ISとビーターの弟子(仮)   作:由紀夫

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二人の候補生の反応

♧簪サイド♧

試合が終わっても目の前で起きたことが信じられなかった。あの試合は相当の技術をもっていないとできないものだった。私以外にも彼を驚異に感じた生徒が何人かいた。おそらく専用機こそなくても各国の候補生に選ばれた人たち、もしくはそれぐらいの実力者だろう。

 

「かんちゃん」

 

「本音」

 

「今の試合。絶対おかしいよね」

 

「うん」

 

確かに彼はあの時「勝負に勝ったら」ではなく「試合をみてから」といっていた。この試合でみせた技術は十分評価できる。でもあまりにも不可解なことが多すぎる。なら

 

「本音。私ちょっと彼のところに行ってくる」

 

「か、かんちゃん」

 

今ならまだピットにいるはず。彼に直接確かめる。

 

試合会場のアリーナのピットのドアの前まで来たけど、冷静になると男の子を訪ねるのって恥ずかしい。彼は普通に来ていたみたいだけど彼は女子と接するのに躊躇しないのかな。でも今は恥ずかしがっている場合じゃない。

 

「し、失礼します」

 

「あれ?君誰?」

 

!あれは織斑一夏。しまった。彼は現在試合待ち。ならこのピットにいる可能性があったはずなのに彼と話すことしか考えてなかった。

 

「わ、私は」

 

「どうした。・・・お前は確か」

 

「お、織斑先生・・・」

 

マズい。規則に最も厳しいと噂の織斑先生。

 

「何の用だ」

 

「あ、青野くんに用があって」

 

「奴なら今そこの整備室だ。破損した部分の整備をしたいと言って入っていった」

 

せ、整備!確かに彼の機体はところどころ破損していた。ISには自己修復機能があるけど精密な機械であることには変わらないから整備できる環境ならやっておくべき。こんな簡単なことを見落とすなんて。

 

「あのそれじゃ」

 

「悪いが今はこのピットは関係者以外は立ち入り禁止だ。すぐに「いいじゃないっすか。先生」なんだ青野。私の決定に不満があるのか」

 

!青野君。

 

「彼女は俺の知り合いです。それに試合には直接関係ない篠ノ之さんも織斑の知り合いということでここにいるじゃないですか」

 

あ、本当だ。試合に出ない子がいる。確か篠ノ之博士の妹さん。

 

「だが」

 

「俺の試合は既に終了しています。今から何かアドバイスをされても無意味です」

 

「貴様はこの後、織斑と試合する可能性があるんだぞ」

 

「あれだけ無様な負け方をした俺が今日試合する必要はないですよね。それとも先生は弟さんが俺みたいに無様に負けると思っているのでしょうか」

 

「!千冬姉!(ゴッ)」

 

あ。織斑先生の鉄拳がさく裂した。・・・正直『いい気味\(^o^)/』と思ったのは内緒。

 

「織斑先生だ。いいだろう。更識妹。入室を許可する」

 

「あ、ありがとうございます」

 

よ、よかった。叩き出されないで。

 

「それでどうしたんだ?まだ織斑の試合もあるのに」

 

「き、聞きたいことがあるから」

 

ちゃんと聞かなきゃ。あの試合のこと。

 

 

♤ユウキサイド♤

「それでどうしたんだ?まだ織斑の試合もあるのに」

 

「き、聞きたいことがあるから」

 

「?別に後でもいいんじゃないか?」

 

「そ、それは」

 

「まあいいや。それで何?」

 

「なんであんな試合したの?あれだけのことができるならもっと善戦できたはずなのに」

 

「あー、うーん。まあ、勝つことを目標にしていたらできただろうね」

 

でも勝ってもメリットないし。

 

「ならなんであんなことを」

 

「?そんなに意外?」

 

「え。だって」

 

「アラスカ条約によってISの軍事利用は禁止されているだろう。そしてISはスポーツとして認知されているだろ。つまり

 

『インフィニット・ストラトスはエンターテインメントでなければならない!!!』

 

だろ?」

 

「ふざけているの?」

 

「うん、ふざけた。ゴメン」

 

流石に今の言い方は怒りを買うわな。でもそこまで的外れとは思ってないんだよなあ。織斑千冬が人気だったのは剣一つで相手を叩きのめすのがほとんど試合ではなく虐殺ショーのようにもしか見えなかったし。もしそうじゃないならなんで現役のビュリュンヒルデの影が薄いのか説明できない。

 

「本当の理由は、今の君のようなあの試合をみて疑問を覚える生徒がいるかを確認したかったんだ」

 

「どう意味?」

 

「インフィニット・ストラトスは今最も世界中で研究されている分野だ。それは言い方を変えれば『環境の変化』が激しいということだ」

 

「環境の変化・・・」

 

「そう。人間が規則(ルール)を管理するスポーツや学術、それにVRMMOなんかは新たな技術の導入があるとその分野全体が変化する。例えばテニスなんかは昔から生まれもった『身体能力』とそうでないものの『テクニック』が交互に時代を作っていくらしい。その世代交代には「ラケットの技術の向上」があるそうだ。ラケットそのものの強化によりさらならテクニックが必要になるためだそうだ。」

 

そして時にその変化に取り残されてしまうこともある。げんにVRMMOでは数年前にGGOで事件が起きてしまったしな。

 

「そしてさっき言った通り、ISは環境の変化が今までのどの分野よりも激しい。第3世代ISが本格的に導入されればそれも顕著になるだろうな。そのときに環境の変化についていけるのは『現状に慢心せず思考を止めない者』だ」

 

「現状に慢心せず」

 

「そう。そして慢心せず常に成長しようとする人間はどんな些細な物でも疑問にもつ。今の君のように」

 

「・・・」

 

「こういうものは通常の学力や実習では把握できない。だからいまのうちに把握しておきたかった。いずれ驚異になるライバルの可能性をね。といっても確認できるのは『今現在での』でしかないけど」

 

「『今現在』?どういう意味?」

 

「人の認識は思いのほか変化しやすいんだ。例えばそう、どこででも手に入るようなちっぽけなプレゼント。だがそれをプレゼントした人間が死んでしまうとそれは形見になるように」

 

そういいながら俺は右手に嵌めている、ISの待機形態である指輪を見た。最もこれはもらったものじゃなくクエストクリアによるドロップだけどな。

 

「これからさき何かが起きるたびに意識の変化もあるから、今意識が低くても変わるときがある。だから今日観察した結果がすべてじゃない。でも、早く知っている者ほどチャンスが多いからな」

 

いくら意識が変わっても既にとき遅しということはよくあることだ。流れてく時は容赦なくチャンスをさらっていくから見逃さないようにしないといけないからな。

 

「でもそうするとまだ意識が低い人からは疎まれるんじゃないの?」

 

「確かにそうだ。でも俺はすべての人間に評価されようとは思わない。ほんの数人が理解してくれさえすればいい」

 

新しい環境で友ができることも大切なことだ。でも俺にはいつでも受け入れてくれる仲間がいる。だから問題ない。

 

「それで君はどう思った?」

 

さて、そろそろ返事をもらおうかな。君が俺をどのように評価したのか。

 

♧簪サイド♧

「それで君はどう思った?」

 

「(ゾクッ)う、うん」

 

「じゃあ、あの話どうする?時間をかけたいっていうなら待つけど」

 

「・・・」

 

今、わかった。彼は私の評価を待っているんじゃない。()()()()()()()()()()()()。私の機体作製には時間がかかる。必然的に彼を長時間拘束することになる。彼は私にその価値があるかを見定めているんだ。でも、なんだろ、この気持ち。

 

(あなたは無能のままでいなさい)

 

お姉さんにはこの一言で見放されてしまった。でも彼は彼なりに私に向き合おうとしている。

 

「ううん。そんな時間はいらない」

 

「そう。なら」

 

「でも一つだけ条件がある」

 

「条件?」

 

「私のことは簪って呼んで」

 

「え、え~マジで?」

 

「マジで」

 

「う、・・・か、簪、さん」

 

「うん。機体製作の手伝い、お願いね。青野くん」

 

「こちらこそよろしく。簪さん」

 

彼はこれからも私をワクワクさせてくれるかな。

 

 

♤ユウキサイド♤

 

『とりあえずこれで第一関門は突破だな』

 

まあ、まだ機体完成まで時間がかかるだろうけどそれはイリヤの助言もあるし一応完成レベルはいくだろ。・・・流石に第三世代兵器までは無理そうだけど。

 

『ねえ、ユウキ』

 

『どうした?』

 

『あの子に変なフラグ立ててないよね』

 

・・・は?

 

『あんな曲芸まがいのことした後でどうフラグを立てろというんだよ』

 

『・・・まあいいけど。忘れないでね。人間の気持ちは移り行くものであること』

 

『そんなのキリトのまわりでよくあったから知っている』

 

『(・・・人は当事者になると鈍感になるというけど本当だね)』

 

なんだ?ストレアのやつ?

 

「あ、それといろいろ聞きたいんだけど」

 

「何?」

 

「どうやってあそこにずっといたの?前からの狙撃ならスラスターでなんとかなっても後ろからは無理じゃない?」

 

「ああ。これ使った」

 

そういって俺は部分展開で腕に装着したスラスターを出した(展開に10秒かかったが)。

 

「これ使って後ろからの衝撃を流していた」

 

「こんなものいつの間に出していたの?」

 

「機体と一緒に。オルコットも試合前にライフル出していたし別にいいだろ」

 

「じゃあ、最後のビット破壊は?」

 

「あれ、見えてた?オルコットが消した様にみせるためにあのタイミングまで待ったのに。あれは「装甲分解・射出装置」。シールドエネルギーがあるから装甲いらないとばかりに研究所がふざけてつくった装置。これで装甲の破片をぶつけた」

 

「それっていつから」

 

「『よくそんなんで選ばれた人間とか言えたよな(笑)』のくらいから準備はしてたよ」

 

「でもそんなことしないで普通に武器をつかえば?」

 

「あの小型スラスター。両腕につける必要があるんだが誓剣、ああ、俺の専用機の名前な。で誓剣は拡張領域が小さくてなんと二つまでしか載せれないんだ」

 

「え?二つってもしかして」

 

「当然()()にス()()()()()()()で余裕なくなって武器積めなかった。だから装甲を代用した」

 

「よく思いついたね。そんなこと」

 

「・・・うん。まあな」

 

言えないよな。これができたきっかけがヒースクリフの神聖剣だなんて。あいつのスキルでは盾からでも攻撃判定があった。それをイリヤに話したのがこれが作られた一因でもあるんだよな。

 

うん、黙っておこう。

 

 

♢セシリアサイド♢

「なぜ、なぜわたくしのブルー・ティアーズが破壊されたのですか」

 

試合そのものはわたくしの勝利でしたわ。しかしわたくしには敗北以上の汚点がつけられたとしか思えませんわ。何度考えてもあの男が何をしたのかが理解できません。これ以上の屈辱はそうそうありませんわ。いったいどうやってあの男はブルー・ティアーズ(以下ビット)を破壊したのですか?あのときあの男は何も武器を展開していませんでしたわ。仮に高速で移動できたとしても4つものビットを破壊するには時間が足りませんし、このわたくしに視認されないなんてありえませんわ。

 

これが政府が警戒していたこと。

 

~回想 入学式の日、消灯前の政府への報告にて~

 

「それは本気で言っているのですか」

 

『ああ。日本を侮辱するのでもなんでもいい。あの男たちと試合をするように促してくれ。それも早急にな』

 

彼は政府の中では有能といわれる男ですわ。その彼が何故そんなことを。代表候補生はそれだけで価値があるもの。その発言力は大臣のそれと同等でもありますわ。にも関わらず喧嘩を売るように仕向けるなど。

 

「なぜそこまでして試合を組む必要があるのですか」

 

データを採取するなら試合以外にも方法はあります。ならば別の意図があるのでしょうか?

 

『君は二人目の少年、青野ユウキくんと接触したかね』

 

「は、はい」

 

なぜここで彼が?あまりにも幼い身なりで庶民丸出しの少年という第一印象。しかし世界王者の弟である織斑一夏には落胆させられましたが、彼のほうは初心者として立場をわきまえていて好意的ですわ(といってもあの二人では、ですが)。しかし、環境的にも血筋でも織斑一夏の方を警戒するのが普通のはず。

 

『実はあの彼に専用機が与えられることになった。しかし日本が二人ものイレギュラーを所属することが問題視されている。そこで彼の機体は各国の協議でその性能が決められることになった。これはまだ世間に出してはならない重要事項だ。他言は控えるように』

 

「各国の協議で?」

 

確かに貴重な人材の生存率を上げるためにはISの譲渡は必要なことでしょう。しかしそのために国際会議まで行われるのはあまりにも異例ですわ。

 

「それが先ほどの話とどのようにつながるのでしょうか」

 

『この協議は元々学園における実技が行われるであろう5月下旬まで行われる予定だ。だが今試合が割り込めば機体が決定しないまま協議が打ち切られる。そうすれば各国に配慮するために機体性能は最低能となるだろう』

 

「つまり、今試合を促せば彼に機体を与えなくてはならず、我が国の驚異を減らせると」

 

『そうだ』

 

なるほど。たしかに他国の専用機持ちの力を削ることができるならそれに越したことはありませんわね。

 

「なぜそこまで警戒する必要があるのでしょうか。彼はISを動かせるにしてもただの少年ですわ」

 

『く、詳しいことは言えない。だがこれだけは言っておく。少年を手にいれた日本以外はどの国も彼を警戒している。さきほど君は喧嘩を仕向ける気かとおもっただろうが、各国は自らが非難を受けてでも弱体化させたと評価してくれるだろう。そしてこれは一年生のなかで日本人以外で専用機を持つ唯一の候補生、つまり君だけが実行できる最重要任務だ』

 

そこまでの価値があるということ。ですがそれでは日本を敵に回すのではないのでしょうか。

 

『日本のことは大丈夫だ。現在あの国にはたいした発言力はない。それに我々がすべての責任をもつ』

 

!政府が責任をもつ。それほどまでに重要なのですね。

 

「わかりましたわ。このセシリア・オルコット。必ず成功させてみます」

 

『ああ、頼んだぞ』

 

~回想終了

 

運のいいことに次の日にはクラス代表の選出となりました。政府の言う通り、日本を侮辱するような発言を織り交ぜながら彼を挑発しましたわ。クラスの日本人の女性とからも非難の目を向けられましたが、そんなことは些細なこと。任務遂行のための安いリスクですわ。最も釣れたのは無知な方でしたけど。そして彼はなんとわたくしの発言が一理あると言い出しました。おかげでわたくしに対する不審な目は幾分和らぎましたが。その結果代表を決めるという名目で試合が組まれました。

 

政府はわたくしの行動をよくやったとほめてくださいました。それに2組の候補生である方(名前はたしかティナ・ハミルトン)も政府から連絡があったらしく、わたくしの行為を評価してくれました。

 

その結果、彼に与えられたのは訓練機と名高い打鉄の色違い。政府の思惑通りにはなりました。でも、それにも関わらず彼はこのわたくしの顔に土をつけました。彼の機体が弱いことによる油断、そして度重なる挑発によって冷静さを失っていたとしても圧倒的性能差がありながらですわ。もし、政府が警戒したように彼にまともな機体が与えられていたら・・・か、考えることさえ恐ろしいですわ。

 

勝利したのはわたくし。しかし、どんな称賛も今は虚しいですわね。相手の力を削っておきながら相手が何をしたのかもわからない。これほどの侮辱を味わうことになるとは。

 

「わたくしは証明し続けなければならないのに。有能であることを。今は亡き母のように」

 

わたくしの母は、今でもわたくしの誇りですわ。でもそんな母にもただ一つだけ汚点といえるものがありました。それが父、いえ父と呼ぶのも嫌悪する愚か者でしたわ。名門貴族であった母に取り入りオルコット家に婿養子で入ってきたあの男は母とは釣り合うことのない弱者でした。常に母の顔色を見ておびえることしかできない弱者、いえ、小動物といっても過言ではありません。家の中でも外でも足手まといでしかない我が家の恥ですわ。

 

そしてなによりも許せないのがあの男のせいで母とわたくしの最後の時間を奪ったことですわ。そうあの日。わたくしの人生で最も最悪な日、いえ最悪な日常が始まった日。母の最期はあの男と共に列車事故に遭いました。なぜあの二人がよりによってあの日に一緒だったのか今でもわかりません。そしてわたくしに待っていたのは地獄のような日々のみ。当主がなくなったオルコット家の財産をわが物にしようと言い寄ってくるハイエナども。味方は母と同じようにわたくしの成長を見守ってくれていた使用人たち。そして幼なじみのチェルシーだけでした。わたくしは母が守ってきたものを守るため、ISの操縦者になる道を選びましたわ。その道のりは決して楽ではありませんでした。しかし母のような誇り高い人間になるためには必要な道のりでしたわ。そしてわたくしはBT兵器の適正が高く、第三世代IS「ブルー・ティアーズ」を与えられましたわ。

 

わたくしが学んできたこと。それはどんなに完璧であろうともたった一つの汚点がすべてを台無しにすることですわ。あの母が父のような愚か者のために死んだように。

 

「決して許しませんわ」

 

結局あの男がなにをしたのかはわからずしまい。ですが今度敵として立ちはだかったするときには反撃など許さない。いえ、そんな気を起させないように徹底的につぶしてみせますわ。

 

『オルコットさん。整備が完了しました。試合の準備をしてください』

 

でもひとまず置いておきましょう。今すべきことはただ一つ。この試合に勝ち、わたくしについてしまった汚名を返上すること。そのために彼には生贄になってもらいましょう。

 

「今度こそ、完全な勝利を収めて見せますわ」

 

わたくしがわたくしらしくあるために。




元キング「MATTE!それは俺のセリフ」

遊キ「口を挟まないでくれJ!今は真面目な話をしているんだ」

元キング「俺と話すときは真面目ではないというのか」

遊キ「・・・」

元キング「返事をせんか!!(泣)」

現キング「怯むな!!」

セシリアの父に対する感情が悪化していますが、一夏に会うまでは男と接触する機会は政府のトップくらいしかなく、彼女の男に対する基準になっているとおもったためこうしました。
ちなみに電話の男はオリ主が以前からISに乗っていることをイギリスで唯一知っています。
それと政府の意向で喧嘩を売っていますが基本的に彼女はチョロインのままです。


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