蒼紅の決意 Re:start   作:零っち

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「はは…ったく、待たせすぎだよ」

『―――…』

 

誰かの名前を呼んでいる。

 

これは夢だ。

 

昔から何度も見続けている夢。

 

『……ああ』

 

彼が誰なのか分からない。

 

顔も見えない、言っていることは伝わるのに声も聞こえない、確かに呼んでいるはずの名前も分からない。

 

だけど、大好きで大好きで堪らない人。

 

『………大好きだよ…―――…』

 

いつも変わらない、その言葉を伝えた瞬間に…あたしは目を覚ますんだ。

 

 

 

 

 

 

 

「ん……」

 

夢から意識を解放されて、目を開ける。

 

見覚えのない天井と蛍光灯がぼんやりと見えてきた。

 

ここ…どこ…?ていうかあたし…

 

「目ぇ覚めたか?」

 

「ふ、藤巻…?!」

 

なぜ眠っていたんだろうかと頭を巡らせようとしたが、ひょっこりと顔を覗きこんできた藤巻のせいでそれも吹っ飛ぶ。

 

「ちょ、み、見んな!」

 

「は、はぁ?」

 

こんな寝惚けた状態の顔をまじまじと見られたくなくて布団にくるまる。

 

ここどこだ?!なんで藤巻が?!寝起きの顔見られた?!あれ?あたし今どんな服着てる?!

 

いや落ち着け…落ち着けあたし…思い出せ…確か文化祭のライブが終わったあとに不良に絡まれ……

 

「藤巻!大丈夫なの?!」

 

「は、はぁ?!」

 

がばっとくるまっていた布団から抜け出して藤巻の姿を確認する。

 

ぼんやりと見えただけのさっきと違い、しっかりと見ると至る所に絆創膏や包帯で覆われている。

 

「あたしの…せいだよな」

 

「はぁ?」

 

「あたしが絡まれたりしたから…違う…こんな怪我さえしてなけりゃ…」

 

「ちょ…なんだてめえさっきから隠れたり急に飛び起きたりへこんだり…おかげでさっきから、はぁ?しか言ってねえよ」

 

「う、うるせえな…こっちは急に色々あって混乱してんだよ…」

 

起き抜けに好きな奴が顔を覗きこんできたら隠れたくもなる……

 

「うわぁぁぁぁぁぁ!!!」

 

「こ、今度はなんだってんだ?!」

 

思い出した…思い出した!!

 

あのチャラ男たちに絡まれたとき……コイツ……コイツ……!

 

『好きな女も護れない男に…なりたくねえんだ!!』

 

とか言ってた……!!

 

これ、告白…だよな…?

 

てことは両想い…?いやいや、確認した方がいいよな?でも…そんな恥ずかしいこと…!

 

「で、出来るわけねぇ…」

 

ていうかそもそもあたしも好きとは言ったわけだし…あとはやっぱ男の方からが筋ってもんじゃ……

 

「って…そんなこと言ってるからこんなギクシャクとぉ……!」

 

「ぶっ…は、はははは!!」

 

「…?」

 

こっちが真剣に悩んでるっていうのに突然大笑いされて、ぽかんとしてしまう。

 

「あーあ…やっぱおもしれえな…お前といるとよ」

 

「―――っ!な、なんだよ…ば、馬鹿にしてんのか…?」

 

長い間聞くことのなかった、そんな素直な言葉と、同じく長い間見ることなかった、柔らかい笑顔を向けられて顔が紅潮する。

 

「いやそーじゃなくてよ……その…」

 

「っ!な、なんだよ?早く言えよ」

 

困ったように頭を掻く仕草と赤くなった耳を見て、もう一度告白をしようとしてることを察する。

 

「う、うるせえな…改めて言うってなると緊張すんだよ……」

 

さらにこの返しで告白であることを確信する。

 

しかしその後も中々切り出さない藤巻。

 

こ、こうなったら…あたしが後押し…

 

「は、早く言えってば」

 

「しょうがねえだろ、こっちは一世一代の―――「あ、あたしの返事なんて決まってんだから…!」

 

あたしはあの時だって言った。

 

女だって好きな奴がボコボコにされてるのを見たくなんてないって。

 

「だから…早く言ってくれ…もう待ちたくない…」

 

心臓もずっと早鐘を打っていて、もうはち切れそうになってるんだよ。

 

早く言ってよ…!

 

「ひ、ひさ子!」

 

あたしの気持ちが届いたのか、ようやく藤巻の目に決意の火が灯った。

 

「俺は……俺は……お前のことが…好きだ!告んのにビビッちまう、こんな情けねえ奴だけど…付き合ってくんねえか?!」

 

中学の頃、突然あたしの下から去ったあの時からすっかり変わってしまった藤巻……いや、俊樹だけど、今この瞬間は昔の…ずっと一緒にいた頃に戻ったような顔つきになっていた。

 

「だからあたしの返事は決まってるって……あたしも、あんたが好き。昔も今も俊樹が大好きだ…!」

 

やっと言えた…

 

ずっとずっと言いたかった素直でありのままのあたしの言葉。

 

「つ、つまり…」

 

「こちらこそよろしく…ってやつだよ」

 

「ほん――――っ?!」

 

「―――っ!?」

 

あたしが改めて返事をし、俊樹が喜ぼうとしたのを捉えたところで、頭の中に膨大な量の情報が流れ込んできた。

 

その情報とは「記憶」だった。

 

「―――――はぁ、はぁ…」

 

「―――――くっ、はぁ…」

 

一瞬のような、永遠のような激しい奔流を同時に終え、目が合う。

 

そして理解する。

 

「俊…樹…」

 

「ひさ…子…」

 

「はは…ったく、待たせすぎだよ」

 

「…わりぃ」

 

あたしたちは少し約束を破ってはしまったけれど、また逢うことが出来たんだと。

 

そしてそれだけで、こんなに幸せなんだっていうことを。

 




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