ISとビーターの弟子(仮)   作:由紀夫

34 / 35
簪との訓練

ファンが織斑と喧嘩してしばらく経ったある日、俺は簪さんを訓練に誘った。彼女は無事補習が終了し、とりあえずは目前に迫っているクラス代表戦のために訓練機による練習をするようになった。と言っても今日の訓練はアリーナではないが。

 

「ここって射撃場だよね」

 

「ああ。今日はアリーナの予約ができなかったからこっちで訓練する」

 

ここIS学園にはISによく使われる武器のために様々な訓練場がある。むろんこの射撃場もその一つだ。

 

「で、射撃の前になんだが。簪さんは訓練前に準備運動のメニューある?」

 

「?ううん。特にはないけど」

 

「じゃあとりあえず今日のところは俺のメニューの半分でいいか?」

 

『ちょっと待って。あれを薦めるの?』

 

え?そんなに意外?

 

『候補生だし半分くらいならいけるだろ』

 

『そうかな?』

 

心配しなくても国家を背負う人材だぞ?このぐらいへっちゃらのはずだ。

 

・・・10分後、そんな風に思っていたのは幻想だったと思い知った。

「はあ、はあ、は」

 

「え~と。そんなにきつかった?」

 

『そりゃあ。あれだけ走ったらそうなるよ』

 

『そうか?たかが1㎞を有酸素・無酸素の繰り返しで走っただけだぞ?』

 

俺が簪さんに教えたのは俺の合図で走るスピードを切り替える、一般的に広まっている方法だ。多分彼女も知っているだろうけど。

 

『だって君のスピードの切り替えは急すぎるもん』

 

『そうか?30秒全力で走らせて3秒だけスピードを落させただけだぞ?』

 

全力で走っている中ようやくペースを落せると思った次の瞬間また全速力という無茶ぶりだ。これで短期間で忍耐力と持続力が補える。試合まで時間がないから効率重視だ。

 

『それって一番足にくるよね?』

 

・・・そうだったな。最近そういうのないから忘れていた。しかしまさかこれでリタイアとはな。他にも時代のランナー21を参考にした石けりマラソンとかやらせようとしていたのに。

 

『あれもいろいろ大変だよね』

 

『石けりマラソンはそこまで疲労感はないぞ。途中で石が紛失して大変になるだけで』

 

いや~。昔あれ実行したら石のコントロールが全然で大変だったな~。学校帰りに川に落ちた石を拾おうとして、手から滑り落ちた水泳道具が流れていったこともあったな~(小2ごろの黒歴史)。

 

「な、なんで、こんなきついこと・・・。射撃には、関係ないんじゃ」

 

「なんでって・・・銃の命中率を上げるため?」

 

「絶対、なにか、間違っている」

 

うん、そうですね。説明のど真ん中省略していますから。走っているだけで銃の扱いがうまくなるならマラソンランナーが最強になってしまうからね。

 

「言葉足らずだった。精神疲労状態での銃の特訓をすることで命中精度を上げるだ」

 

「どういうこと?」

 

「想像してみてよ。ISの試合で互いにシールドエネルギーは一回の被弾で尽きる程度。そして距離は互いにアリーナの端っこ。近接武器より銃の方が圧倒的にいい状況だ。でもそういう時は疲労が溜まっているだろ?そんな状態でも当てなくちゃならないんだ。常日頃からそれを想定しておいた方がいい」

 

以前授業でも言ったが(正確には頭で考えただけだが)ISには精神的強さが重要視されるというのが俺の持論だ。しかし、実際に乗って分かったが長時間の操縦はかなりの精神的疲労を強いられる。ということはそれだけ精神力の持続が課題でもあるということだ。

 

「でも・・・」

 

ちゃんと説明したが、まだ納得していないようだな。

 

「はあ・・・。じゃあ聞くけど、ISってなんだ?」

 

「元々は宇宙開発のもの、現在はスポーツとして愛着している」

 

「そうだな。で、なぜスポーツであるISが『絶対安全』と言えるんだ?」

 

「えーと、どういうこと?」

 

「ISのルールは数あるスポーツの中でも異彩のものだろ」

 

スポーツの基本ルールは大きく分けて4種に分けられる。

 

一つ目、規定の時間もしくはターン内により多くの点数をかせぐもの(サッカー、野球等)

二つ目、規定の点数を先に獲得するもの(テニス、バレー等)

三つ目、より早くもしくは長い記録を出すもの(水泳、陸上等)

そして四つ目、相手の持ち点をなくすこと(アクションデュエル、バトルスピリッツ、サバゲー、ドッジボール等)

 

無論ISは四つ目に分類されている。

 

「さて問題。スポーツマンが最も人生を狂わされるのはいつだ」

 

「え?」

 

もしかして考えたことないのかな?ISも(一応)スポーツなのに。

 

「答えは『不慮の事故による負傷』だよ」

 

練習中しかり本番しかり。スポーツ選手にとっての天敵は才能あるライバルではない。『現代医療での回復が不可能な部位の損傷』である。今まで勝手な機体を背負わせておきながら一度の過ち(不可抗力なものもあるが)で業界から追放を余儀なくされたものがいったい何人いるやら。

 

「でもISにのっている間は」

 

「はあ・・・。簪さん、オルコットの機体見てなんて思った」

 

「え?全方位からの攻撃は避けるのが大変だと」

 

「そうじゃなくてさ、あれはビットで時間差で攻撃できるんだよ」

 

「それが?」

 

「じゃあさ、『相手のシールドエネルギーが残り1桁で相手が回避することを想定してそれぞれのビットで4回射撃。しかし相手はバランスを崩して2発目でシールドエネルギーが全損』したらどうなる?」

 

「・・・!!」

 

どうやら俺が言いたいことが分かったようだ。

 

「答えは簡単。『シールドがなく、絶対防御もない状態で3発目、4発目のレーザーを受ける』ことになる。ちなみにこの状況は『相手のシールドが残っている時の狙撃である』ため、ルール上は何の問題もないんだよなあ。例え相手が死んでいても」

 

「そんな・・・」

 

うん。俺もそう思うんだよなあ。はっきり言って「シールド0で負け」ってルールがガバガバすぎだよなあ。さらに使用武器にも試合に適したものならなんでもいいという謎仕様だ(ここでいう『試合に適した』とは観客を巻き込まない、アリーナを使用不可能になるほど故意に破壊しない、相手に故意に障害が残る攻撃はしないなどだ)。しかもシールドもやろうと思えば突破できるそうだ。一点集中でシールドが再生される前に絶対防御を連続発動させる方法もあるし。本当知れば知るほどなんで安全といわれているのかわからんな。

 

「そろそろ大丈夫か?」

 

「はあはあ・・・うん」

 

ようやく息が整ったようだ。

 

「じゃあ、まずは射撃の実力をみせてくれないか」

 

「うん。・・・ねえ、その銃って・・・自前?」

 

「ああ。誓剣の装備で送ってもらったやつだ」

 

「なんか・・・普通」

 

「特に特殊な武器じゃないからな」

 

ちなみにこの銃はアニールブレードと同じGGOで昔使っていたものを再現したものだ。といってもGGOの銃は現実に実際にある銃をあっちで再現したものもあるせいで『現実にある銃をゲーム世界で再現された愛用の銃を現実でさらに再現した』とよくわからないものになっていたりもする。元からあるもの使え?銃にも個性があるんだよ。銃痕とかくせとかな。で、彼女の腕前は

 

「命中率5割か、流石だな」

 

まださっきの疲労が完全に抜けていない状態で5割。やはり候補生だけあるな。今の状態でこれだけできるならISの補助がつけば十分戦力になるな。・・・俺いらないな。

 

「疲労していないなら最終的にはこれぐらいはやってもらうから」

 

そういって俺は一度的をチラ見するとその後は横を向きながら連射した。

 

「嘘・・・」

 

「動かない的なら可能だろ?」

 

彼女が驚いたのは俺が狙った的には一か所しか穴が開いていないということ。しかしすべて外れているわけではない。

 

「ワンホールショット・・・」

 

「正解」

 

ワンホールショットとは最初に被弾した場所にすべての弾を打ち込むことだ。といってもここの的は動くようにはできていないし、距離もせいぜい3mだ。・・・彼女の才能に嫉妬したとかそんなんじゃないからな。

 

「強制はしないがこれができるようになるまで毎日チャレンジしてもらいたい。目標は全弾命中だ」

 

「打鉄弐式にも遠距離武器、『春雷』を載せる予定だけど、全弾当てる必要はないんじゃ?」

 

春雷って確か荷電粒子砲の名前だったな。

 

「確かに試合ですべて当てる必要はない。わざと相手に回避させるようにして誘導することもあるしな。でもあくまで訓練の時はそうしてほしい」

 

「どうして?」

 

「簡単なことだよ。自信をつけてもらうためだ。君はまだ自分に自信が持てていないみたいだ。だから並みの努力では難解な全弾命中することができたなら少しは自信になるだろ?」

 

この子はさっき確認した通り、すでに技術は備わっている。ただ少しポジティブなためにそれが生かせていない節がある。だからこういうことを積み重ねた方がいい。

 

「ま、さっきも言ったけどこれは強制しないよ。君が不要だと思ったら」

 

「・・・ううん、やってみる。私も変わらないといけないから」

 

「そうか?」

 

「うん」

 

その後俺たちは解散した。・・・今日俺っているか?ただあおって終わったような。

 

(今度からはアリーナの予約が取れない限りは誘うのはやめるか)

 

『ユウキ・・・。チートはいけないよ』

 

どうやら相方は今日俺がやったズルに頭がきているようだ。

 

『仕方ないだろ?俺は精密射撃なんてしないし』

 

もっともISの補助があれば一応8割で当てられるが。そもそも俺が銃を使っていたGGOではワンホールショットはシステム的に難しいのだ。GGOの射撃時に視界に表示される着弾予測円(バレット・サークル)は心臓の鼓動に応じて収縮・拡大される。つまり戦闘によって脈拍が激しくなるとブレが激しくなるのだ。シノンのようなスナイパーならばともかくキリトと同じ接近しながらの射撃である俺では10発中2発当たればいい方だ。そのため今回はストレアの言うようにズルさせてもらった。・・・何をしたのか?企業秘密です。

 

『だったら無理に射撃にしなくてもよかったんじゃない?』

 

『打鉄二式の装備に銃以外で俺の誓剣と同じカテゴリーかつ俺が彼女と同等以上と思えるのが銃しかなかった』

 

正確には向こうは実弾のない荷電粒子砲だけどな。

 

『それで今からは何するの?』

 

『そうだな・・・』

 

 

 

「白式の武器ってこの雪片二型しかないのか?」

 

「私もその一振りだけで優勝した。その一振りだけで十分だ」

 

「世界王者と一緒にされても」

 

バシッ

 

「うおぉ」

 

「大体お前のような素人が射撃戦闘などできるものか。反動制御、弾道予測から距離の取り方、特殊無反動旋回(アブソリュ-ト・ターン)。それ以外にも弾丸の特性、大気の状態、・・・他にもあるぞ?できるのか。お前に」

 

「そ、それは・・・ごめんなさい」

 

「一つのことを極める方がお前には向いているのさ。なんせ私の弟だ」

 

「!!・・・ああ」

 

(そうだ。俺は千冬姉の弟。なら千冬姉の恥にならないようにしないとな。)

 

『・・・とか思っているんだろうな。あの顔は』

 

『ハハハ・・・』

 

簪さんと別れた俺たちはアリーナに見学に来た。使用許可がとれなかった日は他人の訓練を見るようにしているが、今日は織斑姉弟の特訓が行われていた。しかし姉弟なんだから理論とかは部屋でやればいいのに。少なくともさっきの会話は教室の雑談でも成立するぞ。

 

『それにあれってどうなんだ?せっかくの初心者なんだからいろいろ試してみてもいい気がするけど』

 

『そもそも教師が生徒の選択肢を狭めるのもおかしいよね?』

 

『ああ』

 

最初のホームルームで『諸君らを一年で使い物になるようにするのが私の仕事だ。出来ない奴には出来るまで指導してやる』と啖呵を切っていたんだぞ?

使い物になるとは訓練機(銃装備)でも戦えるレベルという意味ではないのか?だとすると職務怠慢ということにもなりかねないんじゃ。

・・・いやねえ。一つを極めるのを否定しないが他のも必要な知識だろ。簡単に例えると高校受験には国数理社英しか使わなくても、実技教科の成績をおろそかにしたら卒業ができない。だから受験科目にはなくても最低限の勉強が必要であるとか。

 

そういえばこの学園の卒業の単位に入っていないのか?そういう技能は。

 

『どちらかというと入学に必須のような』

 

『それがそうでもないみたいなんだよなあ』

 

ここ数日見学していたがどうも技術のバランスが取れていない生徒がいるんだよなあ。銃の扱いが下手だったり、空中の移動がぎこちないやつとかもいた。だから入試での条件ではないようだ。・・・とすると織斑先生の言っているもとも正しいのか?

 

その後に、本格的な訓練が始まったが

 

『あれって瞬時加速だよねえ』

 

『・・・あれってわざわざ世界王者から教わることか?』

 

『確かに疑問になるね』

 

瞬時加速(イグニッション・ブースト)はISでの加速技術であり接近戦での基本ともいえる。スラスターから放出したエネルギーを再び取り込んで、2回分のエネルギーで加速する。しかし直線のみしかできないのでタイミングを読まれるとかわされるという欠点が生じるため、多様できるものではない。

 

もう一度言うが、近接戦闘ではけっこう基礎的な技術である。機体性能にもよるが連続して行う発展形も存在している。・・・というかほとんど教えられることないんだよなあ。放出したエネルギーの取り込みのタイミングとか、知識よりも実戦とセンスだな。その気になれば映像を見てイメージを繰り返すだけで取得できるものだし。・・・これ以上見ていても有力な情報はなさそうだな。

 

『今日はもう帰るか。・・・あ。外出許可取りに行かないとな』

 

『そういえば明日だったね。例の日』

 

『今日のうちにあれの準備しておくか』

 

『あの外出用だね』

 

『本当はあまり履きたくないんだけどな』

 

だって知り合いが見たら間違いなく大爆笑されるんだぜ、あれ。




スポーツの分類は作者の勝手な想像です。2つぐらいおかしい?命がけ(人生<ライフ>をかける)のは一緒ですから。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。