とある魔術の黄金錬成   作:翔泳

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とあるファーストフード店で

 学園都市には二三〇万人の人間がいる。その八割が学生であり、能力の強さに応じて無能力者(レベル0)から超能力者(レベル5)の六段階に分けられているのだが、実際は六割以上が無能力者(レベル0)であり、トップの超能力者(レベル5)は現在七人しかいない。

 そんな中でも割と多い部類、低能力者(レベル1)に属する一人の少女、初春飾利がとあるファーストフード店の一角でパフェを目の前に目を輝かせていた。

「で、話しと言うのは何ですの?」

 その正面に座っている白井黒子は、最早目の前のデザート以外視界に入っていなさそうな初春飾利の表情に、半分呆れたような声で話しかける。

「はのでふね、ほほさいひん」

「ああもういいですわ、食べ終わってからで結構」

 風紀委員(ジャッジメント)

 学園都市の治安を守る警察的組織の一つ。学生だけで形成されており、基本的に校内の治安維持にあたっている。

 名前からも分かるように、主に校内での事件を管轄とし、その事から支部はそれぞれ各学校内に設置されている。入室の際に指紋、静脈、指先の微振動パターンの三種をクリアする必要がある辺りはさすがは学園都市と言えるだろう。

 現在口の中にパフェを頬張っている初春飾利も第一七七支部に所属する風紀委員(ジャッジメント)の一人なのだが、見た目によらず学園都市屈指のハッカーであり、風紀委員(ジャッジメント)の資格を得るための十三種の適正試験では、情報処理の一点突破で切り抜けたほどの実力の持ち主だったりする。

「白井さんは食べないんですか?」

「生憎、わたくしには太る趣味はございませんので、どうぞお一人で余分な脂肪をお付けになって下さいな」

 対する白井黒子も風紀委員(ジャッジメント)の一人で、学園都市に五八人しかいない空間移動能力(テレポート)の使い手でもあり、風紀委員(ジャッジメント)においての初春飾利の一つ先輩でもある。ちなみに、年齢では二人は同い年だ。

「そんな言い方ひどいですよぉ」

 にも関わらず初春飾利が白井黒子に敬語を使うのは、先輩・後輩関係というよりもどちらかと言えば性格の影響が大きいらしい。

 相変わらず順調なペースでパフェを口へと運ぶ初春飾利に対して、白井黒子は少し疲れた表情でため息をつく事が多かった。

 そんな姿を見てか

「白井さん元気ありませんね。もしかして無理に我慢してないですか?」

 食べます? と初春飾利はパフェの乗ったスプーンを白井黒子へと差し出すが、

「そんな事で苦労出来るのならそちらのがありがたいですわ」

 と、ため息を一つ吐き

「特例で始末書くらい免除して下さればいいものを。ホント、毎度毎度あんなものを書かされてはこちらの身がどうにかなりそうですわ」

 風紀委員(ジャッジメント)は基本的に校内の治安維持を管轄とする為、校外での活動をした際には始末書を書かされるのだが、

「そうですね。最近、能力者や武装無能力集団(スキルアウト)による事件が頻発してますからね」

 ここ最近、学園都市内の治安が乱れているらしく、管轄外である校外にも風紀委員(ジャッジメント)が出て行かなければならない場合が増えているのだ。

 警備員(アンチスキル)が言うには年に稀ではあるがこう言う時期があるのだとか。偶々武装無能力集団(スキルアウト)の行動が重なったり、壁に行き詰まった能力者が連鎖反応の様に事件を起こしたりする為らしいが、正直程々にしてほしいと白井黒子は内心思う。

「そんな事に使う元気があるでしたらもっと別の事に使えばいいものを。とんだ迷惑ですわ」

 と白井黒子がため息混じりに発言していると、視界によく見知った姿が飛び込んで来た。

「オッス黒子、初春さんもこんにちは」

「御坂さん、こんにちは」

 御坂美琴。

 常盤台中学に所属する三年生で、学園都市に七人しかいない超能力者(レベル5)の第三位、超電磁砲(レールガン)

 白井黒子がもっとも憧れる存在でもある。

「まぁ~お姉様。どうしてこんな所へ? さぁさぁどうぞお座りになって下さい」

 ありがと、と御坂美琴は白井黒子の隣へと腰を下ろし、

「おっ、美味しそうなパフェ発見。一口いただき~」

 パクっと初春飾利が使っていたスプーンでパフェを口へと運ぶ。

「ん~美味しい」

「そうですよね~。それなのに白井さんはいらないって言うんですよ」

「何黒子? あんたダイエットでもしてる訳?」

 しかし、今の白井黒子の耳にそんな会話は入って来なかった。

(あ、あ、あのスプーンは先ほどまで初春が使っていた物……つまり、間接キス!! おのれ、初春……っ!)

 ゴオオオ、と何やらどす黒いモノが湧き上がって、そしてハッとする。

「そうですわ。確かにお姉様は初春と間接キスをしてしまいましたが、あのスプーンを最後に使ったのはお姉様。つまりあのスプーンをこのわたくしが使えば、お姉様と間接キス!! パフェを食べるフリをしてスプーンさえ手に入れれば……うっへっへ、ぐへへへ」

 その内容が全て口から漏れ、隣にいる御坂美琴に全て聞こえてしまっている事に気がつかず、白井黒子は更に妄想を膨らましていく。

「そう言えば、どうして御坂さんはここへいらっしゃったんですか?」

 パフェの残り一口を食べ終え、初春飾利は質問する。ちなみにスプーンは白井黒子が妄想に耽っている間に初春が普通に使用。白井黒子の妄想は妄想のままで終わってしまった。

「ん? 私? 私は偶々この前を通り過ぎた時に二人が見えたから寄ってみただけ。そう言う二人はやっぱり風紀委員(ジャッジメント)関連?」

 と、ようやく我に返った白井黒子が何かを思い出したように、

「そう言えば初春、話しって言うのは何だったんですの?」

 はい、と初春飾利は足元に置いてあった鞄からノートパソコンを徐に取り出して、

「白井さんも先ほど言われていたここ最近の能力者や武装無能力集団(スキルアウト)達による事件のことなんですけど」

 キーボードを叩くと画面に様々な画面が現れ、文字が流れるようにスクロールしていく。

「ああ、最近事件が多いってこの前誰かが言ってたっけ」

「えぇ、偶々こう言う風に事件が重なる時期があるとかで。それとも初春、やはり何か原因があるとでも言うのですの?」

「いえ、関連となる原因な恐らく無いと思われます。犯人の事情聴取でも一貫性は無かったそうですから」

 とりあえずこれを見て下さい、と初春飾利は画面を二人へと向ける。そこには一つの動画が移されていた。最近の事件の犯行時の映像だろうか、犯人らしき人物が風紀委員(ジャッジメント)であろう生徒に取り押さえられている現場が映っている

「これがどうかしましたの?」

「ただ犯人を捕まえた所が映ってあるだけだけど?」

 確かにそうなのだ。この動画にはただ犯人が捕まる所が映ってあるだけで、何か特別なモノがあった訳ではない。

 それでも初春飾利は表情を変えずに画面を次々とクリックしていくが、出てくるのは同じように犯人が風紀委員(ジャッジメント)、或いは警備員(アンチスキル)に捕まっている所ばかりである。

 と、白井黒子はいくつかの動画を見ていて初めて少し違和感を覚えた。それを見計らったように初春飾利は言葉を発する。

「おかしいとは思いませんか?」

 何が? と御坂美琴は首を傾げるが、現場に幾度と無く出ている白井黒子には初春飾利が何を言いたいのかが分かった気がした。

「初春、最近の事件は全てがこの様な形に?」

「いえ、割合的には一割にも満たないですが、これもおかしな事に全てがこの第七学区に限定されています」

 確かにおかしいと白井黒子は腕を組む。

「ねぇ、一体何だって言うのよ?」

 一人だけ萱の外な御坂美琴は二人の間に割って入る様に言う。

「お姉様はこれまでにも何度か事件に首を突っ込まれた事がおありですわよね?」

「首を突っ込むって何か嫌な言い方よね」

「……おほん、よく助けていただいた事がありますけど。その際、犯人をどのようにしてお捕まえになられました?」

 ん~、と御坂美琴は数秒考えて

「大体はビリビリって動けなくしたりとか、超電磁砲(レールガン)ぶっ放したり、とかかな」

 あ、と御坂美琴はここで先ほど見たいくつかの映像の違和感に気がついた。

「お気づきになられたみたいですわね。ホント、よくこんな些細なことに気がつきましたわね、初春」

 いえいえそんな事ないですよ、と初春飾利は首を横に振って

「私は偶々事件の整理をしている最中にドジな犯人さんばかりだなぁ、なんて思ったのがきっかけですから。本当に偶然なんですよ」

「でもこれってただの偶然って可能性もあるでしょ?」

「ですがお姉様。犯人が揃いも揃って足を躓く、車が全輪パンクする、こんな事がこの第七学区だけここ数日の間に数件も起きるというのは、些か不自然過ぎはしません事?」

 初春飾利が表示した映像の全てが、風紀委員(ジャッジメント)警備員(アンチスキル)が手を出す前に自ら墓穴を掘るように捕まっていたのだ。

「じゃあ何? これが全部――」

「能力者の仕業。初春もそう思っているんですわよね?」

「断言は出来ませんけど、ここは学園都市ですしそう考えた方が妥当だと思います」

「大方、念動能力(テレキネシス)或いは風力使い(エアロシューター)と言った所ですわね」

 と、白井黒子は静かに言う。

 全ての事件がそうでは無いことから、恐らく偶々通りかかった際に犯人を捕まえる手助けをしたのか。少なくともその能力者は第七学区で生活をしているハズだ。

 ただよくよく考えてみれば悪いことをしている訳ではなく、寧ろこれは学園都市の治安を守るために役立っている事から良い事なのだ。

 一体誰がこんな事をしているのか気にはなるが、

(わざわざ探る必要もなさそうですわね)

 と白井黒子が呟いていると

「ねぇ、その能力者強いのかな?」

「出ましたわ、お姉様の悪い癖」

 何よぉ、と御坂美琴は頬を少し膨らます。

 御坂美琴の悪い癖と言うのは、要するに何かあるとすぐに力試しをしたくなる、と言う点だ。

「だって、こうやって手助けをしてくるって事はかなりの使い手って事でしょ? 大丈夫よ、きっと向こうはいいヤツだろうし、ちょちょいっと手合わせをお願いするだけだから」

「手合わせすると仰いましても、お姉様は学園都市第三位。そんなお姉様とまともに戦える能力者なんて、そうはいませんですわ」

 白井黒子が言うように、御坂美琴は学園都市第三位の超電磁砲(レールガン)。まともに戦える相手など指で数えるほどもいない。だが御坂美琴は例外を知っている。無能力者(レベル0)でありながら超能力者(レベル5)である御坂美琴の攻撃を全て防ぎきった男を。

「(そうよ、あいつだって無能力者(レベル0)でありながら私の攻撃を全て防ぎきった。今回の能力者だって戦ってみないと私の方が強いかなんて分からない)」

 と、御坂美琴はここで見知った顔が歩いているのに気がつき、そして

「いた!! あいつこんな所に!」

 バンとテーブルに手をついて勢いよく立ち上がると、

「今日という今日は逃がさないんだから!」

 一目散に店内から外へと飛び出して行った。

「お姉様一体どうしたんですの!? 初春、私達も後を追いますわよ!」

「あわわ、ちょっと待って下さいよぉ」

 慌ててパソコンを鞄へとしまうと、初春飾利も白井黒子と共にファーストフード店を飛び出した。

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