……ども、大和っす。
ジュエルシードの一件が解決して3日、兄貴の捜索は打ち切られた。本当なら、次元断層が発生してその中で生きている確率なんかは無いから、捜索は即打ち切りのはずなのに、クロノとリンディさんが独断で観測し続けてくれていた。けど、それが打ち切られたという事は、もう兄貴が帰ってこないという事。
そして、今日はフェイトとプレシアさん、クロノとリンディさんが帰る日。
当たり前だけど、兄貴が居なくなって皆とても暗い。ユーノはずっと自分を責めてたし、アリサや刀奈の目の下には隈が見えるし、目が赤い。兄貴の為にずっと泣いてくれたんだろう。俺は……ずっと魔法の練習、兄貴が見せてくれた見本を元に完成させようとしていた。
「ごめんなさいね、ジェイル。力になれなくて」
「いや、次元断層が発生したあの状況では誰も何も出来ないさ。リンディ、君が思いつめる事は無いよ」
この一件で一番思いつめているのは父さんだと俺は思う。父さんも俺と同じで部屋でずっと、何かの作業をしていたし。昨日、桃子伯母さんが様子を見に来てくれなきゃ飲まず食わずでずっと作業してただろうし。
「そうですよ。今回の事件は何事もなく終わったんですから」
俺達の後ろから凄く聞き覚えのある声。何事もなかったように普通に居る、兄貴。
そこからが酷かった。真っ先に駆けだしたアリサと刀奈が兄貴の顔面に利き腕でストレート(アリサが左利きで刀奈が右利き。ただ、アリサは矯正して両利きになっている)して、それから抱き着いて泣くというカオスな展開。
事情が分からずオロオロしている兄貴の姿は面白かったけど、帰って来てくれた嬉しさで俺も泣いてしまったからちょっと恥ずかしい。まあ、皆泣いてたから、あんまり気にしないけど。
どうも、生還した八雲です。
僕に起こった出来事を説明するために皆で我が家に戻ってきました。
「えーっと、僕が助かった理由……っていうか、あれは何も害が無かったんですけどね」
「どういうことだい?」
「あれは……というより、この一件の起こった理由の一つが僕だったみたい」
聞いた皆はよく意味が分かっていないみたい。僕自身言われるまで分からなかったし。
「ここからは、ジュエルシードの意志が教えてくれたことも入るんだけど」
「ちょっと待て! ジュエルシードの意志って何だ!」
すかさずツッコミを入れるクロノ。
「うーん、ジュエルシードを作った人の思念みたいな感じかな。その人によると、ジュエルシードは今は失われた超古代魔法文明『アルハザード』の技を継ぐ人間を探す物みたいです」
「「「アルハザード⁉」」」
驚きの声を上げたのは父さんとプレシアさんとユーノ。まあ、考古学に携わるユーノや技術者の父さん達からしたら、アルハザードは興味の対象なんだろう。
「ユーノが発掘したのが偶然地球に近い航路を取ってその地球にジュエルシードの探していた僕が居たから封印が緩んだみたい。それで全部集めての再封印で僕の大きな魔力で起動したという訳です。で、次元断層はその引き継ぎ作業を妨害されないための強力な結界って訳です。だから、今は元通りですよ」
「そうなの……まあ、あそこはどうなっても構わないとは思ってたけど、残っているのなら、元々あったクラナガンの郊外に戻そうかしら」
「兄貴、アルハザードの技ってどんな感じ?」
「基本的には今までと同じだけど、なんかもっといろいろ出来るみたい。今の魔法じゃ出来ない事でも」
「……まあ、さっき超古代魔法文明って言ってたからな。そもそもお前の今までの魔法ですら分からない事だらけだったんだし」
クロノの言う通り、僕の魔法は使っている僕自身が分からない事だらけだった。それがさらに分からない事が増えた。これから時間を掛けてのんびりそれを理解していく。これが父さんがいつも言っている僕のライフワークって奴になりそう。
「あ、そうだ。ユーノにお土産話があるんだよ」
「僕に?」
「ジュエルシードの意志と話した時に教えてもらった事で一番興味ありそうなのはユーノかなって」
ってか、これは次元世界の人しか分からない事だし。
「へえ~、どんな話」
「アルハザードの人々は自分たちの技術、今でいうロストロギアが自分達でも扱いきれない危険な物として封印したんだ」
「……なるほど、ロストロギアの出自にはそういう理由があったのか」
「正確に言うと、ロストロギアはさっき僕が言ったものと、その後、様々な次元世界で模倣されたものの二種類があるらしいよ。こっちは古い時代だと新天地で暮らしを発展させるために使われたものも多いけど、アルハザードの技術を模倣しようとして出来たかなり危険な物も同じくらい一杯あるらしい」
分類すると、
アルハザード期の物 今では使い方不明な物も多く、危険な物も多い。ジュエルシードもここに入る。
古代ベルカなどの新暦以前の初期時代 比較的危険度の低いものが多い。
古代ベルカなどの隆盛期~戦乱期(新暦直前) 兵器利用の物が多いので危険な物が多い。
「……それが分かっただけで管理局としてはありがたいんだがな」
「そういうもの? まあ、それは置いておいて。ロストロギアの事で分かると思うけど、今の魔法技術の元はアルハザードから来ている。それの分かりやすい証拠が僕の魔法の特徴とある有名な人の魔力光の共通点」
「前々から思ってたんだけど……カイゼルファルベかい?」
「正解!」
「ちょ、ちょっと! 私達地球組にも分かるように言いなさいよ!」
今まで蚊帳の外だった地球組を代表してアリサがそう言う。
「カイゼルファルベっていうのは、こういうのを言うんだよ」
僕は右手に虹色の魔力弾を作り出す。
「綺麗なんだけど、なんで次元世界出身の人たちはあんなに驚いているの?」
「カイゼルファルベはね、地球で言う所のイエス・キリストに当たる人の末裔の証でもあるんだ」
聖王教会、古代ベルカの王家の一つであり、長く続いた古代ベルカの戦乱期に終止符を打った一族でもある、聖王家を祀っている所。次元世界最大の宗教団体でもある。カイゼルファルベは聖王家に連なる者の証だ。
「八雲君がそうなの?」
「凄く遡れば少し位関わりがあるかもしれないけど、違うよ。僕の本当の魔力光は銀色に近い白だし。ただ、アルハザードの人の中では僕のような事が出来る人が結構居たみたい」
昔話の聖王は強い肉体と巨大な魔力を持っていたって書かれている。カイゼルファルベを発動させると、一時的に肉体強化されているのが分かるし、やや魔力消費が多くなる感じがする。
聖王というのは何らかの要因でそれを常時発動できるようにしているのだと思う。
「知れて嬉しいけど、聖王関係は面倒な事も多いし、僕の心の中に閉まっておくよ」
「そう。そんじゃ、僕はもう休むよ。凄い疲れたし」
封印しようとした時の魔力も体力もまだ回復していないから、結構きつい。2、3日ゆっくり休みたいなあ。
……けど、これは言えないかな。「ジュエルシードは僕の体の中にある」って。
本作の独自設定を紹介する回になりました。
アルハザードについて
原作ではおとぎ話のような存在で調べてもよく分かりませんでした。なので、今作では「『超古代魔法文明』として、実在したものの、行き過ぎた技術によって滅亡しかけ、残った人々が封印して新たな次元世界を築いていった」としました。時が流れた現在ではおとぎ話のような存在ですが、この作品内では存在しました。
八雲の魔法
今作ではこれから『アルハザード式』と呼んでいくと思います。『超古代魔法文明』だけあって、チート(確定)
ジュエルシードについて
八雲はアルハザードの技を継ぐ者を探すと本編で言っていましたが、名の通り魔法が大きく占めていたアルハザードでそれを継ぐ者という事はかなりの地位に就くものという意味でもあります。
なのでジュエルシードはエクスカリバーのような選定の剣であり、力の象徴でもあります。
ロストロギアの大雑把な振り分けについて
この辺は本編中通りです。ここでは出てきた順に初期、中期、後期としますが、初期の物がジュエルシード、聖王のゆりかご。中期の物はSTSSS1で出てきたアレ、夜天の魔導書。後期が闇の書、レリックです。
アルハザードと聖王
STSおよびVividに関わってくる聖王。本作ではアルハザードの生き残りの一族の一つとしています。
カイゼルファルベ
ヴィヴィオの魔力光の色であり、聖王の血筋の証の一つともされる虹色の魔力光。
Vividのオリヴィエ過去話によると、聖王家では、聖王核と呼ばれる補助の魔力コアを生まれるとすぐに埋め込まれるとありました。
なので本作では「虹色の魔力光=本来のリンカーコア以外の魔力発生源がある事での突然変異」としました。八雲の場合、ジュエルシードが補助コアの役割をしているので、使えますし、切り替えも出来ます。
ジュエルシードが体内に……
どうなるのかは後々。
前書きでもありましたが今回で無印編が終わりです。
A's編の流れはざっくり決めてありますが、始まるまでの約半年をどのようにするかが決まっていないのでまた間が開くと思いますがよろしくお願いします。