ブラック★ロックシューター・THE・WAR   作:イビルジョーカー

9 / 10



遅くなってすみません……(汗)

改めて思ったんですが、この作品って色々展開早過ぎません?


★エーテルス・ヴァトリシア パートD☆

 

 

例え、どんなに長い一時でも、それが何であろうと必ず終わりが来ます。

 

怪物の少女『ゴールドソー』と、その同族たちによる戦いは1人の人間の少年『アルバート・ギブソン』によって終わりを告げました。同族たちは瀕死の重傷を負ったものの、手厚いギブソンの看護と簡単ながらも特殊なゴールドソーの治療方法で何とか元気になりました。

 

ゴールドソーの同族たちは、彼女が『闘争主義』でなくなったことを今までの行為から信じ、そして謝罪の意を述べました。『すまなかった』、『我々の考えが浅はかだった』と色々な言葉で2人に謝りました。

 

ゴールドソーは渋々ながらも許し、ギブソンは気にしてない様子で『分かってくれたのならそれでいい』という感じでした。そして一つの問いを投げ掛けました

 

何故、自分達を襲ったのか。同族たちは語ります。自分達の世界は『平和を願う者』と『闘争を是とする者』の二つの勢力に別れて戦っていると、そして自分達が生み出した世界を渡る技術を悪用目的で盗まれ利用されたと。

 

この世界を含め、様々な世界で虐殺と破壊が繰り広げていると言う事実に2人は騒然とし、一番ショックを受けていたのはゴールドソーでした。

 

彼女がこの世界に渡って来たのはあくまでも事故なのです。しかし、彼女とは違い故意にこの世界へとやって来たハートレスもいる

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

薄暗く僅かな光しかない空間で戦いが行われていた。

 

「ぐわアアッ!」

 

「こちら第1班! 敵の掃討殲滅に成功! しかし一名が重傷です!」

 

85名のクロワ一般戦士たちは現在10人編成の第1斑、第2班、第3班、第4班、第5班、第6班、第7班、第8班に別れて行動している。ロン含む残りの5名は精鋭の補佐班とし、今彼等がいる現在地点はフラット・アインザーの『胃腸』に相当する『エストマック』と呼ばれる器官の内部だ。

 

エストマックは全部で12の数が存在し、数ごとに様々なタイプを持った消化補助ハートレスが数多く生息している。どれも戦闘能力に関しては申し分なく、油断すればたちまち容赦なく咀嚼されてしまう程だ。しかしここを通らなければフラット・アインザーの中心……『ゴールドソーの左腕』がある可能性の高い『心臓部』へと辿り着くことは叶わない

 

『第1班に応答! 重傷者をデッドマスター様の所へ運べ! 残りは他の班の援護をしろ、いいな?!』

 

「了解!」

 

敵の放って来た砲撃を喰らい、両足が損失し横腹部が大きく抉れたように破壊された第1斑の重傷者は精鋭補佐班であるロンの指揮の下、3名ほどの仲間の手で搬送される形ですぐにデッドマスターの下へと向かった。そして残りは、それぞれ『第2班』と『第3班』の援護を開始した。

 

「喰らえ」

 

「ギシャァァッ!」

 

夥しい無数のミミズのような触手が、ウネウネと蠢きながら全身を纏う消化補助ハートレスを相手にストレングスは物ともせず、容易くオーガアームのガトリングモードで蜂の巣のようにして殲滅する。

 

戦況は拙い。精鋭はともかく、問題はクロワの一般戦士たちの方だ。最初の方は問題こそなかった。一つ目、二つ目、三つ目と敵を駆逐しながらエストマックを次々と進撃していったが、現在いる四つ目に来て一変した。

 

敵が何段階かで強化し、戦闘能力が向上したのだ。しかし、それでもクロワの精鋭であるストレングス。デッドマスター。ジャック=ハクネスらは、相も変わらずの無双振りで敵を掃討していく。それほどまでに敵との戦闘能力に差が有り過ぎていた。

 

しかし一般戦士は違う。

 

四つ目のエストマックに生息している消化補助ハートレスのタイプは三つ。一つは無数の触手を持つ、先程ストレングスが蜂の巣にして倒した『奇襲型のワーム』。二つ目は相手にその存在を認識させないよう、ステルス能力に特化。尚且つ遠距離での狙撃を得意とするドラゴンのような姿を持つ『遠距離隠蔽型のドラゴン』。

 

最後の三つ目は攻守に優れ、広範囲による火力攻撃を持つカニに似た形状の『攻守広範囲殲滅型のクラブ』。能力や性能も厄介なものだが、やはりクロワの一般戦士では苦戦を強いられるレベルに違いはない。

 

それを躊躇無く表すかのように、今のクロワ特殊部隊の戦況は第1班に重傷者が1名。第2班は死傷者が4名。続いて第3、第4、第5は今のところ全員が運良く掠り傷程度で済んでいる。

 

しかし第6、第7、第8班は全員が死亡し壊滅。これらの各班は戦線先攻を担っており、奇襲型ワームのハートレスに不意を突かれてしまったが故の結果だ。

 

「(これは拙い……)」

 

自身に迫り来る敵を殲滅していきながらそう思案したストレングスは、デッドマスターとハックに通信を送り、その意見を伺うことにした。

 

「デッドマスター、ハック! このままでは我々精鋭を残して部隊は全滅だ。何らかの案を求める」

 

『案、と言われても! 12全部のエストマックを通過しないと心臓部には辿り着けないです、よ!』

 

敵を倒しつつ、こちらへと応答するハックの様子が通信越しでもよく分かる。ともかく、ハックの言い分が尤もであることは間違いない。

 

実際のところ今いる場所から、左腕があると思われる心臓部へと続く距離を省略する近道はない。もし、始めからそんな物があるのであれば、ハックが提案しない訳がないのだ。

 

それがないからこそ、こうして犠牲を払いながらも12あるエストマックを突き進んでいる。しかしたったの4つ目でこれほどの損害を齎すことを許してしまった以上、これの上を行く仲間の損失などもっての他だ。

 

なら、どうする?

 

中々どうにも明確で得策的な答えが出ない中、デッドマスターが一つの提案を出して来た。

 

『だったら、転移用アーマメント術式を使っての距離の省略化は? 私とストレングスが一つずつ、事前に貴方から貰ったその装置を持っているけど』

 

『論外にも程があります。私が貴方がたに渡した転移用アーマメント術式の装置はアーカヘルが使えなくなった場合と、アーカヘルに戻る時の場合を想定したものと。そう説明した筈ですよね? 一個で一回しか使えない代物を今ここで距離省略の為に一回使い切って、もしアーカヘルが飛べなくなった場合はどうするんですか? 

そもそも、アーカヘルが待機してある現在地点まで、帰還する際にもう一個の装置を使う必要があります。この行きの時点でこれだけの損失なんですよ? 戻る際には……今以上の損失は免れないでしょう。だからこそ、もう一つの装置を使う事になりますがそうした場合は……』

 

「アーカヘルが再起不能となったその時、それで全てが終わる詰みの状態だな」

 

平淡に粛々と話すハックに続くように、ストレングスは事の重大を淡々と絶望的に語る。

 

アーカヘルは現在、その高性能な自己修復機能をフルに使い、再び飛び立つ為の準備をしている。しかしそれが十全と、万全ともいかずに二度と空へと飛ぶことが不可能となった場合はストレングスが言った通り最悪の未来という結果が決定打されてしまう。

 

それほどまでに損傷が酷いのは明白だ。このエーテルス・ヴァトリシアに突入した際に強いた無茶の代償はそう安くはない。『飛行できる分に直せる確率』と『飛行させることができないほど、修復不可能となる確率』において、後者の方が数%ほどの差だが高い。

 

故に転移用アーマメント術式の装置は、それを回避する為の策だ。それに加え、任務後の隊員と体力の消耗を鑑みれば、アーカヘルがある現在地点へと戻る際に装置が必要となるのは明白。装置は多大なエネルギーを消費する為、あくまで1回きりの使い捨て。それを二個所有していると言うことは、当然ながら使用は2回までが制限となる。

 

本来、装置の使用目的は何らかの理由でアーカヘルが搭乗・起動不能に陥った場合の帰還と、任務を無事遂行・あるいは失敗した上において、現在地点からアーカヘルのある地点まで撤退する為。この二つを考えてのものだ。

 

しかし、それを『戻る為』でなく『行く為』に使用してしまえば、あと一回限りになってしまい『戻る際にまたもう一度使う』破目になる。かと言って状況が危機的状況である為に『徒歩』で戻ることはできないだろう。目的地へと向かうこの工程の中で、これほどの犠牲が出たのだ。ならば撤退の際、それの上を行く犠牲が出る可能性が非常に高い。

 

あまりにリスクが大き過ぎるのだ。そのリスクを思ってこそ、ハックは2人にそれが得策ではないことを発言した。彼女もこれ以上の犠牲は望まない。無論、これ以上というよりは、まったくの無傷に等しい状態での任務達成の上での帰還を望んでいた。

 

だが、何かを成し得ようとするつもりならば、何かを捨てなければならない。ここへ足を踏み込んだ時点で。戦うことを肯定した時点で。

 

『己の命』か『仲間の命』を捨てなければならない。

 

どちらにしろ、誰かが命を落とし死す事は変える事のできない必定だったのだ。

 

「ハック……万が一は、私自らの奥の手を使う。だから装置の使用を許可してほしい」

 

いつまでも論議するわけにもいかず、ストレングスは思い切った提案を自ら述べてこの部隊の最終決定権を持つ、リーダーのハックに合意を求めた。

 

『…………はぁ~~、わかりました。ここに突入する際に私のことを信じてくれたんですから、私もストレングスや仲間のみんなを信頼しないといけないですよね』

 

それは遠回しだが承諾の意が込められた言葉。

 

それをハックから自分の耳へと確かに聞き届けたストレングスは、すぐさま懐にしまい込んでいた楕円形状の端末を取り出し、付属していた赤いボタンを押す。すると楕円形状の端末は四つに開き、中から緑色の液体のようなものが入ったガラス管とそれに接続されたスティック状の物体。傍から見ればライブ会場でよく見る蛍光色に光るケミカルライトに似ているそれは、膨大なクリーンエネルギーが凝縮されたエナジスボトルである。

 

これを燃料にすることで装置は初めて転移を可能とするのだ。

 

「全班に告ぐ! これから転移用術式の装置を起動させる! すみやかに装置周辺に集合しろ! 繰り返す! 装置の周辺に集合せよ!」

 

通信が散開し各々で奮闘していた全ての班に伝わり、クロワの一般戦士たちは迅速に端末を持っているストレングスの周りに集まった。無論ながら、デッドマスターとハックもだ。全員が自分の周囲という一箇所に集合したことを確認したストレングスは、端末を地面へと突き刺す。

 

それが端末をフルに起動させ『転移』という、一つの事象を行使する狼煙となるのだ。

 

エナジスボトルが光り輝いた瞬間、エストマック内部は凄まじい発光力を帯びた緑に支配され、視覚が強化されている遠距離隠蔽型のドラゴンたちは、30分程度の一時的な失明状態に陥ることとなってしまった。

 

この間、およそ5秒ほどの一瞬が過ぎた。

 

たったそれだけの時間で光はあたかも最初から無かったかのように消え、同時にクロワの特殊部隊もその場から影も形も、何かも一切を残さずに消え去った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「転移無事完了……で、いいのか?」

 

「間違いありません。何せ私が造ったんですよ? ちゃんと起動実験もしましたし」

 

「貴方の場合は禄でもない物作るから心配なのよ…」

 

ストレングス、ハック、デッドマスターの順に言葉を発し会話を展開。とりあえずは何の支障もなく転移自体はできたようだ。フラットアインザーの心臓部に。そこは他の場所にはなかった機材のようなものが四方八方に埋め込まれており、広さは大体で東京ドームの8個分に相当すると思われる。

 

空間の中心には、機材から伸びたケーブルのようなものが集中している円形の柱のような水槽があり、ケーブルはその柱の土台となっている金属の台座に接続する形で刺さっていた。

 

「むっ、おいアレ。ひょっとして……」

 

「間違いありません! ブラック★ゴールドソーの左腕です!!」

 

水槽の中で揺ら揺らと回りながら浮かんでいたのは、他ならぬ探し求めていた左腕だった。

 

「……どうやって取る? あんまり近付かない方がいいと思うんだけど……」

 

「同感ですね。体内の殆どは免疫機能がセキュリティとして担っていますけど、心臓部は何が何でも死守しなければならない場所。そこを免疫機能だけで済ますほど愚考じゃないですよ」

 

ハックの考えは尤もで正しい。何せここはフラット・アインザーの心臓部。コアはその物は今、この空間には無い。しかしゴールドソーの左腕の下から強大なラックワイトエナジスの反応を全員が感じている為、おそらくはそこにあるのだと推測はできる。

 

いずれにしろ、コアと左腕は都市区画を維持する為に必要な重要品。それを厳重にしない道理は存在しない。

 

何かしらのセキュリティ・トラップが仕掛けてられている可能性が高い。

 

と言うより……ここに入った時点で、既に発動しているのだ。

 

「うっ!」

 

「あっ……が…」

 

一般戦士たちが次々と倒れ始め、この時点でハックが何かに気付き、声を荒げた。

 

「これは、毒です! 致死性はとても低いですが、麻痺と催眠効果が強い毒の粒子が……

空間内に……散布……」

 

だがもう遅かった。一般戦士は全員が例外なく倒れ、精鋭であるハック。ストレングス。デッドマスターの3人は少しは粘ったものの、敢え無くその意識を消しブラックアウトした。

 

そして、心臓部への侵入したクロワを感知してやって来た者たちがいた。

 

「こちらレーニェ・パイダー。やはり、クロワがいました。これより全員を拘束し、捕獲を実行します」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

かつて、まだハクトとクロワの八つの世紀……すなわち、800年に渡る大規模な戦争が始まる前からエーテルス・ヴァトリシアという第五の空中都市区画は存在していた。その造物主こそがジオウだった。

 

ジオウは、本来ハートレスにはない筈の一つの感情が唐突にその産声を上げ芽生えていた。一体いつか、など本人さえも覚えてはいないだろう。しかし確かにそれはジオウという存在の根底に奥深く根を張り、息衝いていた。

 

『強欲』。人類史の中で最も知名度を誇る宗教『キリスト教』の教義に有る『七つの大罪』の一つであり、人間なら形や大小はどうあれ確かに存在するもの。

 

ジオウはクロワにおいて九つの世紀、つまり900年に渡る安寧の黄金時代を築き上げた『7人のホワイト☆』と『8人のブラック★』から成る組織機関『グラン・サンドル』の中で『ホワイト☆ジオウ』として君臨していた。クロワの為に彼は惜しむことなく、他のブラック★たちやホワイト☆と同様に尽力し、東西南北四つの都市区画に分かれたクロワの国家を創立させ、その繁栄と栄華は上記でも言ったが900年も維持させた。

 

ところが彼はここで、思いもよらぬ行為に手を出した。ハートレスの生命維持にして精神を司り、同時に人間で言う心臓や脳に相当するエネルギー器官たる『コア』。クロワの民を密かに殺害し得たそれを、あろうことか自分が生きる為のエネルギーに変換する装置でエネルギー食糧にしていたのだ。

 

それ以外にも残虐な殺し合いを目的にした闘技場の設立や闘争主義のハートレスを煽り嗾けた事件の数々。

 

その行いは全て『道楽から来る強欲』を満たしたいが為のものだった。そして彼はグラン・サンドル機関が自分の裏に感づき始めたのを機に、捕縛される前にその行方を晦ませた。そして自分の新たな強欲を満たす為の理想郷を創り上げ、再びあの悪夢のような行為を実行し続けた。

 

そして時が立ち、グラン・サンドル機関がホワイト☆ロックシューターによってゴールドソーを除き、その残りの全員が始末された朗報を聞いた時はらしくもなく、悲しさを感じたがそれだけ。しかしその生き残りであるゴールドソーが突然この地へ来訪した際には、少しだけだが懐かしさと嬉しさを感じ、それ故か。

 

彼女が何度か来た際には、特に危害をしたと言う事は一切なかった。本当に原因は不明だが、何かする気さえ微塵も起きなかったらしい。とにかく、最後のブラック★だった彼女がジオウの支配する魔の領域に足を踏み込んだその訳は……エネルギーの提供目的だった。

 

当時のエネルギーシステムは非常に性能の低い代物で、このクシロロ世界に存在するラックワイトエナジスによって生み出された物質(何でもと言うわけではなく、あくまで特定の種類)を用いてクリーンエネルギーを少量ながらも高いコストで生産すると言う仕様。

 

それでも何とか都市区画全体の維持はできていたが、おかげで区民へのエネルギー供給に階級制度ができてしまい、それに伴い優劣問題が発生してしまったのは否めない。

 

しかし、そんなシステムもホワイトの策略によってエネルギーの生産工場が全てが破壊されてしまい、それによって保存されていた予備エネルギーと、ほんの僅かしか生産できないエネルギー生成装置で賄っていくしかない状況に追い込まれた。

 

だが、賄うとは言え、それだけで四つの大都市区画全てを維持できるわけではない。そこで苦肉の策だったが、ジオウに頼らざる得なかったわけだ。ゴールドソーからの話を聞き、ジオウはかつての同胞の交誼という理由ともう一つ、今後のクロワがどうなっていくのかを見定めたいと思い要求を承諾。

 

やはり最初こそゴールドソーは警戒していた。クロワにおいて彼が平然とやってきた悪行の数々は、既に知り尽くしていたからだ。彼の強欲さを鑑みれば何かとんでもない対価を要求して来るのではと勘繰ったものの、結局は上記の理由からゴールドソーの要求に答えてくれた。

 

それからは一定の期間ごとにゴールドソーが訪れ、大量のエネルギーが凝縮されたエナジスボトルを計10本(一本で都市区画全域を8ヶ月は賄える)を回収するのが通例となり、少しだけだが警戒心もそれなりには和らいだのも確かだ。やがてゴールドソーは、自分が死した場合を想定し、己のある肉体の特性を利用したクリーンエネルギー生産装置のシステムを発明。

 

その三日後にホワイト☆ロックシューターの襲撃を受け、彼女と激突し死闘を展開。

 

しかし己の母親としての情が油断と言う枷となり、死をもってホワイトに敗北。それが、クロワとハクトの最初の戦いであり、同時にクロワ最初の負星となった。代償は大きく南と西の都市区画を略奪され、そこにいたクロワの住人たちは最後まで抵抗し戦ったものの大半が虐殺され、生き残った者達はそれぞれ東と北の都市区画に非難。

 

これを機にブラック★ロックシューターが率いる『クロワ』とホワイト☆ロックシューターが統べる『ハクト』の800年に渡る戦争が勃発したのだ。

 

「……クロワとハクト、一方は平和を望み、もう一方は闘争を望む。それらは相反すると思われがちだが……実際は違う」

 

過去に物思いを浸透させながら、淡々とジオウというハートレスは自室にて語る。その言葉を一句残さず聞き立てるは、彼が己が部屋へと招き寄せた魔女のような格好をした1人の少女。

 

とは言え、無論だがミーではない。同じ似たような格好でも全然違う。

 

彼女の名は『エルダ・キャスタ』。

 

このクシロロ世界において『賢者』と呼ばれるほどの知識を秘め持つ者。このエーテルス・ヴァトリシアが中立であるように、彼女もまた何処の勢力につくわけでもなく、ただ己が探求心の赴くままに様々な研究と実験を繰り返している。

 

そんな彼女がジオウの下へと来訪した理由は、ただ興味があったからだ。本来ならば来ることなどなく、広大なる大地の上で戦争をしている筈の輩同士が一つの目的の為にここへと集結し更なる戦火を生む。

 

その果てに何があるのか……類を問わず万象万物を研究し、その結果を知識としてコアに刻む彼女には、そこそこ面白いネタだったと言うだけの話だ。

 

「平和とは、消耗したものを再び補い備える休閑に過ぎない。兵力や武器、戦う者たちの英気を養う安らぎの一時。逆に闘争は、己が利益。憎悪。略奪。圧政からの解放など、その理由は様々で多岐に渡るが、本能に突き動かされているという点では同じと言っていい。

略奪は何かを欲するが故の『欲望』という本能から。憎悪は相手を醜く殺してやりたいという『殺意』の本能から。いずれにしろ、元を辿れば其処には『強い意志』が介在している。この世界とは違う、異世界の地に住む人類という種族は、まさにそれに該当している

。我々よりも強く、深い感情を秘めた知的生命体たる人類は幾度も争いを繰り返し、惨劇の闇と発展の光で先の時代を開拓して来た。それは今のクロワとハクトの戦争と同じように」

 

「…確かに、ハートレスは戦いによって進化して来た。競い合うことで互いを磨き、その能力を遺憾なく発揮して来た。アーマメント術式の技術も同じ。人類がそうして来たことを、私達もしている」

 

エルダ・キャスタの言葉に特に返すことはなく、ただジオウはそれが息をするかのように当たり前だと。まるでそう意図しているかのように淡々と一方的に語りを続ける。

 

「ようは相反しているのではなく、それはそれで一つの『調和』……すなわち、バランスが取れていると言いたいのだ。ハートレスの文明発展は勿論のこと、寿命を個体差なく齢1000年と生きる我々の発生増加率は1年つき150~305。この世界はとてつもなく広いが限りがある。無論、面積だけでなく資源や食糧の諸々もまた、限りがある。

それ故に、この世界で生きていける者の数は必然と決められてしまう。なら……どうするか? 簡単だ、『殺せば良い』。戦争という『大義』で多くを殺し数を口減らす。そして、平和という『安寧』をもって数を悠々と増やせばいい」

 

ただ、聞くだけなら、彼の言い分は『狂ってる』の一言に尽きるだろう。

 

あるいは最も酷く、同時に的を得た言葉があるかもしれないが、だが『間違い』と説くのは筋違いだ。人道的観点ならば、許されない唾棄すべき所業。だが逆に合理的な観点から見てしまえば、理に適っているのは正直否めない。

 

地球史はそうやって紡がれて来たのも事実だ。繁栄と絶滅を繰り返し、進化を果たすことで新たなる繁栄のステージを獲得した種もいれば、そうはなれずに滅びていった種もある。また生存競争でも勝ち取った者には『生』があり、敗北を喫した者には『死』がある事で種の数が一定の水準を保たれ、自然環境と言う一つのバランスが整えられている。

 

これは、生命が存在する時点で覆すことのできないある種の法則。

 

『繁栄による絶滅』と『絶滅による繁栄』は、必定なのかもしれない。

 

「だが重要なのは、このエーテルス・ヴァトリシアにて、私がこの法則その物であると言う事だ。生と死の分別は私の強欲を満たし、我が心に豊潤を齎してくれる」

 

しかし、そんな法則でさえも彼にして見れば何でもない、自らの強欲を満す『道具』に過ぎない。エーテルス・ヴァトリシアでは彼こそが絶対の法則であり、全ての権限は彼の手に握られている。

 

彼を中心に、エーテルス・ヴァトリシアと言う名の世界は延々と変わることなく回っているのだ。

 

「捕らえたクロワとハクトはどうする気だ? 始末か?」

 

「まだ決まっていない。が、候補としてはこの都市区画を養う為のエネルギー源になってもらうのが有力だな。私としても、我が理想郷で狼藉を働いた連中を只で帰すなど非常に不愉快なのでね」

 

忌々しさを嫌と言うほど噛み締めたかのように答える様子を一瞥した彼女は、興味無さ気にジオウの自室を後にし、そのままこの建物内……クラックムを見て回ることにした。

 

その行為自体に意味は無く、何のことはない…ただの暇潰しだ。

 

エルダ・キャスタには特別待遇としてこのエーテルス・ヴァトリシアの滞在と自由行動が認められている。彼女は中立の立場だが、時として誰かの味方になれば、時として誰かの敵になると言う、はっきり言って気紛れ屋な面が存在する。

 

そんな性分故か、エーテルス・ヴァトリシア創立の際には自分から進んでジオウに協力し、己の叡智を彼に教授する形で提供。そうしたことで、このエーテルス・ヴァトリシアは天空に座する『第五の都市区画』として成立することができた。

 

そう、彼がその強欲を満たす為の理想郷として……。

 

「(ジオウ……ここまで、曲りなりにも支持はして来たつもりだが、奴から得られる成果が最近になって芳しくない……潮時か?)」

 

そんな思考を内心働かせながら、ゆっくりとした足取りで騒ぎ立てず、長い廊下を粛々と進んでいく。中立を謳う彼女が誰かに付いて支援する場合には理由がある。付く側に『研究価値』と『興味』があるからだ。それらの条件が揃っているならば、彼女は自ら進んで助力することもあるが、それらが無ければ、通常通りの中立的立場に過ぎない。

 

エルダ・キャスタたる、クシロロの賢者がジオウと言うハートレスをここまで支援した最たる理由は、上記のことを踏まえ、あくまで『研究の為』に過ぎない。彼の秘め持つ強欲心は本来、感情薄きハートレスにはないもの。そもそも『欲望』自体があまりないに等しいのだ。

 

ただ生きて、行動し、そして死んでいく。

 

それが彼らの生き方だ。平和主義も闘争主義も、その根本だけは同じと言っても過言ではない。ハートレスと言う種は、例外を除けば『娯楽』と言う文化が殆どないのだ。音楽や遊興、嗜好品など。あくまで異世界からの知識として認識しているだけであって、彼等からしてみれば必要ないものでしかない。

 

しかし、ジオウはそんなハートレスの一端でありながら、その内に秘めた欲望は人間以上に強かった。いや、そもそも大前提として、ハートレスに『平和主義』という概念その物が生まれること自体が不自然な道理である。

 

この世界が創世したばかりの頃……黎明時代の3000年間、ハートレスたちは互いを常に敵と認識し合い、生死を賭けた闘争のみに日々明け暮れていた。そんな中で唯一互いを敵とせずに戦わない場合は『生殖時』のみ。

 

それも当然ながら異性同士でなければ成立しない、それが平和の一文字さえも存在しないクシロロの世界の生命の在り方だった。だが、今では『平和』という概念が生まれ蔓延。平和主義の思想を掲げるクロワにより『闘争』は旧い考えだとされ、荒廃し消えかけていた。

 

だが、ホワイト☆ロックシューターがバラバラに点在していた闘争主義のハートレスの中小集団を実力と手腕で束ね上げ、結果として闘争主義は消えることなく、一つの強大な派閥『ハクト』として平和主義の勢力であるクロワと相対するまでに至った。

 

これらが、クシロロ世界の理の中で起きた歴史だ。

 

しかし、謎なのは『このような経緯と結果』に至ったのか、だ。それは結局のところ不明のままである。

 

何故。ハートレスは何の脈絡もなく、突然『平和』という概念に目覚めたのか。

 

何故。ハートレスと言う種は、生まれたその瞬間から自身の『死』を躊躇せず、利益も何も求めずに黎明時代から闘争本能に支配され、死闘を続けて来たのか。

 

エルダ・キャスタにとってこの世界の真理究明は最大の難関であり、自分が絶対に果たすべき『命題』だった。テーマに関して考えれば考えるほど、謎と疑問が思考の海から浮上し、それを答えるに納得のいく当て嵌まった答えが出せない。

 

彼女の賢者としての叡智をもってしても、答えは迷宮の闇の底。ヒントという光があれば完全ではなくとも、少しくらいならば命題の解答に近づけるかもしれない。その為にハートレスとしてはイレギュラーな部類に入るジオウを観察対象とし、様々な方法や実験での研究を長年し続けて来たが、命題には至らず。だが成果がなかったわけではなかった。

 

何度目かのジオウのコアのスキャニングにより、一つの異変を発見した。

 

ハートレスの持つコアには地球の生物で言うところの『遺伝子』に似たものが存在し、それは黒と白の瓢箪に似た形状で、幾重にも無数に連結した『継承核質』と言う物質の一種である。無論ながらそれはジオウにも存在するが、彼の場合、その一部に黒でも白でもない色……ある筈も無い『黄金』の色があったのだ。

 

それだけでなく、更に調査を進めていくと他にも赤や青、緑や黄などの継承核質の変色が他のハートレスでも見られ、共通するのは『ほんの一時的な感情の高揚状態』になること。まだまだ研究の余地が沢山あり、どうにも分からない点もそれだけ多かった。

 

「まだ、私の叡智ではして計り知れないものがあり、我が頭脳に未だ尚も目指すべき高みがあろうとは。そこだけはジオウに感謝せねば」

 

ジオウは大変興味深い人材だ。己が強欲を満たす為、時として冷酷非道な行いを平然とやってのけるその傍らで、一時の間柄に過ぎないゴールドソーにエネルギー提供をし、彼女や仲間が死した時は悲しみを感じるなど。

 

冷酷だが、それなりに思慮深い情緒を持つハートレス。

 

本当に不可思議で、それ故に自分を飽きさせることは今までなかった男。

 

「(もう少し、支持してやるのも可能性的にはありか? ジオウの継承核質の一部変色の現象はまだ謎が多い……奴への支持を止めるのは、奴自身を徹底的に研究して、その謎を全て解明してからでもいいだろう。さほど、問題はない…いいや、それ以上に良い成果が望めるやもしれない)」

 

そこまで内心考えたエルダ・キャスタは、クラックムの屋上まで来てエーテルス・ヴァトリシアの景色を一望した後、片手を前の宙へと掲げ転移用のアーマメント術式を行使しようとする。ここを一旦だが去り、自身の研究工房で色々とここで得た成果を保存する形で纏めたいからだ。

 

もう既に今日の内に去ることはジオウに告げている。なので、今ジオウに工房への帰還を報告する必要性も義務も彼女にはなかった。

 

「!!っ」

 

頭上に●、▲、■の三つの翡翠色に輝く図形エフェクトが無数に出現し一箇所に集束。

 

そして魔方陣を形成していくが、その最中で彼女は一つの異常を察知した。

 

感覚的に察知したその異常を探すことなく、すぐに視覚に捉えることができた。が、その正体は、想定外過ぎていた。いつでどんな時であろうと冷静さを欠かさない筈のエルダ・キャスタが、非常に困惑と動揺せしめてしまうほどの光景だ。

 

「あれは………『硬虫』?! いや、しかしッ!!……」

 

クラックムの上下四方八方を覆い隠さんと取り囲む無数の虫たち。それは黄土色のトンボに似た姿で、名を『硬虫(こうちゅう)』と言う。最大の特徴は優れた防御能力と一度敵と認識した相手を徹底的に殺すまで追い詰めようとする凶暴性。

 

そして、一度相手を挟んだら最後。その相手を真っ二つにしてしまう、クワガタのような鋭利さを秘めた大顎。基本的には単独で生きており、相手が何か仕出かさない限りは群れを成して強襲するのなど、まず有り得ない。そもそも、そんな危険な生物に手を出したと言う覚えは無い。

 

だがこうして猛烈な勢いで強襲しているのは覆らぬ事実であって、認めざる得ない有様だ。

 

「くっ! 一体何がどうなっている!!」

 

幸いなことにクラックムにはバリアが張り巡らされている。よって、これを破る術も力も持たない硬虫は所詮、無意味に等しい。

 

しかし。いつまでもこうしている訳にはいかない。一先ずもう気付いていると思うが、この状況をジオウに報告する為、転移の行き先をあの自室へと変更し向かうことにした。

 

 

 

 







~ちょっとした元ネタ説明~




【ジオウ】/漫画版『ザ・ゲーム』とは異なる、ブラック★ロックシューターにおける、もう一つの漫画作品『イノセント・ソウル』に登場するキャラの名前です。

キャラクターや容姿は全然違うんですが、共通する点は『人外』である事と『下衆』なこと。



【エルダ・キャスタ】/ブラック★ロックシューターのネトゲ『アルカナ』に
登場するキャラクターの1人。原作と同じ中立的立場で時として力を貸す存在
。ミーと魔女のキャラが被ってますね、はい。




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