ぼっちと九人の女神たちの青春に、明日はあるか。   作:スパルヴィエロ大公

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なんか随分間が空いた気がする……。

ファイナルシングルのタイトル決まったり真姫ちゃんがCMに出たり、冬イベでいきなりずいずいとながもんと天城姉がドロしたり……(艦これ)
色々ありましたが皆さんお元気でしょうか。僕?何か花粉症っぽい!(*´ω`)

……明日の合説終わったら耳鼻科へGO。という訳で三十四話です。


第三十四話 こうして、彼は古い自分を脱ぎ捨てる。

夜、海の近く。そこで女子と二人きり。

いかにも少女漫画でありそうなシーンで、しかし現実にはあり得ないと思っていた。少なくとも俺にとっては縁遠いものであるはずだと。

 

だが、それがまさか、こんな形で実現しようとは。

 

 

「総武高での生活。それを聞かせてほしいんや」

 

 

―――ああ、ついに来てしまったか。

 

東條副会長にそう尋ねられた時、別に顔が真っ青になって汗が噴き出て体が震えるとかそんなことはなく。

意外にも俺は冷静だったと思う。

 

この質問の意図すること、それは要するになぜ俺が転校してきたか、向こうで一体何があったのか。そういうことだ。

単に楽しい昔話を聞かせてくれという軽い気持ちから来たものなら、わざわざ深夜に二人きりになる必要はあるまい。

そっちの意味だったらこの人の性格上、夕食中に高坂達の前ででも聞いてくることだろうし。

 

なんともない、大したことじゃないと言って話を終わらせることもできるだろう。

だがそれは悪手だ。副会長は恐らく、"表向きの"事情に関しては知っているのだ。

合宿が始まってから、妙に俺に気を遣ってくれたことからも。つまりは善意で俺を助けたいと思っているのかもしれない。

 

それを拒絶すればどうなるか。関係に亀裂が走るのは必至だ。

 

俺も日頃リア充共の関係を散々薄っぺらいと皮肉ってきたが、どんな強固そうな人間関係でも壊れるときは一瞬というのは認めなければならないと思う。

……だからって今さらあいつらのことが好きになれるわけじゃないがな。いちいち他人の前で友情ごっこを見せつけるなよ、他所でやってくれ。

 

まあとにかく、この質問をスルーできる権利は俺にはないということだ。どこでもいつでも人から権利を奪われてきた気もするが、今回は気にしたら負けだ。

 

「……それで?どこから話しましょうか」

 

つい投げやりな口調になってしまって、これはマズいと気付く。手遅れだが。

聞かれても当然のことを聞かれているんだぞ。

思わず副会長の顔を見る。俯き目を伏せ、表情はより暗くなり。やって、しまった。

 

もう洗いざらい打ち明けてしまうしか、ない。それだって悪い結果だろうが今よりはマシだ。

 

「……ウチは構わんよ?比企谷くんの話したいとこ、話しやすいとこから言ってくれて」

 

そんなものなどロクにないのだが。仕方ない。

 

「……分かり、ました」

 

そこで、俺は最初から話すことを決めた。総武高に入学してからの、全てを。

 

入学式、犬を助けて車に轢かれて病院送り。それから一年間ぼっち生活。

ここは話す必要があるかどうか迷った。が、"なぜぼっちになったのか"。これを説明しておかねば次の年からの出来事とのつじつまが合わない気もした。

感心したのか単に可笑しいのか、副会長も笑ったので、まあ、いいだろう。

 

さて、二年生。春早々、作文で教師に喧嘩を売って今度は奉仕部送りに。

雪ノ下、由比ヶ浜との馴れ初め。初対面のとき毒舌吐かれてうへーとなったのはまあ、いい。中学なんかもっと凄かったしな。

だがしかし、クッキー騒動の件はヤバかった。あれはマジで洒落にならん……。

今頃は木炭製造機からメシマズヒロインくらいには進化しただろうか。それって進化なの?あいつにとってはそうかもしれない。

そして大天使戸塚と出会って心が浄化されたことも、初めてシスコンブラコンという土俵で張り合う?仲になった川なんとかさんのことも話す。

ついで骨格外強化、いや雪ノ下の姉こと雪ノ下陽乃についても。……あの人はもう存在自体が恐怖だ、例えるならホッブスのリヴァイアサンである。

おまけに張り付けた仮面とコミュ力による人心掌握にも長けているのだから恐ろしい。

あ?材木座?あいつは今も会ってるしいいだろ。

ここでもまだ副会長は笑っていた。ニヨニヨと小悪魔ぽいのに変わってはいたが。

 

―――さて、問題はここから。

 

夏休みの千葉村、ボランティアとして小学生に付き合った時の出来事。

鶴見留美という少女がいて、皆からはぶられていた。

それを解決させるための方法について、俺はある男と対立するところだったのだ。葉山隼人、イケメン且つスポーツマン、リア充の中のリア充。

 

葉山は確かにいい奴かもしれない。優しいかもしれない。

だがあいつには、人の暗い部分を見抜くことができなかったのだ。職業体験でのチェーンメール騒動の時にもその兆しはあったが。

結局鶴見留美の件は一応の解決を見せ、その時はどうにかなった。

ただこの時点で俺は、葉山とはきっと分かり合えることはないだろうとの確信をもう持っていたのだろう。

向こうだって君とは仲良くできなかっただろうなと言うぐらいだ。あの発言は葉山自身の過去も関係しているのかもしれないが、それは俺には関係のない話。

リア充とぼっち、カーストの差異だけではない。イデオロギーの差異、これこそが俺とあいつとを隔てる重要な要素なのだと思う。

 

この時点で副会長の表情も、再び笑みが消え苦々しいというか複雑なものへと変わっていた。

だが、それを分かっていながらも敢えて先へ進める。

 

そう―――更なる暗部へ。文化祭でのことだ。

 

文実初日の出来事、相模の職務態度。その翌日に奉仕部に持ち込まれた依頼。

思えばここから歯車が狂いだしたのかもしれない。いや、"かも"ではなくてほぼ確定だ。

雪ノ下の仕事ぶりで文実の状況は好転したが、あくまで一時的なものでしかなかった。文実を獅子の群れに例えるなら、それを率いていたのは一頭の羊だったのだから。

……いや、流石に獅子は持ち上げ過ぎか。全員を羊として、それを統率すべき羊飼いがあまりに無能力過ぎたと言うべきだな。

結局陽乃さんに乗せられた相模のお触れの所為で台無しになり、雪ノ下も疲労による病気でダウン。文実崩壊の危機である。

よくまあこれで文化祭も中止にならなかったものだ。

 

そして、スローガン決めでのあの一言。ここで俺は自分を犠牲にする覚悟を決めた。

ここでは上手くいって、全員が俺を敵と認識してくれることで文実は再び回ってくれた。

 

だが、文化祭二日目。相模は逃げ出し、俺は連れ戻す役目を任された。

タイムリミットの迫る中、説得に応じず一向に腰を上げようとしない相模。そこでもう一度、俺は切り札を使った。

相模に現実を直視させつつ、焚き付けるための一言を使って……。

 

その結果が、無残な失敗だ。相模は逃げ出した。

 

別に俺が悪者扱いされること自体は構わなかった。問題は依頼を達成できず、文化祭を"きちんとした形で"締めくくれなかったことにある。

ある種自業自得ではあるが、あれで完全に相模はプライドも何もかも失っただろう。自分が逃げ出してもイベントは滞りなく行われたという事実を、陰から見ることによって。

それではいけなかった。どうにかして舞台に立たせなければいけなかったのに。

 

挙句、一番近くに居たはずの人からすら俺は軽蔑され見放され、転校し、今に至る訳だ。

 

「……」

 

全てを話し終わり、副会長の表情を改めて直視する。

話す前と同じ、いや前よりも暗く。果たしてそこには、俺への軽蔑も混ざっているのだろうか。

 

「そっか……あのな、比企谷くん」

 

「……はい」

 

 

「ウチはな。どうしてもダメやってときは、逃げてもええって思うんよ」

 

 

――――。

 

逃げても、いい。

 

成る程、そうきたか。

 

「それはつまり?」

 

言っていることの意味は大体分かっていたが、それでも敢えて聞き返してみる。

 

「文化祭の話。君がそうでもせんかったら、文化祭、もしかしてダメになってたかもしれへんのやろ?

ほとんどの人は、まともに仕事しようとせんのやろ?」

 

「さあ、どうだか」

 

「……だったら、なんで君がそんなヤな役目請け負ってまで文化祭なんかやる必要あるんや。やめてしまえばええ。

みんなで行う行事なんやから、みんながサボってダメになった責任も、みんな等しく負うべきや。そう思わん?」

 

「そうなると、俺らの学年は文化祭一つまともにできなかったと末代までの恥晒しになりますね」

 

「でも、それがホントなら当たり前やって……ウチは思うよ」

 

確かにそうなのかもしれない。あのまま文化祭が失敗に終わることで、全員が責任を負わされる方が正しいのかもしれない。

俺にとっても、サボった方がむしろ楽だったのかもしれない。

 

だが、俺がサボるということは、すなわち奉仕部の職務を破棄することになる。それで文化祭が失敗すれば、雪ノ下の働きも報われない。

平塚先生の怖いお仕置きが後から来ることだってあり得るからな。社畜は鬼上司には逆らえん。

何より俺自身があんな連中と同じところに堕ちるのが、何か嫌だった。プライドが許せなかった。その思いが多分、強かったのだと思う。

もっとも今は、その見下した連中よりも下にいるのかもしれないが。まあ精々笑っていればいい、俺は俺でお前らのことを軽蔑しているからな。おあいこだ。

 

「俺のやったことは、確かに世間一般の感覚からすれば間違ってます。俺としても、失敗だと思ってる。

それでも何もせずに逃げるなんて、とてもできませんし。―――結局、俺はああするしかなかったんじゃないですかね」

 

「……どうして?」

 

「正攻法じゃダメなんですよ、俺の場合は。綺麗事を並べたところで誰一人聞く耳なんて持ちやしませんから」

 

「だから、逃げればええって、言ってるやろ!」

 

その時、いきなり副会長が俺の肩をガシッと掴んできた。両手で。

ビビる暇もなかった。その勢いに乗って、副会長は言葉を続ける。

 

「そんなことして君が傷ついた姿見て、おんなじように傷つく人だっているんや!

妹さん、おるんやろ?お兄さんが学校でそんな目に遭っとるなんて聞いて、彼女がどんな気持ちになると思うか、考えてみぃ!

 

ウチが、おんなじ立場やったら……自分だけ楽しいことしたりとか、そんなん、絶対、できへんよ……」

 

……。

 

ああ、そういえばそんな感じだったか。

 

文化祭が終わって学校で色々あって、その後転校が決まるまでのごたごたの間、小町とはあまり話さなかった。

兄としてのプライドというやつだ。中学の時より酷い目に遭っているのをバラさないように。

 

―――本当に疲れてるならさー……休んじゃっても、いいんじゃない?

 

だが、見事にバレていた。

雪ノ下か由比ヶ浜か、それとも平塚先生や陽乃さんから聞き出したのかもしれない。それも裏事情も含めて、全て。

それならこの事態を生み出したのが俺に原因があると言う事も、多分知っている筈だ。だが小町は、それについては何も言わず、ただ一言そう言った。今の副会長のように。

俺はそれに対しては何も返すことができなかった。ありがとうの一言も。

 

そんな形で同情されるまで、俺は落ちぶれているということを知ったからだ。

それはある意味、無視され罵倒されるより恥ずかしかった。中学の時学年中の笑いものになった、あの黒歴史の時よりも。

 

周りからすれば、俺はみじめで哀れな道化にしか見えないという訳か。どう足掻いたとしても。

 

そう思われるのは、何より嫌だ。不愉快だ。

所詮同情してもらったところで、そこから先へ、いい方向へ進むことはない。

あの人可哀想だね、自分はああなりたくないね。そこでおしまいだから。

 

そんなものは一切要らない。そして、周りの奴にはそう思って欲しくない。

 

ならば―――あのやり方は封印する他ないのだろう。

 

「……すいません」

 

いつの間にかしゃっくり上げていた副会長の顔を見つめながら、詫びの言葉を口にする。

副会長は暫くして、涙を拭って俺を見つめ返す。真っ赤な目で。

 

「……君が謝らなあかんのは、君自身にや。もう二度と、こんなことはしませんって」

 

……俺自身に、か。随分と滑稽な真似だ。

でも、そうでもしなければ、また同じことを繰り返すかもしれない。一時の恥を忍んでやる他あるまい。

 

 

「―――待って」

 

 

後ろから、声がする。

 

振り返ると高坂に南、園田。

その後ろには綾瀬会長に矢澤。おまけに西木野も小泉も星空もいる。皆、落ち込んだように目を伏せているか、目を赤く泣き腫らしていた。

 

恐らく、ほとんど全部聞かれてしまっただろうな。

 

「エリチ……」

 

「……部屋に戻るのが遅いから、具合でも悪いのかって思ったの。そしたら二人で何か話しているものだから、つい、みんなで。

その、ごめんなさい。盗み聞きなんてして」

 

「俺の所為ですから、別に謝ってもらう必要は」

 

「比企谷くん」

 

高坂が、一歩前に歩み出て俺の方へと近づいてきた。やはり真っ赤な、しかし強い目で。

 

「お願い。穂乃果に、ううん、私達にも、誓って。

自分で自分を傷つけることはしない、って。

 

比企谷くんが、そんなひどい事に巻き込まれて傷つくの、見たくない。

比企谷くんを、かわいそうな人を見るような目で見たくない。

 

 

ずっと、比企谷くんとは、友達で、いたい、もん……!」

 

そこで、いきなり抱き着かれる。大声で泣きながら。

それを拒否することはできなかった。

 

他の皆もそれを見て、下を向いている。また泣き始める奴もいた。

 

……とうとう、女子を泣かせるまでになっちまったか。俺はやはり最低だ。

 

「……比企谷くん」

 

背後の副会長から、改めて促される。

 

 

 

「俺は―――――」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




終わりです。次回で、合宿回は最終回になるか?

今回の展開は、今まで以上に神経を使うこととなりました。
実際は、八幡の文化祭での行いは一部始終を目撃していなければ、理解し共感することはかなり難しいと作者自身も思っています。
それでも、ラブライブの優しい世界観をできるだけ壊さないようにと、このような形で決着をつける運びになりました。
ご都合主義との不満、また不快感を催す方もいるかもしれませんが、ご理解いただければ幸いです。

作中の希のセリフは、平塚先生が八幡に対して諭した時の言葉を元にしてます。
より言葉に深みをもたせるためにシチュエーションを湿っぽくしてみましたが、さて。


なお、合宿回以後の予定をここで少し。
恐らく、順番を前後して、「宇宙№1アイドル」→「ユメノトビラ」となるかと思います。
いずれも原作をかなりいじくる可能性大です(´・ω・`)

そして問題はその次。
劇場版のアメリカ渡航編、この部分を先取りしてしまおうかと考えてます。
例によって原作とは(ry
その後はアニメ二期に戻って、最後は劇場版の後編部分で〆という形になるかと。
……エターにならなければね?

このような形をとる理由については、後日活動報告欄にてお伝えします。
決して原作を汚す意図はない、そこだけご理解ください。

ではまた。
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