好き   作:たまご

2 / 12
噂の真実

颯人は部屋まで、凛を運びベッドの上に寝かせる。

凛の部屋は女の子らしい部屋で、綺麗に整理整頓してあり窓際のトコには、動物の可愛らしいぬいぐるみがまとめて置いてあり、ベッドには抱き枕が3つもある。

颯人は全体的に綺麗で、落ち着ける部屋だと思った。

 

「ありがとう」

 

凛は学校から家まで運んでくれた颯人に、礼を言うが颯人は首を横に振る。

 

「イヤ、俺の方こそかな……」

 

颯人のこの発言に凛の頭は『?』で、いっぱいになり何でという表情になる。

颯人にとって、父親と母親が死んでから初めて暖かい言葉をくれた凛に、嬉しいという気持ちになれたコトに感謝の言葉しかないが、凛は分かっていない。

感謝とは、ちょっと大袈裟な気がするな………と思う颯人がいた。

 

「なんで、俺の方こそなの?」

 

「ああ、ちょっとね」

 

凛は颯人に質問して返ってきた答えが、「ちょっとね」と意味深なコトを言われて気になる。

この時の颯人の表情は、学校で見るキツい表情と違って、普通の男子高校生が見せるような表情になっている。

そんな颯人に詳しく聞こうとした時に、颯人は フゥー と息を吐いて話し始める。

 

「俺が4歳の時に、両親が死んだんだ……父親は俺が2歳の時に事故で死んで、母親は過労死だった。」

 

 

父親が死んで収入が減り、母親はパートを掛け持ちしながら朝早くから夜遅くまで働き、幼い俺の面倒見ながらで相当ムリして働いていた。

そんな母親は風邪引いても働いて、そんな母親に俺は何も出来なかった。

もう一度、母親と暮らすコトが叶ったら今度は俺が、母親のために働こう。

 

 

颯人は昔を思い出しながら、凛に自分の過去について話す。

昔を思い出しながら話す颯人に対して凛は、本当にドラマや漫画であるように、小さい頃に両親がいないコトがあるんだとビックリした表情になっている。

そんな凛に「昔の話しだから」と軽く言う颯人を見て凛は、強いんだなと思い黙って聞く。

 

「両親が死んでから、父親のオジサンの家に預けられた。最初に覚えさせられたのは、家事全般で少し間違えただけで、殴られた。泣いても殴られたっけ」

 

幼い頃に虐待されたら、トラウマで思い出すのも辛いだろうに颯人は、過去に何もなかったように言う感じで話すのに、凛はやっぱり強いんだなと思う。

 

「食事もオジサンたちの好みの味付けじゃないと、殴られて熱々の鍋に顔を突っ込まれたり、残飯を無理矢理にでも食べさせようとされたし……」

 

颯人の真剣な目に凛は、嘘ではなく本当のコトを話していると分かると涙目になり、泣いてしまう。

 

「って、泣くなよ……昔のコトだから」

 

「……だって……がわい……そうだよぉー」

 

過去に颯人が体験したコトを話しただけで、自分のために泣く凛に完全に心を開いた颯人がいた。

颯人は凛が落ち着くまで待ち、話題を変えようと「噂の真実について知りたい?」と聞く。

凛は返事の変わりに大きく頷く。

 

「ある日、俺は不良たちにボコされている男子生徒を見かけた。子どもの時に暴力を受けていたから、すぐに助けようとした……」

 

さっきまでの表情と同じだったが、顔が曇り始め悲しいような、何かに怯えているような表情になる。

真面目な話しなのに凛は、色々な表情の颯人が見れて やっぱり普通の男の子なんだ と思いながら聞いている。

 

「すぐに助けようとしたけど、不良たちに邪魔されて喧嘩した……そして、すぐに男子生徒の方に行ったけど……」

 

颯人は当時のことを思い出したのか、声と身体が少し震えている。

そんな颯人に凛は、ベッドから降りて優しく抱き付き「ムリしなくても良いよ」と言うも颯人は、続ける。

 

「男子生徒の方に行ってすぐに、病院に向かったけど……途中で…………死んだ……」

 

颯人が言い終わると凛は、颯人に抱き付いていた力を強めて、優しく颯人に言う。

 

「もう大丈夫だよ。これから私がいるから、ね?」

 

「…………っ……悪い……今だけは……」

 

隣で颯人を抱き締めている凛に颯人は、自分の腕を凛の背中に回して抱き付き、今まで我慢していた涙を流す。

暫く涙を流した颯人の腕の中には、いつの間にか泣き疲れて寝ている凛がいて、颯人はそっとベッドに寝かせ帰った。

 

 

母親がいた頃は、転んで泣いた時は「大丈夫だから、もう泣かないの」と言って、抱っこして優しく頭を撫でられた。

でも、母親がいなくなってからは、誰も抱っこして優しく頭を撫でて貰えなく、逆に殴られてその度に母親が恋しくなった。

 

 

「ーーって、俺はもうガキじゃねぇーよ」

 

颯人は、母親のいた頃を思い出して凛に抱きついたコト後悔していた。

 

ーーーー☆★☆★☆ーーーー

 

それから2週間後には、すっかり元気になった凛がいた。

 

「おはよー」

 

「おはよー」

 

凛はクラスメイトでもあり、親友の 松波 由衣 に挨拶して、自分の席に座る。

 

松波 由衣は、黒髪に肩甲骨まである髪に、大きく丸い黒い瞳に柔らかそうな肌が特徴の女の子である。

学校では、黒髪美少女と言われて凛と同じくらいの身長で、豊満な胸にキュッと引き締まった身体である。

 

 

初めて男の人に抱かれて泣かれたの初めてだったから、ドキドキしたけど、今でもドキドキしてるのは何でだろう?

 

 

「ーん、ーーり~ん~さ~ん」

 

「うわっ!ど、どうしたの?由衣」

 

凛は颯人に抱き付かれ泣かれた時から、颯人のあのシーンが頭から離れなくつい考えてしまう。

その時に凛は、いつも心臓が暴れてドキドキしてしまい、周りの声など入らない時もある。

 

「どうしたの?じゃなくて、さっきから呼んでいたのに……何かあった?」

 

「な、ななな何でもないよ」

 

「………凛が話して来ない限り詳しく聞かないけど、何かに悩んでるんなら相談してね?」

 

「うん!ありがと、由衣」

 

その頃の颯人は、未だに母親のいた頃を思い出して凛に抱きついたコトを引きずっていた。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。