戦場を駆ける闘神(インドラ)   作:シュウナ・アカネ

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作戦2・初戦場と言いつつの初恋

哲二side

 

 

 

あの後、俺は会社から出て、サバゲー、いわゆるサバイバルゲームのグッズが揃ってることで有名な店に赴いている。ここは町の中心部。もちろん、それなりの娯楽施設や公共施設などが揃っている。唯一嫌なことは、俺の会社の社員が常にこの町を警備していることだ。理由は簡単で、同じ職場の人間があちこちいると気持ち悪く感じてしまう。

 

 

(エアガン買ったらすぐ帰るか・・・いや、久々に外食でもしよう。息抜きもたまには必要だしな)

 

 

会社から歩いて15分、そのサバゲーの有名店に着いた。いざ店内に入れば、俺から見れば天国。

 

 

「おおお・・・」

 

 

思わず声が出てしまう、無理もない。ここにはハンドガン、ショットガン、サブマシンガン、アサルトライフル、スナイパーライフルなどなどもはやない銃はないと思わせるほどの種類がある。

 

 

(今まで欲しいのを我慢してた銃が・・・買える・・・)

 

 

最高にいい気分というのはこういうことだろう。

 

 

「よし!すみません、これください!」

 

 

今回俺が買うのは、『US M1 Garand 』。『モシン・ナガンM1891/30』に酷似した銃だ。銃身は木製で、なんていうか骨董品っぽい感じがたまらなくてずっと欲しかった。当然この銃はガスガンなので、お値段は相当な金額だ。

 

 

「お値段、54,000円になります」

 

 

給料のおよそ5分の1を削る大金が消えたが、全く後悔していない。

 

 

「ああ・・・この肌触り・・・この木の匂い・・・この重さ・・・ビューティフォウ!」

 

 

はたから見たら変態だが、スルーしてくれ。確かに銃は大好きだが、銃は俺の嫁とかいう感じではない。

 

 

グゥゥゥ〜

 

 

腹が声を出し始めた。確かにだいぶ腹も空いてきた。

 

 

(銃も買ったし、最寄りの飲食店に行くか)

 

 

数分後・・・

 

 

「いらっしゃいませ〜!ご注文は何にしますか?」

 

 

「えっと、とんかつ定食をください」

 

 

「わかりました、少々お待ちください」

 

 

(・・・暇だし、隣の喫煙所にでも行くか)

 

 

ガタッ

 

 

席を立って喫煙席へ行こうと曲がった時、

 

 

どんっ!

 

 

「うっ!」「きゃ!」

 

 

どうやら、店員さんとぶつかったみたいだ。なんかすごく申し訳ない。

 

 

「いてて、ごめんなさい店員さん。立てますか?」

 

 

「は、はい。大丈夫です」

 

 

(ってうお⁉︎可愛い////)

 

 

その店員は、おそらく高校生。髪の毛はショートで色はピンク。小柄でも顔は美少女のような顔で、言い表しきれないほど、可愛かった。

 

 

「すみません・・・その、仕事終わりのバイトで・・・疲れがたまってしまって」

 

 

仕事を終えてからバイトしてるのか。頑張り屋だなぁ。

 

 

「そうなんだ。頑張るのもいいけど、無理はしないほうがいいよ。体壊すと、元も子もないからね」ニコッ

 

 

俺はその子に、笑った顔を見せた。正直笑顔は苦手だが、自分の言葉が伝わって欲しかった。まあ簡単に言えば、元気を出して欲しかった、のかな。

 

 

「は、はい!ありがとうございます!そしてあの、ご、ごめんなさい!」サササッ

 

 

急ぎ足で厨房のほうに帰っていった。そして俺は数本タバコを取り出した。別にイライラしてるわけではないからな。だがこのタバコは特殊なタバコで、体に一切の害をもたらさないタバコだ。依存性も全くない。美味しくはないが、集中力が増す効果がある。もともと医療目的で作られたタバコであるらしい。

 

 

「・・・やっぱ吸いたくねぇ、ご飯前に吸うのもおかしいし」

 

 

結局席に戻り、料理を待つ。どうやら飯が来たようだ。しかもその飯を持ってきた人が、ピンク髪のあの美少女だった。なんだか今日という日は当たりかもしれない。

 

 

「お、お待たせいたしました。とんかつ定食で」ガッ

 

 

「え?」

 

 

なぜか、つまずいた。そして予想通りの、

 

 

ガッシャーン!

 

 

地面に落ちればいいものの、俺の体に飯が降ってきた。

 

 

「あわわわわわ⁉︎とんかつあっつ!リアルにあっつ!」

 

 

ピンク髪の少女を見ると、

 

 

「あ・・・ああ・・・」ガタガタッ

 

 

肩をすぼめながら、震えていた。涙目になって。

 

 

「店員さん!とりあえず濡れた台拭き持ってきて!」

 

 

「あ、は、はいい!」

 

 

2分後・・・

 

 

「ふぅー、なんとかなったー」

 

 

俺の服にかかってこぼれた飯は全部回収して服も拭いたが、あの少女、店長に怒られてる。厨房自体がガラスで見えるようになっているので、声も漏れてくる。

 

 

『お前今日で何回目のミスだ!ああ⁉︎大体よお、醤油と酢を間違えるってなんだ⁉︎そんなミスすんなら、うちの店にはいらねえよ!』

 

 

こんなことを公衆の面前でいう店長もむかつく。確かに彼女のミスも多い。でも、店長も人として成り立っていない。いや、人間以下だ。そして少女以外の店員もニヤニヤしてむかつく。

 

 

『ご、ごめんなさい、次は気をつけますので・・・』

 

 

バシィ!

 

 

『きゃっ‼︎』バタン!

 

 

顔を叩いたようだ。そろそろ我慢ならん。店長をぶっ飛ばしたい。だがそんなことしたら会社をクビになるのはもちろん、警察にもお世話になってしまう。でも彼女の頬は、赤く腫れ、涙目で、口からは少量の血が出ている。

 

 

『ごめんなさい、ごめんなさい!』

 

 

『ごめんなさいで済むならこんなことしねえんだよ!そんぐらい分かれよこの子持ち高校生が!』

 

 

!!!!!子持ち?

 

 

ガシッ『うぅ・・・痛い・・・痛い・・・!』

 

 

今度は彼女のショートカットの髪を鷲掴みにし、頭を引っ張り上げている。俺の腕が、ブルブル震えてる。俺の腕から、血が吹き出そうなほどに。

 

 

『お前ヤリマンだからすぐ子供出来んだろ?なんか言ってみろ、ほら‼︎』

 

 

『うぅ・・・えうっ、えうっ』ポツッ ポツッ

 

 

彼女はとうとう、大粒の涙を流し始めた。自分の心を散々に汚され、恥もかかされた。周りにいる客も、クスクスと笑う者とヘラヘラしている者しかいない。

 

 

『どうした?嘘泣きか?なんか言えよ!ガッハハハハ!』

 

 

俺の頭には、二文字の言葉しかなかった。

 

 

(・・・殺す)ダッ!

 

 

俺は厨房に走り出した。

 

 

「吹っ飛べクソ野郎がぁ!」

 

 

ゴワシャ!「かぺっ⁉︎」

 

 

俺はクビや逮捕の恐怖よりも、その店長を殴り飛ばし、少女を助けることを選んだ。

 

 

「ピンク髪の店員さん、外に出よう。ここの店にいる人たちは君の心の傷を残すことになる」

 

 

ピンク髪の少女を安全な場所へ連れていくために、声をかけた。でも、

 

 

「もう・・・いいんです・・・人生なんて・・・何にも、楽しくないんです・・・」

 

 

声がカタカタを震えた感じだった。店長からの中傷的な言葉は、かなり少女を傷つけたようだ。自分の誇り、存在意義さえも、ズタズタにされた。でも俺は、

 

 

ガシッ

 

 

「!!!」

 

 

少女の肩を優しく掴み、手を差し伸べた。

 

 

「えっ・・・」

 

 

「確かに、今の時点で誰よりもひどい目にあったことはわかってる。でも、簡単に人生は楽しくないなんて言わないで欲しい。この世界は嬉しいこともあれば悲しいこともある。君が傷つくようなことがあれば、全力で君を守る!だから、外に出よう」

 

 

「!・・・はい」

 

 

彼女は泣きながら承諾してくれた。この店を後にして、自分の家へと向かう。

 

 

 

10分後・・・

 

 

自宅に到着。今日は色々とあって疲れたが、銃は手に入れたから満足。でも問題は、少女だ。

 

 

(まさか俺の家に来るなんて言うとは思わなかったな)

 

 

彼女によると、一人息子がいるらしい。彼女がヤリマンだと信じたくはないが、驚きはする。

 

 

ピーンポーンッ

 

 

ガチャ「お邪魔・・・します」

 

 

彼女が来たようだ。荷物の量は、なかなかの物だ。

 

 

「入って入って!ごめんね、こんな部屋で。とりあえず、傷口の消毒しないと」

 

 

こんな部屋ってどんな部屋なのかというと、壁一面にサバゲーの銃が飾ってあり、和室には切れ味抜群の本物の日本刀が置いてある。女子なら完全に引くシュチュエーションだが、

 

 

「すごい・・・ですね」

 

 

彼女の顔は、感心の顔だった。

 

 

「え?こういうのって、好きなの?」

 

 

「はい、銃には少し興味はありますよ」

 

 

女子にも銃に興味のある人は少ないわけではないが、さすがに部屋の壁中に銃を飾ってあったら引くであろう。しかし彼女は少し変わっている。

 

 

「そういえば、君の名前はなんていうの?」

 

 

「星野(ほしの)ヴィヴィアンっていいます・・・名前が少し変なので、なんかごめんなさい」

 

 

「なんで謝るのさ!覚えやすくてわかりやすいし、可愛いじゃないか!」

 

 

「あ、ありがとう・・・ございます////」

 

 

彼女が照れた顔を見せる。マジで可愛すぎる。あ、やばい、鼻血出そう。

 

 

「ま、まあとりあえず傷口の消毒が先だね、救急用のアタッシュケース持ってくるから待ってて」

 

 

普通アタッシュケースに入れないが。

 

 

ブーッ ブーッ

 

 

「ん?携帯か?えぇっと、会社から?」

 

 

ガチャ「もしもし」

 

 

『哲二!今どこにいる⁉︎』

 

 

「ん、琉鵜鹿じゃん。どこって、自宅だが?」

 

 

『なら良かった、急いで会社に戻ってきてくれ!まずいことになってる!』

 

 

「どうしたんだそんなに血相あげて」

 

 

『国籍不明機が俺らの軍事会社を攻撃している!あと会社の防壁も、国籍不明の地上部隊によって破壊された!』

 

 

「はあ⁉︎わかった!俺も会社に行く!」

 

 

『頼んだぞ!』プツッ

 

 

(なんでうちの会社が侵攻されてるんだよ、アメリカ空軍の15倍以上ある戦力が押されているということなのか?)

 

 

ゴオオオオオオオオオオ!

 

 

「うわっ⁉︎ああもううるさいなこのターボエンジンの音!どんな機体だよ!」

 

 

ガラッ!

 

 

窓を開け、空を舞ってる戦闘機を見つける。尾翼にペイントされた紋章に、覚えがあった。

 

 

「あれは・・・”ラビリンス航空隊”・・・?まさか、国籍不明機って・・・」

 

 

ダッ!

 

 

俺はすぐさま走り出した。一刻も早く会社へ行かなければ。

 

 

「ごめんヴィヴィアンちゃん!ちょっと用事ができたから会社に行ってくる!」

 

 

「そ、そうですか。わかりました、行ってらっしゃいませ」

 

 

玄関を出て、会社に一直線に走る。ラビリンス航空隊は、単なる攻撃では倒せない。彼らが載っている戦闘機は、特殊な作りでできている。そもそもなぜ俺がラビリンス航空隊を知っているかというと、昔の話になるからやめよう。

 

 

ブーッ ブーッ

 

 

『哲二!まずい!敵が施設内に侵入!瞬時に建物の5パーセントは制圧された!』

 

 

「はええよもうちょっと粘れよ!俺はバカだからお前らが抑えとけ!」

 

 

『航空機や地上兵器の座学ならお前は成績いいだろ!だから早く頼む!』

 

 

「OK!猛ダッシュで行く!」プツッ

 

 

やっぱり、座学より実践の方が、怖い気がする。生まれて初めて、死にたくないと思った。ヴィヴィアンちゃんが好きだから。ヴィヴィアンちゃんのために俺は生きる。

 

 

(生きて帰ったら、ヴィヴィアンちゃんに想いを伝えよう)

 

 

心に、そう誓った。

 

 

 

 

 

次回予告

 

ラビリンス航空隊と地上部隊、彼らの狙いはそもそもなんなのか。土地か、財産か、それとも他の何か。全ては次の投稿で!

 


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