幻想の世界で夢を追う   作:ハロルド

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ー6話ー

 

 

 

 

 

 

 

「……ごめんなさい、お兄ちゃん」

「うんにゃ、気にすんなよ。何があったか知んないけどさ、話くらいなら聞いたげるし?」

「……うんっ! ありがとう!」

 

 

あー、ようやく泣き止んでくれた。背中撫でて言葉を掛け続けただけだけど意外と効き目あるね、職場の仲間たちの子供なんかを慰めてた時の経験が生きたようで嬉しい限り。つうか微妙にイントネーション変わったね、呼び方がお兄ちゃんになったし。なんか懐かれた? まぁこんくらいの子は優しくしてあげたら懐くか……あ、妖怪だっけ? 実は何百歳とかなのかねぇ。というかそもそも何で泣いたんだろ?

 

 

「おーい……ん? あれ、もう終わったの?」

 

 

お、妹紅と……アリス? 何故に? アリスって魔法使いと巫女さん兼ねてるの? ……な訳ないか、たまたま一緒になったんかね。だとしたら巫女さんはいずこへ? えーっと、博麗さんだっけか。なんか幻想郷じゃあ凄く強いんだって、間違っても怒らせるなよ! 絶対だぞ! ってその辺の人に力説されたから怒らせてみようかな、なんて戯言。俺にそんな勇気ないしね? のんぶれいぶめん。

 

 

話を聞くに、妹紅が神社に巫女さんを呼びに行ったらいなかった。代わりに何故かアリスがいて、俺が騒動に巻き込まれてると知り来てくれたそうな。アリスが優し過ぎて胸が痛い、ごめんねぇ俺なんかのためにわざわざ手を煩わせて。時間の無駄だったでしょう? 俺も何でこうなってるか分からないし意味不明、こいしちゃんが泣き止んだし物騒な事にならなくて良かったんだけどさ。

 

 

「……その、耕平。久し振りね」

「え? あ、おぅ。久し振りだな、アリス。最近どう? 体調とか崩してないか?」

「えぇ、私は大丈夫」

「そっか。………」

「………」

 

 

き、気まずい……! チクショウ、俺のコミュ力やらトーク力が足りてないばっかりにアリスに気まずい思いをさせてしまった。鬱だ、死にた……くはないが。やはりこの辺は努力を怠れないな。女の子口説くのには必須だって先輩の尾関さんが言ってたし。あと音楽ネタ、俺は有名所しか聞いてないからアレだけど。そんな状況に耐え兼ねたのかは分からないが、アリスは少しずつ口を開く。

 

 

ーーそうだ。今度、私の家に来てくれないかしら?

 

 

美少女の家にお誘いだヒャッホイ、と言わんばかりのハイテンションで快諾。男として断る理由がないだろう? 家はアリスと出会った森の中、ちょっと障気が蔓延してて危険だから気をつけてねのお言葉と共にガスマスクのようなものを渡される。これなにー? と聞けば障気を遮断するためのマジックアイテムよと返される。ほぅ、そんなものがあるのか。しかもアリスお手製、手先が器用だねー。俺なんて裁縫が覚束ないレベルだから素直に憧れちゃうな。

 

 

と、ふと視線を横へ移動すれば、なんとも言えない表情で手持ち無沙汰に立ち尽くす妹紅。どうしたのかなーと思って声をかけたら嬉しそうに怒られた。なんで? 曰く「耕平は節操がない」だの「きちんとプラトニックなお付き合いを」だの訳が分からない。そりゃあ俺だって男なんだから妹紅やアリス、慧音とはエロいこと出来るもんならしてみたいよ? でも、それをしたら確実に追い出されて嫌われるじゃん? だから友人でいーんだよ、向こうが惚れてくれるのを待つ他力本願しか出来ないチキンと笑いたきゃ笑えよ。ガチで泣くけど。

 

 

「……そんでこいしちゃんや。なんで俺は君をおんぶしてるのかな?」

 

 

えへへ、と泣き笑いを浮かべるこいしちゃん。ごまかさないでちゃんと答えなさい、おっちゃん怒るよ? この体制から一転してアルゼンチンバックブリーカーに移行するのも辞さない覚悟だよ。おんぶ自体は構わないけど本人に許可を取らなきゃ駄目でしょう? こういうマナーというか常識はきちんと教えないと将来が……妖怪だったか。いや、だからといって、ねぇ。女の子が軽々しくこんなことしちゃ駄目だよ、世の中にはロリコンって危険な性癖があるんだから。

 

 

「ごめんなさい」

「ん、許す。ほんでさ、こいしちゃんお家はどこ? 送ってってあげるよ」

「あぁ耕平さん、それには及ばない。こいつは地底の者だからな、自力で帰れるだろう」

 

 

慧音から発せられたのはまた知らない単語だ、地底とな? 名前から察するに地面の下、いわゆる地下のアーケード街だろうか。まぁたぶん古い町並みなんだろうな、少し見てみたいが……それには及ばないとはどういう意味なのか。そのまま口をついて出た疑問に慧音とこいしちゃんが答えてくれた。

 

 

曰く、地底に居るのはこの幻想郷においても忌み嫌われ者たちが逃げ込んだ場所。例えば鬼、例えば土蜘蛛、例えばーー覚。だからか粗暴で喧嘩っ早い者が多く、能力や実力が凶悪なものが溢れた正に人外魔境なのだとか。怖いねぇ、まだ有害な妖怪って見たことないんだよね俺。確かアリスも妖怪らしいし、こいしちゃんもそうなんだよね。2人とも全く有害じゃないからイメージしにくくてなぁ。

 

 

「アリスとかこいしちゃんってさ、妖怪なんだよね?」

 

 

そうだよー、そうね、などと軽く答えられた。じゃあ……やっぱり人間を襲ったりするのか? と、それを聞くことは憚られた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

◇ ◆ ◇ ◆

 

 

 

 

 

所変わって慧音宅。夜ということで何時ものようにご飯を頂いて風呂を上がる。着物は頂いたお給料で幾つか買っておいたので着替えのストックは万全……? あ、やばい。部屋に忘れた。手ぬぐいとタオルだけ持ってきてどうすんねん俺、こんなんだから「うっかりこーちゃん☆」とか妹紅に言われるんだよ(嘘)。

 

 

「けーねー! 着替え忘れたから取ってくんなーい!」

 

 

ちょっと間を置いてから「暫し待てー!」のご返答が。しゃあないから手ぬぐいで身体だけでも拭いて……あれ、もう拭けてる? っかしぃな、叫んでる時に無意識に(・・・・)吹いてたのか? つかタオルがない、何故だ。さっき見た時は確かにそこにあった筈なのに、一体全体どういう事なのか。今の俺には理解が出来ない、もしや枕返しとかそういう妖怪がいるのだろうか。妖怪タオル拭き……こ、怖くねえぇぇぇぇぇぇぇぇッ!!

 

 

「うんしょっ……うんしょ……」

「ッ!? こ、こいしちゃん……?」

「あ、お兄ちゃんやっと気付いた。ちょっと待っててね、すぐに拭き終わるから」

 

 

訳わかんね。なんでこいしちゃんがここに居んの? なんで俺の身体拭いてんの? つか何時から居たの? しかも前。ちょっとも恥ずかしがるとかされないんだが。……え、無意識を操る程度の能力? よくわからん。よくわからんが今の状況がけしからんことだけは分かった。ほら、こいしちゃんもういいから帰りな? こんなことしてたらお嫁に行けないよ、マジで。俺がロリコンじゃないから良かったものの、違ったらこいしちゃんの純潔は今頃花と散ってるんだぞ。そのへんよーっく考えなさい、やっぱりまだ子供なんだなぁ。頭撫でてやるから帰りなさい。

 

 

「遅れてすまない。着替えを持っ……て、き……た?」

 

 

うわぁお。

 

 

あれ、ちょっと待って今の体勢ヤバくね? こいしちゃんの頭に手を置いて慧音に背を向ける俺、そして俺の身体を拭くためにもぞもぞと動くこいしちゃん。しかも頭の位置が俺の腰辺り。さて問題です、これを慧音の位置から見るとどうなるでしょう? 正解は慧音からどうぞ!

 

 

「こ………この人畜生がッ!! 貴様、私や魔法使い、更には妹紅からの信を裏切り、挙げ句の果てには小女郎との肉欲に倒錯するか!! 慚愧しろ、この大うつけめがッ!!!」

 

 

……誤解、解けるかな。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

あぁ、日が昇ってきた。結局夕べは慧音の誤解を解くだけで数時間にも及んだから寝不足だ。しかしアリスからのお誘いがあった手前、男としては行かないとあかんしなぁ。ちょうど今日はバイトも休みだし、さっさと行くとしますか。

 

 

「れっつごー♪」

「……なーんで君まで付いてくるのかな、こいしちゃんや」

 

 

あの後から姿が見えないと思ったらいきなり肩車状態で現れるとかなんなの。俺の頭を無理やり上に向けたら痛いて。どんだけこいしちゃんの妖怪能力は便利なんだよ、俺も欲しいわ。生着替えとか真横で見てもバレないんじゃないかね。ほら暴れないの、倒れたら危ないでしょうが。こいしちゃんにはお姉さんがいるんでしょ? 傷物にしちゃったら責任取れないよ俺、腹切っちゃうよ? 武士道精神を発揮して死んじゃうよ? ……まぁ、だからどうしたって話か。

 

 

「ごー♪」

「はいはい。しゃーないなぁ、もう」

 

 

……おっ、居間の机に手書きらしき地図とお弁当らしきおにぎりがある。なんだかんだでツンデレな慧音萌えだな。

そして俺達が里を出てから幾らか後。

 

 

「あ……あの馬鹿者……私に断りを入れずに出て行ってしまったというのか……!? し、しかも私が同行するため準備していた地図と昼餉まで……くっ! 性急に探し出さねば!」

 

 

慌てた慧音がいたとさ、ちゃんちゃん。

 

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