ぼっちと九人の女神たちの青春に、明日はあるか。 作:スパルヴィエロ大公
月末にはまた別のがあるんですがねトホホ。
さておき、評価欄拝見しました。ガビーン・・・緑二つか。
点数にすると☆3.40。言うまでもなく最低に近い点数ですな。
「俺は俺の書きたいものを書くんだ!」なんて意地を張れるほど、僕は芯の強い人間ではありません。となると路線変更しかない訳で。
シリアスを入れようとして総武高の話を持ち出してしまったのが失敗だったかなあ、と反省しております。
友人にも「この内容(第八話)さ、第六話のタイトルと矛盾してね?」とツッコミを頂戴しました。嗚呼・・・。
なので今後しばらくは総武高sideの話はしないつもりです。
もし今までの話を呼んで不快になった方、いらしたらごめんなさい。ラブライブ本編のお話に注力するつもりなので、また読んでいただければと。
気を取り直して、早速いきましょう。
第九話 少女たちは再び、明日への準備を始める。
【side:絵里】
「おねえちゃーん、お風呂あがったよー」
「・・・はーい!今入るわ」
下からの妹の声に気付いて返事をするまで、約10秒。普段なら即座に返答するだろうに。
考え事をしていると、どうにも周囲のことに疎くなる。昔からの悪い癖だ。
絵里の頭にあるのは、勿論今日の彼女たちのライブのこと。
公開日に学校を訪れた人は、予想より多少上回ったとはいえ、全盛期に比べれば半分程度に過ぎなかった。
ならば、全く無名の、デビューしたばかりのスクールアイドルの初ライブを訪れたい、見たいと思う人がどれだけいる?
言うまでもないだろう。
それでもと希に説得され、講堂に向かう。
どうせガラガラだろう、せいぜい学院生のアイドルオタクが4、5人来ていればいい方かもしれない。
最悪、誰も来なくてライブが中止になっている可能性だって―――
「―――彼方へと・・・僕は Dash!」
「「「「「―――Hey!Hey!Hey!START DASH!!」」」」」
・・・実際は違った。
違うといっても、100人以上を収容できる音ノ木坂自慢の大講堂に、半分以下、どころか20人程度の客が来ているだけだ。
正確に数えれば、自分たち生徒会が提示したノルマの人数を超えているかも疑わしい。
それでも。
観衆の熱狂は100人分のそれに値するほどのものだった、と思う。少なくても絵里にとっては。
・・・いや、それよりも何よりも、ステージで踊り歌う3人の同級生の表情。
笑っていた。
作り物、所謂営業スマイルではない。あれだけのダンスをこなし、歌いながら、たった20人程度の観客に向けて。
3人とも、一度も笑みを絶やすことはなかった。
ダンスに関してはどこかぎこちない動きだと感じるときもあったし、歌唱力も・・・ほぼ間違いなくプロのそれとは比べ物にならないだろう。
しかし、心に秘めた負の感情、そんな混じり気など一切感じさせない、彼女たちの笑顔を見て。
―――やることは決まってるんだから、覚悟を決めるしかないでしょう
―――そっくりそのまま返さしてもらいますよ。貴方は、どうするつもりなんです?
そして、ライブが始まる前、あの転校生の男子に言われた台詞を思い出して。
それでも尚、スクールアイドルを中止を勧告することなど―――
「できる訳・・・ないわよ。下らないままごとなんてお止めなさいだなんてね」
ああいう物を突き付けられたら、引き下がらずを得ない。
人にはクールで冷血な生徒会長様と見られているようだが、自分にも情はある。そして情には弱い。
これまた、昔からの悪い癖だ。
「・・・お姉ちゃん?もう上がったよ?」
「ああ・・・ごめんなさい亜里沙、すぐ入るわ。
Спокойной ночи.(おやすみ)」
姉を心配して部屋を訪れたのであろう妹の額にそっと口づけをし、おやすみを言って部屋に戻るよう促す。
自分もさっさと入浴を済ませよう。
体と頭の凝りをほぐすには、やはり温かいお湯を浴びることだ。
【side:八幡】
たとえ季節が移り変わり、涼しくなったとしても。
やはり激しい運動をしたりすれば汗をかき暑さも感じる。
極寒の冬真っ盛りならまだしも、あのクソ暑い夏をようやく忘れられるぜ!という秋のこの時期、それは果たして心地良いものと言えるのだろうか。
公園でゆっくり散歩でもしながら、穏やかな秋風を感じるのが風情というものではないか。
・・・ナルシストナルヶ谷と揶揄されそうなんでここで止めておこう、とにかく俺としては秋にマラソンなんて止めていただきたい。
まして昨夜散々飲み食いしたのに、急に激しい運動などしたら却って体に悪いということは経験上よく知っている。
忘れもしないいつぞやの正月・・・朝に雑煮を3杯もおかわりしたら罰として大掃除で箪笥だのデカい荷物を散々運ばされ、夜は腹痛で唸る羽目になったからな。
「ほらー!比企谷くん遅れてるよーー!!」
「ぜぇ・・・分かったから・・・叫ぶな」
ええい、高坂穂乃果は化け物か!町内1周してまだ体力が有り余っているとは。
そして道行く人ときたら、皆女子に追い抜かされている俺を憐れみと嘲笑の混じった視線で見てきやがる。
くっ・・・殺せ!
因みに現在の時刻、午前10時。付け加えると日曜日。繰り返す、"日曜の"朝10時である。
そんな時間に電話一本で叩き起こされ、いきなり「今日も練習練習!町内マラソンやるよー!」とは。日曜日は寝坊してナンボだろう。
社畜だって一部の例外を除けばこの習慣は守っているだろうに・・・高坂、お前安息日って知ってるか。
「急げーーー!ビリの人にはジュース2本奢らせちゃうぞーーーー!!」
それは・・・あかん。
ダメだ絶対にダメだ、さんざ園田の参考資料用にCDを買いまくったので余計な出費は抑えなければならない。
たとえ缶ジュース1、2本分であろうと無駄にはできぬ。下手すりゃ最後の週の昼飯は水のみで済ませる羽目になるからな。
急に猛ダッシュを始めたそんな俺を、道行く人は呆れと蔑みの混じった表情で見ている。
・・・じゃあどうすりゃいいんだってばよ。
「・・・ほれ、マッカン買ってきたぞ」
終点、神田大明神。
30分以上に及んだマラソン勝負の結果は、見事俺の大惨敗に終わりましたとさ。当然しっかりと"1人2本"飲み物を奢らされた。
チッ・・・昨日高坂家で夕飯をご馳走されていなけりゃもっと強気に出れたのに。あ、高坂のお袋さん炊き込みご飯マジ美味かったです、ありがとうございました。
・・・やっぱ無理かね、男の癖に飲み物ひとつあげないなんてすごいさもしく見られるし。
俺とて人の目とか同調圧力にいつ何時でも抗えるとは限らないのだ。特に1対3の場合は。
「ありがとー!・・・うぉっ、めっちゃくちゃ甘くないこれ!?」
「うーん、ことりはコーヒーは苦い方が好きかなー♪」
「飲み過ぎると・・・うーむ、糖尿病になりそうですね。穂乃果、全部イッキ飲みはいけませんよ?」
「わ、分かってるってばー!」
おのれ・・・人からの貰い物にケチをつけおって。しかもよりによってチバリアンのソウルドリンクを・・・!
どうしてくれよう、マッカンが大好きになるおまじないでもかけてやるか。
・・・それメイド喫茶かよ、目の腐ったメイドさんなんざ御免被る。
「あ・・・ごめんなさい、折角比企谷くんが買って下さったものを」
「気にしなくていい、俺もからかい過ぎた。女子にいきなりMAXコーヒーは確かにキツいだろうな」
「へー・・・比企谷くんって、実はそんなイジワルさんだったの・・・?」
うっ・・・!南の笑顔が眩しい、そして黒い。
これはどこかで男転がしの術をマスターしたな。理事長・・・ではなさそうだ、娘の躾に厳しそうなところはあるかもしれんが。
「・・・まあ、とにかく。高坂、今日の練習はこれで終わりか?」
率直に言うと帰ってプリキュア見たい。それが本音だ。
俺にとっては日曜のプリキュアが何よりのご褒美であり、そして明日への活力を養うためにも不可欠なのである。
キモいとかいう奴、どうせお前もマンガかごろ寝だろ?正直に言ってみ。
「あ、ううん!昨日のライブの反省会、やろうと思うんだ」
カタカナ語で言うならフィードバック。
意識高い系の輩ならそう言っていたかもしれない。なら最初から全部英語で言えというのだ。
つうかそれ以前に時たま間違って使ってるヤツもいるしな、この手のカタカナ語。
浅はかな人間ほど変に自分を飾りたがって逆にボロを出すという法則は間違っていないようだ。・・・ま、それはさておき。
「それなら、お前らの家でやった方が良かったんじゃないのか」
「穂乃果の家は、昨日パーティーで使っていますし・・・ことりと私の家も、そういう目的で集まるには少々適さないかと。
それなら、練習でも使ったこの場所がいいと思いまして」
まあ・・・静かではあるし、考え事には丁度いいかもしれない。
考え事といっても真面目なものというよりは、秘密基地計画とか悪ガキの悪巧みの方を連想するんだがな。
ただ反省会といっても、単にあそこでああすりゃよかったね、じゃ5秒で終わってしまう。それではどこぞのロケット団みたく何度も何度も失敗して終了だ。
それに、昨日のライブでの演技は時間にすれば10分もない。
その僅かな時間で披露した歌・ダンスについて、細かいミスや欠点を自己分析するというのは余程のプロでなければ難しいのではないだろうか。
ペーパーテストの内容なら案外何日も覚えていられるものだが、歌と踊りの演技は紙切れの上で理解し判断するものではない。
だから自分たちの演技を再度ビデオなどで検証する必要があるのだが、生憎テレビなどないし、誰もビデオカメラの類などは持ってないようだ。
南もそんな俺の疑問に気付いているらしく、内緒話をするようにこちらへ・・・いやちょっと、近いって君。
「一応ね、ことり達でもどこが悪かったかー、ってお話は昨日してみたんだ。
でも中々意見が出なかったの。そしたらね、『明日アンタ達の駄目なところを叩き直してやるから覚悟なさい!』って言ってくれる人がいて・・・」
「はぁ・・・。で、その人h「アンタの後ろにいるわよ」うぉっ!?」
嫌な気配を感じて振り向けば、そこにいたのは矢澤にこ。
腰に手を当て、前かがみで俺を睨みつけるように見ている姿はまさしくツンデレ・・・蹴られそうなんでやめとくか。
「い、いつからそこにいたのっ?」
「4秒前よ、因みにここに来たのは22秒前よ。・・・にしてもアンタ達、人の気配に鈍過ぎるんじゃない?」
む・・・。
時間に無駄に細かいところといい、気配を消すのに長けているところといい、これは。
「・・・お前もしかしてストーカーか?」
「なっ!?そ、そんな訳っないでしょ?!別に憧れのアイドルの追っかけやってるうちにその人の家まで突き止めたりなんてしてないんだからっ!」
「「えぇ・・・」」
やべ、つい園田と俺の声がハモってしまった。意外に俺たち気が合うんじゃ・・・やめとけ、また新たな黒歴史が立っちまう。
てか矢澤、立派なストーカー予備軍だぞお前。まああっさり暴露してしまうあたり、マジモンの犯罪行為にまでは至っていないようだが。
「あ、あはは・・・それじゃ矢澤さん、昨日のライブのことで、何か教えてくれるかな?」
「ああそうね、そっちが本題だったわ。・・・いい、耳の穴かっぽじってよーく聞くのよ!」
なんでいちいち上から目線なんだよ・・・。
デレのないツンデレ、だがツンドラ系とも言い難い矢澤にこ様のおありがたい説法が始まった。
・・・あ、説法はお坊さんだからお寺か、ここ神社だったわ。
まず、2番の歌詞の歌い始めで声がかすれ過ぎ。特に園田のパート、自信がないのか何だか知らんが他の2人より声が小さくてダメ。
全体的に踊りに躍動感がない。小動物みたいにちょこちょこ動くな、もっと大胆にやれ。
加えて―――
「アンタ達に決定的に欠けてるとこ・・・それはアイドルとしてのキャラよ!」
「・・・キャラ?」
「性格付けとかそういうこったろ」
てか普通に3人ともキャラは立ってると思うんだが。
高坂=アホの子、南=腹黒でゆるふわ、園田=秀才かつ大和撫子、あとクーデレ?なところが・・・やだ俺変態ぽいじゃん。
キモヶ谷なんて呼ばれてたのもあながち間違いではないのか?うん、辛いからやめよう。
「・・・ま、お前の言いたいことは分かった。
それでそっちはどうなんだ?歌唱力、ダンス、キャラ、どれ程のもんを持ってるっていうんだ」
挑発。
こうまでズバズバと批評してくれやがったんだから、自分の実力が相手より上であることを示すのは当然の義務だろう。
矢澤はフン、と鼻を鳴らし、どこぞのハルヒの如く指を突き付ける。
「望むところよ、このにこ様の実力、とくとご覧なさい。そうと決まれば早速場所を変えるわよ!」
秋葉原 某カラオケ店
「15曲全部、90点越え・・・」
「凄いよ・・・人間業じゃないよ・・・」
「当然よ、こちとら毎日学校帰りに寄ってるんだし。
休日だけ来て好きな曲だけ歌って後はお喋りしてるアンタ達とは格が違うのよ、格が!」
うわ、殴りてぇ・・・このドヤ顔。
目の前にいるのが矢澤でなく材木座なら間違いなく背負い投げをかましてやるところなんだが。
でもまあ、カラオケ店が今や歌うよりも女子高生の駄弁り場に堕しているという点は同意。ヒトカラ行くといつも奇異の目で見られるんだもん。
特に誕生日パーティーやってる奴ら、家でやれ。金払ってこんな所でやる意味が分からんぞ。
さておき、神田大明神を離れて既に1時間以上経過した。
あれからゲーセンでのダンス勝負、そしてカラオケ勝負をこなし、結果はこちらの惨敗・・・という訳ではなく、3人も自分の得意な曲であれば互角に戦っていた。
だが知らない曲、苦手な曲では全く話にならず、どんな歌でもそつなくこなした、矢澤にこの総合力の勝利となった。
「で?アンタはなんで歌わないのよ」
「いや俺、あんまりカラオケ行かないし」
嘘だけど。ヒトカラ行ってるけど。
まさかプリキュアのテーマソングしかダメですなんてお世辞にも言えません。
「比企谷くんの歌ってるとこ、ちょっと見てみたいな~♪」
「ちょっとことり、無理矢理だなんてよくないですよ」
「でも、一度聴いてみたいってのは同意かな!」
「・・・『千の風になって』なら」
一同、シーン。
あ・・・やっぱり駄目だよなそりゃ。そもそも私の死を悲しむな、なんて暗い歌詞俺も嫌だわ。
中学時代、なぜか文化祭の合唱でこれを歌う機会があったんだが、当然みんなやる気なんてなくグダグダでそれは酷い出来だった。
いっそガキっぽくてもいいからもっと明るい歌にしろよという話だ。今の俺がツッコむ権利はないが。
「ま、その男は置いといて・・・最後はそう、キャラ勝負ね!」
「うう・・・穂乃果キャラってよく分かんないや」
「は?ふざけるんじゃないわよ!アイドルの基本のき、でしょーが!
いい、今から手本見せたげるからよーく目に焼き付けておくのよ!」
あ・・・。なんかヤバいフラグが立った気がする。
キーワードは"黒歴史"。後になって何をやってたんだ俺はあああああと死ぬほど悶える羽目になるアレ。
さて、そのお味は―――
「にっこにっこにー♪
あなたのハートににこにこにー♪
笑顔届ける矢澤にこにこー♪
にこにーって覚えてラブにこー♪」
・・・・。
大変、おあとがよろしくないようで。
つまりぶっちゃけ、全員ドン引き。
「ハッ、みんなにこにーの
しかも本人は全く気付いてねえし。むしろ盛大に勘違いしてるし。
形を変えた中二病患者かお前は。材木座と案外いい友達になれるかもしれん。
「・・・あ、あれ・・・?なにかすごい物を見てたはずなんだけど、気のせい?」
「・・・奇遇ですね。私も、何が何やらさっぱり・・・」
ああ・・・高坂と園田が現実逃避に走ったぞ。
南はといえば白目を剥いて気絶している。こりゃもうだめかもわからんね。
「で、もう分かったでしょ?アンタ達に足りないもの、欠けてるものが何かって」
「・・・あー、よく分かった完敗だ、潔く認めよう。これでいいか?」
「は?いい訳ないでしょ」
え、まだあんの?
ペナルティとかあんの?まさか罰ゲームにポッキーゲームとかやめてくれよ。
その時、矢澤が急に立ち上がり、コホンとひとつ咳払い。
・・・やっぱりまた何かしでかす気かこの痛いツインテールは。
「私が―――この矢澤にこが、アンタ達を一から鍛え直してやるわっ!」
「うんっ!是非ともにこちゃんにお願いするよ!」
「「立ち直り早っ!?」」
またしても園田と声がハモったし・・・俺たち相性がいいのか、んな訳ないよな。
自重せねば。
嵐は嵐を呼ぶ。
こうして、何もわかっていない高坂の返事一つで、また新たな火種が持ち込まれたのであった。
・・・あれ、何故に俺ナレーション口調?
終わり。
まきりんぱなより先ににこ襲来のおはなしでした。
3人も入れたかったけどこれ以上は長すぎるかと思って・・・また次回、待っててください。