ぼっちと九人の女神たちの青春に、明日はあるか。   作:スパルヴィエロ大公

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早いとこファーストライブ回に・・・もうちょっとかかるかも。
あ~インターンが~(汗)


第四話 真面目なだけでは、物事を上手くこなせるとは限らない。

 

パカーーン!

 

 

・・・景気のいい音と共に、今日も山田先生の愛の出席簿下ろしが振るわれる。

 

「・・・比企谷、高坂。またまた朝のホームルームから居眠りとはいい度胸だなコラ」

 

いってえ・・・。まあ平塚先生のファーストブリットには負けるが。

あっまた死亡フラグがっ(ry

 

「す、すみませ~ん・・・」

 

「お前のすみませんは強盗犯の『お借りしたものは返します』発言ぐらい信用ならないんだよ」

 

「・・・あの、流石にそれは言い過ぎなんじゃ「共犯のお前に弁護する資格なし、二人とも一時間目は立ったまま授業受けろ」・・・すいませんでした」

 

居眠りに共犯ってあるのか。俺初めて知りました。

 

さて、トレーニングの日程は早朝5時から1時間、夕方4時から2時間。筋トレ、ジョギングぶっ通し。

それが始まって一週間。筋肉痛と睡眠不足、これはもう引きこもり野郎な俺の体力ではどうにもならない。

大体三日で1週間分の体力を消費してしまう。ああ・・・神様助けてちょーだい。

 

しかし高坂たち3人はトレーニングだけでなく、発声練習、そして見よう見まねでダンスの基礎練まで始めたという。

幸い園田は子供の頃から日本舞踊に親しんでおり、指導者としてなかなかうまくやっているそうだ。

加えて高坂も寝坊の達人と笑われていたのが、ここ数日は珍しく自分から起床しているとのこと・・・その代わり授業中の居眠りは増えたがな。

俺?ホームルームの時だけですよ居眠りなんて。おかげでここ最近一時間目の授業は直立不動で受けていますが。

 

そんな訳で、μ'sのアイドル活動は順調・・・。

 

な訳がない。

 

目下最大の課題は、如何にしてオリジナル曲を完成させるかということ。今朝園田に聞いたら、「どうしても10日はかかる」とのことだが・・・。

そんな悠長な暇はない。

 

なぜなら、すでに一ヶ月を切った学校公開日に、μ's初ライブが決定したからだ。

 

(貴方たちのアイドル活動を学校として正式に認めるには、ライブでその成果を示してもらう必要があるわ)

 

二日前、生徒会に呼び出された俺たち4人は開口一番、絢瀬会長にこう告げられた。

講堂および演出装置のスタッフ3名が貸し出される。そしてノルマは、最低20人の客を集めること。

 

(ウチらもここまでするんやから、君らも失敗してもお咎めなし、とはいかんやろ?)

 

そう、言っていることそのものは東條副会長が正しい。

ただし、もしノルマ未達成の場合、μ'sは即時解散となる。以後どんな形であろうと高坂たちがスクールアイドル活動をすることは厳禁。

どんなブラック企業だって一回のノルマ未達成で即クビにはしないだろうとツッコみたくなるほど理不尽なものだった。

 

(ぶ、部活動として続けることすら許されないんですか!?)

 

(これは遊びじゃないのよ?本当の意味で学校の顔としてアイドルをやるの、生半可な気持ちでやるならここで止めて頂戴)

 

園田が妥協点を見出そうと反論するが、会長はにべもない。

暫く睨み合いが続いたのち、こちら側が諦めて退散する結果となった。

 

そんな訳で、できるだけ急いで準備に取り掛からねばならない。

別に園田を信頼していない訳ではない。真面目な奴だとそれなりに分かってはいる。

ただ、そろそろ結果を出してもらわねばいけない。

 

 

結論を言おう。

もう、10日間も待ってやる余裕なんて俺たちにはないんだ。

 

 

「「「・・・・」」」

 

空はこんなに青いのに・・・と、どこかの不幸型戦艦姉妹のような台詞を吐きたくなる。

晴れわたる大空、小鳥のさえずり。なのにマイベストプレイスたる屋上は、澱んだ空気に満たされている。

言っておくが今回は俺、わるくねーぞ。そんなに。

 

園田が昼休みは図書館で役立つ資料を探したいと言った時、迷わずそうしてくれと伝えた。高校の図書館でアイドルの歌関連の本なんてあるとは思えないが。

俺から園田に聞いても恐らく遅れを責めたてるような雰囲気になってしまうだろうし、ならば高坂か南に聞くのが一番いいと思ったのだ。

それも、園田のいないところで。

 

「・・・それで、あいつから何か聞いてないか?進み具合のことで」

 

「え、え~っとね・・・あはは」

 

おい高坂、目をキョロキョロさせんな。俺だって隠し事するときそんなキョドらねーぞ。

 

「・・・海未ちゃん、今とっても苦戦してるみたい。どんな雰囲気の曲にすればいいのか、よく分からないって・・・」

 

南が沈痛な面持ちで呟く。

・・・それじゃ、実質白紙のまま進展してないってことじゃないか。

 

「それであと10日で、どうやって書き上げるつもりだったんだ・・・」

 

「そ、そのね・・・海未ちゃん、昨日みんな家に帰った後泣きながら電話してきたんだ・・・。

私はアイドルの曲はあまり聴いたことがないから、どうしてもイメージが湧かないって・・・」

 

「そうか・・・じゃ、お前らはどうだ?なんか知ってるアイドルの曲とかあるか?」

 

「「・・・・」」

 

あ、だめだこりゃ。

まあ俺も普段聴くのはアニソン9割ボカロ少々なんだがな。アイドルになりたいのにアイドル関連の楽曲についてはさっぱりってどうなのよ。

単にカッコカワイイから憧れちゃったとか?・・・いや、もうよしておこう。愚痴を言うのは馬鹿でもできる。

 

とにかく、園田に"それっぽい曲"をたくさん聞かせて、イメージを湧かせること。

それならアニソンでもそれほど問題はないか。

 

「その、今日は海未ちゃんのためにもトレーニングは中止したほうが・・・」

 

「いや必要ない。ただ、俺は抜けるぞ」

 

「え!?比企谷くんどっか行くの?」

 

「参考資料集めだよ。アキバの店で仕入れてくる。

あと園田には気分転換のためにもトレーニングは絶対やらせてやれ、それにお前らの付き添いも必要だ」

 

そこまで言い切り、強引に話を打ち切る。

なぜか二人が茫然とした目で俺を見るが気にしない。てか授業遅刻するぞ?

 

 

秋葉原 某家電量販店 CD売場 

 

〈参考資料としてのアニソン選びについて〉

 

1.女性シンガーであることが必須条件。

 

2.激しい曲調、カッコ良過ぎるのは却下。

 

3.スイーツ(笑)が好みそうな、青春や恋愛をテーマにした曲がベスト。

 

最後だけ皮肉っぽくなってしまったが、今回のアニソン選びにあたってこの3条件は絶対である。

単に俺の好みの曲を紹介してやるんじゃ何の意味もない。よりアイドルらしいものでなくてはいけないのだ。

・・・プリキュア?俺としては悪くないがプリキュアってだけで幼稚に思われるしれないので諦めよう。

 

「最近のだと・・・放課後のプレアデスのopとかか?」

 

あれ、確かニコ動の歌い手がやってんだよな。

色々賛否両論ありそうだが、可愛いPVが曲とよくマッチしているとは思う。CDを見つけたので即カゴに投入。

あとは~・・・ハナヤマタのopとかも良さそうだな。あのアニメ自体部活動青春ものだし。ならいっそけいおん!も買っておくか。

他には田村ゆかりとか、最早ゲーソンの類だがKOTOKOとか榊原ゆいとか。以前材木座に勧められちょっとハマったのが癪ではあるが。

財布の中身が空っぽのピーちゃんになるが、どうせ今月は欲しいラノベもないのでまあいいだろう。世のため人のために金を使うのも、たまには悪くない。

たまには。

 

「かよち~ん!はやくラーメン食べに行くにゃ~!」

 

「ごっごめん、凛ちゃん今会計終わったか・・・!あっ!」

 

と、何やら騒がしい声がしたのでそちらを向けば、ショートボブの女子が躓いて手提げ袋を床に落としていた。

てか音ノ木坂の生徒かよあの子。よく見たらUTXらしい制服着た奴もちらほらいるし。

生徒にとっては近くに遊び場があるのは大助かりなんだろうが、学校側としてはどうなんだろうな。

 

ま、今は手を貸してやるのが先だ。

 

「・・・落としましたよ」

 

「え、えっえっ!?あ、すいません・・・助かりました」

 

そんなにテンパらんでも・・・あ、もしかしなくても俺のせい?

全部目が腐ってるのが悪いんじゃあ。

 

「かーよーちーんー!はーやーくー!」

 

「・・・ほら、連れが待ってるぞ」

 

「あ、すみませ・・・り、凛ちゃん今行くってば~!」

 

慌ててエスカレーターのそばの、髪型だけはそっくりな友人へと駆け寄っていく。

だけ、というのはよく観察すればお分かりだろう。おそらくエスカレーターの子がぐいぐい押していくような感じで、片や今のドジっ子は控えめそうに見える。

所謂凸凹コンビってやつだ。もっともどちらも慌てん坊そうな印象はあるし、そこが共通項として互いに惹かれ合い・・・ガールズラブかよ。

なんで俺みたいなぼっちの恋愛観って、すぐねじ曲がってしまうん?

 

・・・考えると哀しくなるのでよそう。

今は園田のために、さっさと用件を済ませなくては。

 

 

【side:花陽】

 

「ん~~、やっぱここの豚骨ラーメンは最高にゃ~~♪」

 

「・・・・」

 

このところ、自分の友人の笑顔を見ていると痛々しさばかり感じてしまうのはなんでだろう。

花陽はそんな鬱屈した感情を胸に秘め、麺を啜る。

・・・旨いことは旨いけど、どうにも量が多いし味付けが濃い。これといって運動などしない花陽にとっては少々食べるのが苦痛だ。

 

加えて、これから友人が聞かれたくないであろうことを尋ねるのだから、食欲なんて増すわけがない。

 

「・・・凛ちゃん」

 

「ん~?かよちん、どしたの?お腹減ってないの?」

 

凛はほっこりとした表情で隣の友人を見やる。

もっとも、彼女が発した次の言葉で、その笑顔も、瞬時に固まる。

 

「その、ね。・・・凛ちゃん、ここ最近部活に出てないんだって?」

 

「・・・え」

 

沈黙。それが一分も続く。

二人にはそれが数時間分に感じられる。

周囲の客も何事かと訝しむ。

こうなるのは分かっていた、それでも花陽は聞かずにいられなかった。

 

この生まれついてのスポーツ大好きっ子な友人が、どういうことか、夏休み明けからずっと陸上部を休んでいるのだから。

 

「・・・かよちんにも、バレちゃったんだ」

 

「その・・・ごめんね。前に凛ちゃん家に電話したとき、凛ちゃんのお母さんがそう言ってたの。だから、ずっと気になってて・・・」

 

弱弱しくも、必死に声を振り絞る。

 

いつも自分の性格のために、凛に迷惑ばかりかけてきたから。急に友人がそんなことをし出したのが、不安でたまらなかったから。

全部ひっくるめて言えば、花陽は友情というものを信じて疑わない、純朴な一人の少女だったのである。

 

「そっか・・・だから今日は、かよちんの方からお出かけしようって誘ってきたんだね」

 

「・・・うん」

 

そして、沈黙。

花陽は、友人に自分の思いが届いて欲しいと願い。凛は、友人に答えるべきことをどうしても言えない苦しみに苛まれ。

 

「・・・別に、かよちんが心配してるようなことじゃないから、安心していいにゃ。でも、ちょっと恥ずかしくて・・・今は、言えない」

 

「・・・!」

 

驚きの表情を見せる花陽を前に、凛は立ち上がる。

 

「今日は、ありがと。お代は凛が払っておくね。用事があるから先に帰るにゃ」

 

「り、凛ちゃん・・・!」

 

そして顔を伏せたまま、店を去ってしまう。

残された花陽は、今にも泣きだしそうな顔で立ち尽くすのみ。

 

「なんで・・・また・・・私、凛ちゃんに・・・」

 

彼女の小さな手には、「μ'sメンバー&ファン募集!」のチラシが握られている。

そのチラシが手から離れ、ひらひらと床へ落ちていった。

 

 

【side:八幡】

 

待ち合わせに遅れてはならない。

相手―――特に女の場合―――が待ち合わせに遅れたとしても、気分を悪くしてはならない。それが30分以上待たされたとしても。

今回の場合は・・・おそらく強引に設定したのであろう高坂が諸悪の根源なのだから。あいつ絶対穂むらで何か奢れよ。

 

帰宅して二時間、日もすっかり暮れた後、高坂から神田大明神で園田が待っているから渡すものがあるなら来い、と連絡を受けた。

もちろん即座に家を出て現地へ向かった。いくら俺でも人を待たせるような真似は出来ん、すぐ悪評立つしな。

・・・なぜ高坂が俺のメアド知ってるかって?こないだ休み時間に強引にスマホを奪われたからだ。

教えなければ戻ってくると思うな~なんて脅しやがって、何それいじめかよ。おまけにまた騒いでるなお前らと、二人して山田先生に怒られるし。

喧嘩両成敗も程々にネ!教育者の皆さんとのお約束だゾ!・・・キメえな。

 

で、十分経たずして神田大明神に到着・・・したのだが、辺りには人影なし。

高坂のイタズラで皆してどこかに隠れているのかと探し回ったが発見できず。そして今に至る。

あ、そもそもいじめか、「お前なんか待っててやるわけねーだろバーカ」ってか?

・・・やっぱり俺の青春ラブコメはまちがっているようです。

 

「・・・ひ、比企谷くん!」

 

・・・あら。

これは幻覚、幻想、それとも妄想・・・もうこの世の女子は全て幻なのか?

俺、末期だな。

 

「すみませんでした!今さっき、穂乃果から連絡を受けたので・・・」

 

「・・・あいつ、待ってるってのは嘘だったのか」

 

「・・・嘘というか、後ですぐ私に連絡すればいいと考えていたんじゃないかと思います」

 

チッしゃーない、ぼっち生活で培った俺の度量に免じて許してやるとするか。次は・・・結局許すんだろうな、何だかんだで甘い男だし、俺。

脇が。

・・・というかさっさと用事を片付けたい。

 

「それで、二人から聞いたんだが・・・スランプ、らしいな」

 

「!・・・それは、実は・・・」

 

「・・・何も言わなくていい、俺も責めるつもりはない。で、もし参考になればと思って、持ってきた」

 

そこで俺は紙袋を手渡す。

中身を見るや、園田の顔が即座に変わる。ああ、次のセリフは「こんなもの受け取れません!」だな。

 

「こ、こんな高価なものなんて、とても・・・!」

 

「ああ、歌詞が書き上がったら返してくれればいい。もしそこにある曲を聴いて2日以内に何も思い浮かばなかったら教えてくれ、また別のを持ってくる」

 

「ですが、これ以上ご迷惑を・・・!」

 

「俺のことより、高坂と南、それと初ライブのことを考えろ。お前の歌詞が完成するかに懸かってるんだ」

 

そこで沈黙が訪れる。

園田は、考えている。優等生気質かつ友達思いであるこいつならそうするだろう。

そして、結論が出るのも、早い。

 

「・・・分かりました、受け取らせていただきます。必ず有効に活用しますので。

どうもありがとうございました」

 

「さっきも言ったが俺のことは気にしなくていい。それより、送ってくか?」

 

「い・・・いえ!もうすぐ家ですので」

 

なぜか顔を赤くされた。

嫌・・・ではないのか、それだけマシだな。人生には妥協が大事。

 

「分かった。じゃ、気を付けろよ」

 

「はい。また明日学校でお会いしましょう」

 

今度は笑顔。そして別れる。

 

このところ、人と別れるとき胸が温かい。それは喜んでいいのか、それとも警戒しておくべきなのか。

 

今は、考えるのを止めておく。

いや、考えたくないんだろうな、きっと。

 

でも、いいのだ。

今は立ち止まらず、歩み続けるんだ。

 

 

「―――比企谷くん。彼女たちは、キミを裏切るなんて、絶対せえへんよ」

 

 

 

 




かよちんと凛ちゃんやっと出せた・・・。
ちょっとシリアスが唐突過ぎたかもしれませんが、ちゃんと回収するのでご安心を。
凛ちゃんもめちゃくちゃ深刻な状況、という訳ではないので。

最後の希(陰で見守ってた)のセリフは独白。もちろん八幡には聞こえてません。
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