ブラック★ロックシューター・THE・WAR   作:イビルジョーカー

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オリジナルの設定で考えた『ブラック★ロックシューター』を書いてみたくて、
つい投稿してしまいした(汗) 本当は短編で出す予定でしたが、諸々の事情で連
載という形で出させていただきます。

では、どうぞ。



★異世界『クシロロ』☆

 

 

 

虹色という、サイデリックな色彩を放つ天空に火花が弾け飛ぶ。

 

空を舞うのは、漆黒に塗りつぶされたかのような色合いの髑髏に、蝙蝠のような翼が生えた形状を有する異形。彼等はギリギリと軋むような音を立てて下顎を動かし、口を開放させる。

 

そして、紫色の光弾を発射。

 

その威力を例えるなら、戦車の砲撃の約10倍に相当し、喰らえばひとたまりもないのは傍から見ても理解できてしまうだろう。そして当然の如く、光弾を喰らい髑髏の異形と相対する勢力が次々と地に落ちていく。

 

両翼の異形髑髏という、そんな勢力と敵対しているのは、姿形こそカラスそのまま。しかし頭部に一本の角を有し、左右二つずつ。計四つのを持った目を持つという奇妙なカラスの群れの勢力だった。髑髏が放つ紫色の光弾はカラス達に当たったものの、その全てに命中したわけではない。生き残ったカラス達は角から蒼白い電撃を放出し、それが一片の隈なく纏わり付くように髑髏たちを絡んでいく。

 

そして、2分もしない内に爆発。

 

先程のカラスたちと同じように地へと、その身に死を抱え重く落ちて行く髑髏たち。中には原型を残さないほどに粉砕した状態で、欠片を降らす者までいた。

 

「行けぇ! 奴等を殺し尽くせ!!」

 

髑髏の勢力を率いている頭角。それは髑髏という点では他と同じだが、その下からは蜘蛛のような足が伸び、蝙蝠ではなく鳥のような両翼が左右に生えていた。彼は他の髑髏と同じように紫色の光弾を吐き、次々とカラス達の命を略奪し地へと叩き落す。

 

「怯むな! 我等の力、骨クズどもに思い知らせてやれ!!」

 

カラスの勢力を率いる頭角の叫びで、一気に士気が向上していき次々と髑髏を倒していく。

 

その姿は、カラスの翼のようになっている腕以外を除けば、極めて普通な少女だ。鳥をディフォルメに意匠したような黒のフードパーカーを上に羽織り、その下は青と白の縞模様のブラジャーのみ。下半身は鳥の羽毛がびっしりと生えたスカートで覆い、足には鳥の翼を丸くしたようなデザインの白の刺繍が施されたブーツを履いている。

 

まさしく、その姿はギリシャ神話に登場するハーピーに近いものだった。

 

電撃と光弾。凄まじい爆発の連続。それらの応酬はまさしく戦火、戦い、闘争の形を実現したものに違いない。いつ終わるとも分からない壮絶な空中戦線だったが、それは別の勢力の介入による強制的に終わることとなった。

 

突如として降り注いだ、様々な色の光弾とミサイル。

 

幾千幾万にも渡る量のそれらにカラスと髑髏の勢力は共ども落とされる結果となってしまった。

 

「ぐっ、あァッ……一体何が」

 

「い、痛てぇ……」

 

ハーピーのような少女『バード・スラッシャー』と、髑髏の『ボーン・アウター』は敵から受けたダメージに悶絶し、蹲る。

 

「貴様等、ただちに戦闘行為の一切を停止しろ。さもなくばここにいる全員皆殺しだ」

 

凛としながらも、重圧とした厳格な声が戦場が響き渡る。その声の主は白い少女だった。長い白髪を右側が長く、左側が短い左右非対称のツインテールに纏め、上半身の服装は、純白のビキニの上に、裾がコートのように長い前開きのパーカーのみを羽織っている。

 

パーカーの背中と左胸には黒い星マークがあり、袖には黒のラインが走っている。これに対し下半身は白のホットパンツに黒いベルト、白色のロングブーツを着用。

 

まさしく全身が白を多めとした白装束に包まれたその姿は、まさしく『白い少女』と称するに相応しかった。そして一番他者の目を引き寄せる彼女の特徴は、右目に灯った双眸の瞳とと同じ『憤怒』と『邪悪』を連想させる『真紅の炎』と、右腕の手首を飲み込むかのように装着された身の丈ほどの白い筒状のキャノン砲。

 

そしての銃口は、バード・スラッシャーとボーン・アウターの両名へと向けられていた。

 

「今、この状況下において貴様等に与えられる選択肢は二つに一つ、この妾の手で直々に命を失うか。もしくは妾の傘下に入るかだ。それ以外は決して認めん」

 

ダメだ。この少女に逆らってはいけない。

そんな思考が、バード・スラッシャーとボーン・アウターを支配した。そう確信させる根拠は二つ、一つは白い少女の気迫だ。オーラとも言うべきそれは、まるで高い数値の重力であるかのような強い圧迫感を心身共に感じさせ、そのせいでバードとボーンの両者はまったく動けないのだ。

 

無論、先程受けたダメージによる所もあるだろうが、それを踏まえたとしても……まったく微動だにできないほど石のように硬直しているのだ。もう一つは、彼女の背後に立つ大規模な軍勢。その数はバードのカラス勢力とボーンの髑髏勢力を合わせたとしても足りないほど、圧倒的な数だった。

 

白い少女やバードのように人間に近いフォルムの者が多いが、動物や植物の意匠を持つ者や外見的に機械や無機物を感じさせる者。人間には遠いフォルムの者達も軍勢の中に多種多様と混じっていた。

 

「できるだけ早く決めてもらうぞ? いつまでも、こうしいるわけにもいかないからな」

 

向けられた銃口に少しだけ赤く光るエネルギーが集束される。つまり…もう残り時間は少ないと言うことになる。自分の命とさっきの攻撃で生き残った仲間たちの為、ここは絶対的な勝者である白い少女の傘下に入り従僕となる以外に道は無かった。

 

「よし。良い判断だ。妾の名は『ホワイト☆ロックシューター』。全てを壊し支配する者……覚えておくがいい」

 

白い少女、『ホワイト☆ロックシューター』は鋭く尖った歯を見せながら、凶悪的な笑みでバードとボーンに語りかけるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

クシロロ。そこは虹色の空とチェス盤のような白黒柄の大地が広がる、地球の浮かぶ宇宙とはまったく違う法則で縛られた異空間。そこでは日々二つの派閥に分岐した両者の戦いが、永延と思うほどの時間の下に繰り広げられていた。

 

この世界には、様々な物質を生成する力を秘めた『ラックワイトエナジス』という特殊なエネルギーがある。そしてそれを脳と心臓の代わりとし、生命維持と意思を司る中心核とする知的生命体が存在する。

 

彼等は自らを『ハートレス』と呼び、心底から絶えず沸き起こる闘争本能に従い、常に生死を賭けた、終わらぬ不毛な戦いに身を投じていた。

 

彼等の最大の特徴は、生まれた時から秘め持つ戦闘能力と頑丈な身体。そして人間で言う所の『感情』が人間のそれと比べて薄い、あるいは欠落しているという点にある。

 

ある者は『憤怒』と『道楽』しかなく、それ以外が皆無であったり。

 

ある者は『悲哀』を除けば全ての感情が薄く平坦なものだったり。

 

またある者は『恐怖』と『好奇心』がまったく無く、『憤怒』が人間並みだがそれ以外の感情が全て希薄であるなど。

 

ハートレスの個々によって、その形は様々な物が多種多様にと枝別れして存在する。

 

それ故か、人間の倫理観では理解できない部分もある。

 

そもそも当然の疑問として、彼等は何故、不毛な戦いに身を投じるのか。

 

それはハートレスたちにも分からないもの。強いて言うならば沸き立つ戦闘欲を満たす為……と言えばそれまでであり、ハートレスたちも容易く納得してしまうだろう。何せ彼等は、自分達が戦うと言うことに関して疑問など抱いたりはしないのだから。

 

彼等にとって生きるとは、戦うことも同義。

 

どれほど惨めで滑稽でも、その身がある限り戦士としての誇りを失くさず最後まで戦い抜く……それがハートレスの存在定義でもあったのだ。

 

だが、そんなハートレスたちの中になんと戦いを好まぬ者達が続出した。彼等は人間の概念で言い表すなら、まさしく『平和主義者』と言う部類に属する者達だった。しかし、ここは戦いこそが物を言い決定する残酷な世界。通常のハートレスたちにとって彼等は絶好の獲物に過ぎなかったのだ。

 

しかし彼等は、何もせずに平和とのたまい続けるほど脆弱ではなかった。この残酷な世界を変える為に争いという争いの根絶を成そうとした結果、この世界における一般基準のハートレスならば絶対にしないことを彼等はして見せた。

 

『徒党を組み、連携プレーで敵を倒す』。

 

地球における人間や狼などの社会性を持った生き物ならば、当たり前の事として実行する何でもない合理的な行為。しかし、互いが互いを敵同士と認識して来たハートレスにとってしてみれば、異様な行動以外の何物でもなかったのだ。

 

とにかく、この戦略によって平和主義者のハートレスたちは、そうではない者達の手によって狩られることはなくなり、逆に敵対して向かって来るハートレスを次々と返り討ちにしていった。

 

その姿は、まさに敵対するハートレスたちにとって脅威そのものに違いなかった。

 

平和主義者のハートレスたちはその勢力を次第に拡大させていき、それに伴い、今まで旧い考えだった闘争主義のハートレスたちが減少。中には闘争主義をもう時代遅れの考えだと、そう認識し割り切って平和主義に鞍替えする者たちもいた。

 

だが、それでも頑なに闘争主義を掲げるハートレスたちはおり、その思想を諦めることなどなかった。平和主義者たちに抗う為に彼等が取った手段は、皮肉にも平和主義と同じ『徒党を組み、連携プレーで敵を倒す』というものだった。

 

とは言え、闘争主義者たちにとってそれは難攻不落の課題に等しかった。

 

連携しようとしてもうまくいかず、それどころか下手すれば些細な原因一つで自滅する杜撰な始末。そこで戦闘能力の高いハートレスが暴力での圧制を用いることで強制的に従わせるという、そんな手段が自然と用いられるようになっていった。

 

酷い話だが、闘争主義者たちにとっては効果覿面と言わざる得ない成果だった。

 

こうしてクシロロ世界はいくつかのグループ勢力に分かれた闘争主義者たちと、勢力を強大的な物へと成長させた平和主義者の勢力『クロワ』という相対的な形となった。しかし闘争主義者たちはグループ同士での潰し合いを頻繁に起こし、かく言うボーン・アウター並びバード・スラッシャーの両名も例に漏れず該当していた。

 

しかしそんな彼等も、今ではクロワに匹敵する闘争主義者の大規模勢力『ハクト』の傘下に加わり、幹部級ハートレスとして任に付いている。

 

ここに来て平和主義と闘争主義の勢力図が大きく変わろうとしていた……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

クシロロには、東西南北に位置する大都市区画が数えて四つ存在する。総面積は東京都の約半分に相当し、一つの区画に対しその周りを囲むように小中区画が点在。四つの大区画は、それぞれ平和主義を掲げるハートレス勢力『クロワ』が東と北を、対し南と西は、闘争主義を掲げるハートレスの勢力『ハクト』がそれぞれ統制する地域として治めていた。

 

そして、この上記二つの勢力に属さない中立的位置にいるハートレスは皆、遥か天に浮かぶ『第五の大都市区画』を拠点とし、両派閥の戦争には徹底的な不干渉ぶりを貫いていた。

 

このような状態が続き、クロワとハクトの戦争は小規模な紛争程度での小競り合いが続いている状況だった。

 

「……甘い。これって、ロックの言ってた『ぢちゅう』ってところの……え~っと…」

 

「地球よ、地球。そしてこれはお菓子。マカロンって言うものだよ」

 

東の大都市区画『シューティ』。

 

その一角にあるクロワの東大都市区画防衛本部は、漆黒に塗り潰されたかのようなカクカクとした歪な形状の塔であり、その天辺にある円形の展望広場にて腰を下ろす二つの影がいた。1人は黒髪を右側が短く左側が長い、左右非対称のツインテールにしており、その肌は雪のように白い。上半身の服装は、黒のビキニの上に、裾がコートのように長い前開きの黒いパーカーのみを羽織っておりパーカーの背中と左胸には白い星マークがあり、袖には白のラインが走る。 下半身は黒いホットパンツに白いベルト、黒のロングブーツを着用。

 

まさしくその姿は、『黒の少女』へと反転を果たしたホワイト☆ロックシューターのようだったが、彼女とホワイトはまったくの別人同士であって、決して同一人物ではない。

 

もう1人は黒いゴスロリ衣装に身を包み、両足にはバイクのような黄色のタイヤが装備されている。頭には黒の冠が装飾され両手は漆黒の外骨格に覆われており、髪型は少々癖の入った黄色のロング。瞳も髪と同色である。

 

黒き少女の名は『ブラック★ロックシューター』。

 

平和を掲げるハートレスたち『クロワ』の二代目統率者で、その力は闘争主義のハートレスたち『ハクト』の総督であるホワイトに匹敵する程のものを秘めている。そしてそんな彼女の隣に座る車輪少女の名は『チャリオット』。

 

両足のタイヤ部分を生かしたスピード戦で相手を翻弄して倒す、クロワにいる数少ない精鋭の1人である。彼女の手にあるのは本来、この世界には存在しない筈の物である筈のお菓子マカロン。何故あるのかはまったくの不明だ。

 

『ロック! こちら東大都市区画2-0エリア群担当のストレングス! 応答を頼む』

 

少しエコーがかった、青い星の立体映像エフェクトが宙に発生すると同時に幼さを感じさせる少女の音声が響き渡る。様子から察するに相当な緊急事態と察したブラックとチャリオットは立ち上がり、いつでも迎撃できるよう互いの愛武器をテレポートさせる形で召喚。

 

“★Rock Cannon(ブラック・ロックカノン) ”

 

ブラックの左腕を飲み込むように装着された、身の丈ほどもあるエネルギー機関砲の名称。

 

威力は相手を麻痺程度にさせるまで弱められ、相手に大きな風穴を開けさせるほど中ぐらいに。そして相手を一欠けら残さず、木っ端微塵以上に吹き飛ばすほど強くすることが可能。

 

更にエネルギー弾のみならず実弾での使用や連射、ライフルのように狙撃できるモード機能まで備わる、まさに至り尽くせりの万能武器だ。

 

これに対し、チャリオットの愛武器は自立意識を持った蜘蛛型戦車『メアリー』。大きさは横10m、縦7mを有し、口から追尾ミサイルやレーザー光線を発射する。主人であるチャリオットとブラックの命令には純粋に従うが、他の者は大抵無視を決め込む(無視しなかったにしても激しい攻撃を喰らうので、無視された方が断然良い)

しかし『○○○の命令に従いなさい』と命じられれば、間接的にチャリオットやブラックが指名した相手に従う。その代わり指名した相手に対して少し粗暴で雑な面があるが……。

 

「ストレングス。こちらブラック。状況の説明をお願い」

 

『ああ。私が担当の2-0エリア群。2-01、2-02、2-03の全区域がハクトからの奇襲を受けている。至急増援を頼む』

「分かった。私達が向かうから待ってて」

 

通信を一旦切り、同時に青い星のエフェクトも消えた。ブラックとメアリーに搭乗したチャリオットは、展望広場から一気に跳躍。下にあった歪なデザインの建物へと移る。

 

そして次々と建物と建物の間を跨ぎ駆けながら、目的地である2-0エリア群へと急行した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

2-0エリア群は、2-01と2-02。そして2-03と2-04の四区域に分割されており、ここでは武器や兵器研究・生産の為の施設や工場が多く点在されている。その中には一般のハートレスたちには知られていない『ある物』が厳重保管されていた。

 

今回のハクトの奇襲は、それが原因でもあった。彼等はその『ある物』を奪取することこそが目的であり、同時に戦略的な面での『敵側の兵力潰し』も行っていた。

 

無数無限とも思える実弾とレーザー弾、更に絶大な殺傷力を秘めた閃光が戦場と化した区域を駆け、そこはもう、この世の地獄と称しても大差ないほどの凄惨を極めていた。

 

「ぐっ…」

 

「あっ……」

 

前線で白兵戦を展開していたクロワの戦士が二人ほど、呆気なく死んだ。二人とも男性で、精鋭には入らずともそれなりの実力を持っていたのにも関わらず、一瞬の内に殺された。

 

「これがクロワどもの実力か? 脆弱にも程がある」

 

二人の命を奪った死神の正体は黒を基調とし、緑色のラインが入ったラフな姿の青年だった。白髪で右の前髪が黒い稲妻模様となっており、履いているハーフパンツには手に持った二丁のライフル銃に装填する為の銃弾が巻き付いている。ラフでありながらも、色々と物騒な格好をした彼の名は『リリオ』。

 

『兵長』という称号を持ったハクトの幹部で、主にハクト兵士の育成・指揮を担っている。その戦力は申し分なく、クロワの精鋭二人を同時に相手取る力量が備わっている。

 

「ハクトの兵長リリオだ!」

 

「殺せ!」

 

今度は重厚な騎士の鎧を彷彿とさせる白い外骨格を身に纏い、その手に持ったマシンガン銃でリリオを討ち取ろうとするクロワ戦士の戦闘部隊の一つ。総数は38に及んでいた。

 

「随分と鈍そうなのが出てきたな」

 

そんな軽口を叩きながら銃弾の雨を余裕に掻い潜り、トリガーを引く。ライフルの銃口から緑色のレーザー弾を吐き出させるリリオだが、その堅牢な外骨格が障害となり、中身を貫くことは敵わなかった。

 

「チッ!」

 

ライフルによる攻撃が無意味だと瞬時に理解し、半壊した建物の陰へと身を避難させる。

 

「俺の位置が見えるかマズマ。見えるならお前の狙撃で敵を一掃しろ」

 

リリオの顔の横に緑色のマークのエフェクトが展開される。ブラックの時と同じく『通信用アーマメント術式』と呼ばれるものだ。

 

『了解だリリオ………さぁ、我が真髄をとくとご覧あれ!』

 

仰々しい向こう側の相手の声と共に一筋の赤い光弾が敵の1人に撃ち込まれる。貫通する事なく、そのまま体内に残留した赤い光弾は急速分裂し膨張。敵を体内から弾け飛ばすように始末するばかりか周りにいる残り37の敵に被弾、次々と蜂の巣へと変えていく。

 

「助かったマズマ。その芝居がかった口調はともかく、狙撃の腕は賞賛に値する」

 

『まぁ、これも俺の任だからな。あと一言余計だ』

 

リリオのいる地点から上空100mの位置にあるステルス戦闘機『メルバス』。全長は20mほどあり、その形状は地球で言うところのエイに似通ったものをしている。そして、その背中に当たる部位で悠然と立ち、その手に身の丈以上の赤いカラーをしたスナイパーライフルを持つ1人の青年。彼こそがリリオが通信で言っていた『狙撃士マズマ』。幹部の1人だ。

 

狙撃を己の力を最大限に生かせるフィールドワークとしているものの、白兵戦・空中戦においても遜色ない実力を持っている。好戦的な性格で、真っ赤なトレンチコートのような服と左右非対称のガントレット並び服と同色のブーツを着用した赤ずくめの格好をしている。

 

更にその赤という色に似合い、炎を操る能力が備わっている。故に火のある場所では圧倒的有利を誇る。

 

「しっかし、『アレ』を手に入れる為だけに、強力な戦力が集中してるこのエリア群を狙うなんて。とんだ蛮勇者だな~あの方も」

 

リリオとの通信が向こうから先に切れ、マズマはそんな感想を空から零す。赤い髪を空の風に靡かせる彼の目には、敵味方関係なく命が消え続ける戦渦が広がっていた。それに呼応するかのように彼は語る。まるで劇場に立つ役者のように。

 

「おお、死よ。災厄よ。何故貴方らは我々の命を奪うのか。それは我等の業故か、それとも、世界の絶対的なルール故…か」

 

マズマがそんなことを呟いている一方で、リリオは戦闘を続行しながら2-03の地下中枢施設へと向かっていた。また違う場所では、2-02においてストレングスとハクトの部隊が交戦していた。

 

「喰らえ」

 

削岩機のように巨大な漆黒の両腕の愛武器『オーガアーム』を変形させてガトリングガンにし、弾丸を連射する形で敵を攻撃するクロワの精鋭の1人。ストレングスだ。体躯は小柄な部類に入り、顔を少し隠した黒のフードと同色の服を着用した格好となっている。

 

ストレングスのガトリングを受けて人間に近い姿の者や、人間とは大きくかけ離れた姿の者問わず、ハクトの兵士達は次々と餌食にされる。そんな中で彼女のガトリングによる猛攻を不可視の防壁で遮断する者がいた。

 

黒と紫の魔女のような格好をした、一人の女性。年齢的に20代後半くらいに見える妖艶な魅力を孕んだその女性は、自身が手に持つ箒のようなデザインのショットガン『ウィッチ・バレット』の銃口を向けながら軽快な声を上げた。

 

「ハーイ! ブエナス・タルデス! 久しぶりね、ストレングス」

 

「……ミー」

 

警戒を解かず、ストレングスもガトリングの標準を目の前の女性……ミーに向ける。

 

「あらら。随分なご挨拶ね」

 

「敵と流暢に話す気はない。死んで失せろ」

 

にべもなく断るストレングスだが、それが正しい判断だろう。そもそも先に殺意ある攻撃を仕掛け、銃を向けたのはミーと彼女が率いる奇襲部隊だ。非の言いようがない。

 

「可愛げがまったくないわね。そんな子はお姉さんがお仕置きして上げる!」

 

ウィッチ・バレットを変形させ、一振りの大鎌『ヘル・マジック』にさせたミーは一気にストレングスへと詰め寄り、横一線に彼女の身を切り裂こうとする。コレに対しストレングスは即座に後方へ下がることで回避。ガトリングを容赦なく浴びせるが、先程と同じ不可視の防壁が銃弾を阻害してしまう為、無意味に終わった。

 

「多く撃つだけじゃ、私のこのバリアは破れないわよ?」

 

「……そのようだな」

 

ここでオーガアームを元の手腕形態へと戻し、その鋼鉄の拳へと力を込める。そして一気に防壁を砕かんと、左右のラッシュで一方的に殴り付けた。

 

「ふふっ、さっきに比べれば良いのは認めるけど。それでも全然足りないわよ?」

 

「なら、もっと上げればいいだけのこと」

 

その言葉と共に両手の甲から小型ブースト装置が展開。

 

ラッシュを止め、噴射の推進力で更に威力を高めた二つの拳は先程のラッシュよりも強く、不可視の防壁を抉っていくかのように徐々に増していく。

 

そして……。

 

 

 

バリィィィィィィンッッッッッ!!

 

 

 

「う、うそっ?!」

 

「終わりだアアアアアアアアアアアーーーーーーーーーーッッッッッッ!!!!!!!」

 

障害を自らの手で打ち破り、そして凄まじい威力の篭った鉄拳がミーの腹部へと突き刺さる。そして大きく彼女を吹っ飛ばした。

 

「ぐゥッ……見事にやっちゃって、くれたわね……」

 

近くの半壊した建物の壁に激突したミーは腹部の大きな損傷を抑えながらも、何とか立ち上がる。そんな彼女に冷酷ながらも止めを刺す為、死の鉄拳を見舞おうと灰色のエネルギーを右拳へと注ぎながら一歩、また一歩とミーに近付いていく。

 

「これで、お前の命は潰える」

 

死の宣告だった。

 

それを発言した以上、今更撤回などありえない。

 

「(あ~あ、私死ぬのかな。まぁ、これも戦場に立つ者の定めってやつかしらね)」

 

ダメージと損傷のせいで攻撃ができない状況ながらも、ミーは達観していた。ミーは他ならぬ闘争主義のハートレス。命をもって生まれた時から他のハートレスを無差別に駆逐し、闘争の在り方を長く見つめて来た彼女にとってしてみれば、これは当然のこと。

 

弱い者が死に、強い者が生き残る。

 

弱肉強食こそ闘争主義のハートレスたちが敷くたった一つのシンプルなルール。故に自分は、ストレングスという強者の下に死ぬ……そんな思いを心中に駆け巡らせていた。

 

しかし、そうはならなかった。

 

「ミーッ!!」

 

「ぐっ!」

 

ミーを呼ぶ声と共に一筋の緑色の光弾がストレングスめがけ向かって来る。それをオーガアームの甲で防ぐが威力を完全に殺し切れず、先程のミーのように吹っ飛んでしまった。

 

「大丈夫か、ミー?!」

 

そんなストレングスに目も当てず、少し焦燥を浮べた表情でミーの下へと駆け寄る1人の青年リリオ。あの攻撃はどうやらリリオの物のようだ。

 

「リリオ……ええ、腹部の損傷は酷いけど生命維持に問題はないわ」

 

その言葉を聞き、安堵の表情を浮べるリリオ。そして憤怒に満ちた視線をストレングスに向ける。

 

「やってくれたな、ストレングス」

 

「……お前は、リリオ」

 

ハクトの幹部である兵長リリオとは、ストレングス自身何度か戦った経験のある相手だ。いつも互角に終わるだけで未だ決着がついていない、油断ならぬ強敵だ。

 

「リリオ、貴方2-03の中枢施設へ向かっていた筈じゃなかったっけ?」

 

「それならマズマに任せた。俺とミーは互いに『コア』が繋がっている。ミーの危機を察知し助けに来た」

 

ミーの問いにリリオは戸惑いを見せず真っ直ぐにそう答えた。しかしストレングスは、それを鼻で笑う。

 

「ふん。闘争を是とし、他の命を奪うことしか頭のない連中の言葉とは思えないな」

 

「お前がどうこう言おうが関係ない。俺がここに来た目的はミーの救出と貴様の殲滅だ!」

 

ハクトの兵長とクロワの精鋭。両者の火蓋は切って落とされた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「はぁ~まったく。リリオの奴、こんな重要な事をホッポリ出すなんて…まぁ、それだけミーの奴が大事ってことか。おお、何と素晴らしい旧き良き時代の契り……けど、俺にはそういうのサッパリだけどな」

 

厳重に管理された2-03の地下中枢施設。しかしマズマはそれを意に介さず、あらゆるトラップや敵を撃破。そして目的の物がある『地下10階 秘密格納室』の自動ドアの前に立っていた。

 

「ふむ。こいつはクードゥーカー(人間で言う所のパスワード)式か。しかも五重になってるな……こういうのはナフェが向いてるんだけど、面倒だが仕方ない」

 

己の愛武器『イクトゥス・フレイム』という名の、歪なフォルムをした巨大な銃剣を自身の下へテレポートさせ召喚。そして刀身に膨大な熱エネルギーを集束。一気に噴火させた。

 

「さぁ、我が身の炎に焼かれろ!」

 

またも芝居がかった口調で獄炎と化した刀身をドアへ叩きつけるようにして、熱と刃で一気に切り裂く。そのまま足を踏み入れようとしたマズマだが一瞬、何かを感じ取り数m後方へと跳躍する。

 

「……感が良いのね、貴方」

 

「『デッドマスター』……そんでもって『スカルヘッド』か」

 

先程まで彼がいた位置には深い三日月状の切れ込みがあり、あともう少し反応が遅ければその身を無残に切り裂かれていたに違いない。そして、それを行使した者はドアの先にいた。

 

背中を思い切りパックリと開いた漆黒のワンピースドレスを身に纏い、骨格を彷彿とさせる角と翼が特徴的な1人の少女。その左右には巨大且つ、両目と口から不気味な緑色の光を発する

骸骨の頭部が浮かんでいる。

 

少女の名は『デッドマスター』。

 

かつては闘争主義のハートレスだったものの、今ではクロワの精鋭の1人として戦っており、左右の頭蓋骨は『スカルヘッド』という名の兄弟。ちなみに外見的区別がない為、皆彼等の性格で見分けるらしい。

 

「兄者! 見ろよ、敵だぜ敵!」

 

「……言われずとも分かる。マズマだろ」

 

「んじゃ、とっととぶっ潰そうぜ! ヒャッハハハハ!!」

 

と、このように弟『ジニー』はハイテンションで軽快溌剌。対して兄『コニー』は寡黙的で、厳格な雰囲気を発している。

 

「お喋りはそこまでにして。行くよ」

 

その手に持った骨格を意匠を持つ大鎌『デッドサイス』を振るい、マズマの首めがけ駆け出した。 

 

 

 

 






【設定解説】



クシロロ/ブラック★ロックシューターたちが日々戦いを繰り広げる異空間世界。虹色の空と果て無きチェス盤のような柄をした白と黒の大地が特徴的で、人間の存在する地球とは異なる法則性を持つ。

名前の由来は『クロ』と『シロ』を合わせた造語。




ラックワイトエナジス/クシロロ世界固有に存在する特殊なエネルギーの名称。様々な物質を生成する性質を持ち、クシロロという異世界を構築している基盤的なもの。また下記のハートレスたちの生命維持中枢器官『コア』も、ラックワイトエナジスによってできている。

名前の由来は『ブラック』と『ホワイト』をそれぞれ一文字抜いた造語。




ハートレス/クシロロ世界の住人。闘争本能が非常に強く、感情が人間のそれと比べると薄く極端に偏り易いという特徴がある。常に他を始末するべき敵としか認識せず、それ故に弱肉強食という、自然的なサバイバル・ルールに従い生きていたが、そのことに疑問を感じ正そうとするハートレスたちが続出。

現在は既存の闘争主義を貫こうとするハートレスたち『ハクト』と、平和を望み、クシロロを変えようとしているハートレスたち『クロワ』の両勢力に分かれて熾烈な戦争を起こしている。

名前の由来は『冷酷』、『薄情』、『熱意のない』を意味する英語の『ハートレス』から。




ハクト/闘争主義を掲げるハートレスたちが形成する組織軍の名称。その頂点に君臨する存在『総督』こと『ホワイト☆ロックシューター』に統率され、更に細かい部隊や他の諸々などは総督が直々に認める『幹部』達によって管理されている。

名前の由来は、白(はく)と闘争の『と』を合わせた造語。




クロワ/平和を重んじ、それを実現しようと奮闘する平和主義者のハートレスたちが形成する組織軍の名称。初代統率者『ゴールドソー』は、先のホワイト☆ロックシューターとの激闘にて戦死。その後を受け継ぐ形で、今はホワイトと瓜二つの少女『ブラック★ロックシューター』が二代目統率者として尽力している。

名前の由来は黒(くろ)に平和の『わ』を合わせた造語。




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