ぼっちと九人の女神たちの青春に、明日はあるか。 作:スパルヴィエロ大公
やなぎなぎの「水の中の雲」を聴いて鬱になっていたから。
いやマジで夏の終わりに聞くもんじゃねーなあの曲。自殺したくなるレベル。
え?やなぎなぎさん知らない?
・・・俺ガイル続ちゃんと見直してきなさい(上から目線~☆)
失礼しました、早速いきます。
【side:にこ】
「・・・嘘・・・でしょ・・・?」
クリスマスイブ当日。
来たる聖なる日に向け、皆が賑わうこの日。
天気は、曇り。しかも予報では、午後からにわか雨が降る確率が高いとのこと。
もっともライブは雨天決行なので、仮に降ったとしても進行に何ら影響はないのだが・・・。
―――もうあたし、ここらでやめとくよ。予選敗退じゃお話にならないもん。・・・流石にさ、アイドルに高校生活全て捧げるのはちょっとね。
―――にこちゃんもいい加減見切りつけたら?芸能界行きたいなら、高校出たらにするとかさ・・・今に大変なことになるよ。
「・・・っ」
かつて自分がスクールアイドルを目指し、そして挫折した日。あの日も、こんなどんよりとした不快な曇り空だった。
今朝から、何度も、何度も、脳裏に蘇る。それはフラッシュバック―――それとも、デジャヴなのだろうか。
それでも他のメンバーが上手くやっていたなら、自分も天気のことなど気にしなかったろう。
だがここ数日、急に穂乃果たち3人の様子がおかしくなった。それがみんなに伝わり、μ'sに動揺が広がっている。
昨日色々と問い質してはみた。どうにも満足のいく答えは得られなかった。3人とも貝のように固く口を閉ざしている。
特におかしいのはことり。
やけにみんなから話しかけられるのを怖がっている。それは、一体何だっていうの?
なんで仲間に打ち明けてくれないの?何かやましいことでもあるの?
ねぇ、答えてよ・・・!
何度も、何度も、伝わりはしないと分かっていながら、問いかける。
【side:花陽】
一寸先は闇。迂闊に進んだら、その先はもしかして崖かもしれない。
そして無様な最期を遂げる羽目になる。
だから花陽は悩んでいた。自分たちは、このまま今日のライブに参加すべきなのか。
今からでも取り下げるべきではないのか、と。
「・・・かよちんも、やっぱり不安なんだね」
「うん・・・」
実力とか緊張とか、そういう問題ではない。それ以前だ。
穂乃果、ことり、海未。3人の関係がぎくしゃくしていて、それがみんなに波及して、μ'sの雰囲気がおかしくなってしまった。
合宿ではみんな団結して、真剣に取り組んでいたのに。なんでこうなってしまったのか。
理由を知りたい、聞きたい、でもそれができない。みんな聞こうとしないから、聞きづらそうにしているから・・・。
なんで、勇気が出ないんだろう。自分を含むみんなのことに関わる問題なのに。
どうして、いつも私は・・・。
その時、いつもの快活そうな笑顔を浮かべ、凛が自分の肩を叩く。
「かよちん。・・・今は、凛たちが頑張らなきゃ。
そうすれば、きっと先輩たちもそれを見てくれて、自分たちも頑張ろうって気になってくるにゃ。それまでの、辛抱だよ」
「うん・・・うん。そう、だよね」
そう。
結局は空元気であろうと、何とか自らを奮い立たせて本番に臨むしかない。
μ'sのみんなが自信と希望を取り戻してくれると信じて。
でも。
「・・・比企谷先輩は、どうしてるんだろうな」
もう一つの懸念が、花陽の心に覆いかぶさっていた。
【side:八幡】
風邪。
これと水虫と癌、そのいずれかでも完全に治すか予防できる方法を見つけられればノーベル賞は確実。
そんな与太話を子供の頃聞いて、いつかは俺も・・・!などと妄想したものだ。
理系方面の才能がないと気づいて諦めたが。なんで医学部を受けるためにで数学まで使うんだよ。
それはさておき。
高坂を探しに行った日の翌朝、とてつもない高熱を出してダウンする羽目になった。まさしくミイラ取りが何とやら。
生涯何度目の惨めさを味わったかもう分かんねえなこれ。
「要はこういうことだな、馬鹿は風邪をひかないと言うが風邪をひいた俺は馬鹿ではないと証明されたわけで」
『またごみいちゃんはー・・・訳の分からない屁理屈を』
「たまには一人暮らしの孤独な兄貴の愚痴でも聞いてくれたっていいんでないのか?小町さんよ」
『まんま平塚先生っぽいよそのセリフ・・・そんなに寂しいなら千葉に帰ってくれば?
小町的にはポイント高いよ!』
うん、それ無理。第一転校した理由がアレだもの。
今さらのこのこと戻って行っても、向こうが迷惑するだけだろう。それに、俺自身総武高にこれといって未練はない。
せいぜい戸塚と会えなくなることぐらいだ。・・・え、材木座はって今でも向こうからしつこく連絡してきますし。
そんな下らないことより、目下当面の課題が未だ解決の糸口すら掴めていないことの方がまずい。
あれから高坂はどうなったのか。南や園田、μ'sの他の連中は大丈夫なのか。
病人である以上今まで我が家に来て会う訳にもいかなかった。チャットやメールはどうなのかと言えば、高坂にいくつか送ってみたものの返信はない。
向こうがこの前の一件を気にしなくなるまで待つしかないということか。
―――みんなのことは私も何とかやってみる。比企谷さんは早く治してライブに来れるようにしてよね?
3日前に見舞いに来てくれた西木野はこう言っていた。だが、本人には悪いが何の励ましにもなっていない。
問題に対処するにあたって、原因究明すらできていない状態で何とかすると言われて誰が信用するというのか。
そして実際その後の進展はないまま、今日―――クリスマスイブを迎えてしまった。
つまり、ライブ本番。
「ぐ・・・っ」
―――比企谷くんには、分かんないんだよ!
どう考えても、
悪い予感ほどよく当たる。もしその通りなら、あいつらは・・・。
駄目だ。
もう寝ている場合じゃない。
『・・・お兄ちゃん?』
「・・・・」
『ちょっと!?調子悪いの?!だったらまだ寝てなきゃダメだよ!
こら、ごみいちゃん返事―――』
「すまん」
それだけ言って、電話を切った。
悪いな、小町。本当に俺はごみいちゃんだよ。
だが急がないと間に合わない、このバスを逃したら永久に地獄にとどまることになる。
下がったとはいえ熱はまだある。全身の倦怠感も抜け切れていない。
それでもやらなければいけなかった。
まずは高坂達に会う。そして高坂がまだ、自分を見失っているのだとしたら。
最悪ライブの出場を取りやめさせなければならない。そうなれば、どうしてもμ'sに瑕がつくことは避けられないだろう。
それでも失敗による破滅より遥かにマシな選択だ。俺たちはもう、無限の可能性などという謳い文句を信じて行動するような歳ではない。
だから無鉄砲に突っ込むのではなく、時に戦略的撤退を選ぶこともしなくてはならないのだ。
着替えを済ませ、最低限一般市民から怪しまれないように身なりを整えると、すぐに家を出る。
「どうにか、間に合ってくれよ―――」
【side:???】
(先輩として、忠告させてもらうわ。
今は貴方たち、ベストな状態じゃない。リタイアするべきよ)
(まだ―――まだ、これからなんですっ!穂乃果、負けませんよ!)
(おい、今センターの娘、倒れた・・・よな・・・?)
(ヤバいぞ!早く救急班呼べ、急げ!)
(会場の皆さん、申し訳ありませんが一時ライブを中断いたします!暫くの間そのままでお待ちください!)
青春は、消耗品。
そんな言葉を、何かの映画で聞いた気がした。
当たり前の話だ。
人間は必ず死ぬ、ならば人生の一部分たる青春もまた然り。
そして、ガラス細工のように脆いということも。
一旦砕けたガラス細工は、精巧であればあるほど、二度と元には戻らない。
―――そう、"元には"。
ラストは三人称。
つまり神の見えざる手ならぬ、見えざる目。そういう風に解釈して頂ければ。
・・・中二過ぎるだろ俺・・・。
それと、ラストを絶望と見るかかすかな希望を感じ取るか。
皆様にお任せいたします。