どうも、八雲です。
はやてを家に送り届けた後、僕は家に帰った。あの4人は僕に事情を話し辛そうだったから聞かなかった。
まあ、僕には次元世界最強の情報源があるから問題ないけどね。
……と思っていたのは数時間前の事。こんな事知りたくなかったよ。
闇の書―正式名称は夜天の魔導書―は古代ベルカ時代、ある魔導学者が作った魔導書型のストレージ。目的はベルカをはじめとした様々な魔導技術を集めるため。
しかし、その開発者を殺し、奪った人間が改造した結果、『最悪のロストロギア』とまで呼ばれるようになってしまった。
……このままじゃあ、バッドエンド間違いなしだなあ。なんとかそれを回避する方法を考えないと。
闇の書の対処法を考えていたら夏休みに入っていた。
「なあ、兄貴」
「何?」
「あの人、来るのかねえ?」
「さあ? 来るっていう連絡入れない人だから分からんね」
夏休みの宿題をリビングで消化しながら、話している。こういう時にマルチタスクは便利だと思う。
で、大和の言うあの人とはここ数年、夏と冬、たまに春にやって来る我が家の風物詩だ。夏は確実に来ているからいつ来るのかねえ。と思っていたら、庭の方でドーンと大きな音がした。
「噂をすればなんとやらだな」
「庭の埋め戻ししないとなあ。宿題もキリの良い所まで来たから、今日はこの辺にしてついでに畑の雑草も抜いておくか」
家の庭は母さんが作った家庭菜園(色々な作物があるからもはや兼業農家レベル。でも、家で食べる分+高町家へのおすそ分け位だからやっぱり家庭菜園かな)があって、今も僕を中心に家族三人で管理している。家族の思い出がたくさん詰まった所だし、自分で作ったものの味は格別だもんね。
「俺も手伝うぜ」
「んじゃ、埋め戻しよろしく。それ終わったら、朝の内に採って冷やしてあるスイカ切って食べようか」
「よっしゃ!やっぱ、夏はスイカだよな! 気合い入れていくぜ!」
そんな事を話していると廊下から結構なスピードで走ってくる足音が聞こえる。
「やっちゃん、やっくん! ししょーは何処かな?」
駆け込んできた人は篠ノ之束さん。「ドクターJ」として学会を賑わせている父さんに何年か前に直接会いに来て弟子入りした人である。ちなみに年齢は美由希さんと同い年。
束さんがぼくをちゃん付けで呼ぶのは初めて会った時からで、理由は僕が母さんそっくりだったかららしい。
「「研究室」」
「ありがとー!」
……相変わらず嵐みたいな人である。でも、夢へひたむきに向かう推進力は凄いなと思うし、あんなに全力なのはカッコいいとも思う。
そういや、僕って夢って無いなあ。ぼんやりとはあった気がするんだけど、いつの間にやら消えていった。なんでだろ?
ま、そんな事は置いといて、とりあえずは宿題を部屋に置きに行って、外に出る用意しないとなあ。それと、今晩は夏野菜カレーで決まりだね。匂いで食欲を刺激しないと部屋から出てこない人が二人もいるから。
ヴォルケンとのお話を飛ばしたのはあのタイミングでは警戒度MAXで話すわけないと思ったからです。
八雲・スカリエッティ
夢を失った人。プロローグのあとがきで書いたのは、持っていた夢。失ってしまった理由は普通の子供以上に現実に忙しかったから。
篠ノ之束
ジェイルの唯一の弟子。夢を持ち続けれる人。それもある意味才能。