ぼっちと九人の女神たちの青春に、明日はあるか。   作:スパルヴィエロ大公

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まず謝罪を。

この三十一話は、いったん削除して加筆・編集を加え再投下したものとなります。
個人的に投下してからどうもしっくりこなかったので、改めてやり直す形となりましたが、読者の皆様にご迷惑をおかけしたことを謝罪いたします。
また楽しんでいただければ幸いです。

そして、再編集にあたり貴重なアドバイスをくださった西園弖虎様に、深く感謝申し上げます。

それではタイトルも一新して、三十一話、どうぞご覧くださいませ。


第三十一話 やはり合宿とは、ハプニングがつきものである。

「うう~、誰かー穂乃果おんぶしてー・・・」

 

子供かお前は。今度は何があったって言うんだ。

 

現在、俺たちは西木野の別荘へ向けて行軍中。・・・行軍という表現もあながち間違いではないのが割とツラい。

本来なら駅からバスに乗ればよかったのだが、それを空っぽになった皆の胃袋が許さなかった。

食欲に負け駅の近くにあったラーメン屋でしっかりと飯を食ってしまい、その代償としてバスを乗り過ごす。

次の便を待っていたら途轍もない時間の無駄になってしまうということで、片道30分以上かかるらしい目的地へ徒歩で向かっているのだ。

 

俺以外全員女子なのに無茶苦茶すぎね?それなんてブラックな体育会系?と、思わなくもないが全員覚悟の上で決めたので仕方ないだろう。

が・・・。10分ほど歩いたところで高坂が突然道に蹲ってしまった。すぐに会長や園田たちが駆け寄る。

 

・・・おそらく、原因はあのせいかもしれないな。

 

「穂乃果・・・どこか具合でも悪いの?」

 

「お、お腹が痛くて・・・あと右足もつっちゃって・・・えへへ」

 

「だから替え玉を何杯もお替わりするなと言ったでしょう!凛でも一玉までにしていたのに・・・!」

 

やはりな。しかも足もやられたのかよ。

マジで子供の遠足じゃん。

 

「・・・どうするの?ここにずっといても、タクシーなんて通りかからないわよ」

 

「ふむ。誰かが穂乃果ちゃん、おぶってあげるしかないんやない?」

 

その瞬間。

副会長がこっちを見てニヤリとしたのを俺は見逃さなかった。

 

・・・分かっちゃいるけどさ、全く。男だって皆が力持ちなわけじゃないんだぞ?

さしずめ俺は引率の教師といったところか。やっぱり将来は社畜なのね。

 

「―――分かった、高坂、俺の背中乗ってけ」

 

「にゃ!?」「は、ハッチー先輩がおぶっちゃうのぉ!?!」

 

えー何その反応。少女漫画なら恋愛フラグ立つシーンだろ。

俺がイケメンじゃないからか、そうだよな。やはり漫画なんて嘘しかない。

いや最初から期待してないけどね?

 

「この中で男は俺一人なんだから仕方ないだろ・・・」

 

「わ、分かってるにゃ・・・///」「う、うぅ・・・///」

 

えー何その反応、どうでもいいけど二回言いました。

 

「アンタも荷物あるのに大丈夫な訳?何ならにこが持ってあげるわよ」

 

「別にそこまで重くないし前で抱えりゃ問題ないだろ、これもマネージャーの仕事だ」

 

「いつになく仕事熱心ね・・・」

 

なら褒めてくれてもいいんじゃね?人は褒められて成長する生き物だろうに。

 

しゃがんでリュックを一旦下ろし、胸の前で抱えるようにして肩掛けを留める。

・・・コアラの親子みたいとか言うな、きのこたけのこより俺はコアラのマーチ派なんだよ。

 

「高坂、急げ」

 

「あ・・・うんっ!」

 

何で嬉しそうなのお前・・・うっ、分かっていたが重い。

別にデブ呼ばわりしたいわけじゃなく同じ高校生だから仕方ないのだが。つまりは安請け合いした俺が悪いのだ。

これが・・・比企谷八幡の選択だよ。あれ、いつの間にか鳳凰院さんになっちゃったのん?

材木座が泣いて喜んでそうで怖い。お前とは違うんだよお前とは。

 

「うへへへ・・・比企谷くんはやっぱり天使だね・・・」

 

「穂乃果ちゃん、赤ちゃんみたいだね~♪」「全く、もう・・・」

 

おい耳元で猫なで声言うのやめろ、力が抜けるだろ。

南も嬉しそうにするなよ、あと園田もなぜ悔しがる。高坂の荷物持ってもらってるから何とも言えないが。

この分だとどのくらい時間が延びることやら。着く頃には一日分のパワーを消費してるだろうな。

仕方ない、これが・・・社畜の選択だよ。

あれ今度はちっともカッコよくないぞ、やっぱオカリンって実はイケメンじゃん。リア充爆発しろ。

 

ともあれ、別荘に着くまでの辛抱だ。そしたらソファの上で寝かせればいい。

俺もできたら寝転がりたい―――

 

「・・・・」

 

「お?」

 

その時、突然西木野が俺の隣に・・・すり寄ってきた。腕を絡ませて。

"もぎゅ"っと音がするくらいに。

 

え?え?何なのイミワカンナイ。

 

「・・・どうした?」

 

「・・・・」

 

無視。虫の居所が悪いらしい。

理不尽すぎるだろ、俺が悪いのは分かってるから理由を教えてくれ・・・。

 

 

瞬間、俺の右腕にチクッと痛みがさす。

 

 

「つ・・・っ!?」

 

よく見ると、右腕が別の手によって抓っている。それは言うまでもなく、西木野の手だ。

思わず顔を上げると、頬を赤らめ、目の潤んだ西木野の顔があって。

 

「浮気者・・・」

 

「・・・は?」

 

そう言って、腕を放してさっさと歩いていってしまった。

 

え?え?

 

「・・・比企谷くん、真姫と何かあったの?」

 

「さ、さあ」

 

俺ってまさか・・・某誠ばりのクズだったの?最後は出刃包丁で滅多刺しにされちゃうとか?

そうだったんすかホントごめんなさい。・・・小町よ真剣に償いの方法を教えてくれ、あんなクズと同列扱いは嫌だ。

 

「こらー!比企谷くん浮気はだめだよー!」

 

「いて、叩くな!」

 

おふざけしてると振り落とすぞ。

 

結局、途中で休憩をはさんだりして別荘に着いたのは1時間後だった。

・・・バス乗った方が良かったんじゃね?これ。

 

 

さて。

 

「「「「「「「「「「・・・・・・・・・」」」」」」」」」」

 

俺たちは今、2階の寝室にいる。もっと正確に言うとそこの押し入れの前だ。

そこで何をしているか。

いや何もしていない、しようと思えない。どころか何も考えたくないまである。

 

「あ・・・あ・・・」

 

「こ、れは・・・まさか・・・っ・・・!」

 

よせ何も言うな!現実は認めると辛くなるんだ。って、小泉と園田気絶してるじゃねえか・・・。

 

別荘に着き、荷物を降ろして一息入れると、高坂が「今のうちにお布団引いておこうよ!」と提案。

お前が寝たいだけだろと突っ込みそうになったが提案そのものはまともだったので、すぐさま実行へと移された。

 

が。

 

―――古いしあんまり綺麗じゃないわ、それでもいいの?

 

今にして思えば、この西木野の警告を、もっとよく考えておくべきだったのかもしれない。それか親御さんを通じて状態を確かめるとかな。

 

確かに外観は古いし内部もすごく綺麗とは言えない。それでも、数日泊まる分には問題ないと思った。

備え付けの物が古くなっているのもまあ、ある程度は仕方ないと分かっていた。

 

しかし、しかしだ。

 

布団を取り出そうと押し入れを開けたら、黒い物体が現れるとは誰が思っていただろうか?

 

・・・あー、これってあれですよね。ほら、あれよ、あれ。

分かんない?あいつだよ、人類にとって最小かつ、最恐の敵。

 

「にゃ、に゛ゃーーー!ゴキブリだにゃーーーーー!!」

 

ある者は逃げ去り、

 

「か、神様・・・Господи Иисусе Христе...Сыне Божий, помилуй мя грешную...!! 」

 

ある者は神に縋り、

 

「うわあああ!?ほっ穂乃果の所に来ないでぇ!」「ひ、比企谷く~ん、助けてほしいな~・・・♪」「・・・ふん」「両手に華、青春やなー」

 

そしてある者は文字通り、他者に縋る。

・・・なんで高坂と南は俺に抱き着いてるんですかねぇ。暑苦しいってか匂いとか色々ヤバい。あと感触も。

そこに西木野のジト目による精神攻撃も加わり・・・もうやめて、八幡のHPはゼロよ!

如何にぼっち生活で十何年間と修練を積んでいても、唐突なラッキースケベの前には無力なのである。

悔しい、ついでに胸も苦しい、小町よ助けて。

つうか副会長、ニヨニヨしてる場合か・・・せめて祈祷でもして魔を追い払ってくれよ。

 

「ぅぅぅぅぅぅ・・・・!」

 

って、今度は背中に・・・矢澤か。

ちっこい身体がぶるぶると震えている。正直普段よりかわいいと思ってしまったのは内緒だ。

 

「ひっひっ、ひきゃ、比企谷!たったた退治、退治!」

 

・・・落ち着けよ、まるで俺がゴキみたいじゃねえか。

 

そういえばゴキブリは割と身体を清潔にするらしい。何それ、まるで俺じゃん。

周りからはキモがられてるが実はA型で真面目で繊細な俺のような・・・でもやっぱり同列扱いは嫌でござる。

 

「う・・・動いた!?」「ひっ?!きゃぁぁぁぁぁぁ!!」「だぁぁぁ!!来んじゃなわよぉぉぉぉ!!!」

 

そして3人からの圧力が強まり―――押し出される。

 

 

すなわち、押し入れの中へ。

 

 

「「「!?・・・あっ」」」

 

 

瞬間、空気が凍る。

 

ここで俺は、有名な古の諺を思い出す。

 

"幽霊の 正体見たり 枯れ尾花"と。

 

そう、超常現象などこの世には存在しない。同時に、ゴミ屋敷でもない限りゴキブリが大量発生という事態もまたそうそうあり得ないのだ。

 

「・・・カビだ」

 

「え?」

 

「黴だよ。布団に着いてるのは、ゴキブリじゃねえ」

 

途端に空気が緩んでいくのを感じた。・・・いや、マシとはいえホッとするとこじゃないからね?

 

その後の調べで、備え付けてあった布団は全て黴で使用不能。

枕もほぼ同様の状態であったことが判明。即座に全て庭の物置へ移した・・・やったのは俺。

だって皆涙目で縋ってくるんだもん。女子ってズルいっす。男女差別反対。

 

これが何を意味するか。それは、合宿中はずーっと雑魚寝ということである。

 

・・・これから買い出しとかもあるのに、明日から曲作りも始めなきゃいけないのにこれかよ。

やっぱ社畜ってクソだ。それと寝床ぐらいはまともなものを云々。

 

「うわーい!合宿らしくていいよねっ!」

 

高坂よ・・・そのポジティブシンキング、今は場違いだぞ。

 

 

【side:花陽】

 

動物である以上、生きるために食事は不可欠。

そう言うと食いしんぼと笑われ、あるいは女の子らしくないとたしなめられる。どうも納得がいかない。

男の子はたくさん食べて力を付けなさいって言われるのになあ。

 

とにかく、お腹が減っているときにたくさん食べられないのは、花陽にとって一番の苦行であった。

 

「ご飯が・・・非常食すらストックがないだなんて・・・助けてぇ・・・」

 

「かよちーん、しっかりするにゃー」

 

「みんなが買い物から戻ってくるまでの辛抱ですよ。今はテーブルを準備しておきましょう」

 

あの布団騒動の後、みんなで軽く掃除をして、その後穂乃果たちは買い物に行った。その間、自分と凛に海未はお留守番。

そうお願いされた時は思わずショックで立ちくらみを起こすほどだった。

何か大変なことが起きても3人いれば対処できるとか、貴方は繊細さでは一番だから留守番役にうってつけ、ということらしいけれど。

買い物のお米選びでは観察眼が生かして美味しいものを見つけてやると息巻いてたのに・・・悔しくて、ちょっと恥ずかしい。

 

テーブルと椅子を持ってきて、食器を出す。

それが済めば皆の帰宅を待つのみ。つまり、暇になってしまった。

 

「うーん・・・暇だにゃー」

 

「そうですね・・・」

 

お菓子も既に全部食べてしまった。ゲームをするにしても3人ではちょっと足りない気もする。

かといって自分一人で雑誌を読んだりするというのはいかがなものか。

 

「それなら・・・新曲のことについて、話してみない?」

 

「・・・はぁ。そういえば合宿をやることありきで、その目的が二の次になっていましたからね。

全く穂乃果は、どこまでも向こう見ずで・・・」

 

「むっ、海未ちゃんの親バカが炸裂かにゃ?さすが自他ともに認める穂乃果ちゃんの保護者!」

 

「なっ!?わ、私はただ心配しているだけです!

大体誰がそんなことを言い出したのですか!むしろ甘やかしてばかりのことりの方が―――」

 

「あははは・・・」

 

話題、ずれちゃった。会話をするのも、結構難しい。

 

結局新曲のことからはどんどんと脱線していって。

最近興味を持ったアイドルとか海未の武道の上手さのこととか、プライベートなことを話していた。

それが終わると、μ'sのこれまでのこと。

もしμ'sがなかったら今頃どうしてたんだろうとか、4月の新入生歓迎ライブが大拍手の嵐で、思わず泣いてしまったこととか。

 

そして、その話が終わると、今度は。

 

「えっと・・・そうだ、ハッチー先輩のことだけど」

 

「ハッチー・・・?ああ、比企谷くんのことですね」

 

「かよちんが考えたんだよー?可愛いよね、"ハッチー"って!」

 

「・・・殿方に可愛いと言うのはどうなんでしょうか」

 

そう呼んでもいいかと頼んでみたとき、照れつつオロオロしながら勘弁してくれと懇願するので、結局先輩、と付けることで妥協した。

その姿が男子なのにちょっと可愛いかな、と思って意地悪したくなる気持ちになったのは内緒だ。

 

 

「「「・・・・」」」

 

 

でも。

 

よく考えたら、自分たちは彼のことについて、どれだけのことを知っているんだろう。

 

趣味は・・・確かプリキュアが好きなのと、本人曰く人間観察。多分後者は冗談なんだろうけど。

国語の成績が優秀で、数学がとっても苦手。家事も結構上手。

性格はちょっと捻くれてておかしな屁理屈を言ったりもするけど、案外面倒見のいいところもあって。

妹さんを可愛がっているらしくて―――

 

うーん。

 

これって、多い方なのだろうか。いや、まだまだ足りない気がする。

 

μ'sのマネージャー・・・これはにこが言っているだけだけど、それでも大切な仲間なはず。

それに以前、穂乃果のピンチを救ってくれたことだってあるのだ。

 

なのに、自分たちは。まだまだ彼を、比企谷八幡という人をちゃんと理解できていない気がする。

 

「そういえば、なんでハッチー先輩は音ノ木坂に転校してきたんだにゃ?」

 

「・・・ご本人からは、特に何も聞いていません。恐らく家庭の事情か何かかと」

 

「今は一人暮らしをしているって、穂乃果ちゃんが言ってたけど・・・」

 

家族もそうだろうけど、本人にも何かもっと複雑な事情があるのかもしれない。

それを他人には知られたくないのかもしれない。

 

「でも・・・ハッチー先輩は、悪い人なんかじゃ、ないよね」

 

会話が止まる。

 

ちょっと口が過ぎたかもしれない。でも本当に、疑ってるわけじゃないんだ。

彼のことは信じてる。その上で、もっと知りたいんだ。

 

「うん・・・うん、そうだよ。悪者なんかじゃないにゃ」

 

「・・・当たり前でしょう。仮にそうなら、彼が音ノ木坂に、μ'sにいるはずがありませんよ」

 

「そう、だよね」

 

 

 

だから。

 

どんなことがあっても、彼を受け止めたい。その思いが、強くなる。

 

 

 

 




終わりです。
・・・正直花陽sideの話以外はかなりいじくってます。混乱させて申し訳ない。

次回も合宿編。ようやくアイドルらしい活動をやる、のかな・・・?
いつ投稿できるか分からん。
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