「やっぱりそういう話なのか」
まあ、何となくそうじゃないかと思っていた。そうでもなければ男性操縦者(名前は確か・・・織斑一夏だな)が発見されて騒がしいだろうにわざわざ時間を作ったりしないだろう。
『なんでユウキがそんな学校に入学しなくちゃいけないの?』
確かにそうである。現在俺がISを作動できることは彼女たちによって隠蔽されている。そのためもう一人とは違って学園での保護も考えにくい。
「第一に今回判明した彼に対する配慮だと思う。環境が180度変化するので戸惑うだろうし、せっかくの男でのIS適性をもつ人材だからね。ストレスの緩和が必要だと判断したみたいだ」
「俺はストレスの緩和剤かよ。こっちがストレス溜まるだろうが」
「君ならある程度の環境の変化は大丈夫だろ」
「しなくていい苦労を何故しなくちゃならないんだよ。断る。それじゃあ」
俺が店から出ようと立ち上がる(伝票?コーヒーしか頼んでないし押し付ける気満々である)と、
「待った待った。これはついでにお願いしただけなんだ」
と前言を訂正してきた。
「ついでで負担かけてくるなよ。というかどこまでついでなんだ?入学?緩和剤?」
「入学することは本当だ。ただ、本命はこっちの方なんだ」
そう言いながら見せてきたのは・・・紙の資料?
「珍しいな。デジタルが主役のこの時代に・・・おい、まさかこれ「とりあえず見てくれ」・・・やっぱりな」
案の定そこに書かれていたのは機密に触れるものだった。正確にはIS学園に入学する生徒の個人情報だ。写真はないにしてもこれだけ情報があればその筋に売れるんじゃないか?
「更識簪、日本の代表候補生・・・ね。彼女に何か問題でも?」
「彼女自身には何も問題はないよ」
「彼女自身には?」
「実は彼女には専用機が与えられるはずだったんだ」
『へ~、すごいんだね、この娘』
確かに専用機は特殊な場合を除き、与えられる人は並ならぬ努力をし強いられる。代表候補性は何人も選ばれるが、専用気持ちはその中からさらに泥沼の努力が必要なのだ。つまり、彼女はその泥沼の競争に勝利した実力者と言える。・・・ちょっと待て。
「与えられるはずだった・・・?」
「彼女の専用機、第ニ世代型IS「打鉄弐式」はまだ完成していない。そればかりか開発計画は凍結した」
「・・・は?」
ちょっと待て。すこし整理しよう。
1 更識さんは代表候補生である
2 努力が実り、貴重なISを所持することを許可された
3 そのISは完成しておらず、また完成させる気もない
明らかに3がおかしいだろ。
「なんでそんなことになったんだよ」
「この打鉄弐式を作成していたのは倉持技研。かのビリュンヒルデの専用機「暮桜」を作成した研究所だ」
「・・・暮桜ってあれか。あんなのしか作れないとか大したことない所だな」
「いやね、一応世界王者の機体だよ」
だってさあ。
「あの機体がすごいわけじゃなくて完全に操縦者まかせだろ。しかも性能面で唯一評価できる「零落白夜」に至っては二次移行セカンドシフトしたときに勝手に作られただけで開発者は何も貢献してない」
まあ操縦者と相性がいい機体を作れたのは称賛に値するのか?
「話しが反れてしまったね。今はビリュンヒルデよりこっちの方が先決だ」
さすが役人。発言したくないから無理矢理話題を変えたな。
「そこの研究所がね、男性操縦者の彼の専用機を作ることになったんだよ。それで彼女の機体はお蔵入りになったということだ」
何度目かの頭痛がしてきた。
「いろいろ言いたいことが多いが、とりあえず確認したいのは政府はそれを容認したのか?」
「認めたというよりはブリュンヒルでを恐れて黙認したというのが正しいかな」
「でもさ、なんでその倉持技研なんだよ。他にもいっぱい頼める所あっただろ」
「僕もさすがにそこまでは把握していないよ」
まあ、言われてみればそうか。
「それでその娘は容認しているのか」
「それなんだが彼女は未完成の機体を引き取って自分で作ると言っているんだ」
「マジで?」
「マジで。しかも倉持技研も何故か認めているんだ。おかげで上は対処に困っているよ」
まあ、そうだよな。操縦者自ら完成させるとか普通はおかしい。ISは表向きは国際的なスポーツであり、その代表を育成するのは国家プロジェクトと言っても過言ではない。つまり、それぞれの役職が連携していかなければならない。技術者は機体の向上を目指し、操縦者は己に技術を磨くこと。それが本来あるべき姿であり義務でもある。
「だからこそ、今回の非常事態を野放しにしてはならない。そんなことで選出された人材を腐らせるわけにはいかないからね」
確かにそうだ。いくら選出される実力者とはいえ、何もしないでいると技術は廃れ、環境の変化についていけなくなる。
「そもそも、日本は一度大きな過ちを犯してしまっている。決して繰り返してはならない。そんなことをすれば、日本は他国からの信用を失い完全に終わってしまう」
「過ちって3年前のあれか」
「そうだ。あの時は裏でなんとか処理出来た。だが今回はむりだろう。だからこそ、政府は決断したんだ。君に彼女の機体作成を依頼することを」
なるほどな。俺はある事情から専用機を持ってはいるが、厳密には操縦車ではない。自分のISに手を加えることもあるし知識もそれなりにはある。それに俺がいれば間接的にあいつらの手も借りることができる。だが、今回のことは諸刃の剣ではないか?さっきこいつは「二人目」として入学しろと言った。つまり、日本政府が男にIS適正があることを把握していたことを隠したまま、機体作成の手伝いをしなければならない。どうしたって矛盾がそうじてしまう。それにリスクが高すぎる。
「・・・」
だが、簡単には無下にはできない。俺の目的を果たすにはIS学園は適した環境であることは事実なのである。まあ、それを知っていて政府は言ってきているんだろうけどな。
「もちろん、見返りは十分するつもりだ。だから頼めないかな」
こいつ、俺が揺れているのに気づいているな。だからこそ報酬の話しを持ち出して来たのだろう。
「・・・ん?」
改めて資料を見返す。そこには俺にとって見逃せないことが書いてあった。
「菊岡さん。あんたずるいな」
「ん?」
『ユウキ?』
「今までの話なら別にこの資料はいらなかった。これは俺に断らせないようにするための切り札、なんだろ」
「受けてくれるのかい」
「知ってしまった以上は受けるしかないだろ。ただし条件が何個かある。まずは
この娘の写真をみせてくれ」
菊岡サイド
あの後彼が掲示する条件をのみ、彼の入学を承諾させた。その後彼はさっさと店を出て行った。まあ、仕方ない。彼にも準備があるのだから。僕は胸ポケットから携帯を取り出しある人に電話をかけた。
『もしもし、彼が了承してくれました。ただし、発表は3日間待ってほしいとのことです』
それが彼が上げた条件の一つである。本当ならすぐにも公表したいが、彼は知人たちには自分で説明すると言っていたので妥当な要求だといえる。
『ええ、彼なら大丈夫です。それは私が保証します』
電話を切りせっかく来店したので注文した。店員が持ってくるまでの間先ほど彼に見せた資料を改めて確認する。彼に見せた資料、その最後の文字はこう綴られていた。
<更識簪、彼女はSAO生還者である>
この1文はほかの文章と違い、僕が手書きで書いた。彼が言うように、彼の罪悪感を利用したのだ。
「今度改めて謝罪しなくちゃね」
「お客様、お待たせしました」
さて、これを食べたら3日後の発表の準備をしなくては。
ユウキサイド
『まったく、結局引き受けちゃって』
先ほどから不機嫌である。まあ仕方がないか。説明もなしに勝手に承諾したのだから。今の俺はさながらアインクラッドから転移結晶なしで飛び降りたも同然なのである。
『悪かったよ、けどさ』
『まあ、事情があるみたいだから多めに見てあげる。その変わりちゃんと説明してね』
『わかっているよ』
『さあ、期限は3日。急がなきゃだね』
『ああ、まずはみんなに説明だな。ALOに集まるよう伝えてくれ。
ストレア』
最後までみていただきありがとうございます。
この小説では「」『』と二種使ってますが、基本的に「」が通常の会話、『』が通信機器を用いたものとしてください。
また、オリ主が暮桜について厳しめですが、これは作者がこの機体について知らないため、このようになっています。
もし特徴があれば感想に書いていただければ幸いです。