これであらすじの三人は出せましたね。
とりあえず、あらすじ詐欺にならなくてよかった......
風音に案内してもらって色々な場所を回った。
トレーニングルーム、休憩室、食堂、作業室etc......
しかもたったの10分足らずで。
さっきの儀式の場(門前)には片道だけでも20分以上かかったのにだ。
この時間短縮の秘密は、先ほど刻んだ紋章にある。
なんとこの紋章を刻んでいると、施設内では扉を開けたときに好きな場所の扉に移動できるらしいのだ。
まぁ簡単に言えばテレポートもどきができるわけだ。
さっき移動しているときに扉多いなとは思っていたけど......道理で。
扉が多ければ多いほど移動の効率は上がるもんな。
そんな感じで多くの場所を回って、今はお待ちかねの闘技場にいる。
「うわぁ......すげぇな......」
俺たちは闘技場の観客席2階にいるので、闘技場全体が見渡せる。
そこは壁も床も天井もすべて白く塗られているなか、床には黒いラインが長方形の形に走っている。
その長方形はいくつかあり、どうやらリングのようになっているらしい。
いくつもあるリングの中では何十人もの人たちが、1対1であったり、2対2であったり、総当たりでだったりと、様々な方法、形式で戦っていた。
その年齢層はてんでバラバラで、下は小学生中学年程度から、上は60歳ぐらいまでの老若男女。
そしてやはり目を引くのは、その能力。
風、水、電気、植物、氷など、多種多様な《非常識》が飛び回り、ぶつかり、消しあう。
そんな《非常識》を見せられて、俺は唖然するのと同時に、僅かにだが、ワクワクしていた。
こんな世界に俺はこれから入っていくのか、と。
俺が観客席の手すりから体を乗り出してその光景に釘付けになっていると。
「やっはー!! みなさんこんにちはー!!」
急に背後から大声が聞こえ、驚きのせいで手すりから落ちそうになるのをなんとか堪える。
ていうか、なんでヒーローショー風の挨拶......?
俺が恐る恐るーー大変失礼な話だが、声の主と関わるな、という謎の拒否反応が発生したからだーー後ろを振り返ると、そこには腰まである長い黒髪の一部をサイドテールにした、見るからに活発そうな同い年ぐらいの女の子が、にぱーと笑って立っていた。
「あ、彩歌ちゃん」
「おー! 誰かと思えばかざちゃんだ! 今日はどったの?」
「今、この二人を案内してるところで......」
「二人?」
彩歌と呼ばれた女の子は正面にいる風音を避けるように体を傾かせて、俺と奈菜を見てくる。
なんというか、動作ひとつひとつが妙に子供っぽいやつだ。
このまま彩歌(さん?)とにらめっこしていても仕方がないので、とりあえず自己紹介することにする。
「俺は椎崎明、今日からここでお世話になる......って、ことでいいのかな?」
「もしかして新人さん!? うはー、すごい久しぶりだよ! これからよろしくね!!」
「あ、あぁ......」
すげー、ぐいぐい来るな。
俺は隙あらば抱きつこうとまでしてくる彩歌を押し退けつつ奈菜に自己紹介ターンを視線でパスする。
「私は深井奈菜です。これからよろしくお願いします」
「えっ!?」
奈菜の名前を聞いた瞬間に目を丸くする彩歌。
どうしたのかと俺は奈菜を見るが、奈菜はなにか心当たりがあるのか僅かにだが顔をしかめていた。
奈菜がこういう顔をするのは珍しい......って言っても俺も奈菜と会ったのは今日だけど。
すると次の瞬間にはパァ! と表情を明るくし、一気に奈菜に近寄った彩歌がいた。
「あなたが今日から派遣されるあの《青電》!?」
「そうですが......」
あ、なんかさらに嫌そうな顔。
あと《青電》って奈菜のことだろうか?
「すごい強いんだってね、これからよろしくっ!!」
「......はい、よろしくお願いします」
奈菜はすぐにいつもの無表情に戻すと、彩歌に握られた手を握り返した。
さっきの顔はなんだったんだろう? まぁ、あんなに一気に詰め寄られたら嫌かもしんないけど。
「えっと......それでこちらが......」
「かざちゃんストーップ!!」
風音が俺たちに彩歌のことを紹介してくれようとした瞬間に、彩歌が手を振り割って入る。
すると、彩歌はかっこよくクルッとターンして俺たちの方を向き、親指で自分のことを指す。
「私のことは、Ms.Aと呼んでもらおうか!!」
「はぁ」
だから、なんでエージェント風? なんかヒーロー的なものに憧れているのだろうか? ていうか下の名前風音が言ってたからイニシャル使っても意味ないし。
あとそのポージングはちょっとエージェントっぽくないです。それだったら最初のヒーローショーで統一しようぜ。
そんな俺の疑問などは露知らずといったように、彩歌は話を進める。
「ねぇねぇ、案内してるんだったら私も一緒に行ってもいい?」
「別に俺たちはいいけど......」
「そりゃ、先輩はいいですよね。自分の近くに綺麗な女の子が増えるわけですから」
「おーっと、今回はそう来たかー」
その返しはちょっと予想してなかった......まぁ、予想できるようになったら色々終わりな気もするけど。
もちろん俺が「いい」と言ったのは奈菜が言ったような理由ではない。
風音は彩歌とはかなり仲がいいみたいなので、彩歌が一緒の方が心強いと思ったからだ。
......自分で言っててここまで怖がられていることがすごい悲しくなってきた。
「それでかざちゃん、あと回ってないところは?」
「えーっと、とりあえずここと、あとは支部長室かな」
「そっか! じゃあまずはここからだね、聞きたいことがあればなんでも聞いてくれたまえよ君たち!」
「はぁ......じゃあ、Ms.A」
「なに!?」
再びズズズイッと詰め寄ってくるMs.A。
わお、すごい嬉しそうな顔。なんかキラキラしてるし。そんなにMs.Aって呼ばれてそんなに嬉しかったのか?
しかも奈菜や風音にも負けず劣らず顔が整ってるから、不覚にも赤くなってしまった。
俺は適当に視線を逸らしたが、その先にジト目の奈菜がいて「うーわー......」と視線で言われてしまった。
「あー......Ms.Aはどんな能力使うんだ?」
「ほうほう、私の能力とな?」
「あ、あの......!」
そこで風音が俺に声をかけてくるが、すぐに目を逸らしてモジモジとするだけになってしまう。
それを見た奈菜が代わりに声をかけてくる。
「私たちは普段、他人の能力は詮索しないようにしています。変態の先輩とは違ってプライバシーでもあるので」
「あ、そうなんだ。Ms.Aごめんな。言いにくいこと聞いて」
知らなかったとはいえ、初対面の相手に失礼なことを聞いてしまった。これからは気を付けないと......
そう思っていたのだが。
「ううん、別にいいよ」
という、彩歌の返事に間の抜けた声が出てしまった。
「別にバラして損があるものでもないし、それにーー」
「それに?」
彩歌はパチリ、と音が聞こえてくるのではないかというほど綺麗なウィンクを俺に向けてきた。
「私の遊びに付き合ってくれたからねっ。そういう人に悪い人はいないから!」
「はい、こんな感じかな」
「おぉ......」
その後闘技場を案内してもらいながら彩歌の能力を見せてもらった。
その概要は《光》だった。
彩歌が自分の前に右手をかざすと、手のひらに電球のような光球が現れ、そのまま光球を自分の周りや宙を自在に行き来させ操ったり、光球の色を白から赤や青に変えたりもした。
本人曰く。
「私なら青色LED代わりとか簡単にできたけどね。まぁ、逆に言えばそれぐらいしかできない能力だけどね」
とのことだが、その際奈菜が、
「あや......コホン。Ms.Aはあんな風に言っていますが彼女はすごいですよ。私が前にいた国まで彼女の名前は届いていました。光系統の使い手では間違いなく世界でも5本の指に入ると」
と、小声で訂正してくれた。
正直実感は持てないが、俺はどうやら今すごい人たちに囲まれているらしい。
俺の強さ基準は俺が初めて見た戦闘の奈菜に置かれているので、今見せてもらった動作だけではすごいのかすごくないのかいまいち分からない。
いや、なんお能力も使えない俺に比べれば全然すごいんだけどさ。
「なぁ、今いろんな人が訓練してるけどさ......怪我とかってしないのか?」
さっきから他の人の訓練を見ていると、普通に攻撃が当たっているように見えるのだが、それがかすりだろうが、直撃だろうが、誰も慌てふためくような気配はまったくない。
俺が風の男に襲われたときのあの攻撃や、奈菜の攻撃も、洒落にならない威力があった気がするのだが......
手加減しているようには......やはり見えない。
「それは《ACS》のおかげだよ」
「《ACS》?」
「《Attack・Change・System》、攻撃変換システムの略だよ。本当はもっと長ったらしい名前があるんだけど、私たちはそう呼んでる」
「《ACS》は定された範囲内での傷や、ダメージを全て体内魔力に換算して与えるものです」
奈菜が変わって説明してくれるが、いまいち理解できない。
体内魔力に換算?
ダメージは体に残らないってこと......だよな?
俺の様子を見て彩歌は、うーん、と唸る。
「やっぱり口頭だけじゃ難しいよね。ちょっと見ててよ」
そう言うと、彩歌は黒いラインで区切られたリングの中に入っていく。
そして俺たちから4、5メートルほど離れた場所で立ち止まると、自分の左腕中ほどに右手を向ける。
「じゃあ、いくよー!」
掛け声はそれだけだった。
一筋の光が輝きを放ったかと思うと、次の瞬間には光の矢のようなものが目にも止まらぬ速さで彩歌自身の左腕に向かって放たれ、直撃した。
「つっ~、さすがにノーガードは効くなぁ」
だというのに、彩歌は先ほどまでとはなにも変わらない(といっても、顔は少し苦笑いだったが)、それこそ日常会話のような雰囲気で話していた。
いや、ここにいる人たちにとっての日常は実際にこういうものかもしれない。
でないとこういった訓練ごとに相手との信頼関係がぶち壊されてしまうわけだし、感覚的には格闘家の手合わせのようなものなのだろう。
だが。
「お前......腕切り傷みたいになってるじゃないか! 早く手当てしないと......」
「だよね~、少しぐらいはガードしとくべきだったよ。失敗失敗」
「失敗って......」
なんでそんな軽く......
俺が焦っているのとは反対に、彩歌は相変わらず笑顔だ。
すると彩歌は「見ててよ」と言い、そのままリングの外に出てくる。
その瞬間。
「なっ......」
「ねっ、大丈夫だったでしょ?」
彩歌の足が黒いラインを割ると、それまで確実にあったはずの彩歌の腕の傷は、今見ていたのが幻覚であったかのように光を発しながら消えていった。
それと同時に先ほどの彩歌と奈菜の説明を理解する。
「傷やダメージが換算って、こういうことか......」
「うん。まぁ、そのぶんしっかりと魔力は持っていかれちゃうんだけど......このぐらいなら全然なんてことないしね」
なるほど、これは便利だ。
何せこれがあれば怪我の恐れとかなにも考えずに訓練できるわけだし。
普通の組手ならともかく、能力で攻撃して怪我を繰り返してたらキリがないしな。
「でも、こんなに便利なものがあるんだったら、その......現場? にも実用すればいいのに」
「そこなんだよ!!」
「へ?」
「ここの《ACS》の本体は地中に埋まってるんだけどね? それがすごい馬鹿でかいの! だから実践投入しようと思ったら一つの大国すべての財産を使っても足りないぐらいの資金が必要になるんだてになるんだって」
製作にもお金がかかれば、事件が起こるたびに旅に運搬するのにもお金がかかる。小型化しようとすればまたお金が、てことか。
世の中世知辛いなぁ。
「じゃあ、そろそろ......」
「うん! そろそろ部屋に戻って寝よう!」
「違うよ彩歌ちゃーん......」
どこかに行こうとした彩歌を風音が必死に食い止める。
風音は彩歌に抱きつくようにして引き止めているわけだが、彩歌は何もないようにそのまま歩いていく......何気にすごいなこれ。
でも、次行くところって......
「Ms.Aはその、支部長さんが嫌いなのか?」
「嫌いってわけじゃないけど......ちょっと苦手で近づきたくないというか」
それを世間一般では嫌いというのだと思う。
俺は風音に聞かれたくないので、彩歌に近づいて耳元で話す。
「なぁ、部屋の前まででもいいから頼むよ。風音、俺のこと怖がってるみたいだしさ」
「それならいいけど......」
「助かるよ」
いや、本当に助かった。
俺たち3人だけだと、俺はこちらの常識をよく知らないから話しづらいし、奈菜は失礼ながらも基本無表情+無機質だから場は盛り上がらないし、風音は言わずもがなだ。
この空気で延々いるのは辛い。
そんな考えだったのだが、気づくと彩歌が俺のことをジーッと見てきた。
「えっと......どうした?」
「アッキー、なんか変わってるね」
「アッキーって俺のことなのかとかツッコミたいけどそれは置いておいて、俺、そんなに変わってる?」
「うん」
まさかの断言である。ていうか、1日にこんなにも「変」とか「面白い」とか「変わってる」とか言われるとは思わなかった。
俺ってそんなに変人なのか......?
俺が密かに自分の価値観に対して疑問を感じていると、彩歌が続けて言う。
「だって、今日初めてこっちのこと知った人が、他人のこと心配するとかおかしすぎて面白いよ?」
実際は昔から《非常識》のことは知っていたのだが、詳しく知ったのは今日なので訂正はしないでおく。
彼女たちからすれば俺はまだなにも知らないのとほぼ同じだろうし。
なので彩歌の言い分も、まぁ、分かるけど、おかしすぎて面白いって......
「......まぁ、変人ではないので俺が変わってても気にしないでください」
とりあえず、俺はこう言う他なかった。
クーデレ(デレる予定は未定)、健気系(主人公怖い)、元気っ子(どころかほとんど子供)。
やっと3人出せました。さーてあなたの好きな属性はどれかな?
中々に前途多難なメンバーが集まりましたが、適当に頑張っていこうと思います。
こちらの戦闘回はいつ頃になることやら......早く戦ってほしいものです。