理由も無く、ただ互いが満足するだけの為に始まったコナミVS鬼柳のデュエル。迎撃をするコナミを見て、鬼柳がニヤリと笑みを浮かべ、デッキトップに右手を翳す。
「俺のターン、ドロー!魔法カード、『マジック・プランター』!『スピリット・バリア』をコストに2枚ドロー!」
鬼柳 京介 手札0→2
「カードを2枚セット!そしてリバースカード、オープン!魔法カード、『ZERO―MAX』を発動!墓地の『インフェルニティ・ネクロマンサー』蘇生!」
「手札の『増殖するG』を捨てる!」
放たれる大量展開に備え、コナミが手札より黒光する昆虫を飛ばす。『インフェルニティ』相手にこのカードは効果が抜群だが、油断すると抜群過ぎる事が仇となり、デッキ全てが持っていかれかねない。
インフェルニティ・ネクロマンサー 守備力2000
ダニエル 手札2→3
「効果で『インフェルニティ・デーモン』蘇生!」
インフェルニティ・デーモン 攻撃力1800
ダニエル 手札3→4
「効果で『インフェルニティ・ミラージュ』サーチし、召喚!」
インフェルニティ・ミラージュ 攻撃力0
「リリースし、『インフェルニティ・デストロイヤー』と『インフェルニティ・リベンジャー』蘇生!」
インフェルニティ・デストロイヤー 攻撃力2300
インフェルニティ・リベンジャー 守備力0
ダニエル 手札4→5
「レベル6のデストロイヤーにレベル2のビートルをチューニング!シンクロ召喚!『インフェルニティ・デス・ドラゴン』!」
インフェルニティ・デス・ドラゴン 攻撃力3000
ダニエル 手札5→6
「レベル4の『デーモン』とレベル3のネクロマンサーにレベル1のリベンジャーをチューニング!シンクロ召喚!『ワンハンドレッド・アイ・ドラゴン』!!」
ワンハンドレッド・アイ・ドラゴン 攻撃力3000
「2体目……!」
ダニエル 手札6→7
2体の魔竜が再び顕現し、コナミを睨み付ける。とんでもない回復力と展開力、やはり『インフェルニティ』の相手は面倒だ。
「ワンハンドレッドでミラージュコピー!リリースし、『デーモン』とネクロマンサー蘇生!」
インフェルニティ・デーモン 攻撃力1800
インフェルニティ・ネクロマンサー 守備力2000
ダニエル 手札7→8
「『デーモン』でバリアサーチ!」
「手札の『エフェクト・ヴェーラー』を捨て、その効果を無効に!」
ここまで引けば手札誘発も出て来ると言うもの、少々遅い出勤である事に文句を言いたいが、無いよりはマシだ。何とか『デーモン』を封じ、最悪を逃れる。
「ネクロマンサーでデス・ドラゴンを蘇生!」
インフェルニティ・デス・ドラゴン 攻撃力3000
ダニエル 手札7→8
「効果によりTORNADOを破壊し、その攻撃力の半分のダメージを与える!」
「手札の『ハネワタ』を切り、効果ダメージを0に!」
デス・ドラゴンのスモークを思わせるブレスがコナミのモンスターを腐敗させ、コナミにも襲いかかるその時、彼の頭上よりパタパタと羽を世話しなく羽ばたかせる毛玉のようなモンスターが現れ、フーフーと息を吐いてスモークを消し飛ばす。一発一発が致命傷、全てが命取りだ。
まるで死神を鎌を首にかけているような感覚に、コナミは末恐ろしいものを感じる。
「チッ、ターンエンドだ」
鬼柳 京介 LP3300
フィールド『インフェルニティ・デス・ドラゴン』(攻撃表示)×2『インフェルニティ・デーモン』(攻撃表示)『インフェルニティ・ネクロマンサー』(守備表示)
セット1
手札0
「オレのターン、ドロー!墓地の『置換融合』を除外、GreatTORNADOをエクストラデッキに戻し、ドロー!」
ダニエル 手札8→9
「魔法カード、『打ち出の小槌』!手札を2枚交換、魔法カード、『シールド・クラッシュ』、『地砕き』、『地割れ』!ネクロマンサー、デス・ドラゴン、『デーモン』破壊!」
「ぐぬっ!」
「ペンデュラム召喚!『慧眼の魔術師』!」
慧眼の魔術師 攻撃力1500
「そしてチューナーモンスター、『ジェット・シンクロン』を召喚!」
ジェット・シンクロン 攻撃力500
ここで登場したのは青と白のカラーリングのジェットエンジンを模したモンスターだ。ここでこのカード、流れは確実にコナミに向いている。更に手繰り寄せ、掴み取る為、コナミは攻めに出る。相手が相手だ。攻められる時には一気に攻め切る。
「レベル4の慧眼にレベル1の『ジェット・シンクロン』をチューニング!シンクロ召喚!『ジェット・ウォリアー』!」
ジェット・ウォリアー 攻撃力2100
シンクロ召喚、鬼柳の魔竜に対抗し、コナミが召喚したのは重厚な黒のボディを煌めかせたジェット機を模した機械戦士。その翼を展開し、鋭利な脚で地面を削り、着陸する。攻撃力は低いものの、その効果は優秀だ。
「シンクロ召喚時、デス・ドラゴンをバウンス!『ジェット・シンクロン』の効果で『ジャンク・コレクター』をサーチ!」
「く――!」
『ジェット・ウォリアー』が背中に装備したエンジンから火を吹かせ、勢いのまま魔竜に特攻、右拳を魔竜を腹に抉り込ませ、鬼柳のエクストラデッキへと叩き込む。何度も復活する『インフェルニティ』に対して破壊では無く、バウンスで対応したのは正解に近い。
「バトルだ!『ジェット・ウォリアー』でダイレクトアタック!叩き込め!」
鬼柳 京介 LP4000→1900
「がふっ……!」
更に漆黒の機械戦士が背部と右肘から火炎をジェット噴射し、猛スピードで加速して鬼柳に向かい、必殺の一撃をお見舞いする。ソリッドビジョン特有の刺すような痛みに、思わず鬼柳も身悶える。強力なパンチだ。このダメージは手痛い。
「カードを1枚セットし、ターンエンドだ」
「デュエルらしくなって来たじゃねぇか!罠発動!『裁きの天秤』!4枚ドロー!」
鬼柳 京介 手札0→4
ダニエル LP3250
フィールド『ジェット・ウォリアー』(攻撃表示)
セット2
Pゾーン『竜穴の魔術師』『竜脈の魔術師』
手札3
「俺のターン、ドロー!まだだ!まだ俺は満足しちゃいねぇ!魔法カード、『復活の福音』!墓地のレベル7、8のドラゴン族モンスター、『ワンハンドレッド・アイ・ドラゴン』を蘇生する!」
ワンハンドレッド・アイ・ドラゴン 攻撃力3000
再び現れる百目の満足竜。不気味に目を蠢かせ、コナミのモンスターを睨む。
「『疫病狼』をコピー、効果発動!」
ワンハンドレッド・アイ・ドラゴン 攻撃力3000→6000
「バトル!『ワンハンドレッド・アイ・ドラゴン』で『ジェット・ウォリアー』へ攻撃!インフィニティ・サイト・ストリーム!」
「罠発動!『マジカルシルクハット』!デッキの魔法、罠と共に『ジェット・ウォリアー』をセット、シャッフル!」
『ワンハンドレッド・アイ・ドラゴン』が身体中より赤黒い霧を噴射し、口元より黒と紫が混ざった禍々しいブレスを撃ち出すも、コナミの投擲した2枚のカードと『ジェット・ウォリアー』の上にシルクハットが被さり、シャッフルされる事で回避される。コナミのデッキの回転度を上げ、複数の攻撃を防ぎ、次の展開の選択肢を増やす頼れるカードだ。尤も、フリーチェーンのカードが採用される現在ではバトルフェイズと発動が遅いのが難点だが。
「なら真ん中のシルクハットへ攻撃!」
「残念、『エレメンタルバースト』だ」
「チッ、だが『エレメンタルバースト』……?そうか、そう言う事か……!魔法カード、『アドバンスドロー』!『ワンハンドレッド・アイ・ドラゴン』をリリースし、2枚ドロー!」
鬼柳 京介 手札3→5
「魔法カード、『暗黒界の取引』、互いに1枚ドローし、1枚捨てる。そして魔法カード、『終わりの始まり』!墓地のワンハンドレッド2体とビートル2体、『死霊操りしパペットマスター』の闇属性モンスター5体を除外し、3枚ドロー!」
鬼柳 京介 手札3→6
「魔法カード、『復活の福音』!オーガ・ドラグーンを蘇生!」
煉獄龍オーガ・ドラグーン 守備力3000
「カードを3枚セットし、ターンエンドだ!」
鬼柳 京介 LP1900
フィールド『煉獄龍オーガ・ドラグーン』(守備表示)
セット3
手札2
鬼柳がコナミのセットしていた『エレメンタルバースト』を見て、何かに気づいたように舌打ちを鳴らす。恐らくは先程コナミが『ジェット・シンクロン』でサーチした『ジャンク・コレクター』とのコンボを見抜いたのだろう、直ぐ様関連性を看破するとは、やはり鋭い男だ。
だがこれは決まれば勝負の決定打となる。退く訳にはいかない。
「オレのターン、ドロー!」
「罠発動!『インフェルニティ・インフェルノ』!手札を2枚捨て、デッキから『インフェルニティ・ジェネラル』と『インフェルニティ・デス・ガンマン』を墓地へ!」
「ペンデュラム召喚!『慧眼の魔術師』!『ジャンク・コレクター』!」
慧眼の魔術師 攻撃力1500
ジャンク・コレクター 守備力2200
幾度も揺れ動くペンデュラム。振り子の軌跡が再び天に描かれ、2体のモンスターがコナミのフィールドに召喚される。このデュエルで過労気味となっている『魔術師』と屑鉄の収集者のお出ましだ。特に後者はコナミにとって奥の手の1つとなっている。
鬼柳相手に2つ目の奥の手は余り効果が無いだろうが。
「『ジャンク・コレクター』と墓地の『エレメンタルバースト』を除外し、その効果を発動!相手フィールド上のカードを全て破壊!ぶち撒けろ!」
「チッ、罠カード、『スキル・プリズナー』!オーガ・ドラグーンを対象とし、発動!」
これぞコナミの奥の手、『マジカルシルクハット』で『エレメンタルバースト』を落とし、『ジェット・シンクロン』でサーチした『ジャンク・コレクター』でコピーし、コストを無視して相手フィールドを一掃する。
相手モンスターは1体のみだが、これが通れば勝利は確実なのだ。勿体ぶってはいられない。
地がひび割れて火柱と氷柱を上げ、強風によって魔竜へ激突、爆煙が吹き荒れる。しかし――紫色の光がスポットライトのように回転し、霧を晴らす。そこにいたのは――。
「馬鹿な……!」
思わず見守っていたユートが驚愕の声を上げる。それもその筈だろう、何故ならそこにいたのは、傷1つ無い、魔竜の姿だったのだから。
「俺は墓地の『復活の福音』を除外し、ドラゴン族モンスター、オーガ・ドラグーンの破壊を防いでいたのさ――!」
そう、『復活の福音』は墓地のレベル7、8のドラゴン族モンスターを蘇生するだけでなく、墓地発動の破壊耐性を与える効果までも有している強力なカードだ。鬼柳はその効果を使い、見事『ジャンク・コレクター』と『エレメンタルバースト』のコンボを回避して見せた。
「墓地発動系……良いなぁ、欲しいなぁ……」
『オッドアイズ』や『スターダスト』を扱うコナミにとっても欲しいカードだ。思わず欲求が声として漏れる。
「『エレメンタルバースト』、破れたり!そして破壊された『運命の発掘』の効果で墓地のこのカード2枚分ドロー!」
鬼柳 京介 手札0→2
初見にも関わらず、鬼柳は『エレメンタルバースト』を攻略して見せた。とんでもないデュエリストだ。コナミとしてもこのコンボを信頼している為、ショックは大きい。
「ならこちらは賭けに出る!魔法カード、『モンスターゲート』!慧眼をリリースし、通常召喚可能なモンスターが出るまでデッキのカードを墓地に落とす!1枚目!『スキル・サクセサー』!2枚目!『オッドアイズ・ドラゴン』!特殊召喚する!来い!世にも珍しい二色の眼の龍!『オッドアイズ・セイバー・ドラゴン』!!」
オッドアイズ・セイバー・ドラゴン 攻撃力2800
ここで『慧眼の魔術師』の眼前に魔方陣が浮かび上がり、自身を代償として召喚術が発動される。魔方陣より現れるのは遊矢より譲り受けたコナミの信頼するモンスター、白銀の鎧を纏い、金色の剣を背より伸ばした2色の虹彩を輝かせる竜だ。このカードならば、とコナミの顔色が明るくなる。
「『ジェット・ウォリアー』を反転召喚!装備魔法、『メテオ・ストライク』を『オッドアイズ・セイバー・ドラゴン』に装備!手札の『D.D.クロウ』を捨て、『復活の福音』除外、バトル!『オッドアイズ・セイバー・ドラゴン』でオーガ・ドラグーンに攻撃!この瞬間、墓地の『スキル・サクセサー』を除外し、攻撃力を800アップ!」
オッドアイズ・セイバー・ドラゴン 攻撃力2800→3600
鬼柳 京介 LP1900→1300
「『ジェット・ウォリアー』で攻撃!」
「墓地の『光の護封霊剣』を除外し、ダイレクトアタックを防ぐ!」
「永続魔法、『エクトプラズマー』を発動し、ターンエンドだ。この瞬間、『エクトプラズマー』の効果で『オッドアイズ・セイバー・ドラゴン』をリリースし、攻撃力の半分のダメージを与える!」
白銀の竜を白い煙のようなオーラが包み込み、竜が雄々しき咆哮を上げて、その体躯を弾丸の如く鬼柳へ放つ。魂の籠った一撃、これで終わらせる――しかし、鬼柳はここで思わぬ反撃に出る。
「フ、この瞬間、俺は『インフェルニティ・ゼロ』以外の手札を捨て、このカードを特殊召喚する!」
インフェルニティ・ゼロ 守備力0
「――その、カードは――!」
登場した土偶のようなモンスターを見て、コナミの顔色が変わる。が、遅い。弾丸になったセイバー・ドラゴンがLPを削り取る。
鬼柳 京介 LP1300→0
鬼柳のLPが0を刻み、ユートとジルが勝利を確信して拳を握り締める。だが違う。LPが0になっても、デュエルは続いている。そう、世にも珍しい、LPを失ってもデュエルを終わらせない死神のカードによって。その証拠に、勝者である筈のコナミが歯軋りを鳴らしている。
「何が起こっているのだ……!?」
「死神は死なねぇ……!『インフェルニティ・ゼロ』がいる限り、俺のLPが0になろうと、俺は負けねぇ!」
「何と言う効果だ……!」
そう、これこそが『インフェルニティ・ゼロ』の恐るべき効果。LPが0を刻もうと、敗北しない。その出鱈目な効果を聞き、ユートとジルは勿論、鬼柳がここまで追い詰められなかった為、このカードを知らなかったセクトも驚愕する。が、当然デメリットもある。
「そして『インフェルニティ・ゼロ』は手札が0の時、戦闘破壊されず、ダメージを受ける度にこのカードにデスカウンターを置き、3つ以上となった場合に破壊される」
インフェルニティ・ゼロ デスカウンター0→1
「くっ――!」
ダニエル LP3250
フィールド『オッドアイズ・ドラゴン』(攻撃表示)『ジェット・ウォリアー』(攻撃表示)
『エクトプラズマー』セット1
Pゾーン『竜穴の魔術師』『竜脈の魔術師』
手札0
「俺のターン、ドロー!」
「罠発動!『和睦の使者』!」
「俺は『インフェルニティ・ミラージュ』を召喚!」
インフェルニティ・ミラージュ 攻撃力0
「リリースし、『インフェルニティ・デーモン』と『インフェルニティ・ネクロマンサー』を特殊召喚!」
インフェルニティ・デーモン 攻撃力1800
インフェルニティ・ネクロマンサー 守備力2000
「『デーモン』の効果で『インフェルニティ・ブレイク』をサーチし、セット!ネクロマンサーの効果で『インフェルニティ・リベンジャー』を特殊召喚!」
インフェルニティ・リベンジャー 守備力0
「レベル4の『デーモン』とレベル3のネクロマンサーにレベル1のリベンジャーをチューニング!シンクロ召喚!『ワンハンドレッド・アイ・ドラゴン』!!」
ワンハンドレッド・アイ・ドラゴン 攻撃力3000
「『ワンハンドレッド・アイ・ドラゴン』の効果でミラージュを除外し、コピー!リリースし、『デーモン』とネクロマンサー蘇生!」
インフェルニティ・デーモン 守備力1200
インフェルニティ・ネクロマンサー 守備力2000
「『デーモン』の効果で最後の『インフェルニティ・ブレイク』をサーチし、セット!ネクロマンサーの効果でデス・ドラゴン蘇生!」
インフェルニティ・デス・ドラゴン 攻撃力3000
再び現れる漆黒の魔竜。コナミもモンスターを過労させるが、鬼柳は少し、かなりやり過ぎだ。
「デス・ドラゴンの効果で『ジェット・ウォリアー』を破壊し、攻撃力の半分のダメージを与える!」
ダニエル LP3250→2200
「ぐぁっ……!」
魔竜によるブレスが自身のモンスターへ撃ち出され、コナミにまでも及ぶ。状況は最悪に近い。後2回ダメージを与えようとしても――彼のセットカードが厄介だ。
「ターンエンドだ。『エクトプラズマー』の効果で『デーモン』をリリースし、攻撃力の半分のダメージを与える」
ダニエル LP2200→1300
鬼柳 京介 LP0
フィールド『インフェルニティ・デス・ドラゴン』(攻撃表示)『インフェルニティ・ネクロマンサー』(守備表示)『インフェルニティ・ゼロ』(守備表示)
セット2
手札0
「オレのターン、ドロー!」
「ダブル罠発動!『インフェルニティ・ブレイク』!墓地の『インフェルニティ・インフェルノ』と『インフェルニティ・ガン』を除外し、ペンデュラムカードを破壊!」
「魔法カード、『貪欲な壺』!墓地の『E・HEROエアーマン』、『E・HEROブレイズマン』、『D.D.クロウ』、『ジェット・ウォリアー』、『エフェクト・ヴェーラー』を回収し、2枚ドロー!」
ダニエル 手札0→2
ことごとく自分の手が防がれ、コナミが焦りを浮かべる。やはり強敵だ。コナミの戦術とペンデュラムの特性を見抜き、徹底的に邪魔をする鬼柳。そしてコナミの手札ではこの危機を回避出来ない。使えない、ならば――。
「魔法カード『打ち出の小槌』!手札を全てデッキに戻し、ドロー!」
カードを入れ替える。ここ一番の大勝負。決着を賭け、コナミがデッキよりカードを引き抜き、その軌跡が三日月のようなアークを描く。引き抜かれたカードは――。
「来た!魔法カード、『シャッフル・リボーン』!墓地から蘇れ!『オッドアイズ・セイバー・ドラゴン』!!」
オッドアイズ・セイバー・ドラゴン 攻撃力2800
再びフィールドに蘇る、剣の竜。白銀の竜が天へと咆哮する。コナミはこのカードに、一発逆転を賭ける。
「バトル!『オッドアイズ・セイバー・ドラゴン』で『インフェルニティ・デス・ドラゴン』に攻撃!」
「ッ!何を――!?」
「忘れたのか!オレの墓地には、これがある!墓地の『スキル・サクセサー』を除外し、攻撃力を800アップ!」
オッドアイズ・セイバー・ドラゴン 攻撃力2800→3600
「この一撃と『エクトプラズマー』でカウンターを乗せる気か!」
これが、コナミの全力全開。全てを賭けた一撃にユートとジルが歓声を上げる。そして『オッドアイズ』のアギトへと大気が集束し、光輝く熱線が魔竜を呑み込む。これで――ゼロに2つ目のカウンターが乗る。
インフェルニティ・ゼロ デスカウンター1→2
「エンドフェイズ、『エクトプラズマー』の効果でダメージを――」
しかしその時、カチャリと、コナミの側頭部に固い何かの感触が当たり、『オッドアイズ』の一撃が止まる。一体何が――動揺し、視線をそこへと移せばコナミの側頭部へと、拳銃の銃口を向ける鬼のような面をしたガンマンの姿。これは――。
「お前こそ――俺の墓地にこいつがあるのを忘れていないか?この『インフェルニティ・デス・ガンマン』を!」
「ッ!」
そう、コナミが『モンスターゲート』で『スキル・サクセサー』を墓地に送ったように、鬼柳にはこんな時の為に『インフェルニティ・インフェルノ』で墓地送ったこのカードがある。
「『インフェルニティ・デス・ガンマン』。このカードは手札0の場合、相手がダメージを与えるモンスター、魔法、罠の効果を発動した時、こいつを除外する事で無効にし、相手は更に効果を使うかどうかを選択する。続く効果は俺のデッキトップを捲り、モンスターだった場合、お前が2000ダメージを受ける効果。そして魔法、罠の場合、俺に2000のダメージを与える効果――さぁ、引き金を引けよ」
突きつけられる銃口と選択、どうするか――昨今のデッキ構築はモンスターが重視され、魔法、罠は少ない。だが、この賭けを逃すとしたら、勝機は無くなる。ならば、この分の悪いロシアンルーレットに、乗るしか手は無い。何より、こんな所で逃げては――満足出来ない。
「当然――使う!」
「……そう言うと思ったぜ……!さぁ、運命のロシアンルーレット!銃弾は――!」
コナミの答えと共に、引き抜かれる1枚のカード、銃弾はコナミか、それとも鬼柳か。バクバクと心臓がうるさい程に早鐘を鳴らす。額より大粒の汗が垂れ、ポタリと地に落ちる。このデュエル中、コナミは何度も勝利の女神を口説き、そして――女神は、ニコリとコナミへと笑みを向ける。口説き、落とした――。翳されたカード、結果は――。
「――『インフェルニティ・リローダー』!俺の、勝ちだ――!」
しかし――女神は背後から現れた死神の鎌に切り裂かれ、血飛沫を上げてコナミの胸に倒れ伏す。勝利の女神が自身に微笑まないならば、用は無い。倒して、自分の手で強引に勝利を奪い取るのみ。
ダニエル LP1300→0
デス・ガンマンが引き金を引き、銃弾がコナミを貫く。勝者、鬼柳 京介。勝利の女神をも、この死神は狩り取る――。
「フ、久々に満足出来るデュエルだったぜ。立てるか?」
デュエルが終了し、ソリッドビジョンのモンスター達が消えいく中、鬼柳は満足そうな表情を浮かべ、コナミに歩み寄り、手を差し出す。
負けてしまった、悔しさが胸の奥から込み上げる。やはりこの男は強い。コナミは溜め息を吐き出し、晴れやかな表情でその手を受け取り、立ち上がる。
「次は負けん」
「それだけ言えりゃ大丈夫か……よし、お前等」
「?」
鬼柳がコナミやユート、ジルの3人を見渡し、ニヤリと笑みを浮かべる。一体何を企んでいるのか、若干、悪そうな顔だ。
「俺のチームに入れ」
突然告げられた勧誘の言葉――ユートとジルが目を見開く中、コナミがニヤリと笑みを浮かべ、その誘いに乗り、更に2人を驚愕させる。
「だがオレはレアだぜ」
この言葉の意味は、相変わらず分からなかったが――。
ヴレインズが面白い。ファイアウォールが予想以上に格好良かったです。出た回で寝取られたけど。ヴァレルロードが強過ぎて大丈夫なんだろうかとハラハラします。