蒼き空の騎空団   作:闇カリおっさん来ない

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VHの討滅戦が硬すぎるので初投稿です(半ギレ)


騎空団、封印を解く

 ――月――日。晴天

 

 今日はおかしな出来事が起こりすぎた。混乱しそうな頭をなんとか押さえつけるために、数ヶ月前を最後に書くのを止めたこの日記を引っ張りだして、ここに今日起きた奇妙な出来事を綴っていこうと思う。そしてこれを機に、また日記を習慣づけようかと思う。これまでのことを思うと引きずられる物はあるが四の五の言ってはいられない。とにかく纏めなければ。

 

 本日の昼もまたお日柄がよく、数キロ先まで見通せるほどの晴天だった。操舵を担当する俺からすればとてもありがたい天候だと言える。俺達の騎空団を乗せる騎空船、『アジンドゥーバ』もいつも通りの速度を出して、俺達は騎空船のメンテナンスのためにガロンバへと向かっていた。騎空船を弄くれるのは俺ぐらいなもので、簡単なメンテナンスしか行えなかったが、ここに最近所々にガタを感じるようになった。

そういえば最後にメンテナンスしたのは二年前程ではなかっただろうか、という事を思い出した俺は行き先をガロンバへと指定。多少魔物に絡まれる等と言った事は合ったものの、それ以外の出来事は起こらなかった。

 

そう、帝国の戦艦が渡航中のこちらに目をつけるまでは。

 

 襲われた理由は覚えちゃいない。とにかく無理矢理なこじつけであることは確かだった。

 『アジンドゥーバ』は元々旅行用に組まれた騎空船である。速度に自信はあっても武装は全くの不得手。基本的に騎空"戦"においては逃げの一手以外の道は残されていない。先程も記述した通り、速度にはそれなりの自信がある。逃げきる事は容易だと思われたが、予想外の事態が起きた。エンジンルームをかするように敵の魔法砲弾が『アジンドゥーバ』の船体を貫通、外からの高熱を受けたエンジンは軽い空回りを起こし始めた。ピストンのパーツが高熱でイカれてしまったのだ。当然速度は下がり、あわや追い付かれると思った時、うちの騎空団においていた居候が帝国の戦艦を爆破させたのだ。

 

「クラリスちゃんにおまかせっ!」

 

 と、なんともふざけた声を上げて。本人は錬金術でやったと言っているが、あんなに派手にぶっ飛んだ錬金術があるのだろうか、アイデンティティーの創成はどこへ行った。

助けた理由を聞けば一食のお返しだ、と言ってきた。ピザを渡しただけでそれとは……その言葉にうちの風祷師役の彼が「気に入ったぞ!」と彼女を全面的に受け入れる姿勢を取っている。お前も一族の長なのだから、もう少し慎重に考えてみろと小言を行っても、高らかな笑い声に流されるだけ。もう少し自覚を持って貰いたい物だ。

 

 さて、帝国はなんとか片付いたが、今の状態ではガロンゾにつく前に『アジンドゥーバ』のエンジンがお釈迦になってしまうだろう。どうしたものかと悩んでいると、錬金術師の少女が提案を持ちかけてきた。

 

「この近くにさ、無人島があるんだ。そこに寄って直せばいいんじゃないかな? うちも錬金術師の端くれだし、少しぐらいはお手伝い出来ると思うんだ★」

 

 無人島がある。その情報を狙撃主の彼女に尋ねると、確かにそのような物が見えると言う。かなり寂れていて、誰もいないことは明白だ、と言えるほどだと。いつまた帝国に眼をつけられるかもわからないこの状況、俺達は今出せる全速で戦艦の残骸から離れ、居候の言う通りにその無人島へと向かった。

 

 数分後、俺も遠くの方にあるお目当ての島をガンパウダーミキサーである彼女と視認して、寂れている、と意見を漏らした。そのまた数分後に無事着岸。しかし、その島は近くで見るとよりはるかに寂れているように見えた。うん千年……いや、うん万年だと言っていた。とにかくそれぐらい前に建てられた物だと知ったのは後の事で、その時の俺は確かすごく古くに作られた物なんだなぁと考えていた気がする。

 おかしなを音をたてて回るエンジンの修理を始めて数十分がたった頃、一つの異変に狙撃主が気づいた。聞けば居候がいないとのことだった。エンジンルームから出て軽く周りを見渡すと、なるほど、確かに特徴的な金髪はいなくなっていた。丁度修理の方も錬金術師がいなければ完了しないといった所まで来ている、どこに向かったかは、ほとんど一目瞭然だったと言える。この島には、一つの大きな廃墟しかないのだから。

 

 風祷師役の彼に留守番を頼み廃墟に入ってみると、予想以上に古い建築物で人の手が入っていないのか、 そこら中に埃が待っていた。彼女は「こんなところで銃器を振り回したくはないな」と言って自慢の銃を背負って腰からナイフを抜く。

俺もそれに倣い白い鞘から美しい刀身をもった剣を引き抜いた。

――少し前に出会った黒髪の男性がお礼と称して渡してくれたこの一振りの剣。「カタナ」と言うらしいが、俺にはよくわからないし、切れ味もいいので普通の剣として振るっていた。

そしてもう片方の手には少々硬めの素材で出来ている杖を取り出す。これでいつもの俺のスタイルだ。

 

 二人して武器を抜き構えた理由は単純、魔物の気配のような物をそこら中に感じるからだ。こんな埃まみれの中で激しい戦闘は避けたいが、そう言ってもいられない。やられなければ食われてしまうのが俺達だからだ。殺られる前に、殺るだけだ。

 しかし、その意気込みはとんだ空振りで終わってしまった。魔物はこっちを見るだけで距離を取って襲ってこようとしない。これに狙撃主は「可能性として、君の変わったスタイルに警戒を示してるだけ、というのがあるが」と述べた。

 

 ――団員の皆からは変わったスタイルだ、と言われるオレ流の戦闘スタイル。近接には杖と剣で一刀一槍、遠距離の相手には魔法をばらまく。器用凡庸の俺には丁度いいスタイルなのだが、普通はあり得ないんじゃないかと言われたこともある。結構使い勝手はいいのだが、理解されないことは悲しいことだ。

 狙撃主の意見に、俺は「それはない」と否定した。距離を取っているだけなら警戒しているようにも思えるが、それだけでなく魔物からは敵意すら向けられていないのだ。どちらかと言うと怯えのような何かだった。

 

「やはりそうか。だとすればやはり彼女が問題なんだろうな」

 

 彼女とは誰だ、その問いを口にする前に俺は理解してしまった。奥の方から、小さいながらも爆音が響いてきた。それを聞いた周りの魔物たちは体を震わせてあっという間に逃げ出してしまう。なるほど、彼女のせいか、と納得した。

 少し進んだ先に今までの道とは違った広めの部屋に出たとき、漸く視認できた。うちの居候が、そこの座り込んでいた。

 

「あ"ーっ……疲れたぁ……」

「一人で突っ走るからだろう」

「あっ……団長さん」

 

 手をうちわのようにして扇ぐ居候とそんな会話してる間、狙撃主はそっと側を離れて周りの警備にあたってくれる。彼女には色々と助けてもらっている、今度またお礼をすべきだろうか。クムユと一緒に考えておこう。

 話が逸れたので書き戻そう。居候に何故突出したのかと聞くと、ここは自分としても因縁の場所なのだと語ってくれたが、それ以上は頑なに語ろうとはしなかった。探ろうとしても星を飛ばして笑うだけ、こいつも族長(あれ)と一緒なのだろう。

 

 周りから何か情報を得られないかと見渡す。その時に気づいたが、部屋は書斎のようで、至るところに爆発の影響で崩れたであろう本の山が散らばっていた。

しかし、本と一つの机しかない部屋でも異彩を放っている場所があった。部屋の奥、一本の杖が安置してある祭壇のような飾りに、目を奪われた。

他の物とは明らかに相違点が見られるそれに、俺の体が引き付けられる。居候は後ろで制止の意を叫んでいたらしいが、その時の俺には全く聞こえなかった。

 杖に手をつけそれを引き抜く。杖は銅色をしていたが、素材はそんな貧弱な物ではないと言うことは握った感触で理解した。

恐ろしい蛇の彫刻をそのまま縦にぶっ刺したような見たことのない歪な杖からは、とてつもない力が感じられる。軽く降るだけで並みの魔物を屠ることが出来ると確信させてくれるその力。

 

 その時だった。右耳の虹色の宝石が突然輝き出す。と、同時に魔方陣ではない幾何学的な陣が現れる。しかしそれも宝石の強い光を浴び、目の前で砕け散る。

すると砕け散った陣は粒子へと戻っていき、祭壇に人型になるように集っていく。いや、こちらの方が戻っていくと表現する方が正しいのだろう。

 数秒もしない内に、粒子はまさしく人となった。

 流れるような無駄なハネ一つない金髪、鮮やかな紅い布地を纏う人物の身長はクムユと同じぐらいだろうか。

 眠っていたように瞑られていた瞼は開かれ、紫色の瞳に光が灯る。

 

「けほっ……けほっ……。やっと、封印が解けたか……」

 

 粒子から生まれた女が放った最初の一言は、そんなものだった。

 

(次ページに続く)




廃墟がある島等には一切触れられてなかったので独自解釈を入れました。これからも触れられていない部分に関しては今回のように独自解釈を挟んで矛盾のないように展開していこうと考えています。

Q、貫通したらエンジン誘爆するんじゃね?
A、知ら管

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