二つずつ、以上でよろしいでしょうか?」

 

「はい!」

 

「ちょ、ちょっと!」

 

「ありがとうございます、お会計までもう少々お待ちください」

 

店員さんは後ろで待っている人達にも早く聞きたかったのか、霧島の注文をきくなりそそくさと去っていってしまった

 

「霧島、なぜデスカ?!」

 

「私だけが食べるわけにはいきませんから」

 

「でも…」

 

「でももだってもないです

往生際が悪いですよ、お姉さま」

 

そう言うと霧島は、私の頬を軽く摘まみあげて物理的に黙らせる

 

あぁもう…なんて妹だ

これじゃあ傍から見たら、完全に私が駄々をこねている駄目姉みたいじゃん

いや、実際に駄目姉ですけれども

 

「ウ゛ーひゃ、ひゃめるニェー」

 

「ではもう文句はなしですよ?」

 

「おーきぇー」

 

半ば強引に約束を取り付けられ、霧島はうんうんと頷く

その後もしばらく私の顔で遊び、お会計をする順番になってやっと手を放してくれた

 

誰だー霧島をこんな風に育て上げた人は!

お姉さん怒らないから出てきなさい!

 

…まったく、この強引さは一体誰に似たのだろうか

 

「はい、コロッケとメンチカツ二つずつです

ありがとうございましたー」

 

「お姉さま、どうぞ」

 

お会計を済ませた霧島に、元祖丸メンチと書かれた紙袋を手渡される

早速開けてみると、見覚えのある懐かしい2つの丸い茶色いものが入っていた

もう買ってしまったし、流石にここで食べないほど捻くれている私ではない

というわけで、コロッケからさくっと一口かじると、なんとも懐かしい味が口の中いっぱいに広がった

 

 

あはれ、うまし

 

 

なんかこう…口の中がやばいです

あと、ちょっと涙腺がやばいです

 

歳のせいかなぁ 

なんでこんなことで泣きそうになっちゃうのよ

いや、歳のせいなのも嫌だけどさ

 

数週間振りの食事と数年振りのこの味とが重なって、以前食べた時よりも何倍もおいしく感じる

 

「おぉー! これはすごいですね!」

 

私の横で霧島はホクホクとコロッケを頬張る

 

「…そーデスネ~ Greatデース」

 

泣きそうになるのをまた隠すために、私は無理やり口角を上げてみせた

コロッケ食べて泣くとか訳わからない姉とか、世間的にも嫌だろうし

 

「…お姉さま

やっと笑顔を見せてくれましたね」

 

「へ?」

 

手を止めて、突然へんてこなことを言い出す

 

「いえ、お姉さまはあれから一度も笑顔を見せていませんでしたので

久しぶりに見られて良かったです」

 

「…」

 

…別に笑顔を見せようと思って作ったんじゃないんだけどなぁ

でも、言われてみれば確かに作り笑いとはいえ、笑顔を見せるのは数週間振り

まぁ何も考えずに仕事だけして、毎日同じような生活をしてたからね

 

「ふふ、お姉さま~♪」

 

…そっかぁ

接しないのは接しないでそんなに迷惑がかかってたのね

せめて作り笑いするぐらい、少しは態度を改めないと、か

 

「…Haha」

 

「お姉さま?」

 

「霧島、ワタシはもう大丈夫デース

心配かけマシタ」

 

そう言ってポンっと霧島の頭に手を乗せる

そのまま撫でてあげると、ほんのりと頬が紅く染まっていった

 

うんうん、こういうことか

 

私自身のことはどうでもいい、その考えは変わらない

でも妹達、それに提督や駆逐艦達に心配をかけていた今までの態度は、間違っていた

仮にこの状態が続いたままだと、もし本物の金剛が戻ってきた時に大変だよね

立つ鳥跡を濁さず、だ

体裁はちゃんと取り繕っておこう

 

「霧島~ 早く食べないとcoldしちゃいますヨ~」

 

「え? あ、はい!お姉さま!」

 

「それと I`m hungryデース

この近くにNiceなお店がありますけど、どうデスカ~?」

 

「もちろん行きたいです!」

 

私が昼食を提案すると、紅い顔を勢いよく縦に振る我が妹

今日一番のテンションのあがりようだ

もしマイクなんてあったら、ボエー以上の騒音が吉祥寺に響き渡ることになるんだろう

 

「お姉さま~まだまだ楽しみますよ~」

 

「分かってるネ~ 」

 

可愛い妹が私を慕ってくれている

そんな妹達の心が晴れるのなら、皆が望んでいる明るい金剛のキャラぐらいいくらでも作ろう

 

大丈夫

前の世界でも上手く世を渡ってきた

その時と同じようにやれば問題ない

 

よし!だったら演じてやろうじゃない!

 

そう心の中で決意をし、私達はお昼を食べにお店へと向かった

 

 

 

やっぱり私の根本的な自己同一性は変わることがない

 

 

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