どーも、八雲です。
なんか家に帰ると大和がこそこそやってます。まあ、困ったら相談に来ると思うからそれまでは気に掛ける程度のスタンスで行きます。
そう思ってたんだけど……
『僕の声が……聞こえる方……お願いです……力を貸してください』
頭の中に響く声。
そして、大和が動き出しているのが分かる。
「羽々斬、サーチャーでアイツを追跡しといて」
『了解』
相棒に弟達の監視を任せて、僕は父さんの書斎に向かう。
父さんは普段ここか、研究室に居る。判断の方法は物音がうるさい時が研究室、静かな時が書斎。今日は静かだったから書斎に居ると判断した。
「ん? どうしたんだい?」
「どうやら、大和がなんか事件に首突っ込んだみたいだよ」
「ふむ……管理局にいる友人から、地球にロストロギアが落ちたかもしれないと聞かされているが」
「それに関わってる可能性が大きいね」
……ちょっと待てよ。アイツの様子が変わったのに気付いたのは僕が帰って来てから。って事は首を突っ込むきっかけになったのは学校の帰り道。大和はアリサ、すずか、なのはと一緒に帰っていたはずだ。
「父さん、ひょっとしたらあの三人も関わってくるかもしれない!」
「あの三人と言うのは、なのはちゃん達の事かい? 何故そう思うんだい?」
「父さんにもさっきの念話聞こえたでしょ? もし、あの念話と大和の隠し事が結びつくとしたら、その隠したい事って言うのは今日の帰り道で何かあったとしか思えないんだ。それで今日の帰りは三人と一緒だった」
「なるほど、三人も魔法の素養があるから首を突っ込んでる可能性が高いと。しかも、大和と違って魔法を知らないからより危険だという事だね」
「……こんな事なら、三人に言っておいた方が良かったかな?」
ロストロギアは総じて危険な物が多い。それに巻き込まれるのなら僕が気付いた段階で話しておけば少なくとも自衛の手段を用意できたはずだ。だけど、僕は無理に教える必要はないと思って教えなかった。
……違うな、僕は怖かったんだ。友人と思っているアリサ、すずか、なのはにこの世界にはありえない力を持つ自分を知られる事が。
俯いている僕に父さんはいつの間にか近付いてきていて、僕の頭をなでながら、
「八雲の判断は彼女達の事、弟達を考えた最善の判断だったと私は思うよ。さて、我が息子はこの事態、どうやって動くつもりかな?」
そう言ってくれた。父さんの言葉で暗い気持ちも少しは晴れた。……後で、皆にも謝らないとな。
「やれるだけの事をやるよ。友達曰く『見える範囲、手の届く範囲で困っている人を放っておけないお人好し』らしいからね」
「ははは、八雲の事を的確に捉えているね。その子は八雲の事を良く見てくれているんだね」
父さんにもそう思われてたのね。まあ、良いんだけどさ。
「そんじゃ、僕らしく動いてくるよ」
「いってらっしゃい」
私は息子の後ろ姿を見送った後、電話を取った。電話を掛けるのは高町家。
『もしもし、高町です』
「やあ、士郎」
『ジェイルか。こんな時間にどうしたんだ?』
「単刀直入に言う。なのはちゃん達が魔法に関わった可能性がある」
実は私は高町家、月村家、バニングス家に既に魔法の事を言ってある。子供の事について知っておくのは親の責任だと思ったのと、もし何か起こってから実は……と話すより、あらかじめ話しておいた方が混乱が少ないと考えたからだ。
『……それは本当かい?』
「十中八九は。私はほとんどありえないと思っていたが、まさかこういう事態になるとはね。ああ、なのはちゃんを叱らないでやってくれ。知らなかった事だし優しいあの子達だからこそ起こった事だから」
あの声が理由だとしたら、好奇心も少しはあるだろうけど、それよりも彼女達を動かしたのは優しさだと私は思う。それはあの子達の美点なのだからそれを摘み取るべきではないと私は考える。
『どういう事だい?』
「以前話した魔法の一つの念話という物で助けを求めてきた者がいるんだよ。ウチの下の子が今日帰って来てから八雲や私に心配をかけないために何か隠しているのと、資質を持った五人が一緒に帰っていた事を考えるとね」
『なるほど。今晩そちらに桃子と一緒に向かう。詳しくはその時に聞くよ』
「分かった。私はこれから後の二人の家にも連絡を入れるよ。では、また明日、義兄さん」
そう言って電話を切る。
そう、私の妻、樹里・スカリエッティ、旧姓不破樹里は高町士郎の二人いる妹の一人。つまり、私の息子三人となのはちゃんは従兄妹同士になる。樹里の実家の家伝の剣術、御神流を息子達が習っているのはそれが理由である。
根っからの研究者の私には剣術の事は分からないが、最愛の妻の腕前はかなりの物だったらしい。そして、それは八雲と大和に色濃く受け継がれている。特に大和は「修行に打ち込むひたむきさ、努力を確実に実力に変えて行けるのは樹里の子供の頃を思い出すよ」と士郎が言っていた。
ちなみに八雲の驚異的なまでの要領の良さは樹里や士郎の祖父で不世出の天才剣士と言われた不破源蔵の物じゃないかと言っている。
今回の一件で彼女が息子達に残した血が、息子達が打ち込んできた事が、皆が怪我無く帰ってくる事に繋がると私は信じる。
「あの子達を護ってやってくれ、樹里」
信じてはいるが子供を心配するのは親の性。天国の樹里もそれは変わらないはずだ。
次回、ジュエルシード事件、初戦です。
八雲・スカリエッティ
相棒は日本刀型になるインテリジェント・デバイス『羽々斬』。余剰魔力を様々なサポート魔法に変え、制御している。
樹里・スカリエッティ
旧姓不破樹里。本作のオリジナルキャラクターで故人。高町家とスカリエッティ家の繋がりを作りたくて作ったキャラクター。血は繋がっていないが士郎の妻桃子に似ている(士郎、ジェイル談)
ジェイル・スカリエッティ
士郎の義弟でなのはたち高町家の子供は甥、姪の関係に当たる。