好き 作:たまご
「……分かりました」
颯人は普段見せない亜香里の姿に、今日だけ傍にいるコトにした。颯人自身が誰かが傍にいるだけで、安心出来るコトを知っているから、選んだのだ。
颯人の言葉だけでホッとしたのか、颯人の背中に回していた腕の力が緩む。
亜香里の目は涙で潤んでいて、バイトの時とは違うメイクに思わずドキっとしてしまった、颯人は凛との約束を忘れ、亜香里のコトを考えていた。
颯人が亜香里を助けている頃、凛は颯人から『今から20分くらいには着く』とメールを受け取っていたが、20分経っても来なく心配していた。
「だ、大丈夫かな? 結構時間経ってるのに……」
携帯の時計を見ると、もうすぐ11時になろうとしている時間だった。
ブーブー
手に持っていた携帯が鳴り、凛が急いで携帯を見ると颯人からのメールで、『ゴメン、今日はちょっと会えそうにない……今度は、絶対に会えるようにするから』と書かれていた。
「今日は……ムリ……か……。でも、今度こそ約束守って貰わないと」
颯人からのメールを受け取った凛は落ち込んだが、次の約束に期待しながら、家に帰る。
裏道から亜香里の部屋に移動した颯人は、亜香里がお風呂に入っている時に施設と凛に連絡を入れた。
亜香里が住んでいる部屋は、6畳くらいの部屋が1つであとはキッチンやお風呂にとなっている。
「ゴメンね、あんなコトがあったから少し怖くて……」
お風呂上がりの亜香里が颯人に声を掛けるが、颯人はすぐに亜香里から目を反らす。亜香里の服が、胸元が空いた黒のシャツに短パンといった露出度が高い服を着ていたからだ。
「い、いや……そ、その……俺は、全然……」
お風呂上がりの亜香里から漂ってくるのは、シャンプーの良い匂いで、颯人は裏道の時と同じようにドキっとしてしまう。
「ありがとう……優しいよね、颯人くんって……それにあの時、かっこよかった」
最初は颯人にも聞こえていたが、後半になると独り言のように小さく呟いた。
「えっ?」
「ううん、何でもない! 早く寝よう」
「じゃ、俺が床で……「ダメ、風邪引くよ?」 でも……」
床で寝ようとする颯人の言葉を遮り、ベッドに颯人を座らせて気にしない様子で、ベッドの半分のトコまで行く。
「床で寝たら身体中が痛くなって大変だし……半分でも2人で寝れるから! それに、こんなコトになったのも私のせいだし……」
「……分かりました」
電気を消して颯人はベッドに入り、目を閉じるが隣に亜香里がいるコトで、緊張して寝るに寝れなくなる。そんな颯人の隣で亜香里が、颯人に話し掛けてくる。
「ねぇ、起きてる?」
亜香里に対してドキっとしたり緊張したりして、寝れてないが颯人は寝たフリをし、亜香里の質問に答えない。
寝たフリをしているのを知っているのか知らないのか、分からないが颯人に話し掛ける。
「いつからとか忘れたケド、颯人くんのコトがスキだよ……」
亜香里は言い終わると、寝たフリをしている颯人にキスして眠りについた。
ーー☆★☆★ーー
颯人と亜香里のバイトが朝に被ったのは、偶々なのかどうか分からないが、2人は一緒にバイト先に向かう。
颯人は夜のコトを思い出すと、ドキドキすると同時にこれから、どうしたら良いのか考えてしまう。
「ね、ねぇ、颯人くん。よ、夜のコトだけど……何か覚えてる?」
亜香里は夜自分がしてしまったコトに罪悪感があるのだろうか、いつもより落ち着きのない感じで聞いてくる。
この質問に心臓がいつもより激しく動き、ドキっとするが、亜香里に何も気付かれないように、普段と同じ感じで答える。
「いえ、何も……何かあったんですか?」
「ううん、何でもないの……あ、そんなコトより颯人くんの時間がある時で良いから、新しくオープンしたケーキ屋さん一緒に行かない?」
颯人の反応がいつもと変わらないと判断したのか、普段颯人が見る笑顔で話題を変える。
「じゃ時間が空いたら、バイトの時に教えますね」
道端で話す2人は周りから見たら、仲の良いカップルに見えてしまう。そのせいか通り過ぎる、彼女がいない男たちは颯人に「朝から見せ付けてんじゃねぇーよ、この野郎!」という目で睨んでいた。
駅に着く頃には周りにカップルも増えていて、颯人に突き刺さる鋭い視線は無くなっていた。
隣にいる亜香里は颯人に対して、罪悪感を持っているが、好きな人と一緒にいれる時間は幸せで、つい嬉しそうな表情になっている。その小さな亜香里の表情に気付いていない颯人は、駅のホームいた凛が見えていた。
「春崎……」
颯人が小さく呟いた凜の名前は、駅のホームいた本人には聞こえていないハズなのに、颯人と目が合ってしまった。
「……えっ? お、女の……人……?」
亜香里の姿もハッキリと見えており、自分の部屋で颯人のコトを考えている時に鏡でチラッと見た時と、同じ顔で幸せなコトが分かってしまう。
「な、何で……? ヤ……だよ、他の……人と……一緒に……いるのは……」
凛は本来乗る電車とは違う電車に乗り、颯人の前から消えた。
「春崎!!」
颯人の声が届く前に電車が出発して、颯人は大事なモノを失いドン底に叩き付けられた気分になった。
今回の話しは愚作になったような……