好き 作:たまご
いつもより早く起きた凛は、父に「我が春崎家に産まれたからには、何にでも1番で在るべきだ」と言われているため、朝から運動や勉強を長くしていた。
「学校の成績はどうだ?」
春崎財閥のトップである凛の父親が、娘である凛に新聞を読みながら聞く。普段から鬼のように厳しい表情の父親は、学校の成績を聞く時は、普段より厳しい表情になる。
「じゅ、順調です」
「そうか……1番でなければ、存在する価値は無いからな」
凛が幼い頃から言われ続けた言葉で、もし1番以外の成績だったら、必要のないモノだと判断され何も言われない。1番でも、「そうか」の一言で済まされる。
「はい……あ、あの、そろそろが、学校があるので……」
凛は父親から逃げるために、いつもより早く15分以上前に登校する。
校門前まで来ても凛の頭の中は、父親の言葉で一杯だったが、友達の挨拶と後ろにいた人物のお蔭で、解放された気分になっていた。
「ゴ、ゴメン! さ、先に行ってて」
「うん! じゃ、先に行くね」
友達と挨拶した時に後ろに颯人が見えた凛は、颯人と話すために2人だけになろうとした。
「(ドキドキするけど、頑張って話さないと……)」
好きな人を一目でも見るだけで、不安な気持ちや何かに縛られているような気持ちから、解放されるのは本当に颯人のコトが、好きだからかも知れない。
「あ、あの……お、おはよう」
「お、おう」
「「…………」」
挨拶した後のコトを考えていなかった凛は、何を話していいか分からず、黙り込んだままだった。
そのまま階段まで、一緒に歩くと颯人が「コッチだから」と言い、そのまま別れるようになる。
「(せっ、せっかく2人きっりだから放課後、話すのに誘ってもいいよね?)」
凛は颯人と話したいために、「今日の放課後……」と話し始めるが、急に恥ずかしくなり「な、何でもない」と言い、走り去った。
「(あー! アレじゃ、変に思われるよ!! 私のバカ!!」
恥ずかしくても、ちゃんと誘っていれば良かったと思う凛だった。
ーー★☆★☆★ーー
朝、凛に「な、何でもない」と言われて、落ち込んでいた颯人は、「自分が何か変なコトしたのでは?」と考えても、答えが出てこなかった。
「(次、会ったらちゃんと謝らないと……)」
いくら考えても答えが出てこない颯人は、自分が悪いと思い謝るコトにした。
そんな颯人の元に優太が、朝から落ち込んでいる颯人に声を掛けようと颯人の席まで来る。
「今日は、朝から落ち込んでいたけど、どーしたの?」
あまり表情に出ていないが、颯人と良く接する人なら少しの表情の変化でも分かってしまうのだろう。
「いや、別に……どうもしてないけど」
「ふーん……まぁ、お前もあの人もこの学校では、有名だから大変だと思うけど……」
優太は話を途中で止めて、鉄砲の形を手で作り颯人の方に向ける。
「あんまりボヤボヤしてると、誰かに獲られるかもよ……」
颯人に向けた手を軽く上にして、銃で撃ったようにする。
まだ、自分が凛のコトを好きだと自覚していない颯人は、「別に関係ない」と言いたかったが、言ってしまえば何か無くなる様な気がして言うのを止めた。
「おと、もう次の授業が始まるな。多分、普通にしとけば良いよ」
結局、優太が何を言いたかったのか理解しきれなく、そのコトで、また考えるのが面倒だったので、凛に会ったら謝ろうと颯人は決めた。
優太が颯人に話し掛けている頃、凛の方では由衣に相談していた。
凛がいつもする相談は家のコトだけだったが、最近では颯人のコトで相談している。
「それで、凛は逃げてきたのか……」
自分から話し掛けたとこまでは良かったが、後半の話しになると流石にマズイ。
「はい……」
「幼稚園生や小学生じゃないんだから……まずは、恥ずかしくてもちゃんと謝るコト!」
まるで母親が子供を叱るような感じで由衣は凛に話す。
「うん。は、恥ずかしくても、ちゃ、ちゃんと謝る」
良く放課後に2人だけで話せたなと思う由衣は、何も間違ってないだろう。
「その為には、また、放課後話してみた方が良いよ」
「……うん、ほ、ほ、放課後……」
今の内から緊張してどうすると思いながらも由衣は、放課後ちゃんと話せるようにリラックスさせようとする。
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