ぼっちと九人の女神たちの青春に、明日はあるか。   作:スパルヴィエロ大公

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今回の外伝は、オムニバス形式でラブなコメディに挑戦。
メインヒロインは穂乃果・絵里・海未・真姫・希です。

時系列的には、3~4月の春、八幡や穂乃果、ことりに絵里たちは3年に(※)、真姫と花陽に凛は2年に進級するころだと考えてください。


※本作では、穂乃果たち2年組と絵里たち3年組は同じ2年生という扱いです。あしからず。


夫婦漫才編その1~やはり俺がペアを組むのはまちがっているかもしれない。

「よしっ!それじゃ今日は、ペアに分かれてストレッチをやりましょう」

 

・・・・。

 

はい?

え、今って体育の授業?違うよね?

μ'sの練習だよね?それも春の新入生歓迎ライブ前の。

 

あれれー?おっかしいなー?

 

もうくどいほど説明してきたが、はらわたが煮えくり返りそうなのでもう一度言うと。

この手の「ペアになって」方式で俺は過去散々割を食ってきた。

必ず好きな人同士で、という前提が付くのだが、そうなると真っ先にリア充な奴らがペアを組んでしまう。

残りの余り者は気まずいながらも渋々ペアを組み始める。で、最後に残るのが俺だ。

「なんだ~比企谷は誰とも組んでないのか?じゃあしょうがないから先生とやるぞー!」・・・いつもこのパターン。

んなことでかい声で宣言すんじゃねえよ、ぼっちだってバレるだろうが。いやとっくにバレてますけどね、ええ?

そしてクラスメート全員から余すことなく憐れみと軽蔑の視線を向けられる。そんな苦い思い出は決して忘れないだろう、今でも胸が苦しくなる。

 

とはいえ俺も伊達に十何年と生きてきたわけではない、このペア方式に対する対抗策だってきちんと練り上げているのだ。

早速提案者の絢瀬会長に向かって、

 

「あの、悪いんですけど俺体調悪いし迷惑かけると思うんで一人d「ほら!比企谷くんもぬぼーっとしてないでペア組んで!」・・・アッハイ」

 

あれれー?

我が伝家の宝刀が通用しなかったぞー?おっかしいなー?

 

・・・てかそもそも言い切る前に遮られてるじゃん。

駄目じゃん。

 

 

「それじゃ比企谷くん、いっくよー!ファイトだよっ!」

 

「おっおうおてやわらかにたのむぜ」

 

いかん、テンションについていけん。一瞬棒読み口調になってしまった。

 

軽く手首を回してウォーミングアップが済んだら、いよいよペアでの運動だ。

相手は高坂。この分じゃボディータッチとか平気そうでマジ怖い。

俺のようなぼっち男子の精神力じゃ容易に限界点を超えそうだ。頼むから体とか押し付けてくるなよ?絶対だぞ?

 

「そーれっ!」

 

「うぐ・・・」

 

俺が前屈みになったところで、高坂が背中を押す。

以前はつま先に手が届かないぐらい硬かった俺の筋肉も、割と柔らかくなっているようだ。それでも十分痛いが。

 

「よーしっ、このままこのまま~!」

 

「ちょ、おい、あまり押すなっつの・・・」

 

・・・ああくそ、やっぱり体が近い。

フツーに吐息まで感じるぞ、殺す気か。ストレッチで心臓発作とかシャレにならん。

 

だが、それでは終わらなかった―――

 

「―――はいどーんっ!!」

 

ぎゅっ。

 

「うぐうおおおおおおおっ!?!!」

 

高坂が思いっきり体を密着させてきたかと思うと、そのまま自分まで前屈みに。

背中には柔らかな感触そして腹部と腰に凄まじい激痛が―――

 

俺の意識は、そこで段々薄れていった。

 

「あ、あれ?比企谷くぅーん!?!」「ほっ穂乃果!?貴方いったい何をしたんですかっ!!」「ひ、比企谷くんが気絶しちゃったよぉ~!」

「た、大変ですぅ!今栄養ドリンクとおにぎりを!」「違うにゃかよちん!絆創膏と消毒液を!」「・・・怪我した訳じゃないでしょ」

「み、みんな落ち着いて!今保健室に運ぶわよ!」「ほな、ウチとにこっちで運ぶ?」「ちょ、にこの体じゃ無茶よ?!潰す気!?」

 

・・・ええい、騒がしい。

完全に意識を失う前更なる柔らかなふくらみの感触を感じたのは、墓場まで持って行く秘密としよう。

 

 

「よし、あと20秒よ!頑張って」

 

「・・・・」

 

声が、出せん。あと俺今絶対キモい顔だと思いますハイ。

 

本日のペアは会長と俺。

以前もやった片足立ちの体幹トレーニングである。会長はストップウォッチにて計測中。

大分安定して長く立てるようになったとはいえ、これもキツいことには変わりないのだ。

 

「あ、そういえば話に聞いたんだけど」

 

「・・・なんすか?」

 

おい、今の状態で話せと申すか。まあ返答した俺も俺だが。

 

「体育のテニスの授業で、いつも一人で壁打ち練習してる男子がいて結構上手いらしいって、女子テニス部の部長から聞いたの。

・・・それって、もしかして貴方?」

 

え、もしかしてバレてた?

先生の目が届きつつ他の奴らの目には届かないところでやってたんだが。

ほらアレじゃん、クラスに一人しか男子居ないじゃん?他女子じゃん?

だか迷惑かけないように・・・ね?

 

「まあ、ハイ、俺です」

 

「・・・その、どうしてその時は一人でやっているの?」

 

分からぬか、その理由が。

ならば教えてあげましょうぞ、雪の女王エリーチカ陛下。

 

「中途半端に上手いとペア組みずらいってことですよ。

俺の場合、下手クソと組むと向こうさんからこっちのレベルに合わせろってなじられますし。

逆にもっと上手い奴だと練習にもならねーから俺たちの玉拾いしてろやってどやされるんで」

 

もちろん、すべて過去の実話だ。

 

「・・・・」

 

ふふ、会長もドン引きしたようだな。これでもう話しかけてこようとは思うまい―――

 

「・・・分かるわ」

 

「は?」

 

「その気持ち、分かるわ・・・私も中学の頃、バトミントンの授業でバド部の人と組んでたまたま勝っちゃったことがあるの。

そしたら根に持たれて組んでくれなくなって、あとはずっと一人で壁打ちやってたのよ・・・」

 

「あ、その、えっと」

 

「それだけじゃないわ!今度は卓球の授業で、また部員の人と組まされてこの時は大負けしたの。

そしたら『ロシア人はスケートとバレエだけやってろww』って、また一人で壁打ち練習する羽目になったわけ!

ふざけないでよ!一度の失敗やまぐれの成功なんて誰でもあるでしょ!?ああもう思い出しただけで頭来た!

Ураааааа!!!!」

 

「・・・あのー」

 

「「「「「「「「・・・・・・・・」」」」」」」」

 

その日、残る8人から浴びせられた「何とかしろよあくしろよ」の冷たいどんよりとした視線を、俺は生涯忘れることはないだろう。

つか副会長、アンタこそどうにかしてくれよ。親友だろ。

 

 

「さあ、比企谷くん!竹刀を握って構えて!」

 

「いやちょおい」

 

―――バシーーーン!

 

園田の竹刀が、俺の面に見事命中。

・・・痛いっつうか、怖い。顔に攻撃されるってマジ怖い。

 

「ふぅ、ふぅ・・・いったん休憩しましょう、お疲れ様です」

 

「・・・なあ、これやっぱ俺いらなくね?女子部員でどうにかなると思うんだが」

 

「そうもいきません、来年度の新入生には男子生徒も30人以上入学するらしいとのことですから。

その時剣道部に男子が一人もいないとなると、やはり行きづらいものはあるでしょう」

 

まあ、それは分かる。

スケベ心満載で見学に行ったはいいものの、実際の女子社会の雰囲気を知ると足が遠のくものな。

 

で、なんで今日、俺は助っ人として来月の新入生歓迎会の部活紹介の実演に参加するためその予行演習をしなきゃいけないんだ?

 

いやまあ何度も「お願いします!比企谷くんしか頼れる人が・・・!」なんて言われてつい承諾しちまうのがいけないんだが。

やっぱり運動部ってマジ3Kだわ。まあ、少なくともきたなくはないか・・・。

 

「でも、本当に引き受けてくださってありがとうございます。

廃校の噂が流れていたときはこの剣道部も、予算削減のために廃部処分の可能性があったので・・・。

今はどうにか盛り返してきていますが」

 

「確かに・・・部員数自体そう多くはないからな」

 

「それに加えて実績でも、ここしばらくインターハイの予選すら突破できていない有様でしたし。

それでも去年個人試合で、1年生が準々決勝まで進むことができて、これからというときに・・・廃部になるかもしれないと皆が動揺したんです。

ですから、これからは男子の戦力も絶対に必要になってくると思うのです」

 

「まぁな」

 

未来が明るいのかどうかは神のみぞ知ることだが、それでもできることはやる。

 

園田がそのつもりでいるなら、俺も微力ながら手を貸すことにしよう。

 

「・・・分かった。俺も素人だが、歓迎会の日までそれなりに頑張ってみる。

だからしっかり鍛えてくれ」

 

「・・・はいっ!」

 

園田がニッコリとほほ笑む。こいつもこんな風に笑うときがあるのか。

しとやかな薔薇のように。いや、むしろ園田らしいかもしれない。

 

少し、心が和らいだ。

 

「では次です!切り返しの稽古に移りましょう!」

 

「・・・はっはい」

 

スパーーーン!

 

・・・綺麗な薔薇にも棘があることを、俺は改めて知ることとなる。

 

 

「なあ・・・今度ばかりはリタイアしてもいいか?」

 

「だ、駄目よ!は、八幡はこっこの私の知識と技術を、信用できないの!?」

 

「・・・声震えてんぞ、あと無理して名前呼び捨てにしなくていいから」

 

今度は歓迎会の委員会紹介の助っ人。

西木野の保健委員会、その発表の予行練習なのだが・・・。

 

どう考えても、人工呼吸と心臓マッサージの実演はいき過ぎだと思うの。

 

「普通こういうのって、等身大の人形使うもんじゃないのか?」

 

「もうだいぶ前に壊れちゃったのよ、それが。

だからって応急救護処置の実演、省くわけにもいかないでしょ?今時知ってる高校生なんてそういないし」

 

「・・・顧問の先生とか、他の女子とかに頼むとかは?」

 

「先生は当日、出張があるからって言うし・・・。

花陽や凛は当日別の委員会の仕事で忙しいし、他の子は・・・と、とにかくもう他に頼める人なんていないのよ!

はちま・・・比企谷さんくらいしか!」

 

いやそのりくつは・・・おかしい、のか?

そういやこいつもあんまり友達いないみたいだったな。ぼっちはつらい、頼みごとのできるほど親しい人がいないから。

あ、それと呼び方戻ったね。無理はするな何事も。

 

「と、とにかく!始めるわ、えーっと・・・まずは、意識の確認・・・。

反応なし・・・次、呼吸・・・なし・・・で、では、胸骨圧迫を行います」

 

手と手を重ね、そのまま、グッ、グッ。西木野がその動作を繰り返す。

 

「ふっ、ふっ・・・」

 

「・・・・」

 

割と苦しいな、これ。

マッサージされてるのに苦しいっておかしくない?

 

「・・・・」「はっ、はっ・・・//」

 

あと、顔近い。余計緊張して心臓に悪いと思うんですがそれは。

てかなんでお前が照れてんの。八幡イミワカンナイ。

 

「そ、それでは・・・!

気道確保して、人工かきゅ、じ、じ、人工呼吸をおこない・・・!」

 

・・・噛んだな。もうこれはだめかもわからんね。

 

「は、八幡、口、開けて―――ちっ違うの、これはファーストキス、じゃなくて・・・。

ヴぇ、なっ何を言ってるのよ私は!」

 

「・・・・」

 

西木野、まずお前が落ち着け。リアルだったら俺、処置間に合わずに死んでるぞ。

 

結局その日の練習は中止となった。

 

 

「ほな?今日のゲストは、比企谷八幡さんや。

皆さん、よろしゅう~な~♪」

 

「・・・どーも」

 

次、占い研究部の助っ人。テレビ番組風にやるらしい。

・・・前々から思ってたが、部活といい委員会といいなんでそんな人数少ないんだ。

もういくつか統合しとけよ。

 

あと東條副会長、黒装束似合い過ぎだろ・・・道端で露店開いてても違和感ねえぞ。

 

「さて今日のテーマは、恋愛ということでやっていくで。

そのためには本人の適性を知らないかんけど・・・比企谷くん、まずは君が理想とする相手、教えてくれへん?」

 

「俺を養えるほどの財産と仕事を持った女性なら誰でも」

 

「うん、それはただのヒモや。またの名を穀潰しとも言うね」

 

うるさい。これでも大真面目に答えたんだぞ。

 

「と、このように彼は大変捻くれた性格の持ち主やねん。

そんな彼と相性の合うパートナーはいったいどんな人物か?今からウチが、このトランプで占ったるで~★」

 

副会長のトランプ捌きが始まる。

・・・あー、胡散臭い。どうせアレだろ?一生貴方はぼっちです、ですが諦めなければまだ希望はあるとか。

んなもんで金取るなと言いたい。こちとらカウンセリングに来たわけじゃねえぞ。

 

「・・・・」

 

「・・・あの、結果は」

 

「・・・聞きたい?ホンマに?後悔せん?」

 

うぜえ。こういうわざとらしい演出マジやめてくれ。

面倒なので頷いておく。

 

「ほな!比企谷八幡くんの、将来ふさわしいパートナーとなる相手は~・・・?」

 

「・・・相手は?」

 

 

「その発表は、みんながウチの部に入部してからのお楽しみや!」

 

「あぁん!?」

 

 

・・・やべえ、久々にキレちまった。

その後は嘘泣きする副会長をなだめるためにマッカンを奢る羽目になった。

 

ちなみに結果は、美人だが仕事運が悪く酒好きでかまってちゃんな年上女に引っかかってズルズル付き合うでしょう、とのこと。

平塚先生・・・頼むから結婚してくれ。

 

 

 

 

 




いかがでしたでしょうか。
凛・花陽・にこ・ことりは今日の夜、もしくは明日コミケから返ってきたら投下いたします。

あ~お宝ざっくざっく手に入れてえ~。
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