♡ストレアサイド♡
「試合開始前から殺伐としすぎじゃない?」
きっかけは相手の女の子の失言だけど、それに対するユウキの返し方原因かな?
「なかなかのカオスですね」
「ユイ。今日はゴメンね。前の頼み事から日がたっていないのに」
「大丈夫ですよ、ストレア」
今日ユイに来てもらったのはユウキから頼まれた要件のためだ。私でも可能なんだけど一人だと手が足りないということで来てもらった。最近ユイの優しさに甘えてばかりで罪悪感でいっぱいだよ。
「ところで今日の彼いつもの戦い方と違いすぎませんか?あまりにも挑発的すぎます」
「うん。機体の初期化でいつものは使えないから今回に限っては別の戦い方をするって言ってたよ」
「まったく違う戦い方ですか?」
「なんか格上相手に戦うなら『数が勝るなら
「どこで覚えたんですか?そんな危なげなこと」
「なんかの小説を読んで思いついたんだって」
「どんな戦争のはなしですか」
「不良弁護士が主役の裁判の話だって」
「本当になんですか!!それは!!」
こんなに動揺したユイ久しぶりだね。知り合いの隠された一面を知ったから無理もないかな。
『ブァァン』
「あ、また被弾しました」
「見ているこちらはハラハラものだね」
仕方がないとしてもこういうときに彼の側にいれないのなんか悲しいな。
♢セシリアサイド♢
試合開始から既に5分経過。対戦相手であるあの男のシールドエネルギーは既に半分を下回っていますが、わたくしのシールドエネルギーは未だに減っていません。
「とんだ拍子抜けですわ」
この男は私の狙撃に反応することができず、棒立ちになっています。できているのは手をバタバタさせての足掻きぐらい。全然覇気が感じられませんわ。奥の手を出すまでもなくこのライフルだけで十分ですわね。
「勝負から逃げなかったことだけは評価しますわ。でもそれだけです。あなたには才能の欠片も感じませんわ。まったく時間の無駄「君さ、自分の立場わかっている?」え?」
「君の使命は専用機ブルー・ティアーズに搭載されているBT兵器の稼働データをとることだろ?」
「!なぜそのことを!?」
「イギリスがあげている第三世代兵器が「BT兵器」であることさえ知っていれば、簡単に想定できる。まさか君は俺がその程度も調べないとでも思っていたのか?」
「くっ」
彼の言う通りですわね。わたくしはイギリスの候補生であること、さらに専用機を所持していることを教室で公言していますわ。ならばイギリスの専用機の傾向を事前に把握することは容易ですわね。
「それなのに君はせっかくの機会をふいにしている。君がこの一週間機体を動かしていないことはわかっている。それ事態は仕方ないよな、アリーナでの練習も予約で埋まっていたんだからな。いくら専用機持ちといえど順番を無視すれば周りから敵視されるんだから。でもそうなると君はせっかくの稼働データを採取できる機会をふいにしている」
「な、なにが言いたいのですの!」
「候補生としての優先すべき任務を忘れるなんて、よくそんなんで選ばれた人間とか言えたよな(笑)」
(ブチッ!!)
「初心者だから手を抜いてあげていたのに、思いあがってそんな口を利くのですね。いいですわ!!ブルー・ティアーズ!!!」
スカートアーマーから4つのブルー・ティアーズを射出。
「これがわが母国イギリスの第三世代型ISの象徴であるブルー・ティアーズですわ」
4つの移動砲台からの全方位射撃。素人のあなたにはもちろん、防御向けの打鉄相手にはオーバーキルともいえる布陣ですわ。しかしあなたは何度も何度もわたくしを馬鹿にしました。もう一切の情けはかけません。
「括目しなさい。覆すことのできない才能の差というものを!!!」
♤ユウキサイド♤
予想通りかなり沸点が低い。まあ、何度も挑発が重なっているから無理もないか。
傍から見たら(主観的にみてもだが)俺は挑発するだけの口だけの男だな。だけどISの試合は1対1で数の有利はない。機体の性能は向こうが相対的に上。操縦技術もこの初期状態には慣れていないから頼りにできない。なら俺がとれる手段は
『数が勝るなら数の暴力。知力で勝るなら頭を使え。性能で勝るなら物理で殴れ。すべてダメならとりあえず
どんなに性能がよくても冷静さがなければ発揮できず、どんな良策もしくじってしまう。いまなら逆転の目もある・・・が。
(ぶっちゃけ今回は短期決戦にしたいだけだけどな)
正直腕に仕込んでいるこれ想像以上にきついから早くおわらせたい。そろそろクライマックスの準備といくか。
♢セシリアサイド♢
「はあ、はあ、はあ」
さ、流石に素人相手に本気を出しすぎましたわね。このブルー・ティアーズは集中力の消費が大きいのが難点ですわね。そのせいで未だにライフルとの併用ができませんが、相手は未だに移動さえできていません。これだけで押し切れますわ・・・!
そのときわたくしの眼に入ってきたのは鋭い視線をこちらに向けてくる男の姿でした。
な、なんですの。あれは臆病者がする眼ではありませんわ。国家代表を選定する間ほかの候補者たちがわたくしに向けてきた、反逆者の眼ですわ。けどなぜ?この試合は終始わたくしのワンサイドゲームですわ。この男は未だに武器さえ展開していません。機体も既にボロボロですわ。それなのに・・・!
(そういえばずっとあの男の目線はわたくしのみに向いてますわ)
普通狙撃されているならばその銃に注目するもの。素人ならなおさら自分を攻撃するものに対して恐怖心を抱くものにも関わらず。
(まさか、銃を向けられているのに恐怖を感じていない?それに何かしら。この違和感は?)
まるで知らないうちに深い森に誘われているかのような錯覚は。
♡ストレアサイド♡
「対戦相手の子。顔が曇り始めましたね」
「もしかしたら気づき始めているのかもね。ユウキがこの試合、
「いえ、あれはまだ気づいてはいないでしょう。ただ、彼の行動に違和感を感じてはいるみたいですけど」
「流石、候補生ということかな」
凡人は彼の行動を額面のままみて終わりだ。でも彼女は確証はなくとも勘が働いているみたい。
「どうやら強者の器はあるみたいですね」
「うん。でも」
それが芽生えるか、それとも殺してしまうのかは彼女次第だけどね。
♢セシリアサイド♢
状況は先ほどよりも悪化しています。あの男のシールドは後一、二発で完全に消し飛ぶでしょう。なのにあの男は変わらずこちらを見ています。まるでわたくしを一撃で倒す、いや
(お、落ち着きなさい。セシリア・オルコット。流れはわたくしが完全に有利ですわ。それにあの男のシールドエネルギーもあとわずか。このままいけば)
そう思った瞬間、
「(ゾクッ)!!あああああ!!!!!」
気づけばわたくしは恐怖を抱いたまま、ブルー・ティアーズ(ビット)で一斉射撃していました。その一瞬偶然わたくしの視界に入ったのは
そしてアリーナに響いたのは
『試合終了。勝者セシリア・オルコット』
わたくしの勝利を告げる
セシリア・オルコット 500/500
青野ユウキ 0/400
わたくしのシールドはまったく削られることなく終了。つまりわたくしの
「ど、どうしてですの?」
なぜなら、彼のシールドを削り切ったはずのブルー・ティアーズが破壊されていました。
♡ストレアサイド♡
「終わりましたね」
「うん、計画通り負けたね」
そう、この試合彼は最初から勝つつもりはなかった。ただし、
「空中の一点で最後まで静止したままの敗北。まさに全力で負けた、ですね」
このために彼はALOで訓練していた。どんなに攻撃されても不動のままでいるために。
「にしても本当にあんな装備で空中で一点に居続けるなんてね」
「『腕に取り付けた小型スラスター』を使ってレーザーの被弾による衝撃を相殺するなんて無茶苦茶ですよ」
「イリヤなんて爆笑してたよ。『よくこんなバカげた装備を使おうとするよね(笑)』だって」
「正直今回は私も同じ気持ちですよ」
うん、そこは同意。機体に慣れてないからって言い訳があるにしても常識ハズレすぎるよ。
「でもいくら必要だったとはいえ、危ない賭けですよ。今後はこんなことさせないでくださいよ」
「うん。今回は試合前日に機体が届いたとか初心者だとかで負けてもそこまで違和感がないだろうということでしたけど、流石に今後は止めるよ」
彼はラースに保護されているとはいえ、世界的には分解してでも研究したい材料と認識されている。あまりにも負けが続けば研究所に送り込まれる危険性がある。まあ、分解してもなんにもわからないだろうけど。
「ではこれが彼から送られてきた映像を録画したものです」
「見たところ5人ぐらいだね」
「会場にいるのは一年生のようですし、これでも十分ではないでしょうか」
「にしてもゴメンね。彼の頼みが『この試合をみて疑問を覚えている生徒を探せ』だったから」
今回彼がこのような試合展開をしたのは、この異様な状況に疑問を感じている生徒を見つけるためだ。
「「現状に満足している者には望みがない。本当に有能な人材は『未知なるものを警戒し、自分の経歴に胡坐をかかず、常に思考を止めないもの』だ」とかいってたしね」
本当に彼は知り合い以外には辛口になるよね。元々顔見知りだから仕方ないのかな。
「じゃあ、そろそろユウキのところに戻るね」
「はい、行ってあげてください。彼を一人にすると不安しかありませんから」
「やっぱり、気づいた?」
「もちろんです。彼最後の一瞬笑っていましたから」
「うん。また死ねると思っちゃたんだろうね」
彼に自殺願望はない。でも他人を巻き込まないで自分一人が死ぬんじゃないかというときに彼は無意識に笑顔を浮かべる。まるでようやく恋人と再会できることを喜ぶかのように。だからこそ私たちは彼の側にいることにした。彼が無意識に向こうに行かないように。
♦山田先生サイド♦
『セシリアさんの機体整備のため、次の試合まで30分の休憩を挟みます』
彼女の装備が破壊されたので予定よりも多めに整備に時間をかけることになりました。それに織斑くんの機体がまだ到着していないのもありますが。
「ユウキ。残念だったな」
「ふん。あんな啖呵を切った割にはなさけないな」
向こうでは織斑くんと篠ノ之さんが青野くんを励ましています。・・・篠ノ之さんはけなしているようですが。ただ、彼の顔はあまり落胆していないようです。
「織斑先生。彼の試合、どう思われますか?」
「青野は傍から見ればただの臆病者と評価されるだろう。これがISでなければ」
「やはりそうですか」
おそらくアリーナにいるほとんどの生徒がそう思っているのでしょう。彼はまともにISを動かすこともできない初心者だと。しかし、先ほどのIS戦でさらに空中戦であったことを考慮すれば話は別です。
ISは基本的に「動くこと」を前提としたもの。公式な種目にスピード競技の「キャノンボール・ファースト」があるほどです。つまり、「試合で空中で制止し続けること」は本来ありえません。相手からの攻撃が続くなかそんなことをすれば的でしかないのです。現に彼の被弾率は90%を超えていました。現代の兵器を大きく上回るISの狙撃はシールドで防いでいても衝撃は大きいのです。そんな中一点に静止続けるには防御に徹した装備になっているか、衝撃を完全に受け流すことが重要です。でも彼の専用機にはスラスターしかないようですし、特別な装備はないようです。つまり、彼は純粋な操縦技術だけ銃撃の衝撃を受け流したということになります。
「それにしても彼の戦い方はあの事件みたいですね」
「山田先生、あの事件とは?」
「終始不動で相手を構える。相手の武器はすべて無力化。にも関わらず肝心の相手には一切ダメージがない。まるで「白騎士事件」のようです」
そう、彼の戦いはISのすべての始まりであるあの事件を連想させました。でもこれは流石に私の考えすぎでしょう。
「しかし、なぜ彼はわざわざこんなことをしたのでしょうか」
「わからん。おそらくこの試合を見たものの多くはあいつが無能と思うだろう。そして試合の経過を知らずに結果だけを知った者もな。普通に戦えばまっとうな評価がもらえたはずだ。それに最後のビット破壊もオルコットが粒子変換で消したようにみえなくない。なぜもっとはやくにしなかったのか。謎しかないぞ」
織斑先生の言う通り、あれだけ操縦できるならばこの試合の勝者は変わっていたでしょう。・・・あれ?
「織斑先生。どこかに電話ですか?」
「更識にも意見を聞こうと思う。生徒会長である奴もどこかで見ていただろうしな」
なるほど。教師として裏方にまわった私と織斑先生より、現役かつ国家代表の彼女なら心当たりが思い当たることがあるかもしれませんね。
❤更識楯無サイド❤
「何よあれ」
ふざけているわ。あんなこと私にはできない。いや、できたとしてもまずやらない。なぜならあんなことしても絶対勝てないから。
「彼は一体何を考えてあんなことを(プルルルルル)何よ、こんな時に(ガチャ)もしもしこちら更識です」
『更識、私だ』
「お、織斑先生!め、珍しいですね。私に電話なんて」
『さっきの試合、どうせ見ていたんだろ。お前の考えをきかせてくれないか』
「考えですか?そうですね。彼は本気で勝ちに行く気がなかったとおもいます」
『やはりそう思うか』
「はい、最後の瞬間彼は何らかの手段でビットを破壊しています。わざわざあそこまで自分を追い込む必要がありません」
『つまり奴は最初から別の意図があったと』
「そう考えるのが妥当でしょう」
『なら、意図的に空中で停止し続けることができたと思うか?』
「彼は最初の狙撃以外すべて被弾する方向と反対に腕を伸ばしていました。仮に腕にスラスターを仕込んでいれば、被弾によって生じる衝撃を相殺できるかもしれません」
『だがそれを実行するには』
「はい、もし本当にこれを実行するには「被弾する方向」と「被弾の際に生じる衝撃」をすべて把握する必要があります。ライフルしか撃っていなかった最初ならともかくビットを併用し始めた後では全方向に意識しなければなりません」
『全方向・・・。ハイパーセンサーを使えば見えないこともないが』
「はい。昨日専用機が届いたばかりの初心者には到底不可能です」
ハイパーセンサーは確かに全方向を見ることができる。しかしISに乗り始めたころではそんなことまずできない。全方向を見渡すということは脳で処理する視覚情報が膨大に増加することを意味する。つまり実戦でのハイパーセンサーを使うには事前に訓練が必要になる。そうでなければオーバーヒートをおこしかねない。
「それに気が狂っているとしか言えません。最初から被弾することを前提にするなど。そもそも回避したほうが消費するエネルギーが少ないです。わざわざあんな手の込んだことをする必要性がないです」
『そうだな。それと試合終了直前にオルコットの装備が破壊されたことについては何かわからないか』
「確かなことは何も。ただ一つ気になることが。彼の機体は度重なる被弾でボロボロになっていましたが、試合終了後にはその部分が修復されていました。いくらISに自己修復機能があるといっても早すぎます」
『つまりお前はそれがあの謎の現象に関係すると?』
「先生。今私たちは未知なものを想定しています。ならわずかでも可能性があるなら排除すべきではないと思います」
『そうだな。更識、この件引き続きお前に任せてもいいか』
「もちろん。任せてください」
先生の許可ももらったし、青野ユウキくん。あなたの化けの皮を剥がしてあげるわ。
「会長。少しよろしいでしょうか」
「虚・・・。せっかくかっこよくしめたのに」
「しめる、ですか?」
「まあいいわ。それで何かしら」
「はい。彼の機体に使われているコアなんですが、調べたところ「ロストコア」だということがわかりました」
「なんですって!」
ロストコア。研究や実験の過程で使い物にならなくなったISコアの総称のはず。それが使われたということは。
「破損したコアの修復が可能ということかしら」
「いえ、彼が所属するラースには女性に反応しなくなったコアがあり、それが使われたようです」
「・・・なんだ。びっくりするじゃない」
てっきりコアの修復ができたのかと思ったじゃない。
「それがどうしたの」
「はい。彼はそのコアに反応した二人目のようです」
「二人目?つまり本来なら彼以外の人にあの機体は渡っていたということ?」
「情報提供者もそこまではわからないそうです」
わからないことだらけか。まあいいわ。彼に少し探りを入れてみましょう。
「その一人目の名前は?」
「かろうじて名字だけわかっています。こちらです」
そういって虚が渡してきた資料の最後にはただ一単語。「紺野」と書かれていた。
最後に出てきた「紺野」はオリキャラです。
冒頭にでてきた裁判のはなしの元ネタは不良弁護士のはなしで、決め台詞が「司法がだめなら論理をたたけ、論理がだめなら司法をたたけ、両方だめならとりあえず机をたたけ」です。
スラスターで被弾の衝撃を相殺うんぬんはリボーンのあの必殺技が元ネタです。
今回オリ主が負けたのは機体性能の差があったことも一因ですが、建前上初心者が一週間で候補生に勝つのはやばいかなと深読みしたためです。でも手加減するのは前話の発言と矛盾する。そこで試合に負けてでも恐怖を刻めばいいということにしました(ま、前にストレアが「いろいろ頑張れ」っていっていますし(ToT))。
それに戦闘シーンなのにその描写がすくなくて申し訳ありませんでした。