自分なんかの作る話を読んでくださる方々に深く感謝いたします!
ありがとうございます!これからもどうかよろしくお願いします!
「や、やっと着いた…」
あのあとはさながら地獄絵図のようだった。
野田が戻し、大山がそれを貰い、それで済むのかと思えばまさかのまた野田が戻し…このあとは言わなくても分かるだろう。
とにかく酷い有り様だった…
「大丈夫ですか大山さん…」
「うん…ごめんね入江さん…汚いとこ見せて…」
「そんなこと気にしませんよ!人なら当たり前のことです!それに…これから一緒にいればこういうこともあるでしょうし、その…将来の予行演習にも…」
「入江さん…」
道中でかなり消耗したであろう大山は入江に肩を借り、幸せオーラを振り撒きながらバスを降りていた。
かたや同じく消耗している野田はというと…
「情けないわね」
「済まないゆりっぺ…うぅ…」
大山より一足先に降り、今は仲村に侮蔑の目で見られている。
つーか野田が戻したのは仲村が急がせたからなんだけどな。
まあとにもかくにもようやく目的地に着いたわけだ。
「ここ懐かしいな!」
「なんだ日向、お前来たことあるのか?」
「ああ、ここはゆりっぺん家の別荘でさ、昔何回か来たことあるんだよ」
中学の頃は野球部が忙しくて来れなかったけどさー、と楽しそうに話す。
ふーん、野球やってたのか。
「はいはい思い出話は後にして、さっさと荷物置いて水着で海に集合よ」
部室ごときにあれだけ金を使っているだけあってこの別荘はとてつもない広さだった。
リビングやらなんやらがでかいのはもちろん部屋数も異常に多い。
俺たち一人一人に部屋を割り振れるほどの部屋数だったが、話し合いの結果くじで二人一組になり、1ペアに一部屋ということになった。
俺のペアは日向だ。
日向に同じ部屋だなと肩を組まれた時、正直めちゃくちゃほっとした。
他は大山と藤巻、野田と音無、直井と悠となり、TKだけが余ることになったが、仲村が問題ないと言うのでそのままに。
女子は岩沢と関根、入江とひさ子、仲村と遊佐そして椎名先生が同じ部屋らしい。
直井と悠とか絶対上手くいかなさそうで不安になりつつ各々部屋に荷物を置いて水着に着替えて海へ向かった。
別荘から少し歩くと、目の前に白い砂浜とキレイなコバルトブルーの海が広がっていた。
「おおー、キレイな海だな」
「なんてったってここはゆりっぺの家のプライベートビーチだからな。きちんと管理されてるってわけさ」
別荘にビーチと一体いくら金がかかっているのか想像したくもないな。
「Wow!早く泳ぎたいですねぇ~」
「まあまあ、女子たちが来るの待ってからじゃないとゆりっぺにどやされるぜ」
「だな。それに…」
ちらりと視線を移した先には未だ全快していない大山と野田の姿が。
「まあ気長に待つか」
「そうだね、女子は何かと時間がかかるものだしね」
そう言っていつの間にかひょっこりと悠が現れた。
「お前直井と上手くやれるのか?」
「ん、大丈夫大丈夫。深く関わろうとしなければあの子は無害だよ」
いやこれ一応親睦を深める意味もあると思うんだが…
ちなみに直井はというと、今は音無に絡んでいるようだ。
「お待たせー」
「お待たせしましたー」
女子たちの一番乗りはひさ子と入江だ。
入江は華やかなワンピースタイプの水着を身に纏っていたがひさ子はラッシュガードを羽織っている。
入江は真っ先に大山の下に駆け寄り介抱し始めた。
「あら、皆早いわね」
「男子は脱いで履くだけですから」
「あさはかなり」
次いでやって来たのは仲村、遊佐、椎名先生だった。
遊佐は先日買った水着を、仲村は派手な色をしたビキニを、そして椎名先生は大人っぽい黒のビキニを着ていた。
さっきの二人と違い露出の多い装いににわかに男子のボルテージも上がる。
「ゆゆゆゆゆゆりっぺぇー?!」
………若干1名はボルテージが上がりすぎて鼻血を吹き出したが。
「はぁ…今更ながらだけど本当にキモいわね」
「あさはかなり」
不憫、野田。
…しかし、関根と岩沢のやつ遅いな。
「お、お待たせしましたー」
そう思ったところで関根が岩沢と共にやって来た。
関根は元気な性格にマッチした黄色のビキニを、岩沢はスク水を着用していた。
「い、岩沢さん…?なんでスク水…?」
流石の仲村も虚を突かれたのか、顔をヒクつかせている。
「ん?これしか持ってないし」
「こんなこと言うし日焼け止めも持ってないし、塗ってくださいって言ってもめんどくさがるしで時間が…」
「関根さん…心底同情するわ」
肩を落とす関根に、そっと慰める仲村。
こんなやりとりをしている二人は極めて露出度の高い格好をしているのだが、俺が目を奪われたのはあろうことかスク水の岩沢だった。
す、スク水…
「スク水萌えはないのではなかったでしたっけ?」
「ね、ねえよ!つーかなんの話だよ!」
「いえ別に?柴崎さんが他の方には目もくれず岩沢さんを凝視していたように見えたもので」
「してねえよ!」
「そうですか」
それだけ言ってトコトコと離れていく遊佐。
な、なんなんだよ…?
「柴崎、どうかした?」
俺と遊佐が揉めてたのが気になったのか岩沢が駆け寄ってきた。
「……い、いや…」
露出度は低いとはいえ、構造上身体のラインがくっきりと出てしまうわけで。
出てるところは出ていて、締まるところは締まっていることも一目瞭然なわけで。
そして何よりすらりと伸びる腕と脚は驚くほどに綺麗なわけで…
「泳いでくるわけでー!!!」
「し、柴崎?!どういうわけなんだ?!」
俺にも分からんわ!そんなもん!!
畜生、なんでビキニやらなんやらよりスク水なんかに反応しちまってんだ俺は?!
「あさはかなり」
「いで!」
目を瞑り駆け出していた俺の足に何かが引っ掛かり転倒する。
「なにするんすか椎名先生!?」
「準備体操してから入れ」
「あ、はい…」
それから椎名先生の号令のもと準備体操をきっちり行い、各自遊び始めた。
砂で城を作るやつらもいれば浅瀬でじゃれあう奴もいて、沖でがっつり泳いでいる奴もいる。
俺はというと、浮き輪に身を任せながら海を漂っていた。
いや、泳げないわけではなく、こうやってぼんやりするのが好きなだけだ。
ついでに先ほどの取り乱しをおさめる意味も込めて。
「はぁ…快適だ…」
空は晴天で惜しげもなく日光が照りつけてくる。
そんな夏の日差しも海の冷たさを引き立たせる噛ませ犬のようだ。
そんな風に海を満喫しながら、砂浜の方に目をやる。
初めに目についたのは浅瀬で水鉄砲で撃ち合っている集団。
次いで砂で戯れている集団。
そして最後に、パラソルで作られた日陰の中で座っている岩沢、そしてグロッキー状態の野田。
それを見た俺は、何故か海の流れに逆らって浜辺へと足を動かしていた。
海から上がり、そのまま一直線にパラソルのもとに。
「柴崎?どうしたんだ?」
近づいてくる俺に対して心底不思議そうな顔をして問いかけてくる。
「いや、何してるのかと思ってな」
俺は岩沢の横に腰掛けながら答えた。
「一人でぽつんと座ってるから。遊ばないのかと思ったんだよ」
「あー、いや、今日はちょっと見てたくてさ」
「何を?」
「この光景」
指差す方向を目で追うと、当然ながら遊んでいる皆の姿があった。
「これがどうしたんだよ?ただ遊んでるだけだぞ?」
「なんか良くない?ほら、こうやって」
岩沢は両手の親指と人差し指で長方形を作り、その中に皆の姿を収める。
「ん、まあ」
いい画と言えばいい画だ。
「でも自分がいないのは悲しいだろ?」
「自分が見る景色に自分がいるなんてありえないからね。これを見てるってことはあたしが此処にいるって裏付けにもなるんだ」
「ふーん、そんなもんか」
「あたしとしては、あたしがこの中に居ないことより柴崎がいないことの方が不満だな…あたしが一番見たいのは柴崎なのに」
本当に不服そうに眉をひそめる。
「まあでも、今隣で独占できてるのは嬉しいけど」
今度は嬉しそうにくしゃりと笑う。
本当にこうやって話してると表情がコロコロ変わるよな…普段はどんだけ馬鹿なこと言ってても(無自覚)無表情っていうか、興味無さげなのに。
「ふふ、しかもなんだか今は髪も濡れてて一層男前だしね?」
「……どこがだよ」
じっとこちらを見つめてくる視線を両手で遮る。
「あ、ちょっと隠さないでよ」
すかさずその手を退けようと掴んでくる。
「いやマジでやめろって」
「いいから、ちょっとだけ」
「本当に…恥ずいから…」
「だぁー!!!貴様ら人が苦しんでる横でうるさいわぁー!!」
「うわっ」
「びっくりしたぁ…居たの?」
「ずっと居るわぁ!柴崎より先に居たわぁ!」
あまりに不憫な扱いだとは思うが、すまん野田、俺も忘れてた。
「少しでも早く回復しようと横になっているのにイチャイチャとぉ…!」
「いやイチャイチャとかしてね…」
「どの口でほざいている?!ここら一帯が砂浜じゃなく砂糖浜かと錯覚しかけたぞ!?」
砂糖浜ってなんだよ…
「あら?野田くん元気になったの?」
「ゆ、ゆゆゆりっ…」
「あ、鼻血出したら蹴っ飛ばすわよ?」
突如として現れた仲村にまたもトリップしかけた野田だったが、流石にそんな踏んだり蹴ったりな羽目になるのは勘弁らしく自らの手で鼻を抑え込んでいた。
「それが出来るなら初めからやりなさいよ」
「す、すまんゆりっぺ…」
「あのね…今日だけで一体何回謝ってるの?まさか謝れば全てちゃらになると思ってるんじゃないでしょうね?」
「ち、ちがっ」
「もういいわ。今日は大人しくしてなさい。元気になっても海に入るのも禁止」
「…分かった」
ふん、と不機嫌さを顕にしながら去っていく。
目に見えて落ち込んでいる野田に対してどうすべきか分からない。
とにかく励ましてやらないと。
「なにもあそこまで言うことないよな?ちょっと扱いが酷すぎ…」
「黙れ」
励まそうと肩に置いた手をはねのけられる。
「貴様にゆりっぺの何が分かる?」
そのまま、きっ、と鋭い視線を送られ、たじろいでしまう。
「何がって…どう見たってお前への態度はおかしいだろ」
「それは俺が望んだことだ。何も知らないお前がゆりっぺを悪く言うな!」
「ちょっと」
今にも殴りかかってきそうな勢いで詰め寄る野田を遮るように岩沢は俺たちの間に割って入ってきた。
「なんだ?」
「あんたたちの間に何があったかなんて柴崎が知るわけない。それなのに怒るなんて、このこと知ったらそれこそゆりが黙ってないんじゃない?」
「…………ちっ、その通りかもしれんな」
一瞬今度は岩沢に詰め寄るんじゃないかと冷や冷やしたが杞憂だったようだ。
「すまなかった…少し頭に血が上っていた」
「いや、俺も無神経なこと言っちゃったみたいだし、こっちこそ悪かったよ」
とりあえずお互い頭を下げ合うことでこの件は終わった。
しかし、やはりどうしても気になることがある。
「あのさ、なんで野田は仲村のことが好きなんだ?」
「む?」
「それに、自分から仲村にああいう風な態度でいることを頼んだって言ってたし、なんでなんだ?」
「それあたしも興味あるな」
「それを話す義務があるのか?」
「いや…まあ無いけど」
そう言われてしまうと、なんとも言えない。
これはただ単に俺の興味本位な質問なのだから。
「…まあいい。今日はやつあたりをしてしまったし、ゆりっぺからも海に入るのを禁止されて暇だから話してやる」
そう言ってふん、と鼻を鳴らす。
「…少し長くなるぞ」
俺と岩沢がコクりと首を縦に振ったのを確認してから野田が語り始めた。
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