ISとビーターの弟子(仮)   作:由紀夫

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今回は試合前日の専用機搬入の話です。


予期せぬ再会

日曜の早朝、専用機が届く日

 

こんな朝早くからアリーナは普通開けないが、専用機の運搬の為に特別に許可をもらった。初期化(フィティング)なら整備室でもいいのだが「拗ねられている」と機材が多いあそこだと行動しにくいため屋外でISの展開が許可されるアリーナにしてもらったのだ。それにしてもはやく来てくれないかな。終わるのが21時回るぞ。

 

『それ確実にアリーナ閉まるよね』

 

『すでに対策はしている』

 

この学園の処罰に「ISを背負ったまま(PICなどの補助がないまま)グランドを走る」というものがあり、織斑先生に長引いたらそれをやるから勘弁してくれと伝達済みだ。

 

『それにしても誰が運搬に来るのかな?』

 

『普通に考えたら技術者である比嘉さんだが、設定ならイリヤがするだろうから端末を持ってくればいいだけだしな』

 

ということでイリヤと相性が良さそうな人・・・神代さんかな?やっぱり。

 

『あ、誰かアリーナに入って来たよ。普通の入口からだけど』

 

『?運搬用の入口じゃなくて?生徒か?でも今日俺以外に申請したのはいないらしいけどな』

 

と言うことはアリーナが開いていたから好奇心で覗きに来たか、俺の専用機が来ることを知った誰かか?

 

『俺、誰にも今日のこと言わなかったよな?』

 

『さすがに()()()()()君は言わないし、言ったら私が指摘してるよ』

 

『だよな』

 

専用機の譲渡は本来こんなひらけた場所ではやらない。なぜなら最も強奪されやすい状態は「一次移行までの30分」だ。この時間は専用機本来の性能を出すことができず強奪目的にやってきたISを撃退しにくいのだ。なのでこんなひらけた場所、つまり侵入し放題な場所で設定するなんて狂気の沙汰である。本来なら護衛の一つでもつける状況だがその護衛さえも信用できないのが現状である。故に俺たちは今日のことを誰にも伝わらないよう情報管理してきた(もっとも今回は最適化(パーソナライズ)しないので一次移行しないが)。それにも関わらず入ってきた?

 

『拘束するか?』

 

『拘束って手段はあるの?』

 

『最悪あの手を使うしかないだろ』

 

俺の秘密をバラスことになるが強奪されるわけにいかないし。

 

『もうすぐ君から視認できるよ』

 

『よし、じゃあ拘そ「プリビエイト、ユウキくん」・・・え?』

 

ぷりび8?どこかで聞き覚えがある・・・じゃなくてプリビエイトだ。ということは。

 

「!久しぶりだな。せ・・・七色」

 

後方から近付いてきたのは俺の想像した人物、セブンだった。

 

プレイヤーネーム「セブン」、本名、七色・アルシャービン。彼女とはALOで知り合い,かつてはスヴァルトアルヴヘイムでギルド「シャムロック」のリーダーをして俺たちとせめぎ合った仲だ。

 

スヴァルトアルヴヘイム。約1年半前、ALOに新た実装されたステージ。現在はアインクラッドと並びALOの名物となっている。本来なら51~60層をアップデートされるはずだったらしいがある問題が浮上したために見送られた。その問題とは「50層ボスにおけるクォーターポイントのボスの強さが跳ね上がる」というオリジナルアインクラッドの応対が反映され、当時はどんなプレイヤーでも勝つことのできない状態であった。運営はすぐに調整し直したが多くのプレイヤーが攻略をあきらめ、アップデート直前になってもクリアされない事態になった。

 

そこで以前から実装を検討していたスヴァルトアルヴヘイムをアップデートしたのである。このステージの目玉は「攻略時間によるボーナス制度」があることだ。アインクラッドは1レイドでの1回限りの攻略と廃人プレイヤー向けであるに対し、こちらは初心者からも攻略可能であり、さらに何度でも攻略することができる。さらに攻略にかかった時間によってボーナスアイテムが変化することだ。アルゴによると最短10分でのボーナスはレアウェポンがランダムにドロップ。逆に攻略の最長記録時間は1ヶ月で10ユルドだそうだ。さらに50週の間最短記録が更新されなかった場合、伝説武器(レジェンダリーウェポン)級のアイテムがプレゼントされるそうだ。現在40週の間更新がないためあと5ヶ月で条件を満たすので、この記録を破ろうと多くのプレイヤーが挑戦している。

 

彼女とはキリトたちと一緒にこのステージ攻略した際にほぼ同時期に参加していた縁で知り合い、フレンドになった(アインクラッド攻略をあきらめたのではなく新しいものにひかれた+最初に全クリしたいと全員が思ったためである)。

 

さらに彼女は天才的な科学者でもある。本来はアメリカで研究していたのだが、ここ半年は生まれ故郷であるロシアを拠点に研究している。そして

 

『相変わらずまともじゃないことを考えているみたいだね。君は』

 

『お前も相変わらず俺には厳しいな』

 

彼女もストレアの姉妹を保護してもらっているのだ。

 

こいつはMHCP-009、サニー。

この子は「人の感情変化」に敏感で、姉妹のなかでメンタル関係に特化している。つまり現役のメンタルヘルスケアプログラムでもある。そしてセブンの研究テーマは「VRMMOが人に与える影響」について。つまりこの二人は似たテーマを掲げているのだ。ちなみにこいつは俺のカウンセリングを担当してもらっている(ちなみにセブンはコードレスのイヤホンをしているのでこの会話も普通に聞いている)。

 

『まあまあ、二人とも。まずは設定を終わらせよう』

 

そう言いつつ俺らの会話に乱入してきたのは先日の悪戯の主犯であるイリヤだった。

 

『イリヤ、知ってたら教えといてくれよ』

 

『だってたまにはサプライズも必要だよ』

 

『この学園自体が驚異なんだけどな』

 

しかし、彼女は日本人とロシア人のハーフとはいえ外国の研究者。一応日本の機体になるこのISを運搬させていいものか・・・待てよ、ロシア?

 

「もしかして、生徒会長に用事?」

 

「そう、今私が行っている研究がISに役立つかもしれないから、国家代表である更識楯無に会いに来たって訳。そのついでに君の専用機の運搬を頼まれたの」

 

なるほど、確か日本とロシアは協定を結んでいたはず。だからロシア関係者であるセブンに頼めたのか。

 

「でも会長の専用機は既に二次移行しているんだろ?お前の研究が役立つとは思えないんだが」

 

ISとの相性が最高値になったときにおこるといわれる二次移行。だからセブンの研究がその足掛けになる可能性があるのはわかる。しかし、既に変化している機体には効果が薄いと思うんだが。

 

「うん。どちらかというと彼女のどのような感情がISに働きかけたのかを調べてくれって」

 

「つまり、次の世代のために検証するのか」

 

なるほど。これがセカンドシフト機を持つ国家の強みということか。

 

「なんか悪いな。そんな重要な用事があったのに雑用に使っちゃって」

 

他国の重要人物をパシリに使うなよな。菊岡たち。こいつはその筋じゃ茅場と対等とさえいわれるほどの研究者なんだぞ。

 

「ううん、むしろ助かったわ。・・・正直あの人少し苦手なの。だからあの人に会う前にユウキくんと話して緊張を発散したかったから」

 

「そっか、まあ役立ったならいいか」

 

でもセブンが苦手とする人物?セブンは今は研究一筋でALOに入ることもあまりないが、昔はネットアイドルをしていた。だからどんな人物でも受け入れる社交性がある。だから苦手な奴なんてそうそういないのにな。

 

(どんな性格なんだかな)

 

一応盗聴でどんな奴かは知っているが、それは身内での対応だ。他人に対してどんな対応をするかは未知なんだよな。あれ?そういえば。

 

「スメラギは来てないのか?」

 

「彼なら今学園に入るための書類を書いているわ。まったく、私一人でも大丈夫なのに」

 

「相変わらずの過保護だな」

 

スメラギ。本名住良木良太。セブンの研究並びにALOでの右腕だ。元々はラースのメンバーだったようだが、今は縁をきり彼女に忠誠を誓っている。ALOで評判も高く、トーナメントではいいところまで行く。ただし研究が第一のため、環境についていくのがやっとというゲーマーの観点で見ると惜しい人材である。

 

「ということは専用機はスメラギが今持っているのか」

 

「そうだよ」

 

だからこいつ普通の入り口から入ってきたのか?

 

「それにしても」

 

「ん?なに?」

 

なんだ?セブンの目が悪戯をする子供みたいになったが。

 

「・・・背、私の方が高くなったね」

 

ピキッ!!

 

「へー。そっちの話題ですか」

 

こいつ。俺にその話題が禁句なの知ってるよな。たぶんこんなとこに入学させられた俺を気づかっての発言なんだろうな(同い年なので元々年相応な馬鹿騒ぎをしていた)。でもそっちがその気なら

 

よろしい戦争だ。

 

 

 

スメラギサイド

 

これはどういうことだ?ようやく学園に入る手続きが終わり、菊岡さんからから頼まれた専用機をアリーナに持ってくれば

 

「君なんて未だに小学生と間違えられているでしょ」

 

「お前だって対して変わらないだろうが。ロシアだと未だに幼女扱いだろが」

 

「なんてこというのよ。この嘘つき(インプ)が」

 

・・・高校生になってもこの二人の喧嘩は相変わらずなのか。

 

「君たち。喧嘩はこの専用機の設定が終わってからにしてくれ」

 

「「ようやく来た。時間かかりすぎだろ(だよ)」」

 

とさっきまでの険悪な雰囲気は一瞬で胡散していた。やはり仲がいいな。まあ、フレンドの中で唯一の同い年だからかな。

 

「じゃあ、さっそくフィテイングするか」

 

「あ、ああ。ではラースから預かった機体を出すぞ」

 

 

 

ユウキサイド

 

スメラギが搬入口からもってきたコンテナを開けると

 

中には知らない機体、紫色の打鉄があった。

 

「・・・あ、そっか。俺の専用機、元々打鉄だったな」

 

『設定を初期化したらこうなるよね』

 

専用機になってから改造に改造を繰り返していたからすっかり忘れてたわ。そして改めて目の前の機体に触れてみた。

 

ドクン!

 

うん、間違いない。これは俺の専用機だ。

 

「久しぶりだな。「誓剣」」

 

誓剣。それが俺の専用機に名付けられた名前だ。名前の意味は「誓いをたてた剣」「勝利を誓った剣」などである。

 

『それじゃフィテイング、ならびに()()を始めるね』

 

『おう、頼むな。イリ『終わったよ』え?』

 

「「「『『はや!』』」」」

 

あまりの速さに総ツッコミがおこった。しかも俺とセブンとスメラギは通信でなく実際にしゃべったので周りに人がいたら冷たい視線待ったなしである。

 

『だって元々君の機体だし、そんなに入力することないよ。ここ最近のデータだけでいいし』

 

『そういわれればそうだな』

 

身体的な情報は元々入っていただろうし、入力する量が少ないのか。ならAIのこいつならすぐに終わるか。

 

『でも予想通りこの子「拗ねている」からしばらく動かせないね』

 

『やっぱり12時間待たないといけないのか』

 

現在8時半。となると確実にアリーナは閉まるのでランニングは確定だな。

 

「では、専用機は無事に届けられたということで、俺と七色は義務を果たしたでいいな」

 

「ああ、ありがとな。スメラギ」

 

少し型苦しいが国家間の問題に発展する可能性があるので、持ち主になる俺の言質が必要なので仕方ないな。

 

「ところで本題の会長さんのところに行かなくていいのか?」

 

「実は時間が指定されてないんだよね」

 

「いいのか?それで」

 

来校するのは決まっているのに時間指定なし?なんかあるのか?例えば向こうが把握していない何かが起こる可能性があるから時間を指定しなかったとしたら

 

「あら、あなたたち随分仲が良さそうね」

 

「!!」

 

久しぶりに知り合いに合ったから気が緩んでいたとはいえ、アリーナに入ってくる人に気づかなかった?いや、これは気づかないように気配を消していたのか?

 

「でも、日本人とロシア人の君たちがどこで出会ったのか、お姉さん気になるな」

 

そういいながらこちらに歩いてくる人影がいた。・・・どこかで見たことあるかな?

 

「初めまして青野くん。私は更識楯無。君たち生徒の長よ」

 

そいつは更識と同じ、青い髪をしていた。




今回はSAOのゲーム「ロストソング」より、セブンとスメラギが登場しました。
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