ぼっちと九人の女神たちの青春に、明日はあるか。   作:スパルヴィエロ大公

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サブタイの元ネタ。
大航海時代のスペインのモットー、"プルス・ウルトラ"より。

・・・その割には話があまり進んでない(´・ω・`) 


第十五話 さらに向こうへ、もっと向こうへ。

 

青春とは、汗と涙の産物である。

 

ついこの前までならこんな言葉を耳にするたび、くだらないと唾を吐いてきたものだ。

事実中学時代、俺の周囲の人間は腐った奴ばっかりだった。

 

友人から恋人のことを相談され、表向き応援すると言いながら裏でそいつの悪口を言い触らし、やがて不登校に追い込んでほくそ笑んでいた女子。

教師や立場の弱い生徒を恫喝し、金品を巻き上げ、学校の物品を破壊する行為を青春とのたまった男子。

朱に交われば赤くなるではないが、こんな所に放り込まれて不登校児にもならず不良にもならなかったのだから奇跡と評するべきだろう。

目と心の腐りようまでは止められなかったが。

 

だから俺は、あの時課題作文でこう書いた。

青春とは悪であり、嘘であると。

 

しかし環境が変われば人も変わる。そんなどす黒いのばかりが青春のすべてではない。

汗と涙、そして感動。そうした輝かしい青春もまた、確かに存在する。

 

結論を言えば、物の見方は決して一つではないということだ。

 

 

「・・・今まで、生徒会長の立場にありながら貴方たちの活動に非協力的だったこと。

そのことを、謝らせてください」

 

土曜日。部活ができるのは午前中までなので、結局登校する時間はいつもと変わらない。

眠い目を擦っていつも通り筋トレに励んでいた時、唐突に東條副会長・・・そして絢瀬会長が現れた。

 

で。

 

「あの・・・なんで俺に向かって謝ってるんです?」

 

「・・・え?」

 

「いやだから、俺に言われてもその、困るって言うか・・・」

 

ぼっちに限らず、顔の真ん前で喋られると人間ってドキドキすると思うぞ。

この人案外コミュ障なのか?いや、疑問形じゃなくてほぼ確信したわ。

俺のぼっち度センサーは伊達じゃない。

 

「そうよ!アンタが頭下げるべきは、そいつよりもこの3人にでしょ!」

 

「ひっ?!」

 

そいつより、って言っちゃいますか。言っちゃいましたか、さいですか。

いや分かってるけどね?他人にズバッて言われると傷つくんだよ?物怖じせずに物言える性格も考え物だな。

何より、会長がそのせいでビビってしまった。これは腹割って話し合える状況じゃないな。

 

「ちょ、に、にこちゃん・・・」

 

「あぅ・・・そ、その・・・」

 

・・・あー、いかん。空気が悪い。

高坂もオロオロしているし、他の皆も同様。

 

その時、会長の後ろにいた副会長が口を開く。

 

「・・・ウチからも、副会長、いや友人としてキミらに謝らせてもらうわ。

横についていながら諌めたり止めることもせんかったし。これはウチの責任でもある」

 

「「「・・・・」」」

 

「せやから・・・ここでひとつ、エリチの特技たるバレエの技術で、皆のダンスコーチをやってもらおうて思うんや。

どや?それで今までのこと、チャラにしてくれへん?」

 

・・・この人、一瞬笑ったな。

俺たちが断れないということを、しっかり理解していやがる。昨日上げた動画を見ていたんだろう。

黒い、オーラが黒いぜ。

 

矢澤の予言通り、PVの再生回数は一晩で1000回を突破した。しかしその分、批判的なコメも結構来ている。

中でも多かったのが「ダンスがまだ素人臭い」。実際ほぼ素人に近いのだから当然である。

園田が元日本舞踊の稽古を習っていて、矢澤も趣味で毎日ゲーセンのダンスアクションゲームをやっていて・・・。

うん、ダメだこりゃ。日本舞踊とアイドルのダンスは別物だし、ゲームと本物は違う。

そしてあとのメンバーはそもそも経験がない。したがって、プロの指導が必要というわけになる。

しかも無料で。この学校、ダンス部とかないし。だからってアウトソーシングとかできないし。

 

で、ここまでは理性的、合理的に考えた場合の話。後は、感情の問題だ。

本人も自覚している通り、絢瀬会長=怖いというイメージは根強いらしい。入室したときから小泉と星空がビビりまくってるし。

そして会長はスクールアイドル活動に対して好意的ではなかった。

そこまで露骨な妨害はまだされてはいない。だが、接するときの態度でああ、俺ら好かれてないなというのは分かっていた。

それを知っている南や園田は、果たしてどうするだろうか。

女子というのは空気に敏感だし、そんな人間を進んで仲間に入れたがるだろうか。

 

・・・え?高坂はって?

いや、あいつはいいだろ。なぜなら―――

 

「うん!会長さん、じゃなくて絢瀬さん、歓迎するよ!」

 

・・・こうなるから。

ここまでアホだと一周回って人生楽しいだろうなとは思う。だがちったぁ他人の意見に耳傾けるとか気遣いぐらいしろっつの。

あまり人の意見に左右されるのもそれはそれで考え者なんだが。バランスって難しいね。

 

「・・・本当にいいの?どんどんメンバー入れちゃって。それにあの人、あんまりアイドル好きな訳じゃないんでしょ?」

 

案の定というか、西木野は会長をμ'sに入れることに懐疑的だった。

・・・ちょ、聞こえたらまずいからって耳打ちすんのヤメテ。顔近いから。緊張するから。

 

「高坂はそういう細かいことは一切気にしないタイプだからな・・・それより矢澤」

 

「・・・何よ?」

 

「経験者としての意見を聞きたい。会長の技術と指導は必要か?」

 

少し考え込んだのち、ゆっくりと答えが返ってくる。

 

「そうね・・・。コメントでもあんだけ指摘されてれば、次の曲出すときまでに改善しなきゃいけないでしょ。

にこはこの話、乗るわよ」

 

「そこー?秘密のお話中悪いんやけど、そろそろええか?」

 

うん、やっぱりね。聞こえてますよね。

そもそもこの空間、この人数でヒソヒソ話なんて無理です。

 

「・・・他に意見は?」

 

流石にこのまま高坂のゴーサインで全て決定ではまずいので、皆の反応を窺う。

こういう「何でもみんなで話し合って決めましょう」というやり方は決して好きではないが、かといって「何でも俺様が決める」というのはもっと嫌だ。

かのチャーチルも言っていたが、民主主義は他のやり方よりかはマシなのである。何より、女子が多数のこの場でそもそも俺に発言権があること自体奇跡なのだから。

 

「凛は、会長さんに助けてもらった方がいいと思うにゃ」

 

「わ、私もそう思います!」

 

星空、小泉、賛成。

 

「会長さんも謝ってくれたんだし、ことりは入れてあげていいと思うな♪」

 

「そうですね・・・こんなところで意地の張り合いをしている場合ではありません」

 

「・・・なら、私も乗るわ。ダンス経験なんてないし」

 

南、園田、西木野、賛成。

 

「よしっ!決まりだねっ!」

 

高坂、そもそも聞く必要なし。

 

 

話し合い、終了。

 

 

「・・・皆さん、ごめんなさい。それと、本当にありがとう・・・」

 

・・・泣き出したか。

まあ予想外に反応が冷たくなかったしな。ホッとして気が緩んだのもあるかもしれない。

この人、やっぱりポンコツだわ。

 

「絢瀬さん、泣いちゃダメだよ?ほら、美人が台無しだって!」

 

「え・・・えっええっ!?」

 

なん・・・だと・・・?

・・・高坂が、会長の顔をそっとハンカチで拭いている。顔が沸騰したお湯みたいになってるぞ会長。

あのバカ、ナチュラルにあんなことをするとは・・・。

 

「くっ・・・羨ましい」

 

そして園田さん、あんた何言ってんすか。

ヤンデレ属性でもあるのか。女って怖い。

 

 

「・・・痛って」

 

「せ、先輩大丈夫かにゃ?!」

 

おっかしいなー。

このところ毎日ランニングと筋トレ付き合わされてるせいで、筋肉痛とは無縁だったはずなんだけどなー?

 

只今俺とμ'sの面々は、絢瀬会長の指導の元新トレーニングの真っ最中。

今までのダンス、そして全員の筋トレの様子を見てもらい、体が硬すぎる、基礎からやり直せとの評価を頂いた。

で、体幹トレーニングの一環として、一定時間同じポーズを保つ訓練をしているのだが・・・。

 

ハッキリ言おう、限界です。

 

「みんな、気を抜かないで!あと5分このままの姿勢で!

それと比企谷くん!男が真っ先に倒れてちゃシャレにならないわよ!」

 

早速会長の檄が飛ぶ。

いや、だから俺歌って踊る訳じゃ(ry・・・もう何回目だよこのセリフ。

実際に言っても聞いてもらえないんだろうが。

 

「・・・すんません」

 

「謝る暇あるなら早く元の体勢に!さっさと!」

 

さっきとキャラ変わり過ぎだろ・・・これだからスポ根脳筋は。

俺が怖いと思った人物は大抵実際におっかないのだが、この人も例外ではなかった。

聞いた話、幼稚園の頃から中学時代までバレエを続けていたそうだ。実際にプロ入りしなくてもそれに近い経験は積んでいるのだし、指導が厳しくなるのも分からないではない。

 

ただ・・・少しは周りを見てほしい。

 

「・・・小泉。お前、具合悪いのか」

 

「だ、大丈夫、ですっ。こんなところでへばってたら・・・!」

 

クラッ。

 

―――ヤバい。

 

「う・・・」

 

予想通り、フラっと倒れてきたのですかさず腰回りをキャッチ。

・・・セクハラじゃないからね?うん、セクハラじゃないから。

 

「ちょっと・・・どうしたのよ?!」

 

「か、かよちん?!」

 

「・・・貧血、だな。会長、悪いんですが小泉は保健室に連れていきます、星空と俺で」

 

「・・・分かったわ、彼女が落ち着いたら戻ってきて頂戴。さ、他の人は集中!」

 

・・・はぁ。

見たところ平気そうな顔してんのは星空を除き、園田に矢澤くらいだな。南に西木野などは顔が真っ赤になって、必死でフラつくのをこらえている。

そして高坂よ・・・最早アヘ顔の一歩手前だぞ。アイドルがしちゃいけない顔になってるんだが。

 

結局は、また一から出直しということか。上には上があるとはよく言ったもんである。

あれだけ日々練習をこなしていても、プロからすればまだまだこの程度なのだ。

 

ツラい。

人間だからツラいものはツラい。

 

だが今さら後には引けない。ここで投げ出したらどうなるか。

再建の望みは立ち消え、この学校はまた何の特色もない落ちぶれたかつての伝統校、として忘れ去られてしまうだろう。

何より、高坂たちの夢が消えてなくなる。

 

だから、やるしかない。

小泉の肩を支えながら、必死に闘志を絞り出していた。

・・・やっぱ俺、変態なのか?

 

 

「かよちん・・・大丈夫かな」

 

「このまま寝かしとけば平気だろ。貧血になったらとにかく食うか寝るかだ」

 

栄養と休息。体力回復にはこれしかない。

ゲームと違って薬草や注射で即復活なんてことはないんだから。

それに寝れる元気があるならすぐ回復するだろう。

 

ともあれ、保健室が空いていて助かった。保険医は後はあんたたちで面倒見てあげな、でとっとと抜け出したが。

総武もそうだったが、どこの学校も保険医ってあんなやる気ないのばっかりなのか?だったら案外、天職かもな。

一位、専業主夫。二位、保険医。人生の選択肢がここに決定した。これで安泰。

 

「それじゃ俺は一旦戻るぞ。お前のことは話し付けとくから、付き添っといてやれ」

 

「あ・・・ちょっと待ってほしいにゃ」

 

「ん?」

 

「その・・・比企谷先輩、凛たちがμ'sに入った理由、あんまり聞いてこなかったけど。それはどうしてにゃ?」

 

おい・・・。

思いつめた顔で言う事でもないだろうに。

 

理由は単純。聞く必要がないからだ。

少なくとも熱意、やる気は十分にあるように見えた。なら他の理由などどうでもいい。面接じゃあるまいし。

・・・バイトの面接とかでもいちいちしっかりとした志望動機とか求めてくるケースがあるが、あれマジ意味あんのか?

たかが一日突っ立ってティッシュやチラシ配るだけの仕事に、何のやりがいを求めてくるやつがいるというのだ。ただの小遣い稼ぎに決まってるだろう。

 

「・・・お前らには十分やる気があるように見えた。あいつらもお前らを歓迎している。

なら、入れることに反対する理由なんざ無いだろ」

 

「そう・・・なの?」

 

「ああ。それとも、どうしても理由を話したいってのか?」

 

「・・・ううん。ちょっと凛、ホッとした」

 

・・・ふん、小動物め。庇護欲を煽り立てるなっつの。

 

ま、変な話を聞かされてシリアスムードになるよりはマシだ。俺もそれはそれでホッとしていた。

ここからはただ前に進むのみ。歩みを止めてはいけない。歩みを鈍らせてはいけない。

そんな時に、余計な事を聞いて、思い悩んで、無駄に足を止めてはならない。

 

 

だから今は、本能を信じて突き進むのだ。

 

 




八幡が脳筋化してきた件。
・・・いやあ朱に交われば何とやらとは(ry
キャラ崩壊タグ、そろそろつけた方がいいでしょうか。

あと更新が遅れて申し訳ないです。実は18禁版の俺ガイルssを書いていて・・・。
違う、暑さにやられたんだ。しかたないんだ。うん。

次回はミナリンスキー回さっさと流して合宿回に進みましょう。ごめんなさい。
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