ブラック★ロックシューター・THE・WAR 作:イビルジョーカー
『ジャクネス=ハック』⇒『弱音ハク』
皆さん分かりましたか? 分からなかったらすみません(汗)
弱いという字は『じゃく』とも言い換えられますし、『音』はそのまま
『ネ』にして最後に『ス』をつけて『ジャクネス』です。
『ハック』は『ハク』に『ッ』を入れて『ハック』という感じです。
怪物の少女と人間の少年の前に現れた少女の『同族』たち。彼等は少女と同じ『ハートレス』という名前の存在で、目的は少女を始末することでした。
少女は自らの武器を取って戦いながら、そして同時に少年を守りながら逃走しました。かつての少女なら、彼等の命を奪うことは造作も無かったことでしょう。
ですが、少年と共に旅をし、様々なものを見て触れて少女は変わったのです。
「頼む! 見逃してくれ! 私は変わった……変わったんだ!!」
必死に少女は叫びます。
「変われる物か! 貴様のような『闘争主義のハートレス』風情が!!」
しかし、同族たちは彼女を心底忌み嫌い、彼女の言葉に聞く耳を持とうとはしません
でした。そして同族の刃が誤って少年の命を刈り取ろうと迫った瞬間、少女は胸の奥底に押さえ込んでいた『本能』を……開放してしまったのです。
クシロロが誇る美しい七色の虹色に輝く空を、一隻の戦闘用航空機が人類では再現不可能な速度で駆け抜ける。
これはクロワが所有する兵器の一つで、名を『アーカヘル』。クシロロの古い言語で『黒き翼にして戦士』という意味を指す言葉だ。その名前が示す通り、アーカヘルは黒一色に塗り染められ他のカラーがまったくない。それこそ一切微塵も伺えないほど。機体の形はブーメラン状で両翼部分はジグザグに曲がりくねっていて異様だが、攻守空戦において優れた性能を発揮することが出来る。
そして、その機内にはクロワの精鋭である『ストレングス』と『デッドマスター』。精鋭の二の次の戦力にして『中級』の地位に属する防衛司令官『ロン・ドラグーン』と、彼が副次的な指揮を執っている85名の人型クロワ戦士。
最後にこの全員を束ね、指揮権を有するリーダー『ジャクネス=ハック』。
リーダーを含む精鋭3名、そして中級1名と一般85名という部隊編成でアーカヘルに搭乗している理由は、ゴールドソーの左腕を確保することにある。ただ勿論、ハクトも左腕がエーテルス・ヴァトリシアにある可能性が高いと言うことは、既に把握している筈。
なので万が一、ハクトと戦闘を開始した場合を想定しての編成なのだ。
そしてこの部隊をジャクネス=ハックが指揮しているという点に関しては、エーテルス・ヴァトリシアという場所に関係している。エーテルス・ヴァトリシアは前にも言った通りハートレスの誕生と育成を司る地。曰くその都市区画は一個の超巨大ハートレスで、接近して来る者を一切寄せ付けないよう、あるいは侵入者を根も残さず始末する為に様々な防衛機能が幾重にも多種多様に張り巡らされている。
ハックは敵側の防衛機能を察知し把握。罠などの危険を回避する才を持っていることと、彼女自身がエーテルス・ヴァトリシア出身という経歴を持っていたのでこの任務に関して言えば、中々最適な役回りなのだ。
「みなさ~~ん? もうすぐヴァトリシアに到着しますから、十分に油断せず気を引き締めて下さいねっ!!」
操縦室からアナウンスで戦士たちに声をかける。しかしハックの声はどちらかと言えばのほほんとした日和的な雰囲気を孕んでいる為、どこか抜けた感じがするのは否めない。
「にしても、まさかお前があのエーテルス・ヴァトリシアの出身とは驚いたぞ」
座席は並べて三つあり、その真ん中の操縦席にはハックが、右席にストレングスと左席にデッドマスターが腰を降ろし座っていた。
「まぁ~そこは諸々の事情って奴ですよストレングス。と言うよりは、ゴールドソー様に連れ出して貰ったって感じですかね」
「連れ出して貰ったって、どういうこと?」
デッドマスターが怪訝な表情を浮かべ聞き返す。
「はい。確かにエーテルス・ヴァトリシアは平和と言えば平和です。ですが、争いごとがまったくないと言うわけではありません。年に一度かない感じの確率で激しく熾烈な紛争が起こるんですよ。幼かった私はその紛争に巻き込まれて生命の危機に立たされるほどの大怪我を負ったんですが、それを治療下さったのがゴールドソー様なんです。そして住む場所を大都市区画に移してこのクロワとハクトの戦争に参加した……というのが、私の今に至るまでの経緯なんです」
「……そうか」
「……」
少し空気が重くなってしまったものの、そんな話をしていた間にクロワの部隊一行はエーテルス・ヴァトリシアへと到着した。アーカヘルの操縦室前面を占める大窓から見た精鋭ら、ハックを除くデッドマスターとストレングスは驚愕に目を大きく見開き、アーカヘルの両側面にある細長い四角形の窓から見たクロワ戦士たちは精鋭2人と同様に驚き、自分達の目を疑った。
それを地球の生物で例えとして言い表すのであれば『マンタ』、と口にする方が正しい。その身体は幾多の最高位の硬度を誇る鉱物と土で構成されており、何より、目を見張るのは巨大さだろう。まさにアーカヘルは蟻、そしてそれに乗るクロワ部隊一行は微生物か何かに思えて来るような規模だ。
そして、丁度背中に当たる広い平坦な面積の部分には黒と白の四角いブロック状の物が幾つか積み重なっているという、独特な形をした建物が密集していた。中にはブロックとは別のドーム状の物や細長い渦巻の形状をした建物も確認できる。
此処こそが彼等の目的地である『エーテルス・ヴァトリシア』だ。
クロワとハクトの両陣営が本拠地としている四つの大都市区画は、全体が白か黒を中心に時折他の色で染められた、歪でジグザグとしたモニュメントが乱立した建物群なので妙な感じを覚えるが、それに関してはここも同じだろう。
「あっ、言っておきますけど、そのまま着陸なんて無理ですからね」
「ん? じゃあ、どうやって入る気なんだ?」
「とりあえず、まずはこの眼前に見える超大型ハートレス『フラット・アインザー』について説明しますね。エーテルス・ヴァトリシアは事実上、フラット・アインザーの背中部位にあります。一見すると無防備で楽に入れそうなんですけど、実際は違います。不可視の有毒性を秘めたエネルギーバリアが、フラット・アインザーの背中にある都市は勿論、周囲を包み込むように余すことなく張られています。
なので接触して入ろうとすれば、この船の機体と中の乗員の身体が猛毒に侵され3分持つ持たないかの時間で死ぬ……な~んてことになりかねません」
「で、結局どうするんだ。さっさと勿体ぶってないで話せ」
少しふざけ口調が混じるハックを諌めるように言いながら、さっさと説明しろと促すストレングス。その態度に彼女はムッとしたが、言葉には出さず敢えてスルーする形でストレングスの要望に答える。
「有毒性のエネルギーバリアはフラット・アインザーそのものが生成するもので、本体を始末しない限りは解除することはできません。ですが勿論の事、それを行使するのは我々クロワの理念と信条に反する唾棄すべき行為……なので、バリアを不完全ながらも無効化する装置をこの機体に搭載しておきましたから、今回はそれを使い一気に突撃する。それが一番侵入できる可能性の高い方法です」
「……それは、いくら何でも危険過ぎないか? 大体完全には無効化できないんだろ」
「もちろんです。でもこの方法以外にありませんし、皆なら耐え切れると。私はそう確信しています」
揺ぎ無い自信。
少々過剰かもしれないが、自分の仲間を積極的に信じる彼女にストレングスとデッドマスターは何も言えなくなってしまった。
「……仕方ない。どっちにしろ、やらなければいけないことだ。それに、この程度は日常茶飯事。それを思えば案外何とかなるかもしれないな」
「同感ね。だったら私達も貴方のことを信じるわよハック」
ストレングスは少し投げやりながらも、ハックに信頼を感じさせる声音で言の葉を紡ぎ、デッドマスターも言い方自体はストレングスのような投げやりではないが、しかし彼女と同様にハックを信じると言う言葉で自らの胸の内の思いを伝えると、ハックの顔に満面な笑顔を作らせた。
「よし、では行きますよ!」
気分高揚に気合を入れた声を上げ、いざ突撃を果たさんとするハック。この機体の操縦方法は至って簡単だ。ついでに言えば他の物もそうだが操縦席前方の位置に付属している水晶体に手を翳して念じるだけである。但し、相当の集中力と精密なイメージを必要とする為、精神的に体力を消耗してしまうという難点がある。なので最高でも1時間が限界ラインであり、中には過度の操縦による疲労から生命を危ぶまれた者もいたほど。
だが物事には『例外』という言葉だが時としてあるように、それにもまた例外が実は存在するのだ。それこそがジャクネス=ハックという少女だ。ハックは調子の良い時で5時間、悪い時で3時間と操縦に関しての精神力は規格外であり、少なくともクロワにおいてハックと並ぶものは絶対にいないのだ。
そして。そんなハックの操縦の下、アーカヘルは有害な毒素を大量に含んだエネルギーバリアへいよいよ接触を開始。その瞬間から機体とその内部を毒素が電流のように瞬時にして満ち溢れ、その苦痛は凄惨と言い表すに相応しかった。
「うぐゥッ!! ぐああああああああああああッッッッ!!!!!」
「ぐ、ゥッ……あああああああああああああああああああああああああああああああああああああーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーッッッッッッ!!!!!!!!!!!!!!!!」
ストレングスとデッドマスターは、その中で必死に強力な毒素と戦っていた。苦痛を何とか最小限に抑えようと自前のエネルギーバリアで身体をコーティングしてはいるものの、そんなものは紙も同然と言わんばかりの威力で毒素が2人をゆっくりと、じわじわ蝕んで侵して行く。
他の一般戦士たちも同じだ。そして、先程から機体のコントロールを保つのに必死なハックも。
「ぎゃあああああああああッッッッッーーーーーーーーーーーーーーー!!!!!!!!
あぐゥッ……い……いっけぇぇぇぇぇぇえええええええええええーーーーーーーーーーーーーーーー!!!!!!!!!!!!」
あともう一押し。ハックが渾身の力を込めて発した叫び声を合図にアーカヘルは、有毒性のエネルギーバリア圏内を突き破ることに成功! だがその際に勢いを殺すことができず、アーカヘルはそのままエーテル・ヴァトリシアの郊外にある、巨大な深い大穴の中へと意図せずして墜落してしまうのだった。
「………………………………………………………………………う、んっ……いつつ……」
「……………………………………………………………………うっ、くゥ……ここは……」
「……………………………………………死後の世界じゃないのなら、間違いなくエーテル
ス・ヴァトリシアに着いた筈よ……なんとかね」
精鋭3名は特に大きな損傷はなく、そのまま自力での自然治癒でどうにかなる程度の軽傷しかなく、不幸中の幸いと言えるだろう。
「と、とにかく。まずは仲間の安否が先だ。私達は平気でもアイツ等は平気じゃないかもしれないからな」
ストレングスの安否確認の意見にデッドマスターとハックは反対することなく賛成し、現状での最優先行為は、自分達の後ろに乗っている一般戦士等85名の安否の確認と言う作業から始まった。
しかし結果として、心配は杞憂に終わった。死傷者及び重傷者はなく全員が精鋭たちと同程度の損傷で済んだ為、現時点では死亡者の数はゼロ。
これは非常に喜ばしいことだが、次はどうなるか分からない。
少なくとも、ハクトがこの地へとクロワ部隊より先に足を踏み入れているか。あるいは、そうでなくとも何れはゴールドソーの左腕を求め踏み入れて来る筈。それに危険なのはハクトという敵対勢力のみならず、エーテルス・ヴァトリシアの防衛機能も厄介だろう。
この地は誕生したその時からクロワとハクトの800年に渡る戦争は勿論、クシロロの地上世界に纏わる全ての闘争に関しての事柄を絶対の不干渉とし、外から来た者に対しては極めて攻撃的な対応で排除を図ろうとするなど、あまりに異常なまでに徹底し過ぎている。
しかし、そんな場所でも難なく受け入れられる存在がいた。
クロワの初代統率者『ブラック★ゴールドソー』。
何故彼女だけが容易に入ることができるのか……生前にはそれを問うた者もいたが、はぐらかされるだけで結局、本人が死した為に真実は闇の中へと消えてしまった。
まぁ、この際それはどうでいいが、今回果たさなければならない最重要任務は『ゴールドソーの左腕の回収』にある。それ無くしては今回の任務の完遂は望めないだろう。
「ハック。ここは一体何処なんだ? 地下なのは分かるが……」
辺りを見渡すストレングスの目には、広大且つ鍾乳洞のような光景が広がっていた。氷柱に似た形状の物が上下共に群生するように突き出し、大きさが親指程度しかない超小型のムカデやネズミに似た姿の知性を持たないハートレスらがそこ等中におり、その生を息衝かせていた。
「地下と言うより体内そのものですよ、これは。そもそもエーテルス・ヴァトリシアを支える土台は、超大型ハートレスなんですから当然ですよ」
そう。ここは単なる空中に浮かぶ都市ではなく、都市の土台を担っているのはエイに似た姿を持つ『フラット・アインザー』その物。つまり、あの大穴の用途は何であれ、アインザーの体内へと続くものだったと言うことになる。
「……なぁ、ハック。まさか体内にも何かあるのか? なんかこう、免疫的なものが」
「かなりありますね。それこそ正確言えば百種類は豊富に」
ハックの言葉にストレングスは薄ら寒い、背筋が凍るような錯覚を感じた。こんな薄暗く何処にどんな危険が潜んでいるかも分からない不気味な世界に自分達のような異物を排除しようとする免疫機能が百と来た。
それはもう、生きた心地がしないのも当然だろう。あの有毒性のエネルギーバリアのことを思えば。
「でも大丈夫、その為に私がいるんですから」
自信満々と答えた後、ハックは全員をアーカヘルの前へと集めて現在地の説明を始めた。
「皆さん、よく聞いて下さい。さっきも言いましたがここは超大型ハートレス『フラット・アインザー』、通称アインザーの体内です。地中地下に見えますが、それはアインザーの肉体が土や鉱物で構成されているからであって、れっきとした生き物であることをお忘れずに。そして一番の問題点を挙げますと、生き物で有る以上は体の中へ入って来た異物の類を免疫機能が排除しようとします。当然ながら、我々もその異物の類に十分当て嵌まります」
淡々と同時に真摯に語りを一旦区切り終えたハックに対し、一般戦士たちは不安を滲ませるように騒めき始めた。だがこれに関しては無理もない。自分達は体内に入った異物として扱われ、免疫機能による未知の攻撃を受けるなどと宣告されれば動揺により、多少なりとも混乱が生じてしまうのは当然だろう。
まったく未知の場所で情報も無く、いつ何処に潜んでいるかも分からない脅威を相手に予測不能の攻撃を受けるという、そんな事態の発生を想定すれば誰だって怯えの一つや二つ感じてしまうものだ。
「静かにしろ。動揺するのは分かるが、ここへ来た目的を高確率で達成させる為にハックがいるんだ。もう少ししっかりしろ」
ストレングスの喝を込めた静かな言葉に一般戦士たちは、何とかいつもの平常心を取り戻した。彼等のそんな姿勢にストレングスは満足そうな顔を浮かべた後、ハックに話を続けるよう目で促す。
「ストレングスの言う通り、私はエーテルス・ヴァトリシア出身ですから大抵の情報はこの頭の中に収まっていますのでご安心を。ではまず説明したいのは、現在我々がいる地点のことについてです。墜落の際に我々が落ちてしまったあの大穴はアインザーの排泄口で有る可能性が考えられます。ここまで巨大ともなればそれだけのエネルギーを消費し、副産物である排泄をするものです」
ハートレスには地球の生物と同じように生理現象の一種である『排泄』を行うことがある。しかし全くしない者もいるので全てがそうであるというわけではないが、ともかくこのアインザーもハックの推測では排泄を行うようである。
ちなみに排泄方法は各個体か『種類型』によって違うが、共通して多いのは気体状の排泄物を口から吐き出すというもので、例えるなら『放屁』が一番近いだろう。アインザーもこの例に当て嵌まり、つまるところあの大穴は『肛門』と同じ役目を果たしていたと考えられる
「そして今、その排泄口を通って来たここは、消化器官との中間に位置する場所だと考えられます。なのであの大穴から出る方が生存的な戦略ですが……我々は敢えてこのまま消化器官の方へと進み、最終的にアインザーの体内にあるもの……『ゴールドソーの左腕』を回収します」
自分達の目的である『ゴールドソーの左腕』がフラット・アインザーの体内に隠されているという、そのハックの衝撃的な言葉に驚く者は今更いない。ここまで来てしまえば何でもありのようなものだ。常に予想外を想定して受け入れていた方が精神的にも今後、ほんの少しでも進みやすくはなる。
だらこそ、皆が全員何も言わず黙って頷く。
全ては任務完遂の為に。
「では、我々『クロワ特殊編成部隊』。これより本格的な任務開始に臨みます!」
感想お待ちしてますッ!