悪魔に恋した代償は   作:きまぐれアップル

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四話 羨望と絶望と

 学生ならば誰しもが心躍るであろう修学旅行。

 その地の歴史と文化を堪能するという建て前で、学生は好きなところへ好きなように行けるのだ。教諭に提出する真面目な班のスケジュールから外れて、近くのレジャー施設で遊ぶなんてことはザラだろう。

 

 そしてその年の駒王学園は京都が修学旅行先であった。そのためか何人かの生徒はわざわざ電車を乗り継ぎし、隣県にある関西一のテーマパークに行く者もいた。

 一方、そういった輩とは対照的に悠馬たちの班は至って模範的に行動していた。清水寺や伏見稲荷大社といった京都の名所を巡り、古町の老舗で昼食をとった。

 悠馬たちの班には晶という暴走メンバーがおり、実に好き勝手しそうなのであったのだがそこは次期生徒会長候補、支取蒼那が見事にストッパーの役割を果たしてくれた。

 それゆえに悠馬たちは観光地ではペアで行動するというリア充イベントがあるものの、比較的穏やかに班行動を終えたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

「なぁ、お前たち修学旅行の成果、どうだった?」

 

 とある男子生徒が発言した。

 修学旅行最終日の夜、2年A組の男子生徒は一つの部屋に集まっていた。彼らの目的は恋バナ、学内ゴシップ、女子の情報の共有だ。つまりただの下世話な集会である。

 

「はいはーい! 俺、栄子ちゃんと手を握ることができました!」

「加藤お前……、あのあと栄子ちゃんハンカチで自分の手拭いてたぞ……」

「……えっ、それまじ……?」

 

 ちなみにこのクラスの男子のとある比率は2対8。何の比率かと言うと、彼女がいるかどうかだ。2がいるやつで、8がいないやつである。

 それはいくら女子の人数が多いからといって、彼女ができるとは限らないという現実を如実に表した数字であった。

 

「そういえば晶の班どうだった? グレモリーさんに姫島さん、支取さんってまじ羨ましいぜ」

「ああ、俺らの班ね……」

 

 北川晶はあきれた(まなこ)で部屋の片隅で縮こまっていた折谷健を見た。

 

「何でだよ晶……。何で俺は蒼那さんと一回も一緒のペアになることができなかったんだよ……」

 

 晶は間違いなく蒼那と健を何とかくっつけようと努力した。くじのイカサマがバレた後も、事あるごとにくじを行いチャンスを作った。

 されどいくらやっても健がペアになったのは晶か朱乃。特に朱乃は一緒のペアになる度に蒼那のことが好きであることをネタにして健のことをこれでもかというほど笑顔でいびり抜いていた。決してご褒美と言ってはいけない。健の純情な心はいたく傷ついたのだ……。

 

「健……」

 

 悠馬は片隅で震える友人の隣に寄った。何て声をかけていいかは分からないけど、ほっとくことはできなかった。

 しかし健は隣に悠馬が来るや急に飛び上がり、まるで親の仇かのように彼の胸倉をつかんだ。

 

「お前、お前のようなやつがいるから……!!」

「お、落ち着けって、健」

 

 なぜ健が悠馬に対して怒りを露わにしているのか。

 答えはシンプルである。

 

「何でお前はさりげなく全部リアスちゃんと同じペアになってんだ――!!!」

 

 そう、悠馬は全てのくじで見事リアスと同じペアを引き当てることができたのだ。健は全部外れたのにも関わらず。

 周りの男子は健に対し憐みの眼差しを向けると同時に、転校生に対して負の感情を芽生えさせた。いわゆる羨望とか嫉妬とかそういう感情だった。

 

「おい悠馬。お前どこまで発展したんだよ。手は繋いだのか?」

 

 ここで晶が悠馬を茶化してきた。胸倉を掴んでいる健の目つきがさらに険しくなる。

 

「いや、普通に会話していただけで特に何もなかったよ、さすがに」

「本当かぁ?」

 

 晶は悠馬に疑いの(まなこ)を向けると、素早く悠馬が持ってきていたカメラを掠め取った。

 

「こら、晶――」

 

 晶はカメラのデータを見て思わず声を漏らした。追随して見てきた男子一同も皆同じく顔を険しくする。

 

「おいおい、こりゃあ……」

 

 そこには悠馬とリアスが楽しそうにはしゃいでいる様子、一緒に抹茶ソフトクリームを食べている様子、お寺を背景にツーショットで写っている様子、などなど。まるで初々しいカップルのような写真が目白押しであった。

 

 悠馬はやるときは、やるのである。

 

「この裏切り者がぁぁぁっ!! おい、このイケメン野郎を吊し上げろ!!!」

「おう! おっと、こんなところに縛りやすそうな紐が……」

「首、首締まってるから! 健マジでやばい、やめろ! それと何で縄なんか持ってきているやつがいるんだよ。変態かっ!」

「そういえば俺バリカン持ってきていたような……」

「さすが野球部! よし、岡村それ持って来い!」

「死ね、お前らマジで死ね――」

 

 

 男たちの夜は長い。

 

 

 

 

 

 ◇

 

 

 

 

 

 一方、男子が集会をしている頃、女子も女子で一室に集まってだべっていた。こちらはトランプやらゲーム機やらが散らばっている男子部屋とは違い、女の子らしく小奇麗に整理された部屋で行われ、お菓子を食べながら気軽な女子トークを満喫していた。

 

「ねえねえ、修学旅行で男子と何かあったって人いる?」

「そういえば加藤が急に手を握ってきたなぁ。何かゾクゾクしちゃった。悪い意味で」

「栄子あの後手をハンカチで拭いてたもんね……。加藤くん、哀れ……」

 

 この女子会には2年A組のほとんどの女子が参加していた。リアスや蒼那、朱乃といった悪魔たちももちろん出席している。

 当人たちにとってはさほど益になることはないけれど、クラスメートと交流を図ることはいいことだし女の子らしく話し合うことは何よりも楽しいのだ。そこに人間と悪魔の違いなど生じはしない。

 

「ところでさ、うちのクラスの男だったらみんな誰とつき合いたいと思う?」

 

 一人の女の子がそう発言した。修学旅行によくあるありふれた話題の一つだけど、面白いように一同は喰いついた。

 

「私は顔だけなら北川くんかな」

「ああ、晶ね。確かに顔だけなら分からなくはないわ。けれどあいついろいろと、ね?」

「うん……。つい最近もサッカー部のマネージャーの一年と別れて、今は茶道部の3年の先輩とつき合っているんだよね、確か。本当にとっかえひっかえって感じするよね」

「一緒に居る分には楽しいけど、つき合うって考えたらやっぱり別だよね……」

 

 大概女性陣の晶に対する評価はそのようなものであった。

 本人にとってはただ満足いくように青春を謳歌したいがために行動をしているつもりであり悪気はない。告白されたからつき合って、合わなかったら別れる、それだけである。ただそのスパンが周りからとやかく言われるくらいに短いのだ。

 

「凜子は?」

「わ、私は月城くんかな」

「え、凜子も月城くんなんだ。私も月城くんが一番かな」

「私も」

「それは同意せざるをえないわ」

 

 そして話の中心は晶から悠馬へ。悠馬も晶に劣らず顔立ちがよいのである。

 しかしそれにしても女子の好みはこうも似るものなのか。結果、なんと過半数が悠馬を推した。なかにはクラスに彼氏がいる女子もそう言った。現在男子部屋で悠馬を縛り上げている男子たちは実に正しい行いをしていた。

 

「月城くんってかっこいいだけじゃなくてすごい優しいんだよね。前なんか手持ち無沙汰だからって日直の仕事手伝ってくれてね。すごい頼りになるなぁって」

「私も。前階段から転びそうになった時、咄嗟にかばってくれたんだよね。月城くんの方が怪我酷かったのに何でもないかのように私の心配してくれてさ。すごいキュンってした!」

「何その典型的な王子様。そういえば悠馬くんって運動神経いいよね。前の体育のバスケの時なんかバスケ部の折谷並みに動けてたし」

「北川くん×月城くん。いや、月城くん×折谷くんも……」

「それに月城くん確かバンドをやっているんでしょ? 聴いてみたいなぁ」

 

 もし、男子たちの耳にここでの話が一言でも入っていれば悠馬に命の保証はなかった。男のロマンを独り占めしているのだ。当然である。

 

 すると悠馬の話ということで、自然と女子たちの視線がリアスに集まった。

 

「そういえば、グレモリーさんって月城くんと仲いいよね? 屋上で一緒にいるところ見た人もいるらしいし。もしかしてつき合ってたりして」

「わ、私? そんなことないわ。ただよく話すだけよ」

 

 リアスはバッサリと否定した。確かにリアスにとって悠馬は最近よく話すようになった男の友人ではあるものの、別に異性としてどうのこうのとは思っていなかった。

 

「そうなんだぁ。けどリアスさんと月城くんがつき合ってたら面白そうだなぁって思ったんだけどな。すごい映えそうだし」

 

 クラスメートの一人がそう言った。リアスはもしそうだったらの仮定をちょっとだけ想像する。人間と結ばれることなんてありえないことだけれども、もし悠馬のような相手が縁談の相手だったら。

 きっと女にだらしないと噂のライザー・フェニックスより何十倍もいいだろう。

 

 すると隣にいた蒼那はニヤニヤして口を開いた。

 

「そういえばリアス、今日の班行動はずっと悠馬さんとペア行動していましたね。どうでした? 人気者の悠馬さんと一緒になれたのは」

「えっ、何それ!? 超気になるんですけど!」

「ちょっとソーナ!」

 

 一気に部屋の温度が上がった。今まで具体的な恋バナがなかっただけに見事に女子たちは前のめりになってリアスに喰いついた。

 

「ねぇ、どこまでしたの? 手は繋いだの?」

「いや、ただ普通に会話をしただけで特に何もなかったわよ。みんなが期待しているようなことは。だいたい晶の悪ふざけでそうなっただけだから」

 

 するとその時、女子たちの携帯が震えた。女子たちの携帯が一斉にメールを受信したのだ。

 

「こ、これは……!」

 

 一人の女子がメールに添付されてあったファイルを開いた。

 そこには悠馬とリアスが楽しそうにピースツーショットしている写真がいくつも入っていた。発信元はもちろん絶賛悠馬を尋問している男子たちである。

 

「リアス、随分と楽しそうですね。リアスがこんな楽しそうにしている表情なんて見たことないかもしれません」

「そ、それってつまりそういうことですよね……、グレモリーさん……?」

「ソーナ……、後で覚えてなさいよ」

 

 リアスはここぞとばかりにからかってくる蒼那を睨みつけた。本来であれば今すぐにでも手を出したい。しかし彼女の背後には美味しそうな餌を見つけた獰猛な獣たちが控えていた。

 

「グレモリーさんいいなぁ、月城くんとつき合ってるんですか。羨ましいです」

「だからつき合ってないわよ!」

「ねぇねぇ、この写真クレープ一つしか写ってないけどこれってもしかして二人で一つってやつ?」

「それはただ悠馬が私に奢ってくれただけで一緒に食べたわけじゃ――」

「え、奢ってくれた!? それはもはやそういうことだよリアスちゃん!」

「もう! それはただジャンケンで勝っただけよ! そういうことじゃないわよ!」

 

 リアスは真っ赤になってクラスメートの揚げ足取りを否定し続けた。しかし否定すればするほどクラスメートたちは面白がってリアスに喰い下がっていった。

 とはいえ、リアスもこの状況を満更でもないと思っていた。悠馬からどう思われているか分からないけれど、想われること自体に悪い気はしない。それに今まで距離があったような気がしていたクラスメートたちとこんな些細なことで親睦を深めることができてちょっと嬉しかった。

 

 一方、リアスを取り囲む女性陣から少し離れたところで朱乃はリアスにとがった視線を送っていた。朱乃はその悠馬という転校生とリアスとの関係に一抹の不安を抱えていたのだった。

 

 

 

 

 

 ◇

 

 

 

 

 

「それにしてもさっきは参ったわね。あそこまで喰ってかかられるとは思わなかったわ。悠馬って思った以上に人気あるのね」

 

 長かった女子会が終わり、リアスは朱乃とともに自室へと歩みを進める。

 リアスは何だかんだ根掘り葉掘り聞かれたけれど、クラスメートたちとたくさん話せたからなのか、とても嬉しそうな顔をしていた。

 対照的に、そんな顔をしているリアスを見て朱乃は目を鋭くさせた。

 

「リアス、あなた悠馬くんのことをどう思っているんですか」

「えっ?」

 

 リアスは朱乃の顔を見た。いつもは穏やかな笑みを浮かべている彼女が、いつにも増して真剣な表情をしていた。

 

「いやね、朱乃ったら。どうしたの、そんな顔しちゃって」

「リアス」

 

 朱乃はただ低く重たい声で問う。

 リアスも浮かべていた笑顔を解いた。そして少しだけ悲しげな表情をした。

 

「……ただの友達に決まってるわ。人間なんて、好きになれるわけないじゃない」

「そうですね。分かっているのならいいのですが、あまり人を勘違いさせるようなことはしないでください」

 

 朱乃は強い口調でリアスを咎めた。

 リアスはフェニックス家のライザーと婚約することになっている。一応仮ではあるのだが。

 

「私たち悪魔と人間は異なる種族です。万が一でも結ばれた場合には両陣営から凄まじい圧力がかかります。増してやあなたの場合、フェニックス家との縁談を断ることになるわけですからね」

 

 グレモリー家もフェニックス家もリアスの行動には目を光らせている。万が一にもリアスが勝手な行動をしてしまわないように。

 もし、ただのクラスメートが新たな候補と間違われ目をつけられてしまったらどうなるか。悪魔は人間を下等種族として見下している。だからそうなった場合、間違いなく狙われた人間は……。

 

「分かってるわよ。そんなことくらい……」

 

 リアスは視線を落とした。

 リアスは自分でも分かっている。自分に自由などないことくらい。

 

「ごめんなさい、リアス。私はただ……」

「大丈夫よ、朱乃。あなたは私のためを思って言ったのでしょう。なら、何も悪くないわ」

「リアス……」

 

 朱乃は思う。久しぶりにクラスメートと談笑できて楽しそうにしているリアスに、わざわざ釘を刺すようなことを言う必要はないのではないか。自分の言っていることは余計なお世話なのではないのか。

 だけど朱乃は主にしっかりと伝えておきたかった。異種族間との関係なんて、ただ儚く苦しいだけであると。

 人間であった朱乃の母は堕天使である父と結ばれたために殺された。朱乃はそんな悲劇を二度と起こさせたくはなかった。

 名門グレモリー家の次期当主が人間なんかと結ばれることがあったら相手にとってもリアスにとっても間違いなく不幸なことになるのだ。

 

「そうだ、朱乃。私喉乾いちゃったからちょっと飲み物買ってから部屋に戻るわ。先に部屋に戻っててもらえる?」

「……分かりましたわ、リアス」

 

 リアスは軽く手を振ると、進んでいった道を戻った。リアスは朱乃と目を合わせないでそのまま行ってしまった。

 

 

 

 

 

 ◇

 

 

 

 

 

 一方、男子たちにボロボロにされた悠馬はようやく解放されて晶とともに自室へ戻ろうとしていた。悠馬と晶と同じ部屋を割り当てられた健はというと、『リア充どもと一緒にいると心が折れる』と言って継続して男子会に参加している。

 

「しかし驚いたな、悠馬。まさかお前がそこまで積極的だったとは思わなかったわ」

「だから、ただ普通に楽しんだだけだって。リアスだって多分何とも思ってないはずだよ。ただの友達感覚だって」

「どうだか」

 

 悠馬は口では否定した。だけど心の底ではそうだったら嬉しいな、と淡い期待を抱いてもいた。

 

「あれ。おい悠馬。あれリアスちゃんじゃね?」

 

 悠馬は晶が指差した方向を見る。そこには自販機コーナーのベンチにただ座っているリアス・グレモリーの姿があった。

 

「あら、月城くんと北川くん……」

 

 悠馬は急なことに一瞬何て声を掛けていいか迷った。今さっきまで男たちからリアスについて尋問されていたのだ。それはもう話しかけるのも気恥ずかしくなるであろう。

 すると晶が悠馬の肩を強く叩いた。

 

「悠馬、じゃんけん」

「えっ?」

「いいから。ほら、じゃんけんぽん」

 

 いきなり晶にじゃんけんを挑まれ、悠馬は咄嗟にチョキを出した。一方の晶はパーだった。

 

「おっ、さすが悠馬じゃんけん強いな。よし、じゃあジュースを奢ってくれ」

「はっ? 何で勝ったのにジュースなんか……?」

「漢気じゃんけんに決まっているだろ? ほら、勝ったんだからもっと喜べって」

 

 そして晶は『あと健の分も頼むな。俺はコーラで、健はまぁあいつの好きそうなので』と言って、そのままそそくさと場を後にした。

 

「ふふ、班行動の時もそうだったけど北川くんって本当に面白いわね」

「そうだね。本当にいらないところで知恵が回るやつだよ」

 

 きっとじゃんけんで悠馬が負けた場合だって、晶は悠馬をこの場に残しただろう。本当に余計なことばっかりしてくれるな、と悠馬は思った。

 しぶしぶ悠馬は自分用のお茶と晶の分のコーラ、健の分のいちごミルク、そしてもう一本ブドウジュースを購入した。

 

「はい、これ」

「えっ……。あ、ありがとう」

 

 悠馬はリアスにブドウジュースを手渡し隣に座った。

 

「誰か待ってるの?」

「いいえ、ただ少し考え事してただけ」

「そうなんだ」

 

 悠馬は買ったばかりのお茶を開封し、その場で口をつけた。

 

()()くんは早く戻らなくてもいいの? 飲み物ぬるくなっちゃうわよ」

「いいよ別に。どうせぬるくなったって、あいつらそんな気にしないから」

「そうかもね……」

 

 リアスは短くそう言って、受け取ったジュースのラベルに視線を下げた。リアスの表情はどことなく硬かった。

 悠馬はどことなく最初にリアスと会った時を思い出した。そういえばあの時の彼女もこんな感じだった気がした。

 これは何だか気まずい。悠馬は何とか明るくしようと考えを巡らせた。

 

「ああそうだ。リアス、僕のことは悠馬って呼んでね。まだまだ修学旅行ルール適用中だから」

 

 しかし急ごしらえで出てきた言葉がそれだった。

 とにかく何か言って場をつなげようと思ったのだが、出てきた言葉があまりにも柄じゃない。悠馬はなるべく顔には出さないように振る舞うも、耳は真っ赤に染めあがっていた。

 だけどリアスは特に気にした様子はなく、ただ穏やかに微笑んだ。

 

「そうだったわね。忘れてたわ、悠馬」

 

 リアスは自身の抱えていることを悟られないよう笑顔を作った。

 基本的にリアスは一度名前で呼ぶようになったら、ずっと名前で呼ぶようにしている。だけど直前で朱乃に釘を刺された影響か、つい悠馬たちを名字で呼んでいた。

 

 

「何だかこうやって二人でいるのって学校の屋上にいる時みたいね」

 

 リアスはジュースのふたを開け、中身を軽く飲んだ。

 

「そうだね。ここで僕がミュージックプレイヤーを持っていれば完璧だったんだろうけど。そういえば前に話したこっちでライブをやるんだったら見に来てくれるって話覚えてる?」

「覚えてるわよ。もしかしてもう決まったの?」

「いや、そういうわけじゃないんだけどさ。もうすぐ行われる学園祭でステージ借りられたらやりたいなと思って」

「けどメンバーのお友達、他校の子何でしょ? それって厳しくないの?」

「まぁそうだろうね。だけど数少ない機会だから交渉していきたいなって思って。それでさ、もしやることになったら是非来てよ」

 

 悠馬はリアスの目を見つめて言った。

 リアスは朱乃の話を思い出し一瞬、言い淀む。しかしそれはほんの一瞬で、リアスはすぐに返答した。

 

「ええ、もちろん。楽しみにしているわ」

 

 悠馬はほっと胸を撫で下ろした。自分たちのライブに人を誘うのははじめてではなかったけど、約束できてここまで嬉しかったことはなかった。

 

「じゃあ約束だよ。僕、一生懸命練習してくるから楽しみに待っててね」

 

 

 

 悠馬のここでの感情はもはや恋と断言できるだろう。女の子のことで一喜一憂しているくらいなのだから。

 問題なのは本人がこの感情を恋と認めるかどうか。悠馬は未だにこの感情を経験したことがなく、受け入れがたく思うかもしれない。

 しかしそれは時間の問題だ。いずれ悠馬はそれを恋と認め、リアスに想いを打ち明けようと考えることになるだろう。

 そうなった時、リアスはどう反応しどう行動するか。それは現段階ではまだまだ分からない。だけれど円満に収まるなんてことは絶対にありえない。

 何せ彼らは朱乃が言う通り、種としての根本が違うのだから――。

 

 

 

 




キャラクター心情まとめ
悠馬:リアスが好き
晶:行け悠馬、リアスを押し倒せ
健:悠馬とリアス何て知ったこっちゃないが、蒼那さんまじ好きです

リアス:悠馬はいい男友達
朱乃:つき合っちゃだめ!
蒼那:面白そうだからけしかけちゃおう
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