好き 作:たまご
GW初日のバイトを終えた颯人は、着替えて店から出て凛にメールをするか、しないかで迷っていた。
颯人が凜の連絡先を知ったのは、昨日の放課後のコトだった。
◇
颯人が教室から出た瞬間に、少し緊張したような凛が小走りに颯人の元に現れた。
「え、えーと、時間少しだけ空いてる?」
身長差もあるのかも知れないが、颯人から見た凛は上目遣いになっており、思わず目を反らし「大丈夫」と一言返事する。
2人が話す場所はいつも決まって、屋上前の階段になる。
「あ、あのね……GW中に時間があれば、少しでも良いから会えないかなぁ……と思って聞いてみたんだけど……」
屋上前の階段に着き颯人の教室まで、何度も頭の中で練習した台詞を言うが、後につれて声が小さくなってしまう。それでも颯人には聞こえてたらしく、ほんの少しだが嬉しそうな表情を作る。
「良いよ、でも……連絡先知らない……」
放課後に何回か話しているが、お互いに連絡先を聞いたり教えたりして無かった。
「あ! それじゃ、今メール先を交換しない?」
「ああ、ちょっと待って」
ポケットから携帯を取り出し交換した。
◇
店の外で凛にメールをするか、しないかで迷っていると、後方から女性の聞き慣れた声が聞こえた。
「お疲れ様! 今日は大変だったね」
春崎 凛 と表示された画面をホーム画面に戻し、後ろを振り向くと亜香里がいた。
バイトでは面倒見が良く、颯人が入りたての頃に色々と仕事を教えてくれた人で、時間が空いていたら今のように話し掛けてくる。
「お疲れ様です。去年とは違いましたね」
「そうだったかなぁ? あ、颯人くんは入りたてだったからじゃない?」
「多分そうですね」
2人は話ながら駅の方へと歩きだした。
バイトで亜香里と一緒になった時は、他のバイトの子より話す仲で駅まで10分掛かるが、話している内にすぐに駅に着いた。
「それじゃ、また明日ね」
改札まで来た颯人に一言、言うと改札の方へと歩いていき、颯人は自転車で施設へと帰る。
結局、GW初日は凛と会うコトもメールするコトもなく終わってしまった。
ーー★☆★☆ーー
GW初日、2日目は予想以上の集客と忙しさで、メールをするコトが出来なかったが、3日目となると慣れも出てきて少しだけだが、メールをする余裕が出来た。
「な、何て送ればいいんだ?」
クラスで仲良くなった優太とは、下らないメールのやり取りをしても別に問題は無いが相手が凛だと、どんな内容のメールで送って良いか分からなかった。
「……『明日夜遅くても良かったら、会えないか?』 で良いか」
どんな内容で送って良いか分からなかった颯人は、GW前に約束したコトを果すためにこんな内容にしたのだった。
まだ、メールを送って数分も経っていないのに颯人は、携帯から目を離さないようにずっと眺めていた。
颯人が凛にメールを送った頃、凛は颯人にそろそろ自分からメールを送った方が、良いと思い携帯を触った瞬間に原崎 颯人 と表示されたメールが届いた。
『明日夜遅くても良かったら、会えないか?』
短い内容だが凛からしてみたら、好きな人から届いたメールはとても嬉しい内容だった。
「エヘヘ~、明日原崎くんと会えるんだ!! 何か暫く会ってないだけで、久しぶりな気がする」
ベッドに潜り込み凛は、颯人に『楽しみにしてます』と返信し抱き枕をギッと抱き締めた。
凛からの返信が届くまで携帯を眺めていた颯人は、携帯のバイブが鳴ってすぐに携帯を手に取る。
『楽しみにしてます』
自分が送った内容と同じく短い文だが、それだけで颯人は大満足だった。
ーー★☆★☆ーー
いつものようにバイトが終わり颯人は、凜の家の近くまで行こうとすぐに店から出る。
「へへ、コイツは良い女だねぇ!!」
「ちょっと、ヤダ! 離して!!」
「大人しくしてろよ」
普段表通りから行く颯人だったが、この日は凛と約束しているため、早く着くよう裏道を通っている途中に、男2人組が女性を襲っている場面に遭遇してしまった。
「だ、誰かーー!!」
「どーせ、叫んでも誰も助けに来ないよ」
「その誰かが、助けに来たらどーするの?」
「あ? 誰だ、テメェは?」
「ブッ殺すぞ! コラァ」
邪魔が入ったトコで男1人が颯人に殴り掛かるが、颯人はそれを避け男の目に狙いを定め殴り倒す。倒れた男に颯人は、止めを刺すように心臓目掛けて思いきっり蹴りを入れる。
「どうする? まだ、やる?」
仲間が倒れている姿に男は仲間を支え逃げて行った。
「あ、ありがとう」
「あ、いや……」
男2人組に襲われていた女性がお礼を言うが、声が震えており身体も震えていた。そんな女性に颯人は、安心させようと振り向いたら、襲われていた女性はバイト先の亜香里だった。
「は、颯人……くん」
「えっ?」
颯人が驚いている時に亜香里は、颯人に抱き付き涙を流していた。
「ゴメン……今日だけで良いから傍にいて」
女性に生まれて初めて、涙を流しならが言われる台詞に颯人は、そっと優しく腕を亜香里の背中に回し抱き締めた。
年明けて6日も経ちますが、
明けましておめでとうございます。
今年も宜しくお願いします。