ぼっちと九人の女神たちの青春に、明日はあるか。 作:スパルヴィエロ大公
いやはや、本当に申し訳ないであります……ピクシブの方にかまけてしまった。
明日でサンシャインも六話だちゅうに。
さて、今回はサンシャイン特別編、いっくよー!
主役は堕天使ヨハネ、げふんげふん、津島善子ちゃんであります!
※ハーレムとキャラ崩壊が嫌いな方はご注意。
時系列は……三十五話が終わって、大体ラブライブ出場前後の辺り、かな?
Aqoursができるのはμ'sの五年後?何それ知らないなぁ()
「ああ……私のメシア!生きて再び地上でお会いできるなんて、まさしく運命だわ!!」
はい?
「「「……は?」」」「「「「……へ?」」」」「「……ふふっ♪」」
おお、後ろの皆々の反応も割れてるな、まさしく三者三様ってやつか。俺?男だし声出してないしカウントされるわけないだろ。
こういう面倒なときはぼっちでいたいのだ。もう無理だけど。
ええと……まず過去を振り返りつつ状況を整理してみるか。
数日前、いつものようにμ'sの集まりで高坂たちと練習をしていたら、SIFを通じて一通の連絡が来た。
『大好きなμ'sの先輩方、是非お会いしてお話を聞かせてほしいです! 浦の星女学院 Aqours』
と、要するに後輩のスクールアイドルさんが教えを乞いたい、というようなもの。
尚Aqoursは静岡出身のグループで今年に入って結成された新星、海や空をイメージした衣装や明るい曲風がウケているらしい。俺は知らなかったが。
……と言ったら矢澤にえらいおっかない顔で説教を喰らい、小泉にすごい真剣な顔でAqoursの知識とやらを叩きこまれたんだよなぁ。ガチのオタクはマジ怖い。
さてこの申し出をどうするか、承諾するのかということだが……これに関しては特に反対は出なかった。
曰く、後輩にして良きライバルと交流を深めることは自分たちの成長に、ひいてはスクールアイドル全体の底上げに繋がると。ありきたりではあるが、確かに悪い方向に行きそうだとも思えない。
μ'sのテクや曲をスパイしてあわよくばパクるとか、まさか向こうもそんなことはしないだろう。既にそれなりの実績を上げているんだし。
その後の日程調整はトントン拍子、というか高坂の「今やろう!すぐやろうよ!」の鶴の一声で今週末に決定。おいおい、向こうの事情はどうすんだという心配は杞憂に終わった。
何故ならを出して一時間も経たないうちに、Aqoursのリーダーである高海千歌の名前で「ありがとうございます!"逝"かせていただきます!」と返事が来たのだから……。
その時俺は確信した。このAqoursのリーダー、高坂に負けず劣らずアホの子であり向こう見ずな暴走機関車であると。
向こうにも園田ポジションのメンバーがいるんだろうか?だとしたら心から同情する。
で、μ's&Aqours座談会(?)当日の今日、出迎えのために俺たちは東京駅へとやってきて、ご対面となったわけだが……。
「嗚呼……今までヨハネが受けてきた数々の受難……きっとこの日の幸運のための天界が与えたもうた試練だったのね……」
「……はあ」
なんか厨二っぽい女子に懐かれましたテヘペロ☆彡←……イマココ。
いや懐かれたとかそんなチャチなもんじゃあ断じてねえ。俺は多分、このAqoursの津島善子なる女子に惚れられたのだ。
美人局を疑いたくなるまであるが。中二病でも恋がしたいってか、すまねぇ俺ァ京アニはこの頃さっぱりなんだ。
だから堪忍してくれ。……ほら、後ろで西木野さんとか矢澤さんとかなんかめっちゃ睨んでるから!
周囲からキモいと思われるのは覚悟の上で、俺の手を握ったまま恍惚に浸る津島の顔をよく観察してみる。
グレーがかったロングヘアーにお団子そして尖った鼻。パッと見はクールな感じの美人というところ……だがリアル厨二病なんだよな、いや人間臭さがあってそれはそれでいいとは思うが。
「きゃっ……お願いメシア、あんまり見つめないで……。ヨハネ、身を焦がしてしまいそう……」
身をくねくねとよじらせながら照れている津島。ああくそ、演技でやってんのか分からんが目の毒になるくらいヤバカワいい。
……つーか待てよ、なんかこいつ以前どこかで見かけた気が……。
「―――八幡?」
背後からの冷たい一声。
観念して振り返ると、そこにはハイライトの消えた西木野さんの怖ーい顔。……これはNice boatされるフラグなのか?
「ねえ……私と一緒に夢を追いかけてって言ったわよね……?
それなのにこんな……許セナイ……強イ薬ヲ上ゲナイト……」
アカン。本格的に病んでいらっしゃる。
「ままま待て俺はその」
「ていうか……あ、アンタはμ'sのマネージャーでしょーが!ぬわぁにをよその娘にてっだししようとしてっ、んのよっ!」
「は、ハッチー先輩が……ぴゃぁぁぁぁ……!」「か、かよちーん!どうどうにゃ!」
おい矢澤さん、その言い方だとよそのアイドルじゃなきゃ手を出してもいいって聞こえるんですが。微妙にツンデレてるのもバレバレです。
小泉よ、顔真っ赤にして蹲らないでくれ……星空も馬をあやしてどうする。
「ほえー!まさか善子ちゃんに恋人がいたなんて、千歌感激だよー!」
「おいそれは――――」
「むぅぅぅ……!」
ここで状況を勘違いしてるバカと何故かむくれてそれに張り合うバカが参上。なおどちらもスクールアイドルのリーダーである。
いや、俺だって理系科目とかできないけどね?頼むからここは空気読んで大人しくしててくれ。
「Wow!街中の逢瀬なんて、とってもcutieでlovelyじゃない!」
「きっと善子ちゃん、恋の魔法にかかってしまったんやね……まさにスピリチュアルやなぁー」
「ふふっ、比企谷くんってばモテモテだねぇ♪」
「恋する善子ちゃん……マルたちより、何か大人に見えるずら」「ぴぃぃ……あ、あれが……大人なの?」
更には悪ノリする連中の所業で混乱に拍車が掛かる。こっちは分かっててやってる分たちが悪いな……。
特にエセ外人とエセ関西弁のお前ら二人。何陽気に暢気に構えてんだよ、ピンチなんだってばよ。面白がるな。
ことりさんはなんか黒小鳥で怖いんですけど。あと沼津の一年諸君、恋だけじゃなく失恋をして人は大人になっていくものだぞ。ソースは俺の体験。
「ちょっとちょっと、ストップストーップ!みんなヨーソローしてる場合じゃないよ!」
「その通りです、駅前でこんな……破廉恥すぎます!」「ええ……このわたくし、生徒会長として風紀の乱れに目を瞑る訳には参りませんわ!」
あ、やっと止め役が来てくれた。なんか勘違いしてる気もするが、大体ヨーソローってなんなのよ。
「兎に角、みんな落ち着きましょう?ここで騒いでいたら本当に迷惑になるわよ」
「というか……既に結構な人から注目されちゃってるよね、私ら。早いとこ撤収しないとさ」
ですよねー。
こんなことで有名になったって、バカッターの炎上騒ぎと大して変わらんし嬉しくもないぞ。
「そうだね。ほら、よっちゃん行こう」
「む……仕方ないわね、リリーの名に免じて許してあげるわ!」
そこで一旦俺と津島はお互い離される。正直助かった。
何とかこの場で修羅場になるのは回避された訳だ。
問題の先送りとかそれは言ってはいけない。もしかしたらこのまま皆が打ち解けて今のことをすっかり忘れている可能性だってあるのだ。
微粒子レベルで。……え、やっぱりそれだけしかないの?
「それじゃ移動するぞ、早いとこ音ノ木坂に案内した方がいいだろ。ただでさえ遠くから来てるんだから―――」
「あ!それならそれなら、せめて歩きながら穂乃果たちに話してよ!
なんで善子ちゃんが比企谷くんのことを知ってて好きになったのかさ!」
……。
状況、振りだしに戻る。高坂……ああくそ、そりゃ俺だって実は気にはしていたけどこれはないだろ。
すると津島は一転して自信満々のドヤ顔になる。こりゃ痛いことをやらかす前兆かもしれん。
「フフ……本当に知りたい?ヨハネとメシアとの
「うんっ!」
「……本当に?本当に?」
「うんっ!!」
「そう……では、人に物を訊ねるときは大事な言葉が必要じゃない?プr「お願い!穂乃果どうしても知りたいの!!」……ちょっと!折角格好よく決めるとこだったのに!どうしてくれるのよーっ!!」
あ、素が出たな。材木座と違って本来は純情というかそそっかしいタイプなのか?
何というギャップだろう。でも萌えてる場合じゃない、殺される。
「……フッ、まあいいわ。特別に教えてあげる、去年のヴァンデミエールのあの日……素晴らしい奇跡のことを……」
「ほへ?ヴァンデ……ファンデーションかなにか……なの?」
「……
どうにか態勢を立て直し、奇妙なポーズを取りながら語りだす津島。普通に九月って言えよ……。
……ん?去年?九月……?
(回想)
「人生は苦くともマッカンの甘さは変わらず……か。なんてな」
下らない独り言を言いつつブラブラと街を歩く。
電気屋やアニメショップのある駅前から離れれば、そこはどこか落ち着いた雰囲気の下町だ。千葉とは何から何まで違う。
寂しさを覚える一方で、それがどこか慰めにもなる。プロぼっちを極めていたはずの俺もここにきて流石に疲弊していたのかもしれない。
その日、俺は正式に総武高から東京の音ノ木坂学院に転入することになり、同時に一人暮らしを始めることになった。
引っ越しの片付けも終え、夕食も適当に済ませた。そしてやることもなくなり街へと繰り出したのである。
……実のところは、単に虚しさを埋めたいとかそんな感じだったのだろうが。
俺はまたやらかした。総武高の文化祭で、文実で、誰が見ても最低と指弾するであろうことをやってしまった。
周りの人々を傷つけ、迷惑を掛け、だからこうして他所の学校へと移ることになった訳だ。
自業自得。そんなことは分かり切っている。
ならばどうすればよかったのかと、心の中の疑問は拭いきれない。
崩壊寸前の文実をどうにかするために、他に俺に何ができたのか。屋上で蹲る相模を速やかに連れ戻すために、他にどんな手段があったのか。
まあ、今更思いついたところで時すでに遅しだがな。俺はもう総武高とは縁を切った、いや切られたのだ。
もしかしたら"本物"になれたかもしれない、その人たちとの縁まで。全ては終わった。
次の高校では大人しくしよう、目立たずぼっちで居よう。どうせ元女子高だし俺なんかに構いたがるクラスメートもいないだろうし。
人は各々の領分を弁えるべきなのだ。
と、ブツブツと考え事をしていた時。
「えっと……ここは外神田で……目的地には……ぐすっ」
リアル ふしんしゃ が あらわれた!
……ふざけている場合じゃねえ。ロングコートにマスク、サングラスにボサボサの長い髪……っておいまさか口裂け女か?いやあれは都市伝説だよな?
大体この時期にあんな厚着をするのはまだ早い。要はとことん自分の素顔を見られたくないということか。
俺も昔、外に出るときは軽く変装してヒキタニがいるとか囃し立てられないよう神経を使ったものだが……あそこまでくると完全に逆効果だ。
たまたま碌に人のいない通りで幸いだった。これが繁華街とかだったら即お巡りさんに職務質問をされるまである。
さて様子を見る限り、不審者さんカッコカリはどうやら道に迷って途方に暮れているらしい。でっかい紙袋を持って。
あー……何となく分かる。ぼっちに人に道を尋ねるとかそんな器用な真似はできないしな。通報されるし。
スマホの地図アプリとかも案外頼りにならないもので、あとはひたすら行ったり来たりしてゴールに辿り着くしかない。
え、お前が助けてやれって?いやいや絶対向こうから願い下げだろ。俺のような目も性根も腐った男に手を差し伸べられるなんて……。
「……」
って。
い、いつの間にこんな近づいてやがる?!なんだよ、全然気づかなかったじゃねえか。
サングラス越しでも伝わる、ねめつけるような視線。俺何もしてな……あ、観察はちょっとしてたわ。
別にストーカー目的じゃないんだが……通じないよな……。
よし逃げよう。そう決意した瞬間、腕を掴まれた。
「お待ちなさい、リトルデーモン」
「……はい?」
小悪魔?ゴブリンとかなら分かる気はするがそれはないと思うぞ。言って何か悲しくなってきた……。
あともしかしなくてもこいつ……厨二病だ?微妙な疑問形なのはまだ口調とかでしか判断できないからなのだが。
「何か用すか?あの申し訳ないんですが俺無宗教なんで神さまも壺も数珠も要らないんで」
「……違うわよ!い、今のはその、ついアレが……私はただ道を聞きたいだけなの!」
「じゃあそう言えばいいだろ……」
「う、うるさーーい!!……ぐすん」
ヤバい、泣かせてしまった。このままじゃ早晩近隣の人に怪しまれて通報されてしまう。
この歳で臭い飯を食うのは御免だ。小町を泣かせる訳には……。
結局その勢いのまま、俺は迷える少女を手助けすることになったのだった。
「……買い物は済んだのか?」
「え、ええ。これでおかあさ……コホンっ、両親へのお土産は揃ったわ」
別にそんな礼儀に気を遣わんでもいいだろ。いちいち気にするかよ、赤の他人同士なんだから。
暫くして、穂むらとかいう和菓子屋の前に来ていた。少女は旅行中で、目当てのお土産屋を探す途中迷ったらしい。
たまたま俺が今朝タクシーで通りかかったのを覚えていたのが幸いした。俺自身全く土地勘などないし、最悪ミイラ取りがミイラになって警察の御厄介になっていただろう。
店から出てきた少女は、今はもうサングラスもコートも外している。目鼻立ちの整った美人ではあるが……どこか陰のある感じだな。
あの千葉村であった鶴見留美と同じものを感じる。だからどうしたという話だが、今の自分の境遇が境遇なだけにどこか引っかかるのだ。
おっと……マズい、深入りは厳禁だ。間違っても俺から彼女のことを根掘り葉掘り聞くべきではない。さっさと別れる、これが賢明だろう。
「その……み、道案内してくれてありがと」
「別に気にしなくていい、俺も暇だったし。駅とかホテルまでの道は大丈夫だな?」
「……流石に一度行ったところくらい覚えてるわ」
「なら、もういいだろ。俺はこれで失礼する。いい旅を」
「え……ま、待ってよ!」
立ち去ろうとした途端、再び腕を掴まれる。いやもう良くね?これで万事解決じゃね?
まさか送ってほしいと?まだ明るいし付き添い無くても襲われるなんて有り得ん。
「……あなたさえ良ければ、私の話を聞いてくれない?」
「どういうことだ?」
「あなたと私は、雰囲気とかどこか似ているって思って……私のことが分かるんじゃないかって……」
おお、奇遇だな。初対面の人と意見が一致するとは。
名前も知らず碌に会話もせずに何故分かるかって?そりゃぼっちシンパシーってやつだ、似た者同士引き合うってこと。
無下にするのも少し気の毒ではあるので、そこで俺は少女に話すよう促す。
すると、持っていた紙袋を差し出してきた。
「中身を見てみて」
言われるままに袋を開けてみる。そこにあったのは、所謂コスプレ衣装だった。
黒装束に黒っぽいドレス、黒っぽい翼……ああ、これは厨二病ですわ。
多分堕天使がどうとかいう設定なんだろう。……うっ、なんか似合いそうでヤバい。
「で、これがどうした?」
「どうって……あなたはこれを見て引いたりしないの?」
「いや別に。個人で楽しむのは何も問題ないだろ」
昔冥界の魔王ごっこをしていた身としてはどうこう言えん。
ちゃんとしたコスプレ衣装じゃなくて、段ボールを切り張りしてマジックで塗っただけだけどな。小町にバレて爆笑されてすぐやめたし。
「なら……私の正体は実はヨハネという天使で。
この美しき容姿故に神から嫉妬され天界を追放、この地上へと叩き落され堕天使となった!……って聞いても?」
やはり堕天使か。確かにこいつは美人だけどちょっとナルシスト過ぎやしないかね……。あ、だから堕天使なのか。
「お前がそれで周りの人を傷つけるとかしない限りはな。それに、こんなの誰でも一度は通る道だろ?」
仮面ライダーだったり戦隊ヒーローに憧れたりするのと似たようなもんだ。或いは、プリキュアとかプ○キュアとかプリ○ュアとか。
あ、プリ○ラと間違えたアホは屋上な。ったく、あんなタイトルとか紛らわしいの作るなっての。
だから俺は、そういうのに逃げたっていいと思う。勿論リア充みたく騒いで不快感を撒き散らすなら話は別だが……。
多分こいつの性格上そこまでする度胸はないだろう。
「……中学校の新学年の自己紹介でご披露して、みんなからドン引きされたとしても?」
「うん、それはアウトだわ」
「やっぱりぃぃぃぃ!!む、昔からつい癖で出ちゃうのよっ、しょうがないじゃない!
……おかげで恥ずかしくて休日は家から出れないし……お母さんも心配して、それで気分転換に東京見物に行ってきなさいって言われたけど……ぐすん」
ああ、旅行ってそういうことか。お母ちゃん荒療治過ぎない?
なお俺の場合はやろうとして直前でどうにか押しとどまった。結局噛みまくってドン引きされたけどね。
ヨハネさんよ、いつかは懐かしく振り返る時が来るさ。強く生きろ。
「そういうのは内輪でやるもんだからな。分からない奴らの前でやっても意味がないだろ」
「その友達がいないのよ……。ああ、なんて罪なヨハネ……」
そうだろうと思ったよ。
ただ……一つお前の発言には引っかかるな、堕天使ヨハネ。
「……まあ、友達がいないのは罪じゃないから気にする必要はないけどな」
「えっ……?ど、どうしてそう思えるの?!」
「例えばの話だ。お前がイメチェン(笑)とか高校デビュー(笑)を決意したとしよう。
それで性格も喋り方も明るく趣味もリア充っぽいのものに変える、すると周りは間違いなくチヤホヤして寄ってくるだろうな。
お前は可愛い部類の女子だし」
「か、かわっ……///」
「……で、あっという間にリア充の仲間入りだ。どうだ?それでお前、満足できるか?」
そこでヨハネは押し黙る。
ぼっちだって最初から人付き合いを諦めはしない、むしろ逆だ。友人とハチャメチャして恋人とイチャコラする、そんな青春を望むものだ。
だが、そのためには覚悟がいる。自分を捨てる覚悟が。自分を殺す覚悟が。
そんな嘘と欺瞞を、俺は受け入れたくなかった。逃げたと言われようが、これだけは後悔していない。
「堕天使ヨハネであることをひた隠しにして、ただひたすら周りに合わせて。そんなライフスタイルに満足できるか?」
「……嫌だ」
震えながらヨハネは答える。それがこいつの出した答えなら、何も問題はない。
「ならそれでいいじゃねえか。お前の好きなように生きればいい」
「ヨハネ……本当に、いいの?」
「ああ。それに、いつかお前を受け入れてくれる人だって現れるはずだ」
俺の場合は小町とか戸塚とか、あと……材木座か?
普段はウザいとしか思ってなかったが、文実でやらかしたことが広まっても会いに来る辺りいい奴ではあるのだろう。でもいい加減まともなラノベ書いてくれよ、読ませるなら?
「……あっ」
「どうした?心当たりでもあるのか」
「えっと……ずら丸っていって、いつも私が休んだ時とかノートを貸してくれる子がいるんだけど」
なにそれ。八幡感激。
俺の時は誰もそんなことしてくれなかったからな……休み明けに机に花瓶が置いてあったことはあったが。
別に死んでないからね?目は腐ってるけど。
「いい子じゃねえか」
「うん。お礼しなきゃって思ってるけど、何ていうかタイミングが……」
「お前、そいつの趣味とか知ってるのか?何が好きかとか」
「確か……本が好きだったと思うわ。クラスでも文学少女とかって言われてるし」
「なら簡単だな。今度学校に行くとき、図書館にも顔を出してみろ。
会ってもいきなり声を掛ける必要はない、隣に座るだけでもいい。その内向こうから声を掛けてきて話せるようになるだろう」
まさか隣に座ったらキモいとか言ったりするようなタイプではあるまい。
多分上手くいけば一ヵ月で百合百合な関係に……おっと自重しておくか、これ以上はダメだ。
「ま、やるかやらないかはお前の自由だ、ヨハネ。……俺からは何もできなくてすまんが、無茶しすぎない程度に頑張ってみろ」
「分かった……その、ありがとう」
「だから俺は何もしてないぞ……。それじゃ、話も済んだしここいらでさよならだ」
「あっ、待って!あなたの名前を聞かせてくれない?」
「は?俺はただのぼっちだ、名乗るほどの者じゃねえ。それに多分、二度と会わないだろうしな。
じゃ、もう一度言っとく。いい旅を」
そこで俺は軽く手を振ってその場を去る。
ふぅ……思った以上に深入りしすぎちまったな。まあこれも同じぼっちの業というやつか。
あれやこれやと失敗し続けてきた俺のようになってほしくないからか……。まあ、きっと大丈夫だろう。
向こうからアプローチしてくれる人がいるのだから。
……そういや、明日の朝食どうしよう。ああ小町のベーコンエッグが食いたい……。
(あれは……もしかして、私の……
「……お前まさか?!」
「フフッ……思い出してくれたのね!そう、私が津島善子こと堕天使ヨハネ。あなたの手によって救われた者よ……///」
「えっ……じゃあマルが善子ちゃんと仲良くなったのも……?」「すっすご……ピギャァァァァ!!」
長々と皆の前で俺とのいきさつを語っていた津島が、再びぱあっと顔を輝かせる。
ああ……そうだ、俺がこっちに引っ越してきた日に会った……。
つか何で惚れてんの?ちょっと道案内してちょっとアドバイスとかしただけだよね?八幡イミワカンナイ。
「「「「「「「「「……」」」」」」」」」
しかもμ'sの皆さんめっちゃ怖いんですけど!あっ副会長だけなんか面白がってるけど全然面白くないから。
「さあ!ではメシア、私と契約して共に堕天界へ―――」
いやあの、堕天界ってなんだよ。
「あのな、俺はメシアじゃなくて比企y「待ったーーっ!比企谷くんはμ'sの、穂乃果たちのものだよっ!!」……おい」
そこで高坂の介入により俺と津島は引き剥がされる。ありがたいようなうざいような……。
あと俺はお前のものじゃないぞ。
「愚かね。ヨハネとメシアが結ばれることは、もはや前世からの
この絆に勝てるものなどありはしないわ」
いや、それはないと思います。
「違うもん!穂乃果たちも比企谷くんのこと、とってもとーーってもだいすきだもん!
絶対負けないもん!」
こら、道のど真ん中で大好きとか言うんじゃありません。誤解されるだろ。
「そう……よろしい、ならば戦争「こうなったら、比企谷くんを賭けて勝負だよっ!絶対負けないからね!」……最後まで言わせなさいよーーーっ!!ぐすん……」
えっなんでそうなるの。なんで俺ダシにされてるの?
ふと周りを見渡すと何故か皆乗り気になっている。おい、誰か止めてくれる人はいないのか?!
「見てなさい……この天才美少女真姫ちゃんが叩き潰してアゲルワ……!」
「それなら……!オラも善子ちゃんのために、一肌脱ぐずら!」
「は、花陽も負けません!アイドルとハッチー先輩のためなら鬼にでもなりますっ!」
「る、ルビィも……みんなのために、頑張ります……っ!」
「かよちんがやるなら凛もやるにゃー!ハッチー先輩は渡さないにゃ!テンション上がるにゃぁぁぁぁ!!」
「ふぅ……力勝負なら私、負けるつもりはないからね?」
「うふふっ、穂乃果ちゃんを悲しませる子と比企谷くんに手を出す子は、み~んなおやつにしちゃうぞ♪」
「おおっ!一世一代の勝負なんて燃えてくるね、ヨーソローっ!!」
「ふんっ!堕天使だなんて、にこにーの天使でチャーミングなアイドル力でやっつけてやるんだから!」
「Oh!こうなったらマリーも、LoveをBurningして全力でいくわよ!シャイニー☆彡」
「Хорошо!ならば私も……生徒会長として、よそ者の横暴は認められないわぁ!覚悟なさい!」
「望むところですわ!このわたくし、浦の星を背負う者として勝負に負けることなど……あり得ませんわ!」
「全ては穂乃果とμ'sと比企谷くんのため……!私の弓矢が、火を噴きますっ!!」
「なんだか分からないけど……千歌ちゃんとAqoursのために、やらないと……!」
「ふふっ、これは盛り上がってきとるね~。何が起こるか分からんのも、この世の面白さっちゅうことやな!」
「うわーい!μ'sのみんなと楽しく遊べるなんて感激だぁ~~!!」
……。
マジか。誰も止められないのか?
「お、おい、いい加減その辺で……」
「「「「「「「「「「「「「「「「「「あ゛?」」」」」」」」」」」」」」」」」」
一斉に恫喝。なんでこういうときだけ一致するんだよ……。
女子力やばすぎるだろ……。
もうだめだ。小町、誰か、助けてくれ。
終わりです。
もしかしたら続くかも?何でバトルするとか決まってないのよさ……。
五話の花丸ちゃんの優しさとよっちゃんの切なさには泣けましたよ。このおはなしもそれを基に作りました(それがどうしてこうなったヽ(`Д´)ノ)。
ああ……厨二な自分を肯定してくれる人がいてくれたら……(遠い目)
何が言いたいかっつーと、Aqoursも一年生組は天使!
……ぼ、僕はロリコンじゃないんだからねっ!?
そんなこんなでグダグダですが(キャラも話も何もかも)、ではまた。