やあ、スカリエッティ家の家長、ジェイル・スカリエッティだ。
息子たちが協力しているロストロギア、ジュエルシードの捜索の一件もリンディとクロノ君が率いる管理局の人員が投入されたから、そのうち解決するだろう。完全に解決するにはもう一つやらない事があるが。
なので私はここ2年ほど取り組んでいた研究の最終確認を行っていた。それは、私の友人であるプレシア・テスタロッサの娘、アリシア・テスタロッサ君の治療。
彼女は二年前、多数の犠牲者を出した、魔導炉の実験失敗の被害者だ。
当時、テスタロッサ一家はある大企業の研究所近くの家族寮に住んでいた。この企業とテスタロッサの一族は古くから関係があったらしく、この魔導炉事業の協力のためにプレシアとその夫であるディオニス・テスタロッサはプロジェクトに参加していた。
そして事件は起こった。魔力炉の実験失敗の事は当時様々なメディアに取り上げられ、波紋を起こしたことをよく覚えている。起こった原因は企業上層部の危機管理意識の低さだとプレシアが言っていた。
彼女によると、上層部は現場が作った安全管理のマニュアルを無視し、管理局が立ち入る部分のみしっかりとやり、後の部分を手抜きするという物だった。
企業として利益を求めるのは理解できなくはないが、それを求めすぎて、安全やそこから生まれる信用を失っては意味がないように思う。結果的にその企業はこの事故での被害者やその家族にとんでもない額の賠償金を支払い、それのせいで倒産することになった。
話をテスタロッサ家に戻そう。この時、フェイト君が風邪をひいたので、プレシアはフェイト君を連れてかかりつけの病院に行っていた。なので結果的に二人には直接的な被害はなかった。
しかし、休日で寮にいたディオニスと一緒にいたアリシアちゃんは実験失敗の余波を受けてしまう。その結果がディオニスの死であり、二年たった今でも目を覚まさないアリシアちゃんである。
なぜ、アリシアちゃんは重体ではあるが助かったのか? それはディオニスがとっさに身を挺して守ったからこその結果だった。
さて、アリシアちゃんの重体の直接的な原因は細胞内の異常な量の魔力である。本来体内の魔力というのは空気中の魔力の元となる魔力素をリンカーコアが取り込んで生成し、貯蔵している。この生成速度(回復速度と置き換えても良いだろう)、貯蔵量は人それぞれである。例えば八雲はこの両方が桁外れであり、その能力は古今東西並ぶ者はいないだろう。特に生成速度はとんでもない。なので八雲は日ごろから貯蔵量をオーバーしないように魔法を使っている。しかし、大和は貯蔵量こそ多いものの生成速度は並みである。
貯蔵量を超えた魔力は体を侵す毒になる。しかし、基本的にはリンカーコアがそれを調整してくれるので自分の魔力で体がどうこうなるという事は無い。八雲のような例はかなり稀な例なのだ。特異体質とでも言った方がいいか。
アリシア君の魔力の貯蔵量は妹のフェイト君と同量。これは今回の一件にかかわっているメンバーの子達とほぼ同等(今回のメンバーの魔力貯蔵量は一般的な量に比べるとかなり多い)なのも助かった一因かもしれない。
ある程度外的要因で魔力を体内に取り込んでも、使えば消費される。しかし、意識がなければ魔法は使えない。
リンカーコアにある魔力を吸収する事は技術的に可能だが、それをするとリンカーコアは空気中から魔力素を吸収し新たな魔力を作る事を優先してしまうので、細胞内に分散してしまった魔力の操作は体外からでは出来ない。
なのでプレシアはテスタロッサ家の所持している時の庭園に拠点を移し、そこにある膨大なロストロギアの資料から情報を集めて解決をしようとしている。私もこの一件に協力している。
今回の私の研究は人の体内に蓄積した魔力を外部から動かす技術。それを行う装置も開発しモルモットでの実験は成功した。
この装置の欠陥は装置を操る側にも高い魔力操作技術、そして魔力保有量が必要になる。というのも、この装置でできるのは被験者の魔力を装置の使用者に移す事だけ。つまり、魔力を貯める器が必要なのだ。
アリシアちゃんのような素晴らしい素質を持った子の回復にはそれ以上の素質が必要になる。そして、魔力保有量が多いほど魔力操作は難しくなる。この相反するものを解決しないといけない。
が、この問題はすでに解決済みである。私の計算では八雲の能力なら可能だ。八雲も「僕の力が役に立つのなら喜んで手伝うよ」と言っていた。
「……という訳なのだよ」
『本当、流石は世紀の大天才ね』
資料を見せながら、プレシアに通信で説明をしていた。流石にいくつもの論文を発表し、特許も持っているその道で名を知られた彼女の理解力は高い。
「亡き友の意志を尊重しただけさ。とりあえず、装置は大きいからこちらに出向いてほしい」
『分かったわ。……フェイトの方は?』
そう尋ねる彼女の顔は研究者から娘を心配する母親の顔になっている。
「分からない。が、安心したまえ。リンディが捜索しているんだ」
『……そうね。歴戦の提督のリンディがいるものね』
管理局の事はあまり詳しくはないが、リンディほどの歴戦の提督も中々いないだろう。しかも、今回は若手ながらも有能な執務官であるクロノ君も居る。
『アリシアの方はジュエルシードの一件が終わってからにするわ。協力しているんでしょう、八雲君』
「私もそう思うのだが、八雲自身が『フェイトが見つかったらすぐやる』と聞かなくてね」
自分を殺して様々な事をやってくれる事に頭が下がる一方、親としては八雲の可能性を殺してしまっているのではないかと考えてしまう。
八雲は責任感が強い。だから、樹里が亡くなってから家の事を率先してやってくれた。すまないと思うが八雲が「父さんは家事には向いてないから僕に任せてよ」と何度も言われてしまったので、任せている。
情けないが私は研究以外は苦手だ。昔は母や妹、結婚してからは樹里、現在は八雲と迷惑を掛けている。
しかし、この事で八雲は本当にやりたい事を出来ていないのではないかと思う。子供の事を考えると片親はよくない。だが、新しい母親をあの子達が心から受け入れてくれるとも限らない。難しい問題だ。
『八雲君の言葉に甘えて良いのかしら?』
「父親としては止めるべきなのだろうが、ああみえて頑固だからね。一度決めたらてこでも動かんよ」
『……なら、三日後にそっちに行くわ』
「分かった。待っている」
通信を終えて、私は一息吐く。時間がかかった研究も一段落し、降ってきた一件も順調に進んでいる。全てを確実に解決するために、子供達だけではなく、私ももう一頑張りしなければな。
という訳で、親(ジェイルとプレシア)の会話回でした。
プレシアの夫は名前が調べても出てこなかったので適当に付けました。アリシアの状態、魔力などの設定も独自設定です。
ジェイル・スカリエッティ
スカさん家で一番最後に語り部に就任。まあ、原作が子供にスポットを当てているので仕方ない部分ではある。困った時はスカさん頼みにならないように気を付けたい。
次回は……多分、フェイト関連になるんじゃないかなと思います。