蒼紅の決意 Re:start   作:零っち

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『そんなもしもの話なんかであたしは止まらねえよ』

あたしたちの1つ前の、軽音楽部のバンドの演奏が佳境に差し掛かっている。

 

そこまで酷くも無ければ、特出して上手いわけでもないそれが終わるのを舞台袖で楽器を持ちながら、あたしたちは待っていた。

 

すると、相棒が不意に口を開いた。

 

「お客さん、増えてきてるね」

 

「ですね。やっぱりあたしたちを見にきたんでしょうかね?」

 

「だろうな」

 

ゆりや遊佐が言うには、あたしたち…というよりは岩沢のことをSNSなんかで探している人たちに宣伝をしまくったって言ってたからな。

 

本当に頭が下がる。

 

あたしの手のことも含めて。

 

 

 

 

 

 

 

『痛み止め?』

 

『ええ』

 

昨日の放課後、ゆりの家が経営する病院へ連れられ、その方法が示された。

 

『はじ〇の一歩とか知らないかしら?』

 

『名前くらいしか…』

 

『まあ所謂麻酔の類なのだけれどね。とりあえずその時の痛みっていうのは止められるわ』

 

『本当か?!』

 

それなら…それならギターが弾ける…!

 

あたしの逸る気持ちを抑えるように、手で静止を促してくる。

 

『ただ、やっぱりうちの医者もあなたの手を診て、この方法を取るのは賛成しかねる、と言っていたわ』

 

『……?痛みが止められるんだろ?』

 

『だからといって、それは治ってるわけではないもの。痛みっていうのは身体から発せられる危険信号…それを無理矢理止めるっていうのは、本当に危ないの』

 

テレビなんかで他人事みたいに聞いていた説明を、今目の前で自分に向けてされている。

 

それにどこか現実味を感じないが、理解は出来る。

 

『本当に駄目になっていても気づけない…ってことだろ?』

 

『ええ、たかが捻挫とは言っても、ひさ子さんのそれはかなり重傷だもの。無理矢理演奏をすればどうなるか分からない』

 

『…やけに脅すね』

 

普段からは想像もつかないほどに真剣なその口調に、軽口を挟む。

 

『分かっていない状態で訊いても、答えは決まっているでしょ?』

 

『分かってる状態で訊いたって、答えは変わらないさ』

 

『じゃあ、どうするの?』

 

『やってくれ』

 

あたしは即答した。

 

『そんなもしもの話なんかであたしは止まらねえよ』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そのあと1度実際に痛み止めを試して持続時間や効果を確認した。

 

切れた後の痛みは酷いものだったけど、効いている間の感覚は掴めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

「関係ないだろ?あたしたちにとって、ギャラリーとか」

 

「お~ひさ子さん言いますねぇ…遅刻したくせに」

 

「あとで覚えとけよ関根?」

 

「ひいぃぃ~!」

 

この怪我さえなけりゃ梅干しでも極めてやるんだが。

 

ていうか、やれるんだけど、一応ゆりから無駄な動きは抑えるように言われてるからな。

 

「この人たちに響くライブにしよう」

 

岩沢は、そんなあたしたちの馬鹿な会話をぶった切ってそう言った。

 

「あたしたちの音で、震わせてやろうぜ」

 

「おう!」

 

「はい!」

 

「はーい!」

 

そんな激を言い終えたと同時に前のバンドの演奏が終わった。

 

「さあ、派手に行こうぜ!」

 

いつも通りの掛け声に、もう一度あたしたちは応えた。

 

 

 

 

 

 

 

 

ステージに立つと、体育館を埋めつくして、さらに入口の外にも人が集っているのが見渡せた。

 

中にはスマホとか、ご丁寧にビデオカメラなんかを持参してあたしたちを録りに来てくれてる人たちまでいる。

 

だけど心音は通常営業。

 

左手の感覚は薄いけど、動く。

 

うちのボーカルは不敵に笑っている。

 

セットリストは頭に入ってる。

 

初っぱなは、Crow song。

 

ドラムのカウントから始まって、ギターを奏でる。

 

うん、動く…弾ける…!

 

 

 

 

 

 

 

 

ついにライブが始まった。

 

俺は遊佐、ゆりと共に舞台袖でそれを聴いている。

 

他のマネージャー組は逆側の舞台袖にいる。

 

心配だったひさ子も、問題なく引いているようだ。

 

「なあ、もう始まったわけだし、ひさ子をどうやって治したのか聞かせてくれないか?」

 

「だから治してはないの。あくまでこの場を凌ぐだけの痛み止めよ」

 

「痛み止めって麻酔とかだよな?それって痺れてたりしないのか?」

 

「一応ギリギリまで調整はしてるけど、まあ多少の痺れはあるでしょうね」

 

そんな状態であんな指の動きが出来るのかよ…

 

その一部分を切り取ってもひさ子の今までの努力が窺える。

 

「でも、調整って?」

 

「流石に射ってすぐにギターを弾くのは無理ですから。ライブの時間と手の痺れの調子を計算しているんです」

 

「つまり?」

 

「ライブの最後まで保つかギリギリってことよ」

 

「そんな…!」

 

「だから話したくなかったのよ…いい?これはひさ子からの提案なの」

 

「怪我は自分の不注意だ。でも、せめてその時出来る最高のパフォーマンスをしたいんだ…とのことです」

 

「最高のパフォーマンスっつったって…」

 

もしそれが終盤に切れたら…

 

いや、そんなの考えたって無駄だ。

 

「大丈夫…だよな」

 

「「………………」」

 

「な、なんだよ?」

 

独り言ではあったんだが、そんなに露骨に無視されると悲しいぞ。

 

「柴崎くん、それは…」

 

「…フラグ、ですね」

 

「……?」

 

フラグ?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

2曲目のAlchemyを終えたところで、MCへと入る。

 

「えー、あたしたち、Girls Dead Monster。長いんでガルデモって呼んでください。よろしくお願いします」

 

そんな岩沢の紹介を聞いてギャラリーは一斉に沸いた。

 

その熱狂に隠れるように、2度ほど左手をグーパーグーパーと感覚を確認する。

 

まだ…いける。あと一曲くらいなら。

 

「あたしはリズムギターとボーカルやってる、岩沢です。で、こっちの胸の大きいのがリードギターのひさ子です」

 

「ぶふっ!」

 

何故か入った全く必要のない特徴の紹介に、さっき以上に会場がどよめいた。

 

「てめ、岩沢!そんな説明いらねえよ!」

 

「……大事だろ?」

 

「まっっったくいらねえ!」

 

天然で行われている漫才のような会話にどよめきから一気に笑い声へと変わっていく。

 

くっ……赤っ恥だこんなもん…!

 

「で、こっちの金髪がベースの関根です。えーっと…いつもうるさいです」

 

「ちょっとちょっとちょっと!そこはムードメーカーでぇ、この子がいないとお通夜状態☆とか言ってくださいよ!」

 

「え、星の付け方とか分かんないんだけど」

 

「ツッコむべきところはそこじゃねえよ!」

 

またしてもどっと笑いが起こる。

 

「最後がドラムの入江です。おとなしくて、引っ込み思案だけど、ドラムの腕はピカイチです」

 

「よ、よろしくお願いします…」

 

立ち上がってちょこんと頭を下げる入江の姿にきっと観客の人たちとあたしの思考は一体になっているはずだ。

 

なんでオチのところで普通に説明してんだよ…と。

 

いや逆に最後が普通っていうボケ…なわけないな。岩沢だし。

 

「あたしたちの演奏を聴きに来てくれてありがとうございます。あたしたちは、プロ…メジャーデビューを1つの目標にしてます」

 

ひとしきり紹介というノルマを終えたと感じたのか、真剣な顔つきで語り始めた。

 

そしてその言葉を受けたギャラリーは、ざわめきだした。

 

いきなりの宣言に困惑しているのが見て取れる。

 

「今何かであたしたちの歌を録ってる人がいるのなら、ドンドン全国に流してください」

 

さらにこの台詞にざわめきが激しくなる。

 

そりゃ自分でドンドン流せ、なんて言う奴は中々いないだろうしな。

 

「ライブは次の曲で最後です。この曲はつい1ヶ月前に出来た新曲で、曲名は…Hot Meal!」

 

一際張り上げたその掛け声に呼応するようにギターを掻き鳴らす。

 

この曲が最後で良かった。

 

一曲目の時の感覚じゃ、この1ヶ月程度の練習量の曲は失敗していたかもしれない。

 

「ふらふらと―――――」

 

岩沢の歌声があたしたちの音に乗る。

 

ドンドンと痺れの無くなってきた手は好調に音を奏でる。

 

これが今出来る、その時出来る、最高のパフォーマンスだと、胸を張って言える。

 

そんな出来だった。

 

しかし…

 

「迷った時には――――」

 

Cメロへ入った瞬間に、あたしの左手に燃えるような痛みが走った。

 

思わずギターを手放してしまいそうになるが堪えて指を動かす。

 

麻酔が…切れやがった…!

 

もちろん激痛を伴うが、苦痛に歪む顔を隠すために俯いて、ギターを引き続ける。

 

ここでミスるわけにはいかない。投げ出すなんて論外だ。

 

幸い、アドレナリンか何かのお陰で昨日より痛みもマシに感じる。

 

曲が終わるまで、あと2分弱。

 

そんなの、耐えられないわけがないだろ!

 

「温かな―――――」

 

大サビへ突入し、観客も大いに沸き上がっている。

 

そうだ…もっと、もっと熱くなってくれ…!

 

その熱があたしを突き動かすんだ…!

 

「お腹を―――――」

 

最後の歌詞を聴き届け、最後の力を振り絞る。

 

痛みのせいで、もう頭もクラクラしてきてるけど、それでも指だけは止まらなかった。

 

あたしじゃない誰かが力を貸してくれてるみたいな、そんな感覚だった。

 

そしてようやく、アウトロを弾き終え、あたしたちのライブも幕を閉じる。

 

「最後までありがとうございました!」

 

歌いきった清々しい顔で岩沢が頭を下げた。

 

物凄い歓声と拍手の音が鳴り響いたが、あたしたちもそれに倣って頭を下げてそそくさと袖へとはけていく。

 

「ひさ子さんそっち――「いいから来い」

 

意識が朦朧とする中、打ち合わせ通り岩沢たちと逆の方に向かう。

 

背中から関根の声が聞こえたが、言い訳をする余裕もなく、とにかく足を進めた。

 

きっと岩沢がなんとか言い訳してくれてるはずだと信じて。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「はぁ…はぁ…くっ…」

 

一人体育館から抜け出してゆりのとこの車の待つ裏門へと向かう。

 

こっちはこの文化祭中は閉門していることもあってか人気がない。

 

こんな情けない顔見せたくないし、好都合だ。

 

「あー…くそ…」

 

舞台袖から横の出口へ向かう時に、藤巻と目が合ったのを思い出す。

 

一瞬だった。

 

ほんの一瞬目が合って、アイツはすぐに逸らして、混乱していた大山に何か話しかけていた。

 

「ちょっとは…気にしろよ…くそ…馬鹿俊樹…」

 

痛みのせいで無意識に愚痴がもれる。

 

下の名前なんかで呼びたくないけど…もれる言葉はそれだった。

 

「あっれー?どうしたの?顔色悪いぜ?」

 

「……?」

 

まともに歩けず、壁伝いに進んでいると、不意に声をかけられる。

 

こんなとこに…誰だ…?

 

そう思い振り返ると、見るからにチャラそうな私服姿の男たちが並んでいた。

 

「大丈夫?お兄さんたちが介抱してやろうかぁ?」

 

「おー!エッチな介抱な!」

 

「この子よく見たらめっちゃ美人じゃん!」

 

「しかも胸でけぇ~」

 

聞くに耐えないような会話をしやがるそいつらは、じりじりとあたしの方へと囲むみたいに寄ってくる。

 

「ね、いいっしょ?」

 

「さわ…んなよ…!」

 

肩に置かれた手を精一杯の力ではじく。

 

「うぉ、こっわ」

 

一応手を払うことには成功したが、にやにやと浮かべる笑みからしてあまり効果はなかったみたいだ。

 

くそ…怪我さえなけりゃこんな奴ら…

 

「気の強い娘とか超好みだわ」

 

「はぁ?俺はムカつくけどなぁ、こんな生意気なの」

 

「見てみろよあの目、すげえ睨んでんぞ」

 

「それを屈服させんのがいいんじゃんか」

 

あたしなんかまるで敵じゃないと言いたげに目の前でゲスな会話を繰り広げる。

 

「あたし…急いでるんで…」

 

「だーから、お兄さんたちの相手してっての」

 

相手にしてられないと足を進めようとするが、手でとうせんぼされる。

 

「どっか痛めてんだろ?大丈夫だって、そんなの分かんなくなるくらいよくしてやっからさぁ」

 

「はっ…」

 

どこから来るのか分からないその自信に思わず鼻で笑ってしまう。

 

「あん?なにがおかしいんだ?」

 

その問いに答えるべく、思い浮かべる。

 

こういう下世話な話の時にイキイキと人を詰る奴のことを。

 

アイツならこんな感じに言うかな…

 

「あなたみたいな…短小下手くそ野郎には無理ですから…速やかにお帰りください」

 

「は…はは…おもしれぇ。あんま調子こいてるとどうなるか教えてやるよ!」

 

あたしの言葉で逆上した男が、ぐわっと拳を振りかぶった。

 

殴られると覚悟して、ぐっと歯を食い縛る。

 

「やめろぉぉぉぉ!!」

 

「ぐぇっ!」

 

だが、左手以外に痛みなど来なかった。

 

ゆっくりと目を開けると、目の前にはあたしを庇うように両手を広げる背中があった。

 

「てめえらコイツに手ぇ出したらぶっ殺すぞ!」

 

相変わらずガラが悪いし、制服の着方もだらしない。

 

だけど、あたしにとってこの世で一番格好よく見える、藤巻の背中が。

 

でも…来てほしくなかった…

 

「はは…馬鹿…格好つけてんじゃないっつーの…帰りな…」

 

「あん?」

 

「あんたみたいな弱虫が…四人も相手に…出来るわけないだろ…」

 

だから大人しく逃げて、ゆりたちでも呼んできてくれよ…

 

「ざけんな…」

 

「なにが…?」

 

「ようやくなんだよ…やっとお前を…助けられるんだ…!」

 

何…言ってるんだ?

 

「俺は男なんだ!護れんだよ!」

 

「だから…無理だっつってんだろ…!」

 

「うっせえ!さっさと来いやボケ共!」

 

「言われなくてもボコボコしてやるよ!弱虫くん!」

 

「弱虫じゃねえ!」

 

藤巻は言葉通り、確かに昔より遥かに強くなっていた。

 

一人寄ってきては殴り飛ばし、また来られては殴り飛ばし、相手の誰よりも強かった。

 

だけど、それは1対1ならの話。

 

相手が強いと見るとすぐさま奴らは複数人で囲んできた。

 

1つ2つと拳を躱すも、さらに飛んでくるものはガード越しにヒットしてしまう。

 

さらに輩たちは藤巻があたしを庇ってるのを利用してあたしを狙うように見せかけて藤巻に攻撃をくらわす。

 

その攻撃に過剰にあたしを護ろうとしてしまう藤巻。

 

みるみる内に藤巻が傷ついていく。

 

「もう…やめろよ…!あたしなんか護らなくていいから…!」

 

その姿に耐えられなくなったあたしは怒鳴るように叫ぶ。

 

「うるせぇ!護るっつってんだ!」

 

「なんでだよ…!?」

 

「俺は男で…お前が女だからだよ…!」

 

「意味…わっかんねえんだよ…!」

 

合宿の時にも言われた言葉。

 

そして、中学の頃、決別の時にも言われた言葉。

 

あんたが男であたしが女…そんなの分かってる…そんな当たり前のことに何を固執してるんだよ…?

 

「好きな女も護れない男に…なりたくねえんだ!!」

 

「―――っ?!」

 

好き…?

 

誰が…?誰を…?

 

「藤―――「寒いこと言ってんじゃねえよ!」

 

「がっ…!?」

 

問いかけようと口を開いた瞬間、奴らの中の一人の拳が藤巻のこめかみにもろに入った。

 

「藤巻…?!」

 

どさっと崩れ落ちる藤巻に、左手の痛みも忘れて駆け寄る。

 

「どい…てろ…」

 

ふらふらと、今にも倒れそうな体を起き上がらせる。

 

「やめてよ…!立つなよ!」

 

「うるっ…せぇ…!黙って助けられてろよ…!」

 

「黙ってられるわけ…ないだろ…」

 

こんな…こんな状況で…

 

「女だって…好きな奴がボコボコにされてるのなんて見たくないんだよ…!」

 

「――――っ?!」

 

こんな、限界ギリギリのピンチになってようやく、初めてあたしの口から本当の言葉が出た。

 

藤巻は呆気に取られたような顔をして振り向いた。

 

前に敵がいるってのに。

 

「だからくせぇこと言ってんじゃねえ!」

 

その隙をついて、一人が大きく拳を振りかぶるのが見えた。

 

殴られる、そう思った時、思わず目を瞑る。

 

が、一向に藤巻の倒れる音は聞こえない。

 

「だ、誰だてめえ!」

 

代わりに聞こえたのは狼狽した男の声だった。

 

恐る恐る目を開けると、男の腕をがっしりと掴む、桔梗色の髪のやけに目付きの悪い男がいた。

 

「し、柴崎?!」

 

「全然車のとこまで来ないから倒れてんのかと思って来たんだけど…なんでこんな状況に?」

 

「なんでって…「ひさ子!大丈夫か?!」

 

「い、岩沢?!」

 

「おまっ…隠れとけって言ったのに」

 

確かついさっきまで緊迫した状況だったはずなのに、一気にそんな空気がなくなっていく。

 

「まあいいけど…ちゃんと後ろいろよな」

 

ていうかなんでコイツは足手まといが3人もいる状態でこんな余裕なんだ…?

 

「なんだお前?お前もボコられてえの?」

 

「嫌に決まってんだろバーカ」

 

「てめえ…!」

 

「つーか、女なんか連れてきやがって、なんだ?俺たちにその女くれんのか?」

 

そんな下卑た言葉を聞いた途端に、場に似合わない余裕さが無くなった。

 

「そいつに触ったらタダじゃすまねえぞ…」

 

いつも悪い目付きが、より一層極悪に変わる。

 

既に何人か人を殺っててもおかしくない目だ。

 

「あ、いや、コイツだけじゃねえけどな。ひさ子にも藤巻にも手は出させねえぞ」

 

折角相手がビビっていたのに、急に変な言い訳をしだして勝手にしどろもどろになっている。

 

「な、なんなんだよてめえは!?」

 

「何って………そりゃ………同じクラブのもんだ!」

 

えらく間の空いた返答だった。

 

つーか、間の抜けた返答だった。

 

「柴崎、そこは友達でいいんじゃないか?」

 

「え!?と、友達…?」

 

岩沢の冷静な台詞を聞いて、こちらをちらっと伺ってきたので、首肯で答える。

 

「と、友達かぁ…」

 

「本当に清々しいほどのコミュ障ですね」

 

「う、うるせぇ!1回疑うことに慣れると戻るのにも時間が…って、なんで遊佐がいんだよ?」

 

「ひさ子さんを呼びに行ったのに中々やってこないのでこちらから迎えに来てあげたんですよ」

 

ほら、と手で示した方向に視線をやると腕組みをして、仁王立ちの状態のゆり…with黒服さんたちがいた。

 

「どうせろくでもないことになってると思って来てみれば、案の定ね。じゃ、あなたたちはあのチャラ男どもにきっちりお仕置きしておいて」

 

「かしこまりました」

 

「ひ、ひぃぃぃ!なんだよコイツら?!」

 

毅然とした歩き方で詰め寄る黒服さんたちに恐れをなして逃げだそうとする…が

 

「言っとくけど無駄よ。もうここから逃げられる道には全部あたしの家の者を配置してあるから」

 

無慈悲な宣告がゆりによって行われる。

 

いつの間にそんなこと…

 

そして、それを聞いた輩たちは逃走を諦めたようでその場にへたりこんだ。

 

「さ、もう大丈夫よ…大変な目にあったわね」

 

「はは、本当…な……?」

 

差し出されたゆりの手を取ろうとした。

 

その時、世界がぐらりと歪んだ。

 

「あ……れ…」

 

そのままあたしの視界は暗闇に沈んだ。

 

 




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