♤ユウキサイド♤
『何?どういうこと?』
『織斑くんの専用機の形が変わっている?』
『まさか、ファーストシフト?あなた、いままで初期設定の機体で戦っていたのいうの?』
『よくわからないが、これでやっとこの機体は俺専用になったらしいな』
着弾前に移行完了してその余波でミサイルを弾いた・・・のか?とりあえずシールドは残っているようだ。
『雪片二型』
「雪片?」
「それって確か織斑先生の機体の装備じゃ」
「遠目に見る限りは雪片の派生したものみたいだな」
「派生?」
「資料で見た雪片とは違いなんか機械的になっているから」
「じゃあ何か追加されているの?」
「可能性はあるな。というかあれで何も強化がないなら暮桜のコピーそのままじゃねえのか?」
確か暮桜はあの剣のために他の武器が持てないはず。もしそこまで再現してたら・・・流石にないか。俺の誓剣がパスロットの空きがないのは初期設定ゆえだし。
『俺は世界で最高の姉さんを持ったよ』
「なんだ突然?」
君のお姉さんが最強なのは3年以上前から証明されていますが?ってそれは違うか。
『でもそろそろ守られるだけの関係を終わりにしないとな。これからは俺も俺の家族を守る』
「俺・・・も?」
なんだろう。国家代表としての収入とかか?でもそれなら支えるとかじゃ?
『とりあえずは千冬姉の名前を守ってみせるさ』
?名前を守る????
『あの子突然過ぎない?』
俺もストレアに同意だ。そもそも彼女は不敗のまま引退しているからもう傷つくことはないだろうし(表向きは)。どちらかというとすぐに人をたたく性格のほうを何とかしてやれ(まあ被害はほとんど織斑だから別にかまわんが)。
「君は今の織斑一夏の発言どう思う?」
簪さんも突然の発言に戸惑っているのか俺に意見を聞いてきた。
「名前を守るとかなんたらのこと?」
「うん」
「とりあえずIS関係者としての意見は初心者で何言っているんだ?て感じだな。それに何故このタイミングで急に言い出すのかが完全に謎」
まさか同じ名前の剣をもらえたから?いや、それは弱いか。姉の機体に思い入れがあるなら、入学してすぐの失態はないはず。それにISの装備は設計図があるから量産が簡単だ。それに破損時のための替えだってあるはずだ。
(家族思い、いやここまで来るとシスコンだな)
気持ちはわからないわけじゃない。姉弟愛があることは素晴らしいことだ。がそれにしても過剰だな。死んだ家族の形見でも、織斑先生から直接渡されたわけでもないのに。
「IS関係者としてって、別の立場なら違うの?」
「え、ああ。男子としては世界の頂点を極めたいという気持ちはわからないわけじゃないから」
『それって男の子じゃなくてゲーマーとしてじゃないの』
『それは言うな』
否定できないのはつらいな。
「でも」
「でも?」
「俺なら「姉の名を守る」じゃなくて「姉を超える」だからなあ」
今でも俺はキリトを超えられないからいつか倒したいと思っている。だからなぜ守るという言い方なのか疑問だ。そんな雑談をしていたら織斑は決めるために構えだした。よく見たら剣の形状がさっきと変わってる。剣先が開いてGGOのビームサーベルみたいになっているな。そして謎の発光・・・あれは。
『なあ、ストレア。あれって暮桜の零落白夜じゃないか』
『そういえば映像にあったそれと似ているね。まさか
『というか再現できた以上すでにワンオフじゃないよな』
『・・・そうだね』
でもいいのか?もしすべてのワンオフが再現できるならこの学園の価値なくすぞ?そもそもこの学園に専用機を持ち込むのはデータ収集であると同時に『所有者との相性が最高値になること』による
『再現できた以上どこもここに最新機持ち込まなくなるんじゃないのか?少なくともあの機体を作った倉持技研にはデータがいかないようにしたいし』
『もしそうなったら』
『来年以降生徒が集めることが困難になり学園としての維持ができなくなるな(現在育成のために日本が資金を出しているが生徒数が減れば費用が削られて施設の管理が困難になる)。それが続けば最悪俺らが3年になるころには廃校だな』
そうなったら一番困るの織斑だろうに。自分の機体のせいで世界中で唯一保護してくれる学園がつぶれて、その後は・・・お先真っ暗だな。
『ここに織斑の墓をたてるウラ』
『やめてやれ』
まあ、多分元日本代表の機体だからデータが多かったというのも再現できた一因だろうから、そこまで深刻な問題にはならないか。
『うおぉぉぉ』
そして意識をアリーナに戻すと織斑が急に叫びだして突進した。・・・が
バスン!!
白式から不穏な音が響きバランスが崩れた。
『な!!!』
その剣はオルコットのかなり手前で振りかざされた。というかこけた。
『・・・何をしていらっしゃるのかしら?』
流石の事態にアリーナ、ピットにいるほとんどの生徒、教師が唖然としていた。
「ああ、よりによってスラスターが限界きたか」
『あれ予測していたの?』
『さっき言っていた気になることだよ。まあ、予測というよりあり得るかな?くらいだったし、どこの部位がなるかはわからなかったけどな』
「貴様それはどういうことだ!!」
篠ノ之が怒り出したが、さてどう説明すればいいかな。
「簪さん。ヒーローモノにおける決まり事。『変身中には・・・』」
「え!えーと・・・『致命的な攻撃を当ててはならない』?」
「正解」
昔のアニメで進化している最中に攻撃され強制退化させられるものがあった。それのように変身中、ならびにヒーローの前口上は邪魔してはならないとなっている。まあ、最近では攻撃されてもモーションが中断されないものや、変身の余波で攻撃をはじき返すものもあるが。
「それが今の状況とどういう関係がある!?」
「つまり戦闘準備中に攻撃を受けたりしたらそれがキャンセルされる場合があるということだ」
「まるで意味がわからんぞ!!」
え~?これでわかんない?少し想像すればなんとなく思いつかないか?これぐらい。
「最適化というのは個人に合うように機体そのものが変化することだ。そのためにISは『持ち主の肉体データの収集』『最も持ち主に負担にならないように機体を設計し直す』『設計し直したデータを基に変化する』『変化した状態が基本となるように定着させる』と大まかにこの4工程を行う。まあ、最初の二つはあらかじめ入力しておけば時間短縮はできるけどな。つまり人間でいう『学習した内容を睡眠によって知識に変換する』のとよく似ているわけだ」
知識を頭に詰め込むだけでは完全には自分のものにはならない。時間をかけて知識を整理して定着させないとならない。・・・それでも半分も覚えていればマシなほうだが。
「さて、篠ノ之。お前は数学を勉強しながら英語のテストを受けられるか?」
「そんなもの無理に決まって「織斑の機体はまさにその状態だったんだ」・・・なに?」
「織斑のデータを取り入れ、最適化する。それだけでも大変なのに戦闘という余計な要素まで入ってきたんだ。何かしら不具合が生じないわけがない。みたところ背中のスラスターがうまく機能してないようだ。接近型の特徴でもある素早さが封じられたからな。致命的だろうな」
なにせISの90%は一般の企業が作製する機械だ。それにブラックボクスであるコアから発生する特殊なエネルギーによって『現存する最強の兵器』になる。逆に言えばコア以外の部分は機械ゆえの限界が存在するのだ。作製中にもコアとの相性の確認はするだろうがもし何らかの事故でコアを破壊する可能性があるので作製中は厳重に保管し、実際にコアを入れるのは機体が完成してからだ。だからあの機体はコアのエネルギーに慣れていないだろう。そんな状態であんなに酷使したんだから度重なる負荷に不具合が生じてもおかしくない。
「貴様、それを知っていて黙っていたのか!?」
え?だってさ。
「最新のISの情報がそろっているIS学園に、教師は元世界王者と元代表候補生。この二人がいるのに何も指摘しないんだぞ?初心者(扱い)の俺の推測が間違っていると思うのは仕方ないだろ。残念ながら実現してしまったわけだが」
「!!」
あ、俺の発言に先生✖2が気まずそうになった。まあ、最適化中に出撃することなんて前代未聞だろうし仕方がないか。教師は研究者と違って既存の知識しか知りえないものだし(しかもそれが正しいとは限らない)。
「ならば最初から一夏に勝ち目などないではないか。この試合は無効だ!!」
「確かに機体の不調を理由に無効にはできるな。だがそれは織斑が認めればの話だ」
「な!?」
「試合の敗北条件は『シールドエネルギーがゼロになった場合』のみだ。試合を中断したいなら織斑が降伏するしかない。あいつはついさっき「無敗の姉の名前」を守ると宣言したばかりだ。それにも関わらず黒星を自ら認めるとは思わん」
「何を言っている!このままでは一夏は」
「ああ、下手をすればトラウマを植え付けられるだろうな」
「貴様そこまで理解しておきながら」
「悪いが俺は敵に塩をやるほど実力があるわけじゃない(建前)。それに今回の敗北で俺には後がないんだ(自業自得)。残酷だがライバルに塩を送ってやる余裕はない」
『本当はそこまで深刻に思ってないよね』
『さっき負けたやつが余裕の顔してたら怪しいだろ』
「貴様「そこまでにしろ篠ノ之」ですが織斑先生「今はこの事態をどうするかだ。山田先生。アリーナに放送を」
」
「はい」
さて、織斑はどの選択をするのか。
♧一夏サイド♧
なんでだよ。ようやく機体が俺専用になったっていうのに。
『織斑くん。オルコットさん。試合を中断します』
「!!どういうことですか、山田先生!!」
『織斑くんの機体が不具合が生じた可能性があります。検査をするのでこの試合織斑くんの敗退とします』
!!俺の・・・負け?
「ふざけるな!」
『!!織斑くん!?』
俺はまだ戦える!!!それをこんな形で!!!俺は千冬姉のためにもこんな負け方なんて認めねえ!!
「先生、最後までやらせてください!!!!」
『織斑くん、しかし『織斑、聞こえているか』織斑先生!!』
!千冬ねえ!!
『そこまで言うなら最後までやり通せ』
『織斑先生!?』
『山田先生。こんな形ではあいつは納得しないでしょう。それなら最後まで続行させましょう。それが後腐れのない方法です』
『ですが』
「山田先生。わたくしもここで不戦勝は納得できません。決着をつけさせてください」
『オルコットさん。・・・わかりました。では試合を再開します』
サンキュー千冬姉。必ず逆転して見せる!!
「あなたに質問ですわ。なぜそこまで勝ちにこだわるのかしら」
「そんなの決まっているだろ!俺が千冬姉の後をひきつぐ!そのためにも負けられないんだ」
「・・・そうですか。ではもう終わりにしましょう!!」
「おう」
俺は再び剣を握った。最後の一撃を放つために。
♤ユウキサイド♤
「やっぱこうなるか」
織斑のことだから続行するとは思っていたが案の定だな。にしても織斑先生、普段厳しいくせにここぞってところで甘えさせてどうする。
「大丈夫かな?あの機体」
あまりの展開に逆恨みしていた簪まで同情しているな・・・機体のだが。
「うーん。どうだろ。自己回復も基準が狂っている以上あてにできないし」
人間の骨折も自然に回復するが(骨粗しょう症などをのぞく)骨折のさいにズレてしまうとそのまま癒着してしまう。今の織斑の機体は正にそのズレが生じている状態。普通なら早期の修正が必要だが。
「だけどまあ、そんなに時間はかからないだろ」
「どうして?」
「さっきあいつが使った『零落白夜』は初見の素人が使いこなせるわけがない。それに高速で移動できない以上接近に時間がかかって自滅して」
『試合終了、勝者セシリア・オルコット』
「だろ」
「本当だ」
予想通りシールドエネルギーが減少するデメリットによる自滅で勝負がついた。本人はまだ敗因がわかってないようだけど。まあ、初見であれだけ機動できたんだ。俺の試合との落差があるし観客も満足な試合だろう。
『そういえば、これに負けたら奴隷になるとかいってなかった?』
『そんなことも言っていたな。でも大丈夫だろ』
国家が保護している重要人物をあんな口喧嘩レベルの口論で外国に引き渡すはずない。この学園にいる間はこき使われる可能性はあるがあの織斑先生の監視下だ。心配いらないだろう。
「・・・なんで俺負けたんだ?」
そしてピットに戻ってきた織斑。どうやら敗因が自分の装備による自滅だと気づいてないようだ。
「よくもまあ、あそこまで持ち上げてくれたものだ。この馬鹿者」
「うぐ・・・」
先生もうやめてあげて。織斑のライフはすでにぜろだよ。
「武器の特性を考えずに使うからああなる。それに貴様のISは不具合があるといっただろう。よく最後まで戦えたというべきだ。明日からは訓練に励め」
いやいや、それはあんたが容認したんだろ。
「青野、貴様もだ。今日の試合の敗北をバネに鍛錬を続けろ」
「わかりました」
向こうでは山田先生が織斑に専用機についての注意事項について説明している。どうやら再びあの厚さの本を熟読することに落ち込んでいるようだ。読破がんばれ。
「じゃあ、私本音のところに帰るね」
そういって帰ろうとする簪さん。やっぱり織斑と接触するのはまだ抵抗があるのだろう。
「おう。明日からよろしく」
「そのことなんだけど実は・・・なの」
「あ~了解。しばらくは自分の鍛錬に時間を割くわ」
「うん。じゃあまたね」
「おう」
そういって簪さんはピットから出ていった。
「悪かったなユウキ。敵をとれなくて」
「気にするな。それよりお前は大丈夫だったのか?」
「ああ。機体はさっき見てもらったけど簡単な整備で元通りになるってさ。いや、こけた時は焦ったぜ」
「いや、そうじゃなくて飛ぶことに恐怖とかなかったか?」
「ああ。少しビビったけど大丈夫だぜ」
スゲー。俺もALOで飛ぶ練習した時何回か墜落したけどあれは生身に影響ないからできる。ISの場合だとシールドがあるから死なないだろうけど高所から落下する恐怖とかでトラウマになってもおかしくないのに。もしかして恋愛関係みたいに鈍感なのか?
「ところでお前の右手のそれ」
「ああ。これが白式の待機形態だ」
「手錠か?警察に出頭するなら早い方がいいぞ」
「なんで捕まらないといけないんだ!!ガントレットだよ」
「手首しか守れてないじゃん」
「・・・本当なんでこんなのに。お前のは確か」
「この鎖につながっている二つの指輪だ」
「なんで鎖?それも二つ何だ?」
「さあ、わかんねえ(心当たりがないとは言っていない)」
「そっか。ところで俺はこれからも箒に訓練してもらうことになったんだがお前もどうだ?もう試合も終わったし」
だからそういうことは本人(篠ノ之)の許可を得てから言えよ。ま~たこっち睨んでいるぞ。
「う~ん。こっちもいろいろやることがあるからな。たまになら参加できるから呼んでくれ」
多分これぐらいが妥当だろう。というかこいつと絡むたびに睨まれたくない。
「ああ。いいぜ」
「それでは二人とも今日の試合はこれで終わりです。今日はゆっくり休んでください」
山田先生の言葉でこの場は締めくくった。・・・結局代表はどうなるんだ?
千冬が甘いというのはラウラ暴走のときに一夏以外を停止させて一夏に止めさせた、一夏がトラウマにならないのは授業で事故落下で地面に追突してもなんともないようなのでトラウマにはならないとそれぞれ判断しました。