ブラック★ロックシューター・THE・WAR 作:イビルジョーカー
アーマメント術式/様々な目的に利用される、ハートレス独自の技術。
原理として『コア』から生じるエネルギー『ラックワイトエナジス』を
媒介とし、様々な事象を発生させる。『通信用』や『生体用』など様々
な種類に分かれる。
クロワの精鋭/クロワにおいて上位に君臨する者達の名称。総数は12
人と少ないものの、その一人一人が一騎当千と讃えられるほどの実力者
。
『怪物の少女』は言いました。
「お前は、何故恐れない? 私はたった今、お前とは一切関係がない者とは言え、
人を殺したのだぞ? 自分もこうなってしまうとか、考えないのか?」
怪物の少女の言葉に、『人間の少年』は答えた。
「分からない。でもなんだか……そんな姿でも美しいって、そう感じた」
それはとても真っ直ぐ過ぎて、あまりに偽りの一切がない澄んだ言葉でした。
彼女は人をたった今、ほんの2分ほど前に殺しました。
純粋に登山を楽しんでいた二人の夫婦でした。愛する者と幸せな時間を過ごしていた筈の二人を、怪物の少女は『殺害行為自体が面白い』という、そんな理由で夫婦の命を容易く略奪したのです。
彼女の足元にはその夫婦の亡骸が横たわり、全身は夫婦の鮮血に染まり切っていました。そして、その現場を偶然にも不幸に目撃してしまった少年は、自分自身の生命の安否よりもまず少女のことを美しいと、本気で思ってしまったのです。
そんな彼に途方もない興味を抱いた怪物の少女は、少年を殺そうとしていた意志を消し、彼と共に行動すると決めたのでした。
ホワイト☆ロックシューター。
闘争主義のハートレスたちを一つに束ね、一大勢力たる『ハクト』を創り上げた王。
そんな彼女が、自身の眼前の先に立っている。増援の軍勢と共に。その事実はストレングスの戦意を削ぐのに少々だが、実に効果的だった。
「随分とやられたな。リリオ」
「も、申し訳ありません、総督。あの、ミーが……」
「既に救護班が彼女を搬送した。治療は十分に受けさせる、安心しろ」
ミーの確実的な安全の確保に安堵の表情を浮べるリリオ。そんな彼を一瞥すらすることはなく、ホワイトは壁に寄りかかりながらも立ち上がり、尚もこちらを睨むストレングスをその目で捉える。
「随分と久しいなぁ、ストレングス。我等ハクトとクロワの戦いが始まって早800の年月……その間にも、来るべき時の為に進めていた計画を進行して来たが……とうとう来るのだっ!」
「ぐふッ!」
機関砲を持たないホワイトのもう片方の手が、ストレングスの腹部を手刀で貫く。生じた傷口から、地球上の生物で言うところの『血液』が溢れ出すことはない。彼等には血液自体やそれに相当する体液の類が存在しないからだ。
あるのは肉体を守る為の『外皮』と、動かす為の『筋肉』。
そして生命維持を司る『コア』に、体外から摂取した物を肉体の構築・運動の為の必需的要素へと変換させる為の臓器『チェスバー』。そして痛みや諸々の感覚をコアへと伝える『神経』。
以上のものしか、ハートレスには存在しないのだ。
「け、計画だと? 貴様……『アレ』をどうする気だっ!」
「ふん。これから死ぬ者とは言え、易々と答えるほど殊勝な器ではないのでな」
ストレングスの外装と皮膚を破り、肉を裂いて貫いていた己が手を無造作に。それこそ丁寧の一文字さえないかのような雑な抜き方をし、苦悶に顔を歪める眼前の敵に己が愛武器である白き砲身『“☆Rock Cannon(ホワイト・ロックカノン) ”』の砲口をストレングスへ向け、赤きエネルギーを集束し始める。
回避できようのない至近距離からの攻撃は、『死』も同意義だ。
「では、さらばだ。クロワの精鋭ストレングスよ」
集束が終わるほんの一歩手前で、そしてストレングス自身が死を覚悟した瞬間、それは起きた。何処からともなく飛んで来た一発の青いエネルギーの弾丸。それはホワイト・ロックカノンの砲身をズラすのに一役買い、ストレングスの命を奪う筈だった凶暴な赤いエネルギーは的外れな方角へと飛び抜き、丁度上空にあった戦艦一隻を紙の様に容易く貫く。
そして当然ながら、戦艦一隻は木っ端微塵に吹き飛び地上へと沈んでしまった。
「くっ、よってくれたな……ブラック★ロックシューター!」
「それはこっちの台詞よ、ホワイト☆ロックシューター」
ホワイトが青いエネルギーが飛んで来た方向を睨み叫ぶ。そこに立つは、クロワの精鋭の1人であるチャリオットを従え、大勢のクロワ戦士による援軍を引き連れて立ちはだかるブラック★ロックシューターの誇り高き勇姿。
黒と白とで両者相対する、総督と統率者。瓜二つの姿を持つ少女等は敵意の篭った視線で互いを見合う。
「ストレングス…ごめんね。遅れちゃった」
「ブラック。貴方のことは誰よりも信じているつもりだ」
味方の救護班による介抱を受けるストレングスは、気にするなと同義の言葉でやんわりと答える。普段の物静かで厳格な雰囲気を放つ印象とは大違いだ。
「ねぇねぇ! こういうのって確か、『ツンデレ』って言うんだっけ?」
「………その言葉の意味についてはまったく知らない筈だが、妙に腹立ってくるな」
チャリオットの突拍子もない唐突な言葉に対し、ストレングスはその意味を解せないが不思議と妙な苛立ちを覚えたらしい。そんな二人にブラックは顔に出さないものの内心苦笑し、改めて眼前の敵へと己が愛武器を向ける。
ホワイトも同様に愛武器を向けたこの瞬間。それが戦いの始まりを告げる狼煙となった。
「ストレングス! 大丈夫?!」
クロワとハクト。両者共に総戦力に近い規模での戦いが始まった頃、スカルヘッド兄弟を引き連れて戦場へとやって来たのは、他ならぬデッドマスターだった。
「だ、大丈夫だ。救護班…早く治療を頼む」
「言われずとも!」
白いロングコートを羽織った彼等『救護班部隊』は治療用のアーマメント術式を展開。四人の班員たちがストレングスを囲む形で立ち、エメラルド色の円陣のようなマークエフェクトを宙に出現させ、そこから溢れる青い粒子のようなもので治療を行う。
「一応、外見状の損傷は軽傷の部類ですので、そう時間はかかりません。しかし、中身はそうはいきません。チェスバーの損傷が思ったよりも酷く、無理にこのままの状態で戦闘を行えば、何らか障害が後遺症という形で出てしまう可能性があります。なのでそれなりに時間はかかってしまいますがご了承下さい」
「………ああ、分かった」
本当ならば外傷だけ治してさっさと前線に戻りたいが、この戦場を無事乗り切ったとしても、後に後遺症のせいで足手まといになってしまう可能性も否めないので、ここは大人しく従う事にした。
「待って。私がやるわ。私ならそう時間は取らせないわ」
しかしここで、思わぬ声が上がった。なんとデッドマスターがストレングスの治療に名乗りを上げたのだ。
「でもデッド様。貴方は貴重な戦力です。ブラック様たちの援護に向かわれた方が…」
「いいえ。私はコレでもクロワの『軍医』……軍医としての使命を果たせと、ブラック直々に命を受けているわ。貴方達は2-00エリア群の他の患者をお願い。あそこは救護班の人手が
少ないわ」
「……分かりました! お二人とも御武運を!」
救護班たちは班長を筆頭に2-00エリア群へと向かっていった。
「さて、こっちはこっちで始めるわ」
「頼むぞ」
「ナフェだっ!」
「気をつけ…ぐあああッ!」
白色のボックスに黒いメカニックな手足を付け足し、更に点二つと横棒線という、安直なデフォルメの顔面が映し出されたモニターを貼り付けるクロワの情報戦略員の1人『ニターコン』。彼とその隣にいた、白い服装をしたクロワの少年『コマンド』。
ニターコンとは、それなりに旧知の仲で戦闘や性格といった相性も良かった。故に戦友という、そんな言葉が相応しかった彼が、目の前で『消滅』した。マゼンタに染まった閃光に飲み込まれて。
「コマンド…」
「クロワの戦士。大人しく捕虜になればこの時ばかりの命は安寧だ。もっとも、後でどうなるかは私とホワイト総督の采配次第だが…どうする?」
コマンドを見るも無残に消滅せしめた張本人こと、ハクトの幹部にして『参謀』の地位を冠する少女『ナフェ』だ。彼女はまさしく悪魔の囁き…とも言える台詞でニターコンを自陣営の奴隷として引き込もうと一歩一歩と迫る。しかし、次にニターコンから出た言葉は、彼女の意に反する代物だった。
「断る。僕はクロワの戦士だ。だから、お前達ハクトと戦う」
確かに彼は、コマンドは、ニターコンにとって戦友には違いない。だが、ハートレスは感情というものが人間のそれとは違い、『薄い』のだ。それ故に深い感情に溺れる事はなく、言ってしまえば簡単に割り切ってしまえる。つまり、彼等に感情による戦意喪失などありえない。
「そう。では、死になさい」
ニターコンに告げられる、参謀ナフェからの死の宣告。それと同時に彼女の周囲にナフェと同じ聴覚センサーを取り付けた六角形の物体が、陣形を組むかのように宙に配置される。
これが、情報収集や攻撃の際に使用するナフェの愛武器『ラビトスパイ』。一度に同時展開できる数は八つ程度だが、武器そのものが破壊されてもナフェの手でまた量産することが可能であり、際限がない。
そしてそれが、恐ろしいほどの殺傷力を秘めたマゼンタの閃光を放つ。
「くっ!」
間一髪で避けるが、一回避けたとしても次々と集中砲火の嵐が彼を襲い、そのせいでニターコンは回避も。ましてや防御にも転ずる暇などなく、もろにその集中砲火を受けてしまった。
「ゥッ……クソ……」
「終わりだ。名を知らぬクロワの戦士」
巨大なアームの手でニターコンを苦もなく持ち上げるナフェは、空いた片手に高密度のエネルギーを凝縮。それをニターコンの顔面へと叩き込もうとした時、一筋の紫の閃光と共にナフェの腕が…エネルギーを凝縮し放とうとしていた手が、見るも無残に音を立てながらバラバラと崩れてしまった。
「!ッ」
「我が同志を放してもらおうか、ハクトの幹部『参謀』ナフェよ」
それは地球…更に正確に言うと日本特有の着物に似た薄紫の服装で、両肩と胸に紫のラインが渦巻きのような模様を描く日本風の黒鎧を纏い、その手にあるのはメカニックな要素が強い日本刀の一振り。
一本のポニーテールに束ねた紫の長髪と瞳を持つ彼の名は『スライザー・カムイ』。
クロワの精鋭であり、並外れた剣戟の実力者だ。
「剣士スライザー。相手にとって不足はない」
切られた腕と手を瞬時に再生される。まるで部品一つ一つが変化し重ねていくかのような異様な光景だが、ともかく敵に瞬時再生能力があるというのは拙いもの。だが、それでもスライザーの顔に不安や恐れはなく、あるのは貫き通すべきものを貫き通そうとする信念のみ。
「大丈夫か、ニターコンどの」
敵の幹部を前に余所見をするわけには行かず、しかしニターコンのダメージ具合が心配である為、視線も顔も合わせずに問いかける。
「だ、大丈夫です。何とか……」
「そうか。では早速で悪いが、この場から一刻も早く離れるで候。戦闘の余波を喰らいかねん」
「は、はい!」
少しダメージはあるものの、何とか走れる分には問題ない彼は、ぎこちない足取りで二人の下を去っていく。故に残るは剣士と参謀のみ。
「主等の悪巧みもこれまでだ」
「悪巧みなど、そんな茶番染みたゴミのような目的ではない。総督は…我々はこの世界の未来の為に戦っているのだ」
「闘争を絶対のルールと掲げ、命を摘み取ることの何が未来の為か。貴様等は所詮、時代遅れの妄信者に過ぎぬ」
「平和などと、そんな幻想に現を抜かす貴様等の方が妄信者だ」
もはやこれ以上の問答は不要。必要なのは相手を打ち倒す為の力と技、そして意志のみ。
「月光・斬」
先手はスライザー。己が剣を横一閃に振るい、そこから淡い光を放つ三日月状の斬撃が出現。高速を秘めてナフェに襲い来る。一方の彼女は自分めがけて接近する断頭の刃を、片腕の払いのみで軽く打ち消してしまう。
まるでも虫でも払うような、とても軽い感じだ。
「ラビトスパイ、ファイアッ!」
今度はナフェの番だ。八つ全てのラビトスパイらが結集し、極太のレーザーが発射される。閃光はマゼンタの色彩を放ち、それはあのクロワの少年戦士コマンドの命を奪ったものと同じものだった。
「避け防ぐ必要あらず、斬るのみぞ!」
刀にエネルギーを凝縮させ、それにより刀身を紫色に光らせると同時に巨大化。強靭な、まるで神話に登場する巨人が扱うかのような刀身の大きさに、常にポーカーフェイスを張り付かせているナフェも、僅かだが驚愕の色を隠せなかった。
今までナフェとスライザーが相対した戦歴は2度しかないが、その中でこのような技を振るう事はなかった。これが最近になって習得したものか…あるいは隠し持っていたものかは定かではないが、これが厄介なものであるということは十分に理解できる。
「『デスボッツ』、『アウターターン』、ユナイッティッス(戦いを開始せよ)!」
ナフェは対抗策として、背中の機械バックに変形していたハートレス『デスボッツ』と『アウターターン』に戦闘開始の命令を下す。
「ヒャッハー! ナフェの親分! ご使命ありがとうございますデス!」
「主様~、何なりとご命令を~」
異様に高いテンションを口調から醸し出し、下半身が蜘蛛で上半身が人型の鎧のような姿を持つナフェの部下にして『参謀補佐』を冠する幹部『デスボッツ』。
球体に無数の触腕を生やし、丸い口の穴から覗く歯車状の三つの牙が高速に回転すると同時にぶつかり合い、凄まじい火花と音を立てる。そんな異様な姿と相成すように語尾を伸ばし、不気味な雰囲気を演出する。デスボッツと同じ『参謀補佐』、『アウターターン』である。
「デスボッツ、『デスフィールド』の展開と維持を。アウターターンは私の援護を頼む」
「承知ィィ~。しました~~」
「んだよ、今回は俺様のバトルはナシかい」
文句なく命令を受け入れるアウターターンに対し、デスボッツは不満げな声を漏らすが己が敬愛する御主人様の命令を無視するなどありえない為、早速命令の実行に取り掛かる。
デスボッツは腹部を開き、筒状の物体を形成。その内部から沸き立つ赤黒い霧状のものが筒状の四方から噴出。あっという間に半径20mに渡る赤黒いドーム状の霧の結界が形成された。
「うっ、これは……ぐゥゥッ!」
「デスフィールド。敵対象にとっては有害極まりない毒ではあるが、そうではない者にとって何ら実害のない只の霧も同然。対象の生命維持…その制限時間は5分か、長くて10分。どちらにしても死は免れない」
「その通りです~~さ~っと~~楽に殺された方がオススメですよ~~!」
5分か10分という、曖昧なタイムリミット。しかしどんな状況であろうと、かの剣士に敗北と
言う二文字はなかった。
「侮るな……貴様等の首を断つまで敗れ去ることなどない……」
毒で震え、地に跪く肉体を奮い立たせ、自身の愛刀を握り締め敢然と立ち向かった。
なんとなく分かるかもしれませんが、『スライザー・カムイ』のモデルは
『神威がくぽ』です。他にも有名ボーカロイドをモデルにしたキャラが出
て来ますので、お見逃しなく。
感想待ってます!