♤ユウキサイド♤
「お、織斑くん!」
山田先生が急いでこちらに来た。ということはようやく機体が届いたのか?
「や、山田先生落ち着いてください。はい、深呼吸」
「スーハー、スーハー」
「はい、そこでストップ」
「ッ・・・」
おいおい、何をしている。試合前に遊ぶなよ。
「先生。急いでいるなら息を止めてないで早く報告したほうが」
「ええ?止めなくていいんですか」
うん。やっぱり天然だこの人。
「目上の人間は敬え、馬鹿者(バアン!!)」
そしていつもの制裁。君ついさっきも受けてたよね。まあ今のは完全に織斑が悪い。
「それで山田先生」
「あ。えっとですね。来ました、織斑くんの専用機が。すぐに準備してください。オルコットさんはもうスタンバイしていますよ」
「織斑。アリーナの閉館時間が迫っている。ぶっつけ本番でものにしろ」
「このぐらいの障害。男なら軽く乗り越えてみせろ。一夏」
「え、え?」
「「「いいから早く」」」
そういって装着(?)を急かす一同。てちょい待て。
「あの~織斑先生。さっき試合中に最適化しろって聞こえたんですが」
「そうだが文句あるのか」
「・・・いえ、何もありません」
『どうしたの?』
『ちょっと気になることがあるが、素人知識だから自信がない。とりあえず様子見で』
流石に教師二人がいるんだ。俺の懸念は勘違いの場合もあるし。
(でも俺の想像通りなら、織斑のやつトラウマになるんじゃないのか?)
まあ、今は見守ろう。そしてピットの搬入口から入ってきたのは「白い鎧」とでもいうべき機体。だがなぜか俺にはそれが悪魔が宿る何かに思えた。
「これが」
「はい。織斑くんの専用機『白式』です」
ビャクシキ?どういう字だ、それ?
『多分「ビャク」は「白」かな?
『なるほど。確かに』
でもどこまで白にこだわるんだ?見た感じはスラスターが大きいし近接戦闘向けっぽいけど。
「あれ?」
「どうした?」
「いや、最初にISに触れたときに感じたあの電撃のような感覚がないんだ」
最初?電撃?何それ?
『もしかしたら君が触れて泣いたときのような感じじゃない?』
『ああ、あれか。でもあの時感じたのはとても、とても
もっとも今ではあの感覚はないんだけどな。やっぱり体が正常じゃないからか?
『まあ、引きこもった君を立ち直した出来事だからね』
『言うな。俺の人生で最大の鬱期だぞ』
『まあね。でも半年ぐらいで立ち直ってくれてよかったよ』
『本当にすみませんでした(脳内土下座)』
まあ、当時は本当に申し訳なかったよ。みんなが部屋に引きこもった俺にいろいろ慰めてくれたのに、立ち直った理由が『ISに触れた』だからな。特にストレアにはこのことでは頭が上がらん。
~回想~
あの日俺とキリトは菊お『ほらほら、今はあの子を観察しない』
『そうだな』
ということで回想終了。でも菊岡のところで止めたのわざとだろ。
そういえば織斑が最初に触れたISって倉持技研が持って行ったんだよな。もしかして最初に触れたコアだから相性がいいとかの理由でこの機体に移植されたのか?それなら既にふれているから何も起こらないとか?そう考えながらふと横に目線を逸らすと悔しそうにビャクシキをにらんでいる更識がいた。まあ、自分の機体を凍結に追いやった張本人(機?)だからな。
「更識さん。こういう言い方はひどいかもしれないけどさ、人間は誰もが『公平に不公平』だよ。君の機体があいつの機体の犠牲になったこともな」
「!・・・うん(泣)」
い、今にも泣きそうで涙をこらえそうな目をしないでくれない。言いたいことはこの後なんだから。
「そして、俺が織斑じゃなくて君に味方することも『公平に不公平』だろ?」
「!うん(笑顔)」
よ、よかった。下手したらまたあの会長が難癖つけてきそうだもんな。
『・・・』
『・・・何?』
『べ~つ~に~』
機嫌悪くないか?ストレアのやつ。その間も織斑の方は搭乗を無事終え不具合がないか動かして確認しているみたいだ。
「ハイパーセンサーは問題なく作動しているようだな。こちらでは不具合はないようだがどうだ一夏?気分は悪くないか」
「ああ、大丈夫だ。千冬姉」
「そうか」
あり?先生と言わないのに鉄拳がない?ああ、家族として接しているのか。でも何か違和感があるな。殺伐とした雰囲気に慣れすぎたか?
「箒」
「な、なんだ?」
「行ってくる」
「ああ。勝ってこい」
おうおう。篠ノ之は恋する相手に声かけてもらえてうれしそうだな。
「ユウキ」
「何?」
「お前の敵とってきてやるぜ」
「お、おう。がんばれよ」
「ああ、行ってくる」
別に落ち込んでいるわけでもないから返答に困る。そしてお前のせいで篠ノ之がまた睨んできているんだが。多分自分だけ見てくれていると思っていたら他のやつにも声をかけて残念ということか。
「ねえ?もしかして彼、気づいてないの?君がわざとあんな戦い方したこと」
「ああ。でもあいつは最近までISと無縁だったんだし、大目に見てやろうぜ」
「・・・君だって無縁だったのに」
「あ、いや。ははは・・・」
ヤバ。さっき協定結んだ反動で油断していたみたいだ。
『(超小声で)・・・やっぱりこの子に甘い気がする』
『・・・?今何か言った?』
『別に。変な電波でも受信したんじゃないの』
怒っている?確かにうかつだったからな。気をつけよう。
そしてアリーナで相対する二人・・・だが。
「織斑には悪いことしたかな」
そこにいたのは誇りを傷つけられ、汚名返上のために手段を選ばない戦士だった。
♧一夏サイド♧
「ようやく来ましたわね」
「おう。悪いがユウキの
「敵?何を言っているのですの!?」
「な、なんだよ?」
「あなたまでもがわたくしを馬鹿にしますのね。いいですわ。あなたは情け容赦なく叩きのめしてあげますわ」
なんだ?なんでこんなに怒っているんだ?箒は「あいつは勝利の余韻に酔いしれているはずだ。そこにつけいる隙があるはずだ」といっていたけど。
『それでは試合開始です』
「行きなさい。ブルー・ティアーズ」
「いきなりか」
さっきの試合でユウキのシールドを削り切ったやつだな。
バシュッ!!
!くそ!ユウキは棒立ちだったからわからなかったが結構速く移動している。それにあのレーザーも避けるのが困難だ。
「くそ、俺が白式の反応に追いつけてない」
やばい、シールドが削られていく。何か、この状況を打破できるものは・・・て。
「剣しかないのかよ!?」
何もないよりはマシか。
「狙撃されている状況で接近が必要な近接武器を使うなんて、どこまでわたくしを馬鹿にしてますの」
セシリアのやつまた勝手に逆上しだしたぞ。こんなに乱れ打ちされたら近づくことも・・・そういえばなんであいつはこの試合あのライフルを使っていないんだ?・・・もしかして。あの兵器からの狙撃を回避し接近しようとフェイントを入れてみる。・・・やっぱりそうか!さっきの試合ではユウキが棒立ちだったから気づかなったけど。
「わかったぜ。この試合お前は一度もそのライフルを使っていない。いや、そうじゃなくて使えないんだ。この兵器の操縦に全神経を集中させているからな」
「・・・・・・・・」
それがわかれば簡単だ。あいつは自分を誤爆しないようにある程度近づいたらこれで打つことはない。それなら捨て身の突進で一気に近づく。それで決める!!俺は左手を無意識に動かしていた。
♢箒サイド♢
「すごいですね、織斑くん。ISの起動が2回目とは思えません」
山田先生が一夏のことをほめている。ふん、当然か。この一週間私が付きっ切りで指導したのだ。この程度はやってもらわなくてわな。
「織斑のやつ、浮かれているな」
・・・千冬さん?
「どうしてわかるんですか?」
「さっきから左手を閉じたり開いたりしているだろ。あの癖が出るときは大抵簡単なミスをする」
「はあ、流石ご姉弟ですね」
な!い、一夏にそんな癖があったとは。さ、流石姉弟。私以上に一夏を知っている。
「だが相手の弱点に気づいた一夏が有利!この試合もらった」
「まだそう決めつけるのは早いぞ、篠ノ之」
誰に言ったわけでもない私のつぶやきに返答したのは先の試合で無様な敗北をした
「ふん。負け犬の遠吠えか。悔しいだろうな、一夏がこれほど善戦しているのだから」
「『どんな不利な試合でも理論上逆転することはできる。ただし、それによってもたらされる勝利に栄光があるかはそいつ次第だ』という言葉がある。まだそうなるかはわからないさ」
「ふん、負け犬の遠吠えにすぎんな」
みじめな思いをしてみているがいい。一夏が勝利を掴む瞬間を。
♧一夏サイド♧
バシュッ。ボジュッ。
相変わらずエグイレーザー攻撃が続いてる。でもこれなら一気に近づければチャンスがある。どうやらこのレーザーの威力はそうでもないようだ。なら自爆覚悟で。
「うおおおお!!!」
よし、間合いに入った。これで「甘いですわ」え!?
ガシッ!!
な、ナイフだと!?でもいつの間に!?そんなそぶりなかったぞ!!
♢箒サイド♢
「一夏!?」
なぜだ。一夏の剣は確実に捕らえたはず、それにいつの間に奴はナイフなんかを。
「これは織斑のミスだな」
「何!?負け犬は黙っていろ!!」
「ああ、悪い。確かに俺が口出しするのはお門違いだ「青野、今の発言を説明してみろ」・・・わかりました」
「ち、千冬さん」
「織斑先生だ(ゴッ!!)」
「(どんだけ公私を分けたいんだ?しかも織斑はまだ家族間でわかるがこれは体罰じゃないか?)オルコットはライフルの陰になるようにあのナイフを展開していました。おそらく織斑が接近してきたときを警戒して準備していたのでしょう」
「馬鹿な。そんなこと私は気付かなかったぞ!」
「人間というのは本能的に新しい物を追ってしまうんだ。おそらく会場の誰もが二戦目のオルコットじゃなく、織斑のほうに集中していだろ」
「く!」
た、確かに。
「ちなみにあいつがナイフを出したのは織斑がドヤ顔で『わかったぜ。~この兵器の操縦に全神経を集中させているからな』と言っていた時に展開していたから余計に気づかないだろうな」
あの時にすでに展開していたのか!?
「それに君に限っていえば気になる男子の初戦だ。織斑に集中するのは無理もない」
「き、貴様。な、何を言って」
「悪いがこの一週間ただ同級生をやっているわけじゃない。君の態度で何となく察していた。わかってないのは当の本人ぐらいだろ」
「な、な、な」
なぜこんなところでそんな重要なことを暴露されなければ・・・まわりの反応がない。本当にバレバレなのか?
「そ、そんなことは今はどうでもいい。あらかじめ準備していたとはどうして言える!?」
「さっき、織斑は『剣しかない』と言った。普通ならブラフの可能性もあるが、この一週間で織斑は『良くも悪くも熱くなりやすく、自分から人を引っ掛ける性格ではない』ことがわかるからな。普段の生活態度とあの焦り方で本当のことだと判断できる」
「!?」
確かに一夏はまっすぐな性格だ。まさかそれがあだになるとわ。
「俺でさえ推測できたんだから、オルコットもそう考えたとしてもおかしくない。特に彼女はこの一週間、織斑を目の敵にしていたが、裏を返せばそれだけ意識していたといえるからな」
それって一夏にいずれ惚れるのでは・・・いやあんなに口論になったのだ。そうそう惚れるわけが・・・って私は何を考えている!!!えい、今は試合だ試合。・・・何!オルコットのやつがライフルをしまった?
「馬鹿め。自分の得意とする武器を捨てるとは」
やつは銃のエキスパートだ。これなら逆転の目も
「いや、これは理にかなっている」
さっきからこの男は私の言うことに批判的過ぎないか?
♤ユウキサイド♤
「理にかなっているってどういうこと?」
簪さんが俺に説明を求めてきた。さっきから俺説明ポジ化してない?
「彼女はあまり接近戦を得意としてないようだがあのビットを活かすならライフルよりナイフのほうがいい」
「どうして接近戦が苦手だといえる。単に一夏との距離があるだけかもしれんぞ」
「さっき、ナイフを展開したときオルコットは小さい声で『インターセプター』と言っていた。多分あのナイフの名前だろ。候補生ともあろうものが初心者向けの『武器名を発言してからの展開』をして出したんだ。多分近接武器の展開に慣れていないんだろ。つまり、接近戦は苦手だと思ったんだ」
「そんなことまで考えていたのか」
「悪いがただで負ける気はないんでね。黒星が着く以上それなりに情報は得るようにしている」
「ふん。どうせ下らんことしかわかってないだろ」
「・・・篠ノ之。お前はこの辺に野球のボールを投げられたらどうする?」
そういいつつ俺は篠ノ之の肩から横に離れた辺りを指差した。
「どうと言っても、別にどうもせんが。その位置ならまず当たらないだろう」
うん、まあそうだな。普通なら。
「確かにこの辺に投げられても普通なら当たらない。でもこの辺りはISのシールドがギリギリで発動する境界線でもある」
「何?」
「つまり、相手を直接狙わなくてもシールドが展開される境界を知っていれば削ることが可能ということだ。
まあ、人体を守るためのシールドだからそれぐらいが適切だろう。だがそれを知っていると知らないでは大きな差がある。そしてその境をさっきの試合で体感したというわけだ。偉い人の言葉に『愚者は経験に習い、賢者は歴史に習う』とあるが、残念ながら俺は賢者じゃないからな。実際に経験しないとどうにもならないんだ」
ALOとかでも普通に死ぬことはあるし、ガチのプロが集まるGGOでは死ぬなというのが無理の話だ(一度シノンとスコードロン(GGOにおけるパーティ)が別のときに狙撃されたこともある)。でもその死を無駄にしないように普段からしているからな。
「だいぶ話がそれたな。でオルコットはライフルとの併用ができないのはさっき織斑が言っていたな。これは想像だがおそらくライフルの過程が複雑なことも理由だろう。銃を『構え』、相手を『定め』、引きがねを『引く』。さらに命中率をあげるには風向きなんか自然条件も考慮しなければならない。そんなことをしながらビットの操作なんてまず無理だな。それに対し、ナイフなら相手が接近した場合だけビットの操作を放棄して行動できる。ただ、弱点もあるが」
「弱点?」
「オルコットのナイフは織斑の剣に比べてリーチが小さい。そこにつけいるすきはある」
それも撒餌の可能性もあるがな。
♧一夏サイド♧
このままではマズい。こうなったらもう一度接近して「そろそろ頃合いですわね」・・・ひょ?
「残念ながらブルー・ティアーズは4基だけではないですわ」
ガシンッ!
その音と共に新たに発射口が追加された!あれはミサイル!!
「あなたのシールドエネルギーの残量なら命中すればジ・エンドですわ!!」
マ、マズい。逃げないと
「今更逃げても無駄ですわ!!」
追跡されている!?あのミサイルはホーミングするのか!!?
「くそっ」
「さらに追い打ちですわ!!」
!!さらに発射口が!!
「もう一発だと!!」
流石に二発に挟まれたら逃げられない。ミサイルの着弾と同時に俺は光に包まれた。
♤ユウキサイド♤
「一夏!!」
あ~あ。それにしても他にもビットあるかなと思っていたがまさかミサイルを実装しているとはな。
『決まっちゃったかな?』
『どうだろうな』
試合開始からそろそろ30分か。それにミサイルの直撃の前に機体が輝いたようにも見えたが。
「ふん、機体に救われたな。あのバカ者が」
どうやら織斑先生は気付いているようだ。けど大丈夫なのか、あれは。
『何が心配なの?ようやく機体本来の性能が出せるんでしょ?』
『ストレア。君はいい意味で脳筋だな』
『確かに私は戦闘特化型でみんなみたいな支援はできないけど、それはひどくない!?』
『悪い。そんでお前はいてくれるだけで助かってるから』
『・・・馬鹿』
おい、急に色っぽい声出すな。俺が正常なら手を出すレベルだぞ。
『俺が言っているのはファーストシフトが終了したタイミングだよ。もっともこれは試合開始時からわかっていたことから今更だけどな』
『タイミング?何か問題あった』
『ああ』
深刻過ぎる問題がな。ま、この予想が的中にしないことを祈っておこう。