ちゃっす。生雀と申します。
初めましての方は、「初めまして!」
他の作品をご覧になってくださっている方は、「ありがとうございます!」
ここで書くべきことをあらすじに全てぶっこんでしまったのでw
特に書くこともないんですが……。
まだまだ拙い文章ですが、まぁ…みなさん!ごゆるりとお楽しみ下さい。
【壱】『兎は目覚める』
* * *
「夜明様、あぁ夜明様」
町外れのある貧しい民家。
呟きながら母は、やつれた顔で、しかし愛をし気げにこちらに手を伸ばす。
「……。」
その目は確かに私へ向いているが、心は私を見てはいないようだった。
少しの間、私は躊躇いがちに視線を下げていたが、ふと顔をあげる。
「母さん、私は夜明様ではないわ」
母は伸ばしていた手をゆっくりと下ろしながら小首をかしげる。
「あら?なら貴方の名前は……なぁに?」
その言葉に思わずため息が溢れる。
「母さん、私の名前は………」
ふと、私は言葉を止める。
いや、言葉が止まった。
「ぁ、れ………______?」
わからない。
「私は……?_____ワた、シ?」
ワカラナイ?
「夜明様…」
「やめてっ、母さん…違うわ」
急に頭痛と吐き気がするほどの目眩に襲われ、私はにげるよに家を出た。
* * *
(とにかく、少し歩いて頭を整理しよう)
そう思い、私は町への道をゆっくりと歩いた。
「……なんでだろう」
私の名前?そういわれれば母が私を名で呼んだことなんて……あったっけ?
母はいつも私のことを『夜明様』と呼ぶ。
いつからか、と聞かれてもはっきりとは覚えていないけれど、多分ずいぶん前からのような気がする。
だから、少し前までは私も“それ”が自分の名前なのだと思っていた。
が、夜明様というのはおそらく私の父親の名前……なのではないか、と勝手に推測している。
というのも、母はずっとあんな様子で、ほぼ壊れた人形のようになってしまっているため私の質問に答えられるはずもない。
(そもそも私の父親……って?)
「……っ、」
_____ずぅぅん____
ふと、頭の中で何かがうごめいたような妙な感覚にみまわれる。
なんだか、まるでそれに触れてはいけない……と言うような。
どんっ_________、
「あ、すみませんっ…」
下を向いて歩いていたら人にぶつかってしまったようで、慌てて謝罪する。
それから顔を上げて初めて、町に着いていたことに気がつく。
ふと、すれちがった夫婦の会話が耳に入る。
「あら、なにかしら?山の方で何か燃しているのかしら…」
「にしてもずいぶん煙が高くあがっているなぁ」
はっとして、歩いてきた方向を振り返る。
「なっ…けむり!?」
少し奥に見える木々の上まで、確かに灰色の煙がたち上っていた。
「なんで……っ母さん!!」
一瞬動きが止まったが、すぐに弾かれたように走り出す。
今ほどこの着物を疎ましく思ったことはないだろう。
「母さん…っ」
* * *
走ってきた勢いそのままに家の引き戸に手をかける。
先ほど遠目に見えた高い煙の原因はやはりここだったようで、戸の奥にちらちらと赤いモノが見え隠れしている。
_____ガタガタ
「あかないっ……」
何かが戸を塞いでしまっているのか、いくら引いても戸はガタガタと嫌な音をたてるばかりだ。
戸を開けるのに手間どう時間も惜しく、やむなく体をおもいきり戸に叩きつけようと半歩後ろに下がった時、
「おぅ、おう燃えてらぁー」
この場にそぐわない楽しげな声に、私は苛立ちを隠しもせず、半身だけそちらへ向ける。
「あ、おい!あそこに立ってる女まさか…この家のっ?」
初めに声を発した男の後ろから、さらに数人役人のような男達が現れ、こちらを指差す。
「あぁ?女だぁ?……ありゃあ、あの男と同じ銀髪にあの目…ほぉ、これはこれは。てっきり親子仲良く灰になってるかと思ったが…」
男のその歪んだ笑みに、腹の奥でどす黒い何かが動く。
「あなたが……こんなことをしたんですか?」
返答によっては火を消し止める術を探るより先に、目の前の男達に殴りかかりでもしてしまいそうな程、頭に血が上っていく。
「だったらぁ、どうすんだ?あぁ?」
「鬼丸様、この女殺しといた方が良いんじゃないですかね…」
男達次の言葉を聞く前に、私の中で何かの蓋がはずれた。
瞬間、体が勝手に動く。
「ぐはっぁ!!」
無意識に動いた手足が、一番手前にいた男の鳩尾を深くえぐるように叩きつけられる。
「このアマっ!!…ぐわあぅっ!」
そのとなり、襲いかかってきた男の首がとび、
____ガッ
「っうぉあぁ!!」
そのとなり、
____ドスッ
「うっ……ぐ…!」
そのとなり、
____バキッ_____グチャッ
そのとなり…………
「……はぁ、はぁっ……」
気づけば、血の海の中、私ひとりが立っていた。
辺りには無惨に転がった男の首、体、そして半分は焼け崩れ、半分は自分壊してしやったのであろう“家だったもの”
目をつむりたくなるような悲惨な光景がそこに広がっていた。
______全部私がやったこと?
「うっ……母さん、母さん!かあ…さんっ」
いくらがれきをかきわけてもボロボロになった家の残骸のどこにも、母らしきものは無い。
なんだかもう、訳がわからなくて私はその場にへたりこんだ。
直後、先程の男より少し高いトーンの声が頭上からかけられた。
「なんだ、ちゃんと血は継いでたんだ。てっきりお前は戦えないのかと思った」
先刻までの出来事をフラッシュバックさせるかのような、その愉快そうな男の声に、吐き気を堪えながら顔を上げる。
「誰、ですか……」
視線を上げた先に居たのは、銀がかった薄鼠色のふわりとした短髪の男だった。
男は私の問いに素直に答える。
「真名が知りたいの?それとも呼名?」
返された問いかけの意味が理解できず眉をしかめる私を見て、男はまた笑う
。
「あぁ、なに、そこから分からないのか。まぁいいや、俺の名前は木兎。真名は明兎だけど、木兎って呼んでくれればいいよ。湖月地出身の地星探索団第七団団長……って言っても分かんないのか、あははっ」
「え……っと…、木兎さん…?」
男の言葉はやはり半分以上意味が分からなかったが、とりあえず襲いかかってこないことから敵ではない、と判断し、私はゆっくり立ち上がる。
木兎と名乗った男は小さくなにか呟いたが、私には聞き取れなかった。
「よし、じゃあ行こうか夜兎」
突然見知らぬ男達によって燃やされた家。
怒りと共に手にした一瞬の“大きな力”
救えなかった母。
そして突然現れた男______“木兎”
「私はいったい……」
「夜兎?」
(頭の中を整理したいのにうまくいかない)
ふと、目の前にこちらを覗きこむ顔が現れた。
「……っこ、木兎……さん!?」
思わず後ずさろうとしたが、運悪く小石に足をとられしりもちをつく_____一歩手前で腕をつかまれる。
「っお前なぁ…ぼーっとしたり急にこけたり…忙しいなーもう…」
「あ…す、すみません」
木兎さんはくすりと笑ってそのまま腕を引き私を立たせてくれる。
「まぁ、色々と頭の中こんがらがってるだろうけど、ひとまず行くよ夜兎」
刹那、私は着物に少しついた土をはらおうと伸ばしかけた手を止める。
「……っなん、て……?」
「あれ?第一団初代団長の茜兎____夜明の娘、夜兎…じゃなかったっけ、あれ」
唖然とする私に木兎さんは困ったように顔をしかめた。
「っ________!ぁ……」
____ドクン
(「…忘れるな夜兎。おまえは………必ずあの場所へ_______……_」)
頭の中に知らない映像が流れてくる。
同時に、頭を殴りつけられたかのような激しい頭痛。
「わたし、は…………」
(「…忘れるんだ夜兎。お前は全てを忘れて……必ず迎えに行くから______」)
いくつもの知らない声が流れ込んでくる。
「……夜兎?大丈夫!?…おいっ!」
私の動揺ぶりに気付き、木兎さんが私の方へ手を伸ばす。
その瞬間、フラッシュバックする、見覚えのない記憶の一場面。
(「夜兎……お前は偉い子だなぁ…」)
微笑んで、私へと手を伸ばす____
「あなたは……誰なの…?」
訳もわからないのに込み上げてくる涙に呑まれながら、私は意識を手放した。
「兄、さん………」
目を閉じる直前、目を見開いた木兎さんが最後に見えた。