ぼっちと九人の女神たちの青春に、明日はあるか。   作:スパルヴィエロ大公

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急に涼しくなって、唐突に夏が終わった感じがしますねえ。
僕は毎年、夏が終わるときにはowl cityの"Fireflies"を聴くのが習慣なんですが、今年はそれが早まりそうです。
・・・あ、μ'sじゃねえのかよ!というツッコミはなしで。

それに二つ目のインターンが来週から始まるんですがね。
エンドレスサマー(棒)


第十六話 自分が恥ずかしいと思っていることは、大抵他者は気にしないものである。

11月某日

 

「ご主人様~、オムライスをお持ちいたしました!只今、ケチャップをおかけします♪」

 

「うむむっ、苦しゅうない!存分にやるがよい」

 

「・・・上から目線すぎんだろお前」

 

ファミレス行った時は「ハイ」くらいしか言わないくせに。

いるよな、店員変わると態度も変わる奴。こんな客ばかりだから飲食業はブラックだと揶揄されるのだ。

 

・・・それにしても、なぜ俺は学校帰りに材木座と飯を食っているのだろう。

よりにもよってメイド喫茶で。

 

 

町を歩くとき、ふと上を見上げれば木々の葉は枯れて落ち、空は灰色の雲に覆われている。

そして背中には時折木枯らしが吹き付ける。それはいよいよ秋が終わり、冬が目前に迫っていることを示すものだ。

 

そんな季節になっても、活動的な奴というのはいる。

例えば高坂が典型だろう。朝は欠かさずジョギング、授業中は睡眠学習、昼はがっつりパンを頬張って園田に叱られ。

そして放課後はμ'sメンバーらと筋トレボイトレ、新曲の打ち合わせに励む。

・・・いくつかおかしいところもあるが気にしてはいけない。

 

そして・・・この歩く黒歴史製造機―――といっても本人に自覚はないが―――材木座も同様。

このところ週末はアキバにちょくちょく来ては、お仲間の皆さんとカードバトル、メイド喫茶巡りに勤しんでいるらしい。

家でやれとか千葉にもメイド喫茶ぐらいあるだろとか言いたいことはいろいろあるが、まあそれは置いておこう。

 

「で・・・なんで俺を誘った?」

 

「ハッ!前世からの同士たる貴様を誘わないという選択など我にはない!我はそんな薄情者ではないぞ八幡よ!」

 

・・・どうもありがとうよ。

だがそんな温かい心遣いも、学校と練習が終わってクタクタになった時、突然に待ってるから早く来いと呼び出されては微塵も感じ取れない。

無視したら夜の電話が長引くので渋々行ったけどさ。そろそろこいつには、TPOの重要性についてみっちり教育してやる必要があるのではないだろうか。

 

「大方お前のお仲間が忙しくて、でも一人じゃ行けないから誘ったんじゃねえのか」

 

「ぐっ・・・そ、それは・・・確かにそれもある!

だがな!我はこのところ巷で話題の、伝説のメイドとやらの情報を入手したのだ!それで何としても我は彼女に・・・!」

 

お近づきに?無理無理。

俺がメイドさんならこの手の暑苦しいのは相手にしたくねーわ、つか黄色い声あげて突き飛ばすまである。やったら損害賠償だけど。

だから飲食業は(ry・・・まあこの辺にしておこう、愚痴は一旦始まると止められない。

加えて、俺も俺でこいつの誘いを承諾せざるを得ない理由があった。

 

それは、μ'sの新曲のネタ探し。

 

昨晩、日課の一人飯できつねうどんを作って啜っていた時、唐突にスマホが鳴った。

かけてきたのは矢澤。・・・あー、うん、十中八九アイドル絡みのことですな、分かります。

女子と電話するというのにロマンス要素一切なしと瞬時に感じ取れる俺、最強。・・・最強なのん?

 

(大ニュースよ!クリスマスイブにね、アキバでスクールアイドルだけの特別ライブが開催されるらしいわ!)

 

応募対象となるのは、東京都の高校に在学するスクールアイドルグループ。

その中から抽選で計15組が選ばれるらしい。スクールアイドル人気にあやかって今年から開催されるそうだ。

 

確かに、これに参加すれば、知名度を爆上げできる絶好の機会といえるだろう。

但し言うまでもなく抽選に残れなければどうしようもない。残ったら残ったで、相当の準備をしなければならない。

ファーストライブの時の様に、内輪で披露するものではないからだ。要は"目の肥えたお客さん"が大挙してくるわけで、みっともないものは見せられないという訳である。

 

(さっきサイトがオープンしてすぐ申し込んだから、多分抽選には受かるでしょ。

で、早速だけど明日からはまた新曲制作やっていくわよ。アキバが舞台だから、それを上手く絡めた内容がいいかしら。

アンタにもバッチリ協力してもらうからね!)

 

・・・先着順ってわけじゃないだろうに。それを捕らぬ狸の皮算用と言います。

つか一応了承は取ろうぜ、他のメンバーに。それ指摘したら既に皆さん賛成したそうで、あっそうですか。

ぼっちはいつだって世の中から置いてけぼりだもんね。

 

さてそんな訳で、ネタを漁っているのだが。

ぶっちゃけ今はラノベ買う時に寄るぐらいだし、アキバ=オタク、電気街以外何のイメージもない。

それでどうやってアキバとアイドルの楽曲を結び付けろと言うのか。

ただ何もしないでいると矢澤の逆鱗に触れるので、取り敢えずそれっぽいことをする。この"仕事しているふり、なんか頑張っているふり"は、ぼっちにとっては必須スキルの一つだ。

体育でペアを組むとき、なにより去年の文化祭やら体育祭ではこれを使って凌いだもんである。ま、そもそも誰も俺に注意払ってなかったけど。

あと使い過ぎるとすぐボロが出るから注意しとけ。

 

「・・・まぁいいわ。それでこの店がその伝説のメイドさんの店だと?」

 

「うむ!聞いておののけ、彼女の名はミナリンスキー!

何でも彼女に尽くされた客はスペシャルコースを即座に注文すると聞くぞ!」

 

スペシャルコースって・・・パフェにコーヒー、パンケーキのセットってだけじゃねえか。しかもサイゼのより高い。

こんなものただのぼったくりだ。そのミナリンスキーさんがどんだけ接客上手いのかは知らんが、騙されて買う奴はただのアホだろう。

 

「・・・おいタケダ氏タケダ氏、あれミナリンスキー様じゃん?」

 

「mjd!?は、はようカメラカメラ!」

 

・・・周囲がざわついてきたが、どうやらお出ましらしい。

あとそこのあんた、店内は撮影禁止って書いてありますが?大体そんなデカいカメラ必要ないだろ。

 

そして、ついにカウンターから一人のメイドさんが姿を現す。

髪色はミルキーゴールド、さらにやけに甘ったるい声と表情、それは。

 

 

「はぁ~い♪皆さん、お待たせしまし・・・た・・・?」

 

 

「・・・あ」

 

その正体は、南ことりその人だった。

 

 

「うぇっぷ・・・」

 

「ひ、比企谷くん、大丈夫・・・?」

 

ええい、同情など要らん。あの中二野郎が勝手にやったんだ、気にしてくれるな。

 

あの後しばらくの間俺と南が二人して凍り付いた後、場を宥めようとした材木座が勝手に俺の分までスペシャルコースを注文。

割り勘前提だったので泣く泣く3000円近い金を支払った。あの野郎・・・この恨みは忘れんぞ。

それと明日の朝ご飯は抜きだな。これ以上の食べ過ぎは胃に悪い。

 

で、南から仕事が終わるまで待っていてほしいと頼まれ、さっきまで胃もたれに悩まされながら離れたところで突っ立っていたという訳だ。

確実に誰か通報していただろうな・・・顔色と目つきの悪い男がいるんですがって。幸いおまわりさんが来る前に南が来たわけだが。

もうこの生涯で何度九死に一生を得たか分からんわ。

 

「あ、そのね・・・ことりのこと、なんだけど」

 

「・・・メイド喫茶で働いてることは皆に知られたくないってことだろ?」

 

確かにメイド喫茶と働いている、と聞くと余程のオタクでもない限り「なにそれ?」と白い目で見られる可能性はある。

音ノ木坂や、アキバに近いこの辺の学校ならそう珍しくもなさそうだが。

 

ただ、小遣い稼ぎでバイトしたいなら他にも顔バレを気にせずに済む仕事だってある。

敢えてあんなバイトをしているというのは、おそらく。

 

「・・・うん。私、穂乃果ちゃんみたいに明るくないし、海未ちゃんみたく習い事もやってるわけじゃないし。

だから、メイドさんをやってみて、それが自分を変えるのに役立ったら、それでμ'sに貢献できたらって、一か月前から働いてるの。

それに・・・」

 

一瞬言いよどむが、続けて構わないと促すと、再び南はゆっくりと口を開く。

 

「・・・みんなの衣装作るために働いてる、なんてバレちゃったら、みんなに悪いもんね・・・」

 

「衣装代?全員で負担することになってたはずだろ」

 

「うん、それはね。でも、ミシンとか糸とか、衣装を作る道具は違う。

学校のは数が少ないし、何より家だと使えないし。これからもっと本格的に活動するようになったら、それじゃ間に合わなくなることもあるかもしれない。

だから思い切って自分のを買うことにしたの。

でも、そのことでみんなに気を使ってるだなんて思われたく、ないから」

 

「・・・・」

 

―――フン。

一体なぜ、その事を恥ずかしいことのように言うのか。

 

滅私奉公。それは一般的に言えば素晴らしい、称賛されるべきことである。

みんなの為に尽くす俺マジかっけー、なんて自分に酔ってる奴は別だが。少なくとも南はそこまでこじらせているわけでもない。

 

「なんで、そんなことで悩んでんだ?どこが恥ずかしいんだ?」

 

「え、っと・・・その」

 

「俺には誰かのために身銭切ってまで尽くすことなんざやったこともないからな。

それに無責任な言い方だが、お前の良心は間接的にとはいえ、あいつらには十分伝わってるはずだ」

 

「そう、なのかな・・・」

 

ファーストライブの時を思い出してみればいい。

最初あれだけ恥ずかしがっていたはずの園田がお前や高坂に負けず劣らず、笑顔を輝かせて歌い、踊っていた。

お前の作った衣装に対して敬意を払ってなければ、到底できない筈だ。

 

「特に、高坂と園田。幼馴染なんだろ?なら一番よく知ってる相手じゃねえか。

あの2人は誰かの優しさに付け込んで、自分はその上に胡坐を掻くような性格なのか?」

 

「そ、それは違うよ!穂乃果ちゃんも海未ちゃんもそんな人じゃない!」

 

―――そうか。

 

なら、何も問題はない。

 

「あ・・・ご、ごめんね、私のために言ってくれたのに」

 

「別に構わん。だったら、別にあいつらにそのことを隠す必要はないだろってことだ」

 

沈黙。

但し、さっきのようなネガティヴさはそこまではない。自分のしていることを恥じている様子はない。まだ少し迷っているだけのことだ。それも、じき解決するだろう。

 

そうでなきゃ困る。

μ'sの中心たる人物の一人が、この大事な時に道に迷っているようでは困る。

今は何としても前を向いてもらわなければ。

 

「ま、どうしてもってなら俺からは言うつもりはないしそっちも黙ってればいい。だが自分のやってることをそこまで否定する必要はない」

 

「・・・ううん、ありがと。穂乃果ちゃん達には後で話してみるね」

 

「そうか。なら俺はこれで帰るぞ」

 

「うん♪今日はありがとう、また学校でね」

 

そこからは、いつものゆるふわな南ことり、その人だった。

 

 

『・・・ブーーッ!』

 

ん?またバイブかよ。

一体誰だ、それともまた迷惑メール・・・

 

「ちょっと!何度かけたと思ってんの?!にこをシカトするなんていい度胸ね!

そ・れ・に、アンタ今日学校出るとき新曲の案は後で考えるとか言ってたけど、ちゃんと出来てるんでしょうね・・・?!」

 

・・・・。

 

一瞬にして現実に引き戻される。

案?勿論考えてないです。

 

・・・どうやら、説教はまた長くなりそうだ。

 

 

 




終わり。次回はお待ちかね、合宿回です。
設定を変えて、八幡とμ'sには長野のスキーリゾートにでも行ってもらいましょうかね。

ま、気長に待っていただければ幸いです。
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