炎の少年~Only one Faith~   作:Aruki

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こんにちは、適当に更新させていただきます。
SAOの方も大好きなのですが、あちらは最初からルールが決まっていて弄り幅が少ない感じがして、たまーに息が詰まることがあるんですよね......
そんなときはこちらを更新させていただきます。完全ルールなしの無法地帯になってしまいそうですが。



第2話 非現実

「......はぁ」

 

 現在下校中。

 授業は明日からということで今日は午前中のうちに下校となったのだが......

 

「奈菜すごかったな......」

 

 あの後、休憩時間になった途端に奈菜への質問やらなんやらが殺到して、隣の席の俺まで巻き込まれたのだ。

 しかも奈菜の隣、なんか親しげという無茶苦茶な理由で男子からの視線が魔貫○殺砲並だった。

 要は疲れた。

 俺はもう一度ため息をつき右手に持った地図を見る。

 閃涼学園には学園から1キロほど離れた場所に学生寮があり、自宅通学か寮通学か選べるのだが、俺は寮を選んだ。

 単純な話、家にいてもすることないし。

 で、今は寮に向かって地図に沿って歩いている。

 

「こっちか」

 

 荷物運びなどで寮に行ったことはあるのだが、学校から寮へ行く道と、家から寮へ行く道は違うので少々迷う。

 周りの景色などを眺めつつ歩くこと数分。ようやく目的地である学生寮が見えてきた。

 寮の手前には公園も見える。

 地図には公園に沿って歩く道が示されているけど......これは公園を抜けた方が早いな。

 そう考え、俺は公園の中に入っていった。

 

「へぇ~......」

 

 この辺って桜多いんだ......

 公園の中は遊具などはあまりなく、散歩コースやランニング目的という作りになっていた。

 そして公園の至るところには学園前にある桜の並木道に負けず劣らずの大量の桜の木が立っていた。

 しかも花の色や形が微妙に違うことから、かなりの種類があることが分かる。

 ここでお花見でもすればかなり盛り上がれるだろう。

 家から結構な近場なのに、今まで知らなかったのが悔やまれる。

 でも、これからしばらくはこの桜を見ることが簡単にできると思うと、これからの学校生活が少し楽しみになってくるといえばそうだ。

 俺はそんな想像をしていたからこそ、いや、おそらく身構えていても気付けなかった。

 

 

 

 背後からの人を殺せるほどの風の圧力に。

 

 

 

「かっ......は!?」

 

 あまりの圧力に近くの桜の木までフキトバサレ、一瞬呼吸ができなくなる。

 崩れ落ちながら俺は風が襲ってきた方に視線を向けると、俺が入ってきた公園の入口にどこかチンピラのような雰囲気を纏った男が、こちらに手を向けながらニヤリと笑って立っていた。

 その男は、その笑みを崩さないまま俺に近づいてくる。

 ーーまずい!

 脳が、というより、体が近付いてくる男に対して危険信号を発する。

 このままでは殺されると。

 一刻も早く逃げろと。

 そんな生存本能のようなものに従って、必死に体を動かそうとするが、恐怖に対しての震えと木にぶつけた右肩の痛みがひどく、緩慢にしか動けない。

 木に寄りかかってようやく立ち上がったときには、男はすでに俺の目の前まで来ていた。

 

「きひっ!」

 

 男はさらに口を三日月型に歪めると、無造作に右腕を振る。

 

「あがっ!!」

 

 そしてそれに応じるように再び風の塊のようなものが俺を襲い、俺は近くの木に叩きつけられる。

 2度目の衝撃と痛みで脳が揺さぶられたのか、または体の限界が来ているのか意識が混濁してくる。

 その間にも、男は笑いながら俺に近づいてくる。

 

「きひひ! お前、《能力者》って知ってるか?」

 

「能力者......?」

 

 初めて男の方から人間らしいコミュニケーションを取ってきたが、それでも男が言ってきたことは、日常生活ではあまり使われないような単語が混じっていて、すぐには理解できなかった。

 そしてそんな俺の反応に気分をよくしたのか、男はまるで子供がおもちゃを自慢するように話す。

 

「あぁ、俺みたいに《魔法》って呼ばれる能力を使える人間のこと、さ!」

 

 男がまた腕を振ると、風が吹くような音をたてて今度は腕を振った先にあった木に大量の切り傷が生まれた。

 

「こんな風にな」

 

「......お前、何が、したいんだよ」

 

「ああん? そりゃ決まってんだろーが!」

 

 男は両腕を広げて、今までで一番嬉しそうで、一番狂ったような顔になる。

 

「こんなすげー力、使わなくてどうするんだよ!? これさえあれば誰も俺に逆らわねぇ、すべてが俺の思いのままだ!!これほど楽しいことはねぇよことはねぇよ!! なぁ、お前もそう思うだろぉ!?」

 

 最後に、目の焦点が合っていないような目で俺に聞いてくる。

 ......狂ってやがる。

 そんな下らないことのせいで俺は巻き込まれているのか......

 俺がそんな気持ちを込めて男を睨むと、それが気にくわなかったのか、男は大きく舌打ちし俺の胸ぐらを掴んでくる。

 そのまま無理やり立たされる。ただでさえ頭がくらくらするのに脳が揺れてツラい。

 そして男は顔を俺に近づけてくる。

 

「あ? なんだよその反抗的な目は? てめぇは知らねぇかもしれねぇが、お前の命は今、俺が握ってんだよ。この手をお前に向けて振り下ろせば、お前の人生なんか簡単に終わらせられる。言ってる意味、分かるよな?」

 

「あぁ......分かってる」

 

 俺は答えると同時に、カクン、と首の力を抜いて頭を後ろに傾ける。

 正直、お前の言っていることはよく分からない。というか、結局その力を俺に誇示して何をどうしたいのかは分からない。

 でもな、俺もこれだけは分かってるんだよ《能力者》とやら。

 

 

 

 ......お前らは不思議な力を持っていても、身体能力そのものは運動神経抜群程度にしかないってことをな!!

 

 

 

 

「はぁ!!」

 

 俺は力を抜いていた首に力を入れ、至近距離から男の顔面目掛けて頭突きをかました。

 すると男は小さく悲鳴をあげてたたらを踏む。その際に俺の胸ぐらも離してもらえた。

 足に力が入らず再びその場に倒れ込んでしまうが、そんなことはどうでもいい。

 とにかく、今は逃げないと......

 俺は歯を食いしばってなんとか足に力を入れ、移動しようとする。

 

「うぐっ......!」

 

 が、移動しようにも少し振動を与えただけでも右肩や他の部位に激痛が走る。

 そのせいで視界が一瞬ぐらついてしまい、地面に倒れ込んでしまった。

 その瞬間。

 ビュワァァァァァァン!! という凄まじい音をたてて、俺が先ほどまで立っていた場所を最初とは比べ物にならないほどの風が通過していく。

 ......ちょっ、おいおい。今のはさすがに怪我レベルじゃすまないぞ。

 もしも今倒れていなかったらと思うと、背筋に冷たいものが走り抜ける。

 

「てめぇ......!!」

 

 俺が倒れている間にs衝撃が抜けてしまったらしく、男が自分の顔を押さえながら俺を睨み付けてくる。

 まず......体が、動かない......

 男が振り上げた右手に、俺でも分かるほどの風が集まっていく。

 そして風の音がこちらまで聞こえてくるほどのサイズになった瞬間。

 

「死ねえええぇぇぇええ!!!」

 

 男は力を溜めたその右手を、なんの躊躇もなく一気に振り下ろす。

 ここまでか。俺は思わず目を瞑った。

 そして肌で風がもうすぐそこまで近づいてきていることが分かると同時ーー不意に風の圧力が消え去った。

 

「がぁぁ!?」

 

 そして間髪入れずに聞こえてくる男の悲鳴。

 驚いて目を開けると、男は体を妙に強張らせて倒れていた。

 いったい何が......と、男の体をよく見てみると。

 ーー電気?

 男の体は微かにだがだが、まるで避雷針が帯電しているかのように電気を発していた。

 どういうことだ......?

 

「大丈夫ですか?」

 

「へ!?」

 

 俺の疑問に少し遅れて、背後からどこか透明感のある声がかかる。

 俺はこの場で聞こえてくるはずのない声に驚きながら振り返ると、そこには先ほど学校で再会したときとなんも変わらない様子で奈菜が立っていた。

 いや、変わらない、というのには少し語弊がある。奈菜は先ほどまでよりも幾分固い雰囲気を纏っていた。

 

「奈菜!? なんで......つっ!!」

 

 急に振り返ったのと、大声を出したせいか、遅れて体に激痛が走る。

 一回一回痛みがあまりに強く、気を抜くと冗談抜きで意識を持っていかれそうになる。

 そんな俺を見て、奈菜は僅かに目を細めた。

 

「......大丈夫ではなさそうですね」

 

 そう言うと、奈菜は俺から視線を外し、改めて男に向き直る。

 俺はもう一度声をかけようとしたが、それは叶わなかった。

 ーーっ。

 奈菜が纏っている雰囲気が、一瞬でさらに別のものに変わる。

 特に目は違った。今まではどこか澄ました目、というより、人をおちょくるような目だったのだが、今はなにかを覚悟しているような目だ。

 そして男の方も俺と奈菜の会話の間に電気は抜けたらしく、少しよろめきながらも立ち上がっている。

 

「なんだぁ、てめぇは!! 朝から付きまといやがって!!」

 

「あなたのような下衆な人間には教えたくありません。先輩を早く治療したいのですみませんが、早急に終わらさせてもらいます」

 

 言うと同時、奈菜は地面を蹴り男に一気に接近する。

 男はそれに対して、例の風を作り出す腕を振って距離をとろうとするが、奈菜は腰を落としてそれをかわす。

 そしてそのまま男の腹に掌底を叩き込む。が。

 

「きひっ! お前みたいな女の力じゃ正面からの打撃なんて効かねぇよ!!」

 

 奈菜の攻撃はどうやら威力不足で、男にダメージは入っていないようだ。

 そして男はニヤリと笑うと、奈菜を捕まえようと両手を伸ばす。しかし、それに対して奈菜は男から離れようという素振りは見せない。

 それどころか、少し不機嫌そうに呟く。

 

「これで終わりだと思われるのは心外です」

 

 そう言うと、男に当てている奈菜の右手に青白い電気発生する。

 

 

 

「《雷掌》」

 

 

 

 そして奈菜はそのまま帯電させた右手で男の体を押し、それだけで男の体を吹き飛ばした。

 男は短い断末魔を上げながら公園の反対側の桜の木にぶち当たり、そのままぐったりと動かなくなった。

 

「ふぅ......大丈夫ですか? って、これは先ほども聞きましたね」

 

 奈菜が振り返りながら言ってくる。

 その際に流麗な黒髪が舞い上がったことと、先ほどまでのことなんて何もなかったかのように舞い落ちていく桜のせいか、その姿はどこまでも神秘的だった。

 そんな奈菜に見惚れていると。

 

「......あの、聞いてますか?」

 

「へ? あ、うん!!」

 

 俺があまりに返事をしなかったためか、俺の顔の目の前まで自分の顔を近づけて聞いてくる奈菜。そしてそれに対して驚く俺。

 いや、無理ですから! こんなきれいな子に近づかれたら男なら誰だってこうなるって!!

 だが、俺のそんな反応は気にしていないようで、奈菜は手を差し伸べてくる。

 

「立てますか? それとも今から四足歩行に退化しますか?」

 

「いや、しないから......ありがと」

 

 俺は奈菜の手を借りてなんとか立ち上がる。

 それと同時に変に混乱していた頭も、もう何度目か分からなくなってきた奈菜の罵倒のお陰で正常運転を開始してくれた。

 そして今まで怒濤の展開に流されていたせいで気付けなかった当然の疑問にぶち当たる。

 そうだ、今奈菜は《魔法》を......でも、なんで......

 俺が頭が回転し出したことで逆にまた混乱しかけていると、奈菜が学校で会ったときと同じような無表情で言ってくる。

 

「すみませんが、私についてきてくれませんか? 先輩の解ぼーー手当てもしたいので......」

 

 今こいつ、解剖って言わなかったか......?

 

「いい、ていうかむしろありがたいけど......どこに連れていくんだ?」

 

 今ここには医療器具どころか応急器具もないから移動する、というのは分かる。

 だが、今目の前であんな戦闘をした相手ーー俺を助けてくれたとはいえーーの言葉をすぐに信用できるほど俺もバカではない。

 俺のそんな考えが伝わったのか、奈菜は少し落ち込んだような雰囲気になった......気がする。

 

「私としては先輩がついてこようとこまいとどちらでもいいんですが......先輩はいいんですか?」

 

「いいって......何が?」

 

 俺が警戒しながら聞くと、スッと奈菜は俺を指差す。正しくは俺が負傷した右肩を。

 

「その出血、放っておいたら死にますよ」

 

 確かに死ぬほど痛いけど、そんな大袈裟な......そう思いながら先ほどから左手で押さえている自分の右肩を見る。

 そこには、もとは紺色だったはずなのに、今は赤黒くなってしまっている制服があった。

 っっっっ!!!???

 自分が負った傷の程度を自覚してしまったためか、先ほどまで感じていた痛みがなんだったのか、というほどの痛みが体中を駆け巡った。

 しかも傷口からは、今もなおシュッケツガ続いている。

 

「かっ......あぁぁぁぁ......!!!!」

 

 痛みのあまり声も出ない。体がなにか他のことをするのを拒んでいるようだ。

 

 倒れ込むのだけは回避しようとなんとか足に力を入れて踏ん張るが、今にでも倒れてしまいそうだ。

 おそらくこの傷は、最初に吹き飛ばされたときに枝か何かが刺さってできたのだろうが、そんなことが分かってもなんの役にもたたない。

 

「少し痛みますが、我慢してください」

 

 奈菜はそう言って右手を俺に向けた直後、その手からーー先ほどと比べると微弱ではあるがーー電気を俺の肩に向けて放った。

 

「っつうぅぅ......!! あれ?」

 

 電気が当たった瞬間は激痛が発生したが、それは時間が経てば経つほど緩和していき、ついには痛みはほとんど感じなくなり、出血もかなり減った。

 そのぶん気のせいか肩回りが妙に窮屈になった気がするような......

 

「先輩の肩の細胞に電流を流して、痛覚の麻痺と傷付近の皮膚の膨張を促しました。これで出血も少しはもつと思いますが......」

 

「あ、ありがとう......」

 

 奈菜は、いえ、と短く返事をすると、未だ気絶している男に近づいていきーーというかさっきからその人動かないんだけど本当に大丈夫なんだろうか?ーー目の前まで行くと片手を地面に触れさせた。

 

「えい」

 

 そしてそんあ可愛い掛け声には似つかわしくない、視認できるほどの電流を自分の足元に流すと、次の瞬間には奈菜の周りを何か黒い砂が蠢き始め、木枯らしのようにいくつか砂の渦が出来上がった。

 奈菜が地面から手を離し、宙を掴むような仕草をすると蠢いていた砂たちが一気に男の全身を覆った。

 男を覆った砂は次第にそれぞれが規則的に動いていき、最終的には縄のような形状になって男を拘束していた。

 

「それって、もしかして砂鉄か......?」

 

「はい。私は電気を操れますから」

 

 なるほど、自分の電気を磁石の代わりにして砂鉄を操ったってことか。

 そんなこともできるのか、《魔法》っていうのは......

 奈菜は紐状の砂鉄をもう一本作ると、男に巻き付いている縄と交わらせる。

 俺がそんな一部始終を見ていると、今度は奈菜が観察するように見てきた。

 

「......なんだ?」

 

「いえ、先輩、妙に落ち着いてますね」

 

「は?」

 

「......いえ、なんでもありません。それでは行きましょうか」

 

 よく分からない会話をすると、奈菜はそのまま男を紐で引きずって歩き始める。

 さっき男を倒したときもそうだけど、よくあんな細い腕であんなに力出るよな......って、いやいや!!

 

「待ってくれ! だからどこに行くんだよ!!」

 

「......そうでした、まだ言っていませんでしたね」

 

 奈菜は俺の方へゆっくり振り返る。

 そして空いている左腕を俺がいる方向とは反対側に伸ばすと、奈菜の左腕は半ばから空中に溶け込んでしまったかのように霞んでしまった。

 そんな電気だとか風のような分かりやすい異常事態とはまた別の異常に、俺の思考が再び混乱しそうになるが、奈菜はそんなこと全く気にせずに言った。

 

 

 

「これから行く場所は、私たち能力者組織《KTF》の日本中央支部です」

 

 

 

 




SAOの方ほどちゃんとしようとは思っていませんが、適当な作品に合うような、適当な感想とかもらえると嬉しいかもです。
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