ぼっちと九人の女神たちの青春に、明日はあるか。   作:スパルヴィエロ大公

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主人公不在回。いいのか、それで。


第二十話 創るは難し、崩すは易し。

 

【side:ことり】

 

「さーて、今日は冬休み前最後の授業になる。

クリスマスにお正月、浮かれたくなるかもしれないが、お前らはもう高校2年だということをくれぐれも忘れないように。

宿題は勿論、先月の進路相談で決めた方向で今後も進めるのか、しっかり考えておけよ!」

 

(・・・進路、かぁ)

 

この時期になると、将来の選択を再び真剣に考えなくてはならなくなる。

南ことりも、まさに今、そんな状況に置かれていた。

 

進路が決まらないのも深刻だが、かといってこうもあっさりと決まってしまっていいのだろうか。

 

合宿から帰ってきてすぐ、母から渡された一通のエアメール。

差出人は、パリに住む母のいとこ。

自分を服飾学校の生徒として推薦した、是非来年から生徒として通ってほしい―――内容はこうだった。

母は、まずは自分で悩んで、よく考えなさいとだけ告げた。

 

確かに自分は、将来はデザイナーになりたいと思っている。だから学校もその方面に進学するつもりだった。

でも・・・なぜ、よりによってフランスなんだろうか。英語だって日常会話がほんの少しできる程度なのに。

いや、語学の問題ではない。

日本を出ること、それは即ち穂乃果たちと離ればなれになることを意味していた。少なくとも3、4年の間は。

 

ずっとみんなと一緒にいられるわけではない。それは分かっている。

進学、就職を経て、やがては別れなければならないのも。

 

(でも・・・その日がこんな早く来ちゃうなんて・・・)

 

怖い。そんなの、嫌だ。

何よりみんながμ'sとして一生懸命頑張っている時、自分一人が抜けてしまったら・・・!

 

誰かに相談しようにも、責められることを想像してしまう。

情けないとか根性がないとか、逆に向こうでやっていける訳ないとか。

穂乃果たちには、もっと言いだせそうにない。タイミングがあまりにも悪すぎるのだ。

 

なら。

ライブが、ライブさえ無事に終われば。

 

その時こそ、みんなに伝えるんだ・・・。

 

 

【side:穂乃果】

 

「あの、先生。比企谷くんは・・・」

 

「ん?ああ、体調不良で休みだそうだ、全く冬休み前から・・・。

園田、お前らであいつにプリントをもっていってやってやれ。南と・・・それに高坂も!

寝なかったのは許すがボーっとしろとも言ってないからな」

 

「・・・は、はひっ!」

 

・・・・。

 

あれ・・・?

今日って、こんなに寒かったっけ。教室、暖房入ってるよね?

ふとそんな違和感を覚える。

 

・・・もしかして、風邪?

 

頬を軽く叩いて、下らない可能性を振り払う。

大丈夫だ、そんなはずない。昨日は帰ってすぐお風呂に入って、温かいコンソメスープとパンを食べて寝たから。

絶対、だいじょうぶ。

 

(・・・でも、比企谷くんは・・・)

 

あの時の自分は、確かにおかしかった。冷静じゃなかった。

いや、もっと前からだ。

合宿が終わった次の日、学校に行った時。理事長であることりの母が、教育委員会の偉い人たちと話しているところを、偶然覗いてしまった。

 

―――学校公開日の訪問者数、前年とくらべても2割減、ですか。・・・・はぁ、お話になりませんよ。

 

―――スクールアイドル?あれは元々人気のある学校が始めたから人気が出たんじゃ?音ノ木坂じゃ無理でしょ。

 

 

―――ま、どうしてもと言うなら来年までは待ちましょうか。もし入学者が定員割れするようなことが繰り返されるなら、次はありませんから。

 

 

・・・話を聞いている間、頭が凍り付いていた。

最後の"次はない"という言葉で、ようやく我に返った。

 

そうだ、次はないんだ。このままじゃ、学校がなくなるんだ。

そのことをすっかり忘れていた。昔からバカだバカだと言われてきたけど、この時ほど自分がバカだって思ったことはなかった。

だからその日から、みんなとの練習とは別に自分でも練習をすることにした。少しでも体力をつけて、上手く踊れるようにするために。

 

たとえ雨が降ってたって、台風が来たって。

学校をなくさないためには、なんだって・・・!

 

―――休むのも仕事のうちって教わらなかったのか?

 

・・・でも、それはやっぱり間違ってたのかもしれない。

急ぎ過ぎて、周りが見えなくなっていた。

 

何より自分が変に頑張り過ぎて、みんなを心配させるようなことがあったら。

それこそライブにとっては悪影響しかないのに。そのこともすっかり忘れていた。

 

―――おい!いいか、真っ直ぐ家に帰れ!必ずだ!

 

・・・そして。

あれ程真摯に忠告してくれた彼に、暴言を吐いて、その場を逃げ去った。

 

やっぱり、自分は、どうしようもないバカなんだ。

 

「・・・ごめんね」

 

「?どうした、高坂。・・・具合でも悪いのか」

 

「ハッ?!ち、違いますっ!」

 

「何だ、大げさだな」

 

教室に、また笑いが起こる。

いつもならつられて自分も照れ笑いを返していた。でも今日は、そんなことできない。

 

謝っても、許してくれるか分からないけど。

 

ごめんね、みんな。

ごめんね、比企谷くん。

 

 

【side:海未】

 

放課後

 

「ことり、今日はお母さんと話すことがあるから・・・練習はちょっと出られないな」

 

「そうですか・・・」

 

・・・このところ、自分たち3人の関係がおかしい。

 

まず、ことりが自分と穂乃果を避けるようになった。

最初は単に用事で忙しいという言い分を真に受けていたが、流石にこう何日も続けば変に思わない筈がない。

何か自分たちに知られたくないことがるのか・・・いや、そうとしか考えられない。

 

「・・・それじゃ、みんなにはそう伝えておくねっ!」

 

「うん・・・ありがと、またね」

 

・・・そして、穂乃果も。

ニコニコと笑っているのは一見いつもと変わらない。

だが、今日はどこか無理して笑っているように見える。必死で疲れを誤魔化しているように。

 

(なのに・・・何故私は、二人に声一つかけることも・・・)

 

昔から大人たちに、良い子だとか年の割にしっかりしているとか褒められてきた。

それは違う。

自分は弱いのだ。いつも友人に助けてもらってばかりで、自分から助けの手を差し伸べたことはない。

今までは穂乃果とことり、彼女らの頑張りでどうにかなってきた。でも、今回はその二人が元気をなくしかけているというのに。

 

(・・・でも・・・私に一体どうしろというのでしょう・・・?)

 

真面目さぐらいしかとりえのない自分に、二人をどうやってサポートできる?

お説教臭いことしか言えずに、余計に気力を失わせるようなことになったら、それこそまずい。

 

何より、怖かった。

 

本当に二人が深刻な問題を抱えているとして、自分にそれが背負いきれるのか。

解決できなくて、二人から失望されないだろうか。

もし、そうなったら・・・。

 

今まで通り、友人でいることなんて、できない。

そんなことになったら、耐えられると思えない。

 

(・・・ごめんなさい・・・ことり、穂乃果)

 

自分は臆病だ。

だから、自分を誤魔化して、臭いものに蓋をして、何とか取り繕って、今日も一日を過ごす。

 

 

【side:希】

 

「・・・希?どうしたの、柄にもなくボーっとして」

 

「・・・・」

 

放課後、生徒会室で書類整理をしていた絵里と希。

絵里はふと、俯き加減な友人に向けて声を掛ける。しかし、返事はすぐに返ってこなかった。

何かあったら向こうから声を掛けてくるのに、珍しい日もあるものだ。

 

だが希の中では、ある一つの懸念があった。

 

クリスマスイブまで、ライブまで、あと4日。なのに、日増しに事態は悪くなっている。

言うまでもなく、穂乃果、ことり、海未のことだ。

μ's創設者たる三人の関係がこのところギクシャクしている。三人が三人とも、お互いに距離を取っている。

いや、壁を作っているようにも思える。それはかなりまずい兆候だ。

 

「・・・タロット占いの結果、なんやけど。

どうも最近、あかん方へと向かってる気がするんよ」

 

「・・・つまり?」

 

「3日前は戦車、一昨日は魔術師。そして昨日は審判やった。

・・・どれも全部、逆位置で出とる。エリチ、意味分かる?」

 

絵里はしばし考え込み―――顔色を変える。

 

「暴走、臆病・・・再起不能・・・ねえ、ちょっと」

 

「そういうことや。ウチら、このままライブに突き進んでええんやろか?

エリチも気づいとるよね、穂乃果ちゃんらの様子。あれじゃ絶対本番で力なんて発揮できんと思う」

 

「それはそうだけど・・・でも、高坂さんはやるつもりでいるわよ。

ライブ出場を取り下げたら、それこそ士気もガタ落ちになるんじゃないかしら」

 

「・・・・」

 

確かにそれも一理ある。だが、このままライブに臨めば、きっと・・・。

 

希は、今日の占いの結果については敢えて言わないことにした。

 

 

"塔"。逆位置。

 

意味するところは、"必要とされる破壊"。

 

 

窓の外の暗雲が、明るい未来を覆っていく。

 

 

 

 




・・・どす黒い。ヤベえよこりゃ。
作者ですら思う、やり過ぎたと。こんなにしちゃってどうやってμ's復活まで持っていくんだ?!

まあ、何とかなるさ(棒)
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