蒼き空の騎空団   作:闇カリおっさん来ない

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水着ダヌアちゃんとヴィーラちゃん当てました(ドヤ顔)
尚2kが飛んでいった模様
白虎のExtremeが堅すぎるので初投稿です(半ギレ)


騎空団、開祖に出会う

――月――日 夕時。彼の記憶

 

 その少女は違和感を放っていた。その見た目、その眼、その口調、その気配。存在するには足り得ているが、違和感を拭うにはまるでと言っていいほど足りていない。

両境界に片足ずつ突っ込んでいると言えば分かりやすいかもしれない。こちら側なのにあちら側。彼女の前ではあらゆる境界線が曖昧になるような気がした。

 その後彼女はぶつぶつと何かを呟いていたが、こちらに気がつくと満開の笑顔を見せて口々とこちらを褒めてきた。美しい笑顔だし、綺麗な笑みだと思う。しかし俺達の気を許すほどではなかった。

背後の狙撃主がマガジンを装填する音が聞こえる。居候は本を捲り、俺はカタナを静かに握りしめる。

 

「……チッ。そう簡単に隙を作らせてはくれないか。オレ様の世界一可愛いスマイルを拝めたんだから、もう少し顔を綻ばさせてもいいんだぜ?」

「君のそれがなければ、そうしていたかもしれないな」

 

 彼女が嘲り、狙撃主が一気に気を爆破させる。祈る余裕も与えないつもりだろう、お互いに歩み寄る余地はなかった。

 

「なら、次あった奴らには、上手くやるとするか」

 

 ウロボロス、と彼女が何かに呼び掛けた。一秒もたたない内に虚空に火が付き、まるで竜のような姿に形成されていく。いや、"竜のような"ではなく、炎が振りきれた先に見えたのは紛れもなく龍だった。

焔のような甲殻を見にまとった、恐ろしくも龍として完成された美しい姿。

呆けているこちらの姿に満足したのか、にんまりと笑みを深める彼女に狙撃主がトリガーを引く。

 それが開戦の合図となった。ウロボロスは主に向け放たれた弾丸を気にもとめずに、カタナを構える俺へと牙を剥ける。

猛然と突っ込んでくる龍、速度はそれほど出てはいない。回避は少し体を捻るだけでも十分だった。この程度ならば後方の二人にも当たる心配はないだろうと踏んでいた。事実、既に二人は回避行動に移っているようだった。

最初はのろまのような速度をした弾丸は、徐々にその弾速倍々に上げて彼女の額へと向かっていく。しかし彼女の笑みは変わらず不気味なほどに裂けている。まるでギリギリを楽しんでいるかのような、狂喜の混じった笑顔。

やはりと言うべきか、笑みを浮かべる余裕は本当だったらしく、マッハ20を越えた弾丸は突き上げられた岩によって塞き止められる。もちろんただでは止まらずに着弾した際に莫大な余波を起こすが、余程硬い素材で出来ているのか弾丸が岩を突き抜けることはなかった。

 

「媒体も開かずになんて練度の錬金術……ッ!」

 

 後方から居候の声が聞こえてくる。彼女の事情を知っているのか、その声は苦しそうに聞こえ、表情を想像させるには十分な物だった。

なるほど、一秒もかけずに岩を展開したあの術。魔法の物かと思ったが、あれが本場の錬金術というものか。

 

「見事な物だな」

「当たり前だ。オレ様は錬金術の開祖、カリオストロだぞ?」

「かり……なんだって?」

「カリオストロ! 次間違えちゃったら、カリオストロ、おこだからね!」

 

 先程までドスのきいた低い声だったのが、急に甲高くあざとい声色に変わった。ちぐはぐだ、わざとなのかどうかは理解できないが、彼女は非常に気分屋らしい。そして、それが彼女の歪さを表現しているようにも見える。

 

「ウロボロスッ!」

 

 空中を舞っていた龍が速度をつけて一気に下降、再び俺たちの命を噛み砕こうと迫ってくる。回避も出来るが、そうは目の前の彼女がさせてくれそうにもなかった。注視せずとも分かる、小さな手には媒体である広げられた本が展開されている、回避運動をすれば一秒もたたずと突き上げる錬金術に串刺しにされるだろう。

だがそう簡単にいかせないのはこちらとて同じだ。

 

「伊達や酔狂で杖を持っている訳じゃない」

 

 蛇の杖――あの龍に串刺しの蛇が似ているから『ウロボロス』とでも名付けようか――に彼女との距離の分だけ魔力を込める。込められた魔力の危険性に龍も気づいたのか、俺へと進路を変更して速度を倍にして牙を剥ける。このままでは俺は立派な餌として腹の中に収まってしまうだろう。そうさせないのは美少女天才錬金術師こと居候だ。

 

「どっかーんっ!」

 

 ふざけたかけ声とは裏腹にその威力は手投げ爆弾の比ではない、廃墟を揺らすほどの爆音が鳴り響く度に龍の姿勢はガクガクと吹っ飛びながら変わっていく。自己紹介の時の自信は嘘ではなかったようだ。

 

「おいおい。オレ様の錬金術になんて荒い事しやがる。これじゃあ台無しだっての」

「ごめんねー★ うちにはこれぐらいしか得意なことがなくてさっ」

 

 先ほど錬金術で手伝えるとかほざいていた気がするが、一体何をするつもりだったんだ。爆破して何を解決させるつもりだったんだ。非常に気になるが、そんなことを考えている暇はない。こちらの攻めるための準備は整ったのだから。

 魔力は既に充填済み、狙撃主もベストポジションに配置した。避ければ撃つ、避けなければ臓物と一緒に貫かれる。さっきしたことのお返しをさせてもらおうか。

 

「ぶち抜くッ!」

「もう二度も外しはしない!」

 

 魔力を爆発させようとした、その時だった。「馬鹿が」と、小さな声が嫌に響いた。

 ズブリ、と皮膚を貫く感触が杖を構える左腕を襲った。瞬間に腕の感覚が失われ、杖が地面に落ちる。いや、杖を持った腕が地面に落ちた。

 肩があった場所には、代わりとして刃となった岩のオブジェクトがそびえたっていた。

 ――切り落とされた。

 そう気づいたのは数秒後の事だ。

 

「団長ッ!」

 

 まるで切断面を焼かれているかのような熱量の痛みに、目の前が点滅とする。そういえばうちには回復役がいなかったなぁ、と軽い現実逃避した考えが浮かび上がる。くっつくのだろうか、片腕のままは嫌だなぁ、なんて事も思っていた。

ベストポジションの狙撃主が龍の尾に吹き飛ばされるのが見えた。かなり痛そうだ、いや、これよりはマシかもしれないけど。

居候の本は彼女の錬金術で吹っ飛ばされていた。媒体がなければ錬金術の精度はかなり下がると聞いたことがある。彼女も戦闘は不可能に近い。

 

「オレ様に勝とうなんざ、千年早ぇんだよ」

 

 真紅の龍を撫でながら、岩の玉座に座る彼女はそう言い放った。丁度良い準備運動にはなったかもな、とまで言ってくる。

 

「封印が解けた謎が残るが……。まぁいいか。ウロボロス、飯だ」

 

 ガチン、と牙を鳴らして龍はゆっくりと近づいてくる。あぁ、ここまでだろうか。しかし、死ぬのも悪くないかもしれない。この耐えきれぬ痛みから解放されるのなら、それもいいかもしれない。いや、多分そっちの方がいいんだろう。

天は既に舞い上がった龍にでも喰われてしまったんだろう。嫌なことばかり起こりやがる。にっくきあん畜生め、俺食って腹を壊しちまえ。

 戦意も尽き果て、仰向けで寝転がっていたその時、ガコン、と天井が崩れた。それに続いて周りの天井もジグソーパズルのようにボロボロと落ちてくる。廃墟が、崩壊する。

 

「なっ。……まさかあのガキ共、オレ様の封印が解かれる事まで考えて……。くそっ!」

 

 彼女が何やら酷く焦っているが、これは逃げるチャンスだ。天はまだ生きていた。虹石のピアスを握り締める行動、それだけで石に眠る彼女は俺の意思を汲み取ってくれた。

石から輝かしいオレンジの光が迸る。雷のように空へと走った光は、一秒もたたずに地面へと降り落ちた。

閃光が辺りを塗り潰す。すぐに色を取り戻した世界に降り立ったのは、一人の女性と猛々しい大獅子。

 

「キュベレー」

 

 小さく呼び掛けた。それだけで彼女は撤退をするために俺と周りの仲間たちを次々と獅子の背中へと乗せていく。

 

「ま、待ってくれ!」

 

 先程までの鋭かった声は、どこへやら。情けない声をあげたのは金髪の彼女だ。

 

「封印が解かれたばかりで、体が思うように動かない。オレ様のボディーは特別製と言っても、こんな質量に押し潰されちゃあ流石に死んじまう」

 

 つまり、カリオストロはこう言いたいらしい。助けてくれ、と。しかしそう言うのは流石にプライドが許さないのかとても遠回しに同情を誘うような言い方で告げてくる。

 

「もちろん無料じゃない、お前の腕をくっつけてやる。このボディーを作ったのはオレ様だ、腕の一本や二本、くっつけてやる。だから……!」

 

 なるほど、かなり魅力的な提案だ。俺のスタイルは両手が存在している事が前提条件だ。片腕を切り落とされた今じゃ、俺はかなり戦いにくいどころか前線に出れるかどうかも分からない。というより、完全に足手まといだ。

だが一本の恨みは晴らさせてもらう。

 

「……ごめんなさいは?」

「はぁ?」

「人の物無くしたんだ。ごめんなさいは?」

「お、お前、そんなこと言ってる場合じゃ……!!」

 

 天井の一部が瓦礫としてまた一つ降ってくる。丁度彼女の頭上にあったらしく、ますます情けない悲鳴を上げて転びながら避ける。もはや涙目になっているが、それでも関係なしに告げる。ごめんなさいは、と。

カリオストロからすれば、言いたくない言葉のワースト5には間違いなく入るであろうその単語。それを強要するこの状況はかなりの屈辱だろうと踏んでいる。

 

「ご、ごごご……」

 

 あまりの屈辱に体を震わせるカリオストロ。正直、もうかなりスッキリしている。

 

「ごめんなさぁぁいっ!」

 

 それを聞いたキュベレーの動きは素早かった。一回の飛び込みで距離をつめ、鞭で彼女の体を縛り上げ、反転、猛スピードで出口へと駆け抜けていく。

 

「ふぎゅっ!? お、おい! 瓦礫が当たってるっての! もうちょっと丁寧に……! んの、聞いてんのかお ば さ ん!!」

 

 ギアが二速から六速に上がった。

 

「みぎゃあああああああああああッッ!!」

 

 哀れ彼女はボロ雑巾と化した。




カリおっさんならノータイムで相手の臓物貫くぐらいは出来そうだと思った。しなかったのは、ウロボロスのご馳走が臓物ということにしておいてください。

Q.何!? 星晶獣が呼べるのは、ルリアやオニキスだけではないのか!?
A.集いし星が、新たな絆を呼び起こす(至言)

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