海鳴のスカさん家   作:ピーナ

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今回は独自解釈を含んでます。


第十話 スランプの行きつく先

どうも、八雲です。

今僕は士郎さんの指示で出稽古先の主であり、士郎さんの友人であり、刀奈のお父さんでもある楯無さんと戦う事になった。しかも本気で。

駆け出しの僕なんかがいうのもおこがましいけど、楯無さんは強い。本気の士郎さんと戦った経験は何度かあるけど、一回も勝てた事は無い。いや、怪我しない様に気を使ってもらってたから本気ではなかったのだと思う。まあ、骨折位なら一瞬で治せるけど。

御神流の神髄が速さである事から、本気の士郎さんや恭也さんのスピードは目にも映らない。楯無さんはスピードこそ目にも映らないって程ではないけど、速いし技術的にも経験的にも士郎さんと同じ位に感じる。

何とか付いて行けるのは見えている事と、ジュエルシードの経験があったから。それでも、ギリギリで避けたり防いだりしているだけだからいずれ押し切られるだろう。

……だけど、どんな人が相手でも一矢報いずに負けるのは嫌だ。

全神経を相手に集中しろ。楯無さんの一挙手一投足に。色彩も何もいらない。ただ、目の前の人を認識できればいい。

……この感覚だ。大和や美由希さん、恭也さんや士郎さんと最近やっていた時に起こっている集中し始めるとずれる感覚。

この感覚をものにしないと勝てない。もっと、もっと集中しないと。

 

 

 

 

兄貴と楯無さんの試合は一方的だった。いくら兄貴が強いと言っても、伯父さんと互角の人には勝てない。それでも、あそこまでやれているのは兄貴がマルチタスクをフルに使って次の手を読んでいるからだろう。複数を同時に考えれる兄貴だからこそ、ようやく付いて行ける。

 

「恭兄、いくら兄貴でも荷が重すぎると思うんだ」

「それは俺も思うが、父さんが考えも無くやるとは思えん」

 

確かに。俺が兄貴に追いつきたくて無茶な練習をしようとすると真っ先に怒って止めるのが士郎伯父さん。それは俺に大きな怪我をさせないためだと兄貴が教えてくれた。

体の事を何も知らない俺はとにかく練習すれば良いと思ってたけど、翠屋JFCのマネージャーを務める兄貴はそういう事を母さんと勉強していたから、結構知識がある。

母さんがそういう知識を身に付けたのは御神流を修める上で必要だと思ったからで、その頃は伯父さんと一緒に勉強してたらしい。なので、当然伯父さんにもしっかりとした知識がある。

 

「ん? 八雲の雰囲気が変わったな」

「なんかそんな感じするね」

 

次の瞬間、兄貴の姿は『消えた』。文字通りの意味だ。流石にここに居る皆が驚いている。いや一人、伯父さんだけ、満足そうに笑ってる。

 

「そこまで!」

 

 

 

一回だけ、攻めに転じた後すぐに、士郎さんに試合を止められた。その言葉を聞いた瞬間、僕はその場に崩れ落ちる。足に力が入らない。

 

「お疲れ様、八雲君」

 

座り込んでいる僕に飲み物を渡してくれる士郎さん。

 

「あ、ありがとうございます。……それで、さっきのなんなんですか?」

「感覚的には掴めているんじゃないかな?」

「なんとなくですけど……。集中する事で、見えてる感覚と自分の感覚がなんかかみ合わなくて、どうしようか悩んでもっと集中したらその感覚が一致したんです」

「それが『御神流 奥義之歩法 神速』だよ。八雲君の素晴らしい集中力からすればいずれたどり着くとは思っていたけど、こんなにも早くたどり着けるとはね。だけど……」

「わかってます。一回で立てなくなるんですもん。大きくなるまで使いません」

 

魔力併用で負担を減らしたり、回復を早めたりできるけど、それが後でどう僕に跳ね返って来るか分からない。本当に必要になった時だけ使おう。

 

「士郎お前、俺を当て馬に使ったな」

「悪いね。だけど、この子を次の段階に引き上げるには手の内を知らない強者じゃないと駄目だったんだ」

「それは、戦って分かった。手の内を知っていると、この坊主は読み切りそうだからな」

 

次の手を読んだりどうやって動くかを僕の魔導師としてのスキル、マルチタスクで読んでいた。

……あっ、だから中途半端な感じの神速になっていたんだ。

思考を分割するという事は集中力を分割すると置き換えてもいい。だから、近接戦闘がメインの魔導戦競技の選手はマルチタスクをあまり鍛えないらしい。大和も分ける数よりも分けた時の質を重視している。

僕の場合、馬鹿みたいにある魔力を普段から放出するために、魔法を常時展開しているからマルチタスクを使っているのが普通なのだ。

御神流を習っていく間にその状態でも、100%に近い集中力を発揮できるまでになったつもりだった。

多分、ジュエルシードとの戦いで100%以上まで行けるようになったんだと思う。

それが楯無さんという強い人との戦いで普段の状態じゃどうしようもないと思ったから、無意識的にマルチタスクをOFFにした。それが神速の領域に至った理由だろう。

……よし、やるべき事も見えたな。マルチタスク状態で神速を使えるようにする事。それが今の目標だ。

 

「士郎さん、楯無さん、今日は僕の為にありがとうございました!」

 

今日手に入れた物でジュエルシード回収を無事に終わらせる。その為に頑張らないとね。




という訳で独自解釈を含んだ成長回でした。

神速

御神流の奥義の一つ。
なお、僕はとらは3を未プレイなので二次創作やらで見た物を自分なりに解釈して書いています。なので、マルチスキルとは相性が悪いという事にしています。
今回の不調→強敵との戦いというのは『はじめの一歩』の東日本新人王戦後~星戦の板垣を参考に書きました。

八雲・スカリエッティ

偶然、奥義の境地に達する。魔導師の必須スキルがまさかの足かせになっていたが、どうすれば良いかも分かったので不安は無い。

大和・スカリエッティ

大和の場合、八雲と違いマルチタスクのON,OFFは当たり前なので、いずれは覚える。

次回はある二人にスポットを当てたお話になる予定です。早ければ今週中に、遅くても来週には上げます。
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