東京喰種#   作:秋乃樹涼悟

2 / 3
蜘蛛

薄暗い部屋の中、独り喪失感に襲われる。

目の前には肉の破片が散らばり着ていたシャツは穴が空き、体の至るところに血が付着している。

 

口の中にはどろっとした血がまだ残っている。

まるでチョコレートを食べた後のようだ。

 

 

人を、喰種を食べてしまった僕はもう、一体なんなんだろうか。

 

 

血溜まりに膝をつき、なにもない天井を見上げた。

 

巣を張った蜘蛛とその巣にかかった哀れな羽虫。

蜘蛛は羽虫に近づき、羽虫を生きたまま喰らう

もがく脚すら喰らい、ただ喰われる羽虫。

 

生きることは喰らうこと。

食べるなんてことはほとんどの生物はしている。

 

そうだ。

僕が人を食べることも仕方ないし、「喰種」からすれば人は食べものだ。

僕は悪くない。

 

 

僕は、悪くない。

 

 

 

 

 

 

血のついた携帯を取り出し、加納にかける。

 

『やあ天野君。勝ったのはやはり君だったか』

「加納、喰種の情報が欲しい」

『単刀直入だね。喰種の情報か…それなら20区の「あんていく」という喫茶店に行くといい。喰種が営むお店だそうだ。喰種のお客さんも集うそうだよ』

「そうか」

 

出来ればこいつの声は聞きたくはない。

すぐに切った。

 

昔読んだ小説の主人公は、主人公に血を注ぎこんだバンパイアを師匠とし、バンパイアの生き方を学んでいた。

 

だが僕には師匠なんていない。親や兄弟、友達もひとりもいない。

 

とりあえず、その「あんていく」という店に行き、なにか情報を得なければ。

 

立ち上がり、汚い部屋を出る。

服からは血が滴り落ちて、歩いたところにみちを作った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

身体が痺れて動かない。

 

足から赤黒い大きな蜘蛛が這い上がる。

 

真っ黒なその目は僕を喰おうと美味しそうなところを探している。

 

次々と這い上がってくる大きな蜘蛛。

 

来るな来るなと祈っても、蜘蛛たちは増えていく。

 

脚からお腹、お腹から胸、胸から首。

 

蜘蛛たちは上へ上へと這い上がる。

 

蜘蛛は僕の顔に覆い被さり、目の前で口を開いて僕の眼を

 

 

 

 

 

目覚めた僕は汗で濡れ、酷く怯えていた。

夢でよかったと安堵した。

 

今も蜘蛛が這いずり回っているような感覚に晒される。

 

そうだ。今日はあんていくへ行かないと。

汗と震えが止まらない身体を無理やり動かし、シャワーを浴びた。

 

 

 

 

 

 

20区へはついたが、あんていくがどこにあるか分からない。

とりあえず歩きながらどうするか考える。

 

喰種が集うなら喰種に聞いた方が早いか。

でも今だに人か喰種かの違いがわからない。

 

歩き疲れ喉が渇き、自販機で水を買う。

 

喰種は水以外になにも飲めないのだろうか。

人間だったときはよくジュースとか飲んだし、珈琲だって好きだった。

 

これからはもう、水と人の血しか飲めないのだろうか。

 

 

ふと嗅いだことのあるいい香りがしてきた。

珈琲の香り。

どうして珈琲香りだとわかるのだろうか。

味覚は完全に人とは変わり、嗅覚も変わってしまっているはずなのに。

 

なぜ喰種が喫茶店を営む?

どうして喰種が集まる?

喰種が喫茶店を営んでいるから?

水しか飲めないのに?

集まるだけなら別の場所を設ければいいだけの話だ。

 

僕の喫茶店に対するイメージは珈琲だ。

試しに、珈琲を飲んでみるか。

 

先ほどの自販機に戻り、試しにブラック無糖の珈琲と微糖の珈琲を買ってみた。

 

まずは無糖の方を飲んでみる。

 

ゴクリ。

 

普通に飲めた。

まあ味は安っぽくて不味かったけど。

大きな発見をした。

 

そして微糖もゴクリと飲んでみた。

 

 

その場で慌てて吐いた。

まるで腐った緑茶でも飲んでいるような味だった。

砂糖のあるないでこんなにも変わるとは思っていなかった。

でも、珈琲を飲むことができることが嬉しい。

 

 

 

 

そのあとは安っぽい缶コーヒーを飲みながら再びあんていくを探した。

 

 

 

なんとなく、さっきから後をつけられているような気がする。

生まれてから一度もそんな経験をしてことはない。

 

気のせいならいいのだけれど、恐らくはそうではない。

 

それに、なんとなく人がいない方へ誘導されている気もする。

 

どんどん人が減り、廃ビルが見えた。

僕は廃ビルに入りそこでストーカーを待つことにした。

 

部屋に入り、割と広い会議室のボロボロの椅子に座る。

 

「 ねぇ、あなたってどっちなのかしら?」

 

姿は見えない。声からするに女性のようだ。

「どっち」というのは人か喰種かという意味か。

 

「答えるとするとどっちでもないし、どっちでもあるってことにしておこうかな」

 

本当に自分はどっちなのだろうか?

聞きたいのは僕のほうだ。

 

「あなたって、不思議な匂いがするのよ。どっちも混ざった匂いで不思議と溶け合ってるのよ」

 

ゆっくりと部屋に入ってくる女性。

眼は赤黒く、肩からは綺麗な羽のような赫子が生えている。

あれは僕のとは違う赫子だ。形状や生えている位置が違う。

 

形状や位置で特性などが変わったりするのだろうか。

 

とにかく、素手では勝てる気がしない。

このひとは恐らく本物の喰種だろう。

昨日のやつとはレベルが違う。

 

とりあえず、眼帯を外し戦闘に備える。

 

僕も赫子を出したいが、まだ自由に出し入れが出来ない。

 

「ねぇ、赫子は?」

 

彼女がそう聞いて来たときには僕の腹には穴が空いていた。

 

「っはぁ!」

 

なにが起こったか全くわからなかった。

早過ぎる。

そして彼女は腕を引き抜いた。

 

「あら?結構脆いわね。でも人間にしてはやはり堅いし」

 

ひとの腹突き破っといて感想を述べられるとは思ってもいなかった。

 

だがおかけで赫子がでてきそうだ。

 

「あなた、隻眼?片目だけって初めてだわ」

 

そう言うと彼女は羽から弾丸のようなものを噴射してきた。

僕は避けることができず、身体にささる。

 

ああ。

痛すぎる。頭がいかれそうだ。

あはは。なんか楽しいな。

もう完全に狂ったね。

 

「ああぁ‼︎」

 

更に赫子が生える。

どうやら暴走しているようだ。

 

「あら、すごいわね。鱗赫の赫子が8本。あなた、蜘蛛みたいよ。…殺すには惜しいわね」

 

ちょっとお姉さん、お腹がすいたから喰ってもいいですか?

 

 

 

 

 

 

 

 

目が覚めるとそこは見知らぬ場所で、気づくと体のあちこちが痛い。

至る所に包帯が巻かれている。

 

「あら、目が覚めたかしら?今珈琲を持ってくるわね」

 

 




謎の羽赫の女性。
トーカちゃんではありません。
オリキャラです。
次回詳細は明らかに?

でわでわ〜
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。