幻想の世界で夢を追う   作:ハロルド

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アルカディアの方で「盗賊」の名を使い投稿していたものをこちらにもマルチ投稿


そしてこれがおそらく私の本気、これ以上のクオリティは期待するだけ無駄かと


ー1話ー

「シャンハーイ?」

「ホラーイ!」

「あははは………やっべ、俺もついに頭おかしくなったのかよ」

 

 

何で、こんな事になってんだろう。

俺の人生、何処で狂い始めたんだろう。

どうして、こんな所にいるんだろう。

一体ナゼ、俺は………死んでいないんだろう?

 

 

そう、アレは俺の感覚ではつい数時間前の出来事だったーーー

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「会社が……倒産……?」

 

 

突然の知らせに、驚くでも嘆くでもなく、俺の反応はただ疑問に思うというだけだった。

それなりに長く働かせてもらっていた、社員たちとも良好な関係を築けたと自負している会社が潰れたというのは、俺にとってはそれ程に珍しい話でも無かったから。

 

 

生まれてこの方、幸福だったことなんて日々を生きていられる事以外には無いような人生。

大抵の乗り物には轢かれたし、大抵の物で傷付いた。

大抵の試験には落ちたし、大抵の食べ物には当たったことがある。

家の経済状況も芳しくないし、両親だって不仲からの別居。母方に引き取られた俺だったけど、新しく作った裕福な男に邪険にされて、家を宛がわれた。実質的に捨てられた様なもんだろう、生活費と家賃の振込が途絶えないのは救いだ。

 

 

とは言っても振込なんて最低限、日々をギリギリ食いつなげる程度だったから、毎日がバイト三昧。小中はまだしも高校なんてマトモに通える筈もなく中退、そのままバイト先にて働きが認められて正社員になれた時は俺にも運が回ってきたのかと思ったが………

 

 

「そう、ですか」

「えぇ……すみません、私が至らないばかりに。皆さんを路頭に迷わせることになってしまって………うぅ」

「何言ってるんスかヤマさん! ヤマさんが今まで居てくれたから俺たちは路頭に迷わずに済んだんスよ!」

「そうそう! ヤマさんは悪くねぇ! 悪いのはあの鬼田の野郎だ!」

「ヤマさんに拾われて世話になった恩も忘れて、会社の金を持ち逃げしやがって……!」

 

 

鬼田、というのは元ウチの社員。ヤマさんが連れてきた10代半ばの若造で、俺と似たような事情で職を探して居るところを拾われたらしい。

計算が得意だったために経理担当だったのだが、先日会社の金が無くなった日から行方を晦ましている。元々、愛想も良くなく喧嘩っ早い奴で評判が良いとは言えなかった。だからソイツが犯人だと断定するのにそれほど時間は必要じゃなかった。

 

 

およそ2000万、青少年が犯罪に走るには過剰過ぎる額だろうとも言える。そしてそれを失った会社が倒産するのもまた当然と言えた。

 

 

それだけなら、たまにあった周りを巻き込むタイプの俺のツイテなさだと思えたのかもしれないが………事はそれだけに留まらない様だった。

俺たちが集まっていた社長室のドアが乱暴な音を立てながら開け放たれる、そこからいかにも自営業してますといった風貌のスーツ姿の男達が数人現れ、こちらに向けて怒声を浴びせながら入ってくる。

そして奥から1人、ボスらしき男がやってきた。飄々とした印象を抱かせる狐目の男、何処か胡散臭い様はその職に合っていると思われる。

 

 

俺たち社員は黙って聞いているしかなかったが、どうやらその盗られた金というのが事業拡大の為に金融機関から借りていたものらしく、盗まれたという事態を耳聡く聞き付けてここまでやってきたとのことだ。

寄りにも寄ってそんな危なそうな場所から借りてしまうなんて、とヤマさんに対して少々の憤りを感じてしまったが、ヤマさんだから仕方がないとも感じられる。

 

 

そもそもがヤマさんは俺程では無いにせよ、中々の薄幸人生だ。家は中流家庭で、それなりな親の期待を感じつつも二流企業のサラリーマンに就職。親からのプレッシャーに耐えきれず会社を辞め、自ら立ち上げた企業でここまで持ってきただけでも賞賛に値するだろう。

その後は結婚も経験したのだが、結局は上手くいかずに破局。ストレスで髪もボロボロと抜けていき、40代半ばだというのにもはや頭部に髪は一部しか存在していない見事な禿頭だ。

それでも人柄の良さや誠実さ、面倒見の良さのお陰もあって、ここまで何とか持っていたのだが……

 

 

「……山内さん。借りたら返す、これ常識です。分かりますよね?」

「は、はい……ですが、我が社には……」

「えぇ、えぇ。分かっています、御宅の社員がお金を持ち逃げしたんでしたよね。流石に無いお金を持ってこいとは言いませんよーーー代わりに、他の手段で払ってもらいますが」

 

 

そこからの俺の意識はあまりハッキリとしていない、なんだか他人の記憶を覗き見ている様で現実味が感じられなかったから。

薬品臭さを感じたので、恐らく睡眠薬でも嗅がされたのではないかと予測した。

確か……臓器契約………新薬実験……マグロ漁船………そんなことを奴らは言っていた様な気がする。どうやら俺たちの個人情報や戸籍なども抹消されてしまったらしく、名実共に俺たちは『存在しないこと』にされてしまったらしい。

 

 

ーーー影が薄くて忘れられることはあっても、本当の意味で『忘れ去られる』なんて体験は初めてだなぁーーー

 

 

そんな事を悠長に考えながらも、気付けば俺の眼前には澄み渡る青空が存在していた。

 

 

最初は訳が分からず棒然と魅入ってしまい、正気に戻るまでにそれなりの時間を要したのではないだろうか。あいにくと時計などという物は俺にとっては高級品なので持っていないため、正確な経過時間は分からずじまいなのだが。

とりあえず立ち上がり周りを見渡すが、やはり見覚えは無かった。少なくとも俺の住んでいた場所にはこんなに広大な自然と呼べる場所は存在せず、コンクリートジャングルほどではないにせよ近代的な街並みだったと記憶している。

となると先程の借金取り共に連れて来られたのだろうか………拘束も監視も無しに? まさか、有り得ない、と思う。

 

 

それともいわゆる「あの世」なる場所なのだろうか、と漠然とした推測を思い浮かべながら周囲を見渡した俺は、少し先にある森の入り口付近に動く人影を見つけた。

とりあえず何が何だかは分からないが、ここが何処でどんな状況なのか分からない以上は誰かに話すのが1番手っ取り早く現状を理解出来そうだ。

そう思いつつ、小走りでその人影の元へと走り寄って行った俺はーーーまず驚愕し、次に自分の目と頭を疑った。

 

 

「………シャンハーイ?」

 

 

人語を解する人型であるのは間違いない、発言内容が何故に都市名なのかはこの際ツッコまないでおくとしても『ソレ』は異質過ぎた。

 

 

ーーーおよそ50cm程だろうか? 目測では何とも言えないが、その位の大きさの『人形』が1体。宙を漂いながら草花を摘んでいた。

 

 

今までの人生、数多の体験をしてきたであろう俺ですら、ここまでの驚愕は小学校の時に一目惚れした女の子が実は男だった時以来だ。今回はそれを遥かに、軽く上回り、むしろそれが霞む程に仰天してしまった。

どれくらいかと言うと思わず腰が抜けて情けない姿を晒してしまった程に。

 

 

俺が思考の循環に陥り、ただ茫然としていると傍に人形が寄ってきた。よく見ると浮いている、更に訳が分からなくなる。浮いて、人形で、喋って、動いて。要素詰め込み過ぎだろう、クドくて飽きるぞ。

俺の周りをフヨフヨと浮遊しながら回る、何か観察されている……? なんだろう、やはりここはあの世で、目の前のこれは俺の生前の罪を調べて天国行きか地獄行きかでも判断すると言うのだろうか。それにしては威厳も何もあったものではないし周囲が開けていて、普通に田舎の山奥といった風情だ……ん?

 

 

「ホラーイ!」

「シャンハーイ」

「ホラーイ?」

「シャンハーイ!」

「ホラーイ!」

 

 

何だろう、森の奥から別の人形が現れた。別といっても外見は全く同じなのだが、話す言語に差異がある。こんどもまた都市名だ、そんなに好きなのだろうか。

それに何やらそれだけでお互いに意思の疎通が取れているようだ、正に摩訶不思議、この世はでっかい宝島だな………と。ここまで務めて冷静に、自己に対して状況を説明して見た訳だが。

 

 

「シャンハーイ?」

「ホラーイ!」

「あははは………やっべ、俺もついに頭おかしくなったのかよ」

 

 

あの世だの何だの言ってはみたけど、こんなもん死に際の俺が見てる妄想みたいなもんだろうさ。ハハッ、馬鹿馬鹿しくて、荒唐無稽で。笑いが込み上げてくるのを抑えられないくらいにアホらしい。

人間、死の間際にゃ走馬灯を見るって言うもんだが俺はもうそうらしい。そもそも人間の記憶が適当に繋ぎ合わさったもんが夢なんだから、これもそんな感じなんだろうな。

 

 

「……あら、本当に人間が居たわ。珍しい」

 

 

スゥッと、人形たちの背後の森の中から。吹き抜ける一陣の風のように声が通る、それにより俺も人形も意識をそちらに持っていかざるを得ない。

 

 

一言で言えば、そこに居たのも人形だった。いや、良く見れば人形にしては明らかに細部がはっきりしているし、マトモに言葉を発している時点で人間の可能性が高いだろう。

それでも見紛う程に人間離れした美しさに、思わず認識を誤ったようだ。その薄い肌に金髪という日本人離れした容姿も、それに拍車を掛けているのだろう。

 

 

森の奥から現れた少女を目掛け、我先にと飛んでいく人形を視界に収めながら、ただぽけーっと見つめる。こんな綺麗な女の子は見たことないな、彼氏とかいるのかな。だなんて益体もない事をボンヤリと思いつつ。

すると人形と何やら会話をしながら少女が何度かこちらを見てくる。何だよ俺の顔に何か付いてるのか、それとも馬鹿にされているのか。確かに格好良い顔ではないから笑われてしまうかもしれんが、露骨に嫌われた回数は3桁ないから不細工ではないと信じて生きてきたが間違いなのか、そうなのか。死にたくなってきた、あ、もう死んでるのか?

 

 

「こんにちは」

「シャンハーイ!」

「ホラーイ!」

 

 

と自己嫌悪の無限ループに陥ってアイデンティティがクライシスしそうな所で何時の間にか近くにやって来た少女と人形に声を掛けられる。今更だがどうやって喋ってるんだ人形。パッと見、口は見当たらないんだが。それとも人間とは構造が違って発声器官は別の箇所なのだろうか。

 

 

「……? ちょっと、聞いてる?」

「………あぁ、聞いてる。悪い、ちょっと訳が分からなくてな。考え事してた」

「あら。んー、それで、どうしたのかしら? あなた人間よね、道にでも迷ったのかしら? 人里ならここから東の方角よ」

 

 

何だか言葉の端々に年齢不相応の落ち着きとか余裕を感じるのは気のせいだろうか、それともマセたお年頃か。とは言っても見た感じ俺と数歳しか変わらないだろうから俺の言えた義理ではないんだが。外見で、頭が良さそうだという偏見を感じたから、高校中退の俺よりも人間的価値は高そうだ。

それに「人間よね?」「人里は」という言葉も引っ掛かったが………まぁ聞いてみれば分かるだろうか。

 

 

「それなんだが、少し良いか?」

「? えぇ、別に構わないけれど」

「有難う、それで………ここは、あの世か? それとも俺の妄想か?」

 

 

キョトンと。

 

 

俺の言葉を聞いた少女は、そう言い表すのが適切な顔をした。左右にいる人形も、目以外の部位は顔に無いが似たような顔をしているのかもしれない。少女と会話が出来る以上は少なからず自意識があって感情があるだろうし。

思考が稼働を再開したのか、ちょっと待ってと告げて少女は頭を押さえ考え出した。何やら思う所があるのか、俺としては妄想説を強く推したい。もしこれが俺の妄想なら目の前の少女とキャッキャウフフだって夢ではないだろう、妄想だし。俺の守備範囲は女子高生から三十路まで、人妻でも可。あくまで妄想ではな、現実ではそんなもの、ただ単に面倒そうだ。

 

 

考えが纏まったのか、はぁと溜め息を吐きつつも少女が俺に向き直る。真っ直ぐに目を見据えられて一瞬ドキッとしてしまったが何とか顔に出さないように務めてみた………顔が赤くなっていないと良いが。

 

 

「えーと……残念ながら、ここはあの世じゃないし妄想でもないわ」

「何だ、そうなのか? なら、ここは一体」

「それはちょっと私じゃ説明し辛いわね………うーん、あなた、ちょっと人里まで行きましょう。私も付いて行ってあげるから」

 

 

お? これはデートって奴か?

 

 

 

 

 

 

 

 




どうも、ハロルドです
上海や蓬莱に「採取」という命令を与えて半自律させていた所、主人公を発見。
確か人形とアリスの関係は英霊とマスターの関係の様に視覚の共有などが出来た気がしますので、それに気付いたアリスが人形の元へやってきた……そういった感じになっております
ちなみに主人公のモデルは「逆転裁判」のマコさんが少し入っています

ではでは
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