炎の少年~Only one Faith~   作:Aruki

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何気に少しずつ明くんがレベルアップしていってます。


第9話 実地訓練

「実地訓練......ですか?」

 

 今日はいつも通り楓さんに拷m......訓練を受け、ベンチで休憩中に楓さんが見下ろすように言ってきたことの意味がよく分からず、俺はつい復唱してしまった。

 

「そー。実地訓練ー。訓練場じゃなくてー、実際の現場で訓練することだよー」

 

「いや、言葉の意味はわかります......じゃなくて、何で俺が実地訓練なんですか?」

 

 実地訓練。

 確かに訓練場などでは感じることのできない現場の空気、というものはやはり実践でないと分からないかもしれない。

 スポーツマンが練習は完璧にこなせるが試合になると雰囲気に当てられてガッチガチに緊張する、みたいな。

 そんなことにならないよう実地訓練、というのは分かるのだが、まだ能力覚醒に至っていない俺ーー能力覚醒延長記録絶賛更新中ーーが実地訓練をする理由がよくわからない。

 先程のスポーツマンの例えでいけば、バットの握り方も知らない新人を野球の試合に起用するようなものだ。

 それよりも能力覚醒を目指す方が俺的にも、そして組織的にも優先ではないだろうか?

 《KTF》が俺を入れた理由の1つに、人員が足りない、というのもあるのだから。

 今の俺は《KTF》に所属はしているが、現場に出られないのだから《KTF》からしても今の俺に人員確保としての効果はない。

 そう考えての疑問だ。

 

「君の場合ー、むしろ今の段階で実戦を知っておいた方がいいかなーってー」

 

「俺の場合?」

 

「うんー。君の能力覚醒がいつになるか分からないから最近体捌きを中心的に訓練してたでしょー? だから実戦にでて実戦寄りな動きとか空気を知っておくべきかなー、と思ってー。能力がない状態で実戦っていうのはー、これからの君に間違いなくプラスの経験値になると思うからー」

 

 ......この人適当に見えてこの辺しっかりしてるよなぁ。

 まぁ、しっかりしてるから医務室の先生だなんて重要な立場を任せられているんだろうけど。

 どうしても普段の人を小バカにするイメージが抜けない。これは少し楓さんに失礼だったかもしれない。

 

「まー、本番でも体の使い方とか空気になれてないとー、女の子に痛い思いさせちゃうからねー。やっぱり勉強は大事だよー」

 

「おい、俺の反省と尊敬返せ」

 

 そうだ。この人はこうやって自分の評価を自分から下げているんだから俺が反省する必要はない。絶対にない。

 ていうか、この人は何でちょいちょいボケやら下ネタやらを挟んでくるんだろう? もういっそセクハラとかで訴えてしまおうか。

 

「でー、実地訓練は基本的に熟練者と一緒に行う決まりになってるからー」

 

「おいこら俺の話無視かよ」

 

 くそう、この人マイペースすぎる......

 なんか楓さんとは会話のキャッチボールが基本的に成り立ってない気がする。

 楓さんがピッチャーで俺はキャッチャー。投げるのは楓さんで取るのは俺。そんな構図が出来上がってしまっている。

 いつか絶対にその構図を壊してやる......!

 そんな明らかに女性に対して持つ考えではないことを心のなかで決心する。

 

「なにか質問あるー?」

 

「......とりあえず、俺の意見は基本全無視っていうのと、なんで俺の隣にさも当然のように彩歌が座っているのかは理解できました」

 

「あーっ! アッキーやっと反応してくれた、遅いよー!!」

 

 ぶー、と彩歌がいじけたように俺を見てくる。そりゃあ会話中に耳を引っ張ってくるとか突っついてくるとかしてきたら逆に反応したくなくなるわ。しかも反応したらしたで喜んで彩歌のテンション上がるし。こちとら大事な話しとるんじゃい。

 と、彩歌には10分ほど延々と説教したくなるが、今はそこじゃない。

 

「で、じゃあなんで楓さんの隣には奈菜がいるんですか?」

 

「わかんにゃいー」

 

 明らかに「私事情知ってるよー」という表情で惚ける楓さん。

 今イラッと来た。これはもう殴っても許されるレベルじゃないのだろうか?

 ていうか、にゃいってなんですか楓さん。ただ俺のことおちょくってるだけならその喧嘩買いますよ? もちろん俺の惨敗でしょうけど。

 

「私だって可能なら今すぐにでもここから離れたいですよ」

 

「いや、そんな本気で嫌そうな顔を俺に向けられても......ていうか、それならなおさらなんで奈菜はここにいるんだ?」

 

「......それはーー」

 

 そこから奈菜はたどたどしく(というより嫌々しく?)話始めた。

 奈菜の話だと、奈菜は先日閃雅さんに呼び出され、これからしばらく俺と共に行動するようにと言われたらしい。

 理由は2つ。

 1つ目は先ほど楓さんも言ったように俺の経験値アップ。

 奈菜は《KTF》でも屈指の実力者だ。その奈菜と一緒にいれば俺も奈菜から多くのことを学べるし、能力のイメージなども湧きやすいだろうとのこと。

 2つ目は......これは奈菜がすごく言いづらそうだったが、要は奈菜の極度な方向音痴が原因だった。

 学校は彩歌や風音と共に登下校しているし、《KTF》の中なら移動扉さえあれば行きたい場所に行くことができるので迷いはしないのだが、外に一人で出るとほぼ100パーセントの確率で迷うらしい。

 だから誰かこの町(というか俺たちの町)の地理に詳しい人間を奈菜につけようと上の方で決まったらしいのだが、それで熟練者をつけてしまうと実力者が2人固まってしまうことになり、ただでさえ足りていない人員がさらに足りなくなる、ということで俺に白羽の矢が立ったわけだ。

 もちろん、奈菜が行く場所はこの町だけではないだろうが、他の町や場所に行く際は俺が地図を見ろ、だそうだ。俺のことは俺がなにも知らないうちに決まってしまったらしい。別にいいけど。

 ちなみに閃雅さんの名前が出た瞬間に彩歌はものすごく嫌そうな顔をしていた。どんだけ嫌いなんだよ......

 

「ていうか、今言った感じだと結局奈菜と彩歌が固まって人手が足りなくなるんじゃ......」

 

「先輩もそう思いますよね。だから私はこれで失礼しまーー」

 

「まー、実地訓練も1日だけだしー、それぐらいならさすがに大丈夫だよー」

 

 楓さんの言葉に一気に沈んでいく奈菜のテンション。ていうか俺、そんなに嫌われてるんですか......

 風音にも怖がられてるし、俺ってそんなに女の子に嫌われる才能にでも溢れているのだろうか? 悲しすぎる。

 

「ということで、早速行こう? アッキー、なーちゃん!」

 

 言いながら立ち上がると、俺と奈菜の手を引っ張っていく彩歌。

 

「ちょっとーー」

 

「って、行くって今から!?」

 

「そうだよ! 思い立ったが吉日レッツゴー!!」

 

「えぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇえぇぇぇえ!!?」

 

 ......俺の絶叫が訓練場に木霊しました。

 

 

 

 

 

 

 

 

「くそ......楓さん絶対に知ってて今日まで黙ってたな......」

 

 現在地、いくつかある《KTF》の入り口の1つ。

 《KTF》には入り口がいくつか存在し、それは廃ビルの中にあったり、公園だったり、森の中にあったりと様々だ。

 入り口、といっても目に見える扉や門はなく、手の甲の紋章を出すと自動的にテレポートできるという装置のことだ。

 俺たちがいるのは、町の大通りの路地裏に設けられた入り口だ。

 

「まぁまぁ、きっとかえちゃんもなにか考えがあったんだと思うよ? 多分」

 

「......『きっと』と『多分』って意味被ってるからな?」

 

 はぁ、と俺は小さくため息をつく。

 せめて言葉の上だけでもしっかりとフォローしてほしかった。

 

「そんなことどーでもいいからさ。早く行こうよっ!」

 

「そうですね、行きましょう。一刻も早く。可及的速やかに」

 

「......おー」

 

 奈菜と彩歌(奈菜は意図的にだろうが)は俺のことなど気にせずにどんどん進んでいく。

 2人ともなにやら話していたが、なんだかよくわからない単語が複数出てきたので《KTF》関係、もっと言えばこの実地訓練についての話かもしれない。

 俺の実地訓練なのだから、本当はしっかりと聞くべきなんだろうけど......精神的疲労からちょっとその気にはなれない。

 なにをしていいのかも分からないので、とりあえず前を行く2人の姿を眺める。

 ......2人とも、こうして町を歩いてるだけだと、普通の高校生だよなぁ。

 俺も2人も、今日の実地訓練ーー見回りのために服装は普通の私服だ。

 奈菜は涼しげな白のワンピースの上に少し厚手の青色の上着という服装で、奈菜の清楚な感じによく似合っている。

 今の時期にワンピースはまだ少し肌寒くないか、と先ほど聞いてみたところ、「私が元々いた国よりも日本は暖かいのでこれでちょうどいいです」とのことだ。

 彩歌はフード付きの赤と黒のボーダーシャツに、黒のインナー。そして下はショートパンツだ。狙ったわけではないと思うが、ちょうど奈菜とは正反対になるような服装だった。

 こちらも彩歌のイメージによく合っていて、似合っている。

 今さらだけど......レベル高いなぁ、2人とも。

 

「これが楓さんに仕組まれた訓練とかじゃなければテンション上がるんだけどなぁ......」

 

「先輩、誰にブツブツ言ってるんですか? お相手は妄想子ちゃんですか?」

 

 気付いたら奈菜が隣に来ていた。

 奈菜はいつも通り辛辣な言葉をかけてくるが、その目は「気を抜くな」と俺に伝えてきているようだった。

 ......これは相当参ってるな俺。確かに訓練中にボーッとしているのは不味い。

 ひとまずは楓さんのことは忘れて集中しよう。

 

「ごめん奈菜。これからは気を付けるよ」

 

「それならいいんですが......とにかく、彩歌先輩のところへ行きましょう」

 

 そう言って早足で歩き出す奈菜。先に行ってしまっている彩歌に追い付くつもりなのだろう、が。

 

「待て奈菜。彩歌がいるのはそっちじゃない。反対方向だ」

 

「............ありがとうございます」

 

 お礼を言っている割りに奈菜の顔は少し気まずそうだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

「ここも異常なしっと。次はあっち行こうっ!」

 

 進行方向を指差して彩歌が歩き出す。

 見回り、というのは本当に言葉通りで、決められた区画を順繰りと回るだけだ。

 まぁ、見回りなんて正直なところなにも起こらなければただ散歩をしているのとあまり変わらない暇なもの、特にせっかちなタイプには少々辛い作業かもしれない(俺はやってみて分かったが、意外と見回りは好きだ)が、そんな中、彩歌の態度には少し驚かされた。

 彩歌のことだから、またどこかで子供じみた暴走をすると思っていたのだが、意外なことに真面目に見回りを行っていた。

 確かに、たまに商店街の店のショーウィンドウに気に入ったものなどを見かけるとそれを少し眺める、程度のことはしていたが、それぐらいは完全に許容範囲だろう。

 

「どしたのアッキー?」

 

 あまりジロジロ見ていたせいか彩歌が気付いて聞いてきた。

 

「いや、彩歌もこういうときは真面目なんだなぁ、って思ってさ」

 

 さっき楓さんにも思ったことだけど、普段がアレな人が仕事の時に急に真面目になるとどうしても違和感を感じざるを得ないというか......

 いわゆる、ギャップ萌え? 違うか。

 すると、俺の言葉に彩歌はジト目で返してくる。

 

「アッキー......今まで私のことどう思ってたの?」

 

「いやー、まー......」

 

「私だってちゃんとしないといけない時はするよ。アッキーにそんな風に思われてたなんてショック......」

 

「うっ......」

 

「先輩って女の子を傷つける才能にも溢れていたんですね」

 

「ううっ......」

 

 奈菜の言い分には微妙に納得がいかないが、実際今この時点で彩歌を傷つけたのは事実なのでなにも言い返せない。

 というか彩歌の落ち込んでる姿とかヤバイ。普段元気百倍を地でいく奴だから、こんなシュンとなってる姿とか痛々しすぎる。

 俺がどう謝るべきかとオドオドしていると、唐突に彩歌が吹き出した。

 ......こいつ、まさか。

 

「あはははっ、ごめんねアッキー。ちょっとからかっちゃったよ」

 

「......お前なぁ」

 

 彩歌はニハハ、とばつの悪そうに、でも楽しそうに笑う。

 こいつはなんでこう......悪戯とかにも好奇心とか子供みたいな考えしかなくて、悪意が全くないから怒る気が失せるというか。まぁ、仕方ないか、という気持ちになってしまう。

 結局俺はいつものように諦めのため息をつくことになる。

 それに今回のことは俺にも非がある訳だしな。

 そして彩歌は俺のため息を許しと捉えたのか、すぐさま笑顔になる。

 

「ありがとっ、アッキー。アッキーってやっぱ優しいねっ!」

 

「いや、俺もごめんな。確かに偏見はよくなーー」

 

「彩歌先輩、騙されないでください。明先輩はそうやって女の子をたぶらかして自分のものにしようと企んでいるんです」

 

「いや考えてないし!? 奈菜さんあなたそんなに俺のこと嫌いですか!?」

 

 くそう、もうちょっとでかっこよく締められるところだったのに!!

 

「なんと! それは気を付けないとね......」

 

「彩歌も乗るなよ!!」

 

 あはははっ! 彩歌の笑い声が響く。

 それに対して、俺はまたため息をつくしかなかったが、これもまた悪い気はしなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 見回りを始めて約3時間。

 奈菜が猫を見つけて危うくまた迷子になりそうになったり、彩歌がお腹が空いたと言ってコンビニでお菓子を大量購入しようとしたりと、色々あったがとりあえずは滞りなく進んでいた。

 そして今は最後の見回りコースである、この町最大の商店街を歩いているところなのだが......

 

「......んー?」

 

「ん? どったのアッキー?」

 

「いや......なんか周りから視線を感じるというか」

 

「妄想もほどほどにしておいた方がいいですよ? 先輩が考えるような美少女なんて、間違いなく先輩のことなんて見ていませんから」

 

「......最近、このなじり毒舌に慣れてきている自分が怖いッス」

 

 いやほんとに、これがそのうち快感とかに変わったらどうしようと毎日ガクブルですよ俺。

 それはそれとして、周りから妙な視線を感じるというのは本当だ。

 しかも感覚的にその視線はひとつではなく、複数あるような気がする。

 奈菜と始めて会った日の風の男。あのときの視線をいくつか感じる感じだ。

 俺はその視線の相手にバレないように雰囲気には出さずに、思考を切り替える。

 これは楓さんに教わった方法で、俺は五感が他人よりも発達しているらしく、相手の視線を読むような技術よりも、視線の方向を肌で感じた方が相手の場所や考えを割りやすいということだ。

 実際、あの風の男の視線も俺は感覚で察知していた。

 俺は小さく息を吸い込む。

 五感すべてで感じろ。音、気配、風景、匂い......

 ーーっ、これは!

 

「なんだよあいつ......あんな可愛い子2人も連れやがって......」

 

「うわ、あの子可愛い......」

 

「見てよあれ......二股?」

 

「サイテー」

 

 五感を使いまくった結果、分かったのは俺が最低男であることと周りの人たちからものすごく疎まれていることでした。

 ていうか、周りから視線感じると思ったらこういうことかよ!? なにこのガッカリ感!! 俺の緊張を返せ!!

 確かにこの2人ってすごい顔いいけど......本当にあるんだなぁ、嫉妬って。

 

「......ねぇ、アッキーはなんであんな急に黙って真剣な表情になったと思ったら苦そうなひょうじょうになってるんだろ?」

 

「どうせまたよからぬ妄想でもしているんですよ」

 

「うーん、それは怖いねぇ......」

 

「......あのねお前ら? 俺が聞いてないと思って好き勝手言ってんじゃねーぞ?」

 

 たく、こいつらは本当に。少しでも気を抜いたらすぐにこれだ。

 そう思ってため息をつこうとした瞬間。

 

 

 

 ーーゾクリ!! となにか冷たいものを急に当てられたような、不気味な感覚が体中を巡った。

 

 

 

「っ!?」

 

 あまりのことに体が一気に収縮し、顔が強張る。

 今の感じ......前の風の男なんか目じゃないぐらい......

 しかも今の感じは完全に俺たちに向かって敵意のようなものが向けられていた。

 でも、なんで? 目的が俺だとするなら前に楓さんが言っていたような力を誇示したい奴等か?

 それとも奈菜から彩歌、どちらかに対しての......

 いつも通りの平穏が急に180度反転したかのような突然な非日常に、混乱しきっている思考でとにかく2人に報告しようと思ったのだが。

 

「なーちゃん、今の感じた?」

 

「はい、多分3人ですね。方角は......西ですか」

 

 2人は今までの会話と全く同じ雰囲気のまま完全に事態を把握していた。

 ......それもそうか。そもそも俺が気づいたものを、この2人が気づかないなんてことはありえない。

 でも、やっぱりすごいな。俺なんて今ので軽く震え上がったのに、この2人はなんてことはないようだ。

 

「やっぱりアッキーも気づいたみたいだね、さっすがー!」

 

「2人ほどじゃないし、俺はびびっちゃったけどな」

 

「私たちはこれから今の視線の方へ行きますが......先輩はどうしますか?」

 

 奈菜がまるで俺を試すかのように聞いてくる。

 おいおいおい、これはさすがになめられ過ぎてはいないか?

 こんなところで足踏みしていてどうする。

 答えなんか、最初から決まっていた。

 

「もちろん行くさ。これは俺の実地訓練なんだからな!」

 

 

 

 

 

 

 

 

「ここか......」

 

 それから視線を感じた場所へ10分ほど歩いて移動し、着いたのは3階建てほどの廃ビルだった。

 というか、視線を感じただけで場所まで特定できるって、この2人がどうかしているとしか思えない。俺なんて方角すら怪しかったというのに

 ちなみに俺たちは廃ビルの目の前に堂々と立っているのだが......これでいいのかと聞いてみたところ、「相手にはもう気づかれてるからあまり関係ない」とのこと。

 それでもやはり真正面に立つというのは微妙に居心地が悪い。

 それにしても、戦闘中とかに一般人が入ってきたらどうするんだろう?

 

「廃ビルかー、町中じゃなくてよかったね。そうだたらちょっとめんどくさいし」

 

「そうですね。ここだったら軽い《人払い》で済みますし」

 

「《人払い》?」

 

「そういえばアッキーは初めてだったね。ちょっと見ててね」

 

 言うと、彩歌は何時ぞやのように小さな光球を手のひらに一つ出現させると、それを素振りするかのようにビュンビュンと宙を駆け巡らせ、小さな掛け声と共にぐるりと一気に廃ビルの回りを走らせた。

 するとそれに合わせるように、廃ビルは淡い黄色いカーテンに包まれた。

 

「これって......」

 

「《人払い》の術です。無能力者に不可視の攻撃をしてこちらに近づけなくさせるものですよ」

 

「攻撃って......それって被害はでないんだよな!?」

 

「もっちろん! 攻撃って言っても、常識で例えれば強い風を送ったり、気温を下げたりってだけだからね。誰だって風が強い場所とか寒い場所に好きこのんで行こうとはしないでしょ?」

 

 攻撃って、そういうことか......

 確かに、彩歌の言う通り、自分から嫌なところには行こうとはしないだろう。

 でも......

 

「俺も無能力者なんだけど、なんでこのカーテンみたいの見えてるの?」

 

「アッキーは日頃から訓練してるし、確か完全に無能力者って訳じゃないんでしょ? 魔力がある程度使えればこのカーテンも見れると思うよ」

 

「大体、いくら間抜けな先輩でも、本当に無能力者ならここに立っているのも精神的に辛いと思いますよ?」

 

 間抜けって......俺そういう評価受けてたんだ。

 でも確かに、言われてみると《人払い》をする前までと比べると何か得体の知れない圧力を感じる......ような気がする。

 

「まぁ、とにかく。突撃レッツゴー!」

 

「えっ、ちょ......作戦とかは!?」

 

「そんなもの歩きながらでも話せるよ! ゴーゴー!」

 

「「ええええぇぇぇぇぇぇぇぇええ!?」」

 

 本日2度目の絶叫。今度は奈菜も一緒にだった。

 

 




よーし、ついに次回は明くんが戦うぞー!
楓さんからのいじmーーじゃなくて訓練の効果が出せるのか!
そんな感じで次回へ続く......期待はしないでください。
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