遊戯王ARC―V TAG FORCE VS   作:鉄豆腐

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ただいまー(小並感)


第106話 エンジョイ!

収容所の左塔にて沢渡とムクロのライディングデュエルが行われている頃、ここ右塔でも、ボスの座を賭け、デュエルが行われようとしていた。

1人は人々を笑顔にするエンタメデュエルを信条としたエンタメデュエリスト、榊 遊矢。

そしてもう1人は――かつてシンクロ次元で名を馳せた元プロデュエリスト、徳松 長次郎。

 

遊矢は徳松を倒し、ここのボスとなり、この収容所に変革を起こす為、徳松は生意気な遊矢に現実を見せ、黙らせる為――激突する。

 

「尻尾巻いて逃げるなら今の内だぜ、小僧」

 

「逃げないさ、俺のデュエルは何時だって踏み出す勇気と共にある!」

 

両者共に気合いは充分、互いにデュエルディスクを構え、激しき闘いの火蓋を切って下ろす。

 

「「デュエル!!」」

 

先攻は遊矢だ。デッキからカードを5枚引き抜き、万全の布陣を敷く事に努める。まずは――得意のペンデュラム。相手が知らぬ召喚法で度肝を抜き、ペースを握る。

 

「魔法カード、『強欲で貪欲な壺』を発動!デッキトップから10枚を除外、2枚ドロー!」

 

榊 遊矢 手札4→6

 

「俺は『オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン』と『星読みの魔術師』でペンデュラムスケールをセッティング!これでレベル2から3のモンスターが召喚可能!」

 

「あぁん?何だこりゃあ……?」

 

遊矢のデュエルディスクの両端に2枚のカードが設置され、虹色の光が灯る。同時に彼の背に2本の光る柱が出現し、中に現れた遊矢のエースカードである真紅の竜と白い『魔術師』が咆哮し、天空に光の線を結び、眩き魔方陣を描き出す。見慣れぬカードに目を細める徳松。

遊矢は右手を翳し、宙で振り子が揺れ、魔方陣に孔が開く。

 

「揺れろ、魂のペンデュラム、天空に描け光のアーク!ペンデュラム召喚!『EMインコーラス』!」

 

EMインコーラス 守備力500

 

現れたのはショーの始まりを告げる歌を響かせるカラフルな3羽のインコ。遊矢を何度も救って来た優秀なモンスターだ。序盤に引き込めたのは大きい。

 

「そして『召喚僧サモンプリースト』を召喚!」

 

召喚僧サモンプリースト 攻撃力800

 

続けて召喚、フィールドに登場したのはローブを纏った魔法使いの翁。汎用性の高い優秀なモンスターであり、遊矢のカードとも相性が良い。

 

「召喚後、守備表示に、そして手札の魔法カードを捨て、効果発動!デッキからレベル4モンスター、『EMペンデュラム・マジシャン』を特殊召喚!」

 

EMペンデュラム・マジシャン 攻撃力1500

 

遊矢の魔法カードがサモンプリーストの魔力となり、彼が眼前に描いた紫の魔方陣より、赤い衣装にシルクハット、振り子を手にしたキーカードが現れる。序盤からこのカードの登場、全開で飛ばす遊矢にデュエルを観戦する権現坂とデニスが笑みを浮かべる。

 

「良いぞ遊矢!」

 

「Mr.ペガサスの修行の成果が出てるね……!」

 

「『EMペンデュラム・マジシャン』の効果発動!このカードとサモンプリーストを破壊し、デッキから『EMドクロバット・ジョーカー』と『EMバリアバルーンバク』をサーチ!俺はカードを1枚セットし、ターンエンドだ。この瞬間、『オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン』を破壊し、デッキから『慧眼の魔術師』をサーチ!」

 

榊 遊矢 LP4000

フィールド『EMインコーラス』(守備表示)

セット1

Pゾーン『星読みの魔術師』

手札3

 

「俺のターン、ドロー!俺は魔法カード、『花積み』を発動!デッキの『花札衛』3体をデッキトップに好きな順で置く!そして俺は『花札衛-松-』を召喚!」

 

花札衛-松- 攻撃力100

 

登場したのは何と花札をモチーフとしたモンスター。見た事の無いカード、一体どんな戦術が飛び出すのか、遊矢は期待を胸に身構える。

 

「こいつが召喚に成功した場合、デッキから1枚ドローし、互いに確認、『花札衛』モンスター以外ならば墓地に送るぜ。ドローだ!」

 

徳松 長次郎 手札4→5

 

「引いたカードは当然『花札衛』モンスター、『花札衛-松に鶴-』!このカードはレベル1の『花札衛』をリリースし、特殊召喚出来る!来な!」

 

花札衛-松に鶴- 攻撃力2000

 

カス札である松をリリースし、現れたのは光札の1枚、『クレーンクレーン』の姿が描かれた花札モンスターだ。レベル1にして攻撃力2000、何とも豪快なカードである。

 

「特殊召喚時、1枚ドローし、そのカードが『花札衛』ならば特殊召喚し、それ以外は墓地に送る!」

 

徳松 長次郎 手札4→5

 

「ドローカードは『花札衛-芒-』!よって特殊召喚!」

 

花札衛-芒- 攻撃力100

 

お次はまたもカス札、『ナチュル・コスモビート』がアップで描かれたモンスターだ。カンッと松に鶴にぶつかって合わさる。

 

「そして俺はこいつをリリースし、『花札衛-芒に月-』を特殊召喚!」

 

花札衛-芒に月- 攻撃力2000

 

またもカス札を捨て、光札と交換、今度は何やら真っ黒ゴムボールが描かれたカード。『クレーンクレーン』や『ナチュル・コスモビート』とは違い、見た事の無いモンスターだが――いや、これはモンスターの姿なのかと遊矢が首を傾げる。

 

「効果でドロー!」

 

徳松 長次郎 手札3→4

 

「ドローカードは『花札衛-柳-』!よって特殊召喚!」

 

花札衛-柳- 攻撃力100

 

今度は禁止魔法カード、『ハリケーン』のカードが描かれた花札。こうして見ると中々に面白いモンスターだ。ドローして特殊召喚等のギミックもワクワクして遊矢も使いたくなって来る。カンッ、と音を鳴らし、他2枚と合わさるカス札。そして――。

 

「柳をリリースし、『花札衛-柳に小野道風-』を特殊召喚!」

 

花札衛-柳に小野道風- 攻撃力2000

 

カス札から光札へ。お決まりとなった交換で登場したのは何やら見慣れぬ人型モンスターと『引きガエル』が描かれたモンスター。これでモンスターが3体、ペンデュラムも驚愕の展開力だ。

 

「後は分かるな?ドロー!」

 

徳松 長次郎 手札2→3

 

「ドローカードは『花札衛-桐-』!特殊召喚!」

 

花札衛-桐- 攻撃力100

 

カカンッ、甲高い音が響き、4体目の『花札衛』が現れる。今度は『テンタクル・プラント』が描かれたカードだ。

 

「リリースし、『花札衛-桐に鳳凰-』を特殊召喚!」

 

花札衛-桐に鳳凰- 攻撃力2000

 

洒落にならない。現れたのはスピリットモンスター、『鳳凰』が描かれたモンスター。とんでもない展開、これで徳松のフィールドには4体の攻撃力2000のモンスター。少し、不味い。

 

「ドローだ!」

 

徳松 長次郎 手札1→2

 

「ドローカードは『札再生』、魔法カードの為、墓地に送られるが――こいつが『花札衛』の効果で墓地に送られた場合、デッキトップから5枚を捲り、その中の魔法、罠1枚を手札に加える。『花合わせ』を手札に、さぁ、バトルだ!芒に月でインコーラスに攻撃!」

 

「インコーラスの効果でデッキから『EMセカンドンキー』を特殊召喚!」

 

「俺もモンスターを戦闘破壊した事で芒に月の効果発動!ドローだ!」

 

EMセカンドンキー 守備力2000

 

徳松 長次郎 手札2→3

 

「セカンドンキーの効果でデッキから『EMジンライノ』を墓地へ!」

 

攻撃力2000のモンスターが4体、確かに不味いが、この攻撃力ならば壁を用意すれば何とかなる。遊矢はロバの『EM』を呼び出し、攻撃を防ぎ墓地も肥やす。

 

「ふぅん、やるじゃねぇか。なら松に鶴でセカンドンキーに攻撃!破壊は出来ねぇが、バトルフェイズ終了時、効果でドロー!」

 

徳松 長次郎 手札3→4

 

『花札衛』の大量展開で消費したカードが見る見る内に回復し、4枚まで戻る。面倒な相手だ。だが4体とも攻撃力は2000、それを上回りさえすれば――そう、思った時だった。

 

「柳に小野道風をシンクロ素材にする場合、このカードを含むシンクロ素材のレベルは2として扱う事が出来る!」

 

「ッ!チューナー……!?シンクロ召喚か!」

 

柳に小野道風が2つの光のリングとなって弾け飛ぶ。チューナーモンスター、シンクロ召喚、そう、ここはシンクロ次元なのだ。シンクロをしても何らおかしくはない。こちらのモンスターが1体の為、手数が多い内にバトルをしてドロー効果を使おうと後回しにしたのだろう。合計レベルは8、一体どんなモンスターを出すのか――。

 

「レベル2の松に鶴、芒に月、桐に『鳳凰』にレベル2の柳に小野道風をチューニング!涙雨!光となりて降り注げ!シンクロ召喚!出でよ、『花札衛-雨四光-』!!」

 

花札衛-雨四光- 攻撃力3000

 

3体の『花札衛』が2つのリングを潜り抜け、一筋の閃光が貫き、眩き輝きがフィールドを照らす。それが晴れた先に現れたのは監獄のボス、秋雨の長次郎のエースモンスター。羽ばたいた鳥の飾りを着けた帽子を被り、松や桜を描いた着物を纏い、黒と赤の傘を持った、今までの花札型と違い、人型のモンスターだ。

 

「攻撃力3000……!」

 

「これだけじゃねぇ、魔法カード、『花合わせ』!デッキから攻撃力100の『花札衛』モンスター4体を効果を無効にし、攻撃表示で特殊召喚!」

 

「4体も!?」

 

驚くべきパワーカード、効果を無効にし、攻撃表示になるとは言え、とんでもない効果が炸裂する。

 

「来な!松!芒!柳!桐!」

 

花札衛-松- 攻撃力100

 

花札衛-芒- 攻撃力100

 

花札衛-柳- 攻撃力100

 

花札衛-桐- 攻撃力100

 

カカカカンッ、一気に4体のモンスターが展開され、フィールドに甲高い音が響く。これだけでは攻撃力100のモンスターが剥き出しになっているようなものだが――。

 

「魔法カード、『アドバンスドロー』!芒をリリースし、2枚ドロー!」

 

徳松 長次郎 手札2→4

 

『花札衛』が高いレベルのものが多い事を活かしたドローカードで更に手札を補充する徳松。そして――。

 

「柳をリリースし、『花札衛-牡丹に蝶-』を特殊召喚!」

 

花札衛-牡丹に蝶- 攻撃力1000

 

更なる展開、今回は花札においてタネ札と呼ばれるものだ。描かれているモンスターは『炎妖蝶ウィルプス』。そして大事な事は--このカードが、チューナーである事。

 

「効果でドロー!」

 

徳松 長次郎 手札3→4

 

「チ、やっぱ駄目みてぇだな。『花札衛』じゃない為、墓地に送るぜ。そしてこいつもシンクロ素材にする場合、素材全てをレベル2として扱える!レベル2の松と芒に、レベル2の牡丹に蝶をチューニング!シンクロ召喚!シンクロチューナー、『花札衛-月花見-』!」

 

花札衛-月花見- 攻撃力2000

 

2度目のシンクロ召喚、ここで現れたのは赤と黒の艶やかな着物に身を包み、簪で髪を纏めた大和撫子。右手に扇子、左手に盃を持ち、散り行く桜の雨を浴びるその姿は誰もが目を奪われる。だが――それだけじゃない、このモンスターは、シンクロモンスターの中でも特別なカード。

 

「シンクロ……チューナーだって!?」

 

シンクロチューナー、それはシンクロの先を掴むのにも必要不可欠なカードだ。尤も――徳松はそんな事知る筈も無く、出来ないのだが。その珍しいカードに遊矢が目を輝かせる。

 

「月花見の効果でドロー!」

 

徳松 長次郎 手札3→4

 

「ドローカードは永続魔法、『一族の結束』。発動するぜ。墓地の種族が一種類の場合、フィールドのその種族のモンスターの攻撃力を800アップ!」

 

花札衛-雨四光- 攻撃力3000→3800

 

花札衛-月花見- 攻撃力2000→2800

 

「デメリットが無いのか……」

 

今度は種族強化の永続魔法、これで雨四光は手のつけられない攻撃力を得、月花見も信頼出来るラインへアップした。益々厄介、攻略の糸口が潰されていく。遊矢は月花見の効果に戦慄しながら汗を垂らす。

 

「デメリットならあるぜ、とびっきりのな。カードを1枚セットし、ターンエンドだ」

 

徳松 長次郎 LP

フィールド『花札衛-雨四光-』(攻撃表示)『花札衛-月花見-』(攻撃表示)

『一族の結束』セット1

手札2

 

長い長い1ターンが終了し、漸く遊矢のターンへ。相手フィールドには強力なシンクロモンスターが2体、強化を受けた状態で存在している。どうやって攻略しようか、口元を吊り上げ、デッキトップのカードを引き抜いたその時――。

 

「俺のターン、ドロォ……ッ!?」

 

榊 遊矢 LP4000→2500

 

遊矢の頭上に、ダメージと言う名の雨が降り注ぐ。一気にLP1500が削られ、遊矢の視界が一瞬ながらも真っ白に染まり、チカチカと光る。一体何が起こっている――。くらくらとする頭を抑え、遊矢が何とか地を踏み締め、眼前を睨む。するとそこには――傘をこちらへ向ける、雨四光の姿――。

 

「相手がドローフェイズに通常のドローをした場合、雨四光の効果で1500のダメージを与える。それだけじゃねぇ、こいつがいる限り、『花札衛』は効果の対象にならず、効果破壊されない!」

 

「1500のバーンと全体耐性付与……!」

 

「とんでも無いね……!」

 

「なぁんか見た事があんだよなぁ、あいつ……」

 

相手がドローするだけで1500のバーン、つまりはLP4000なら3回でデュエルを終わらせる効果に遊矢とデニスが驚愕し、シンジが徳松を見て首を傾げる。

豪快な効果だ。果たして遊矢は何ターンもつか、バーンだけでなく、攻撃にも気をつけねばならない。しかも耐性までもあり、効果で突破も不可能だ。

 

「お上に逆らわねぇ方が身の為って事よ。賢く生きろよ、小僧」

 

「ッ!面白いじゃないか、俺、益々あんたとデュエルを続けたくなったよ」

 

「ッ、口の減らねぇ……!」

 

しかし遊矢には逆効果、戦意を鎮火させる所か、雨に打たれて尚燃え上がってしまった。

 

「罠発動!『三位一択』!融合モンスターを宣言し、互いのエクストラを確認、宣言した種類のモンスターが多い方のプレイヤーが3000回復する!」

 

「チッ、んなもんねぇよ」

 

榊 遊矢 LP2500→5500

 

「俺は『慧眼の魔術師』をセッティング!効果で破壊し、『時読みの魔術師』をデッキからセッティング!そして『EMドクロバット・ジョーカー』を召喚!」

 

EMドクロバット・ジョーカー 攻撃力1800

 

現れたのは継ぎ接ぎのシルクハットにトランプのマークを散りばめた燕尾服、黒いマスクを被った奇術師、遊矢の頼れるパートナーだ。ヒッポは泣いている。

 

「召喚時、『EMギタートル』をサーチ!ペンデュラム召喚!雄々しくも美しく輝く二色の眼!『オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン』!!『EMペンデュラム・マジシャン』!『EMインコーラス』!『慧眼の魔術師』!」

 

オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン 攻撃力2500

 

EMペンデュラム・マジシャン 守備力800

 

EMインコーラス 守備力500

 

慧眼の魔術師 守備力1500

 

まずはペンデュラムで布陣を整える。現れたのは遊矢の頼れるエースカード、2色の虹彩を輝かせる真紅の竜。赤き衣装のマジシャンに3羽のカラフルなインコ、そして秤を持った銀髪の『魔術師』。これでフィールドには5体のモンスターが揃った。

 

「『EMペンデュラム・マジシャン』の効果でスケールを破壊し、デッキから『EMリザードロー』と『EMオッドアイズ・ユニコーン』をサーチ!『EMギタートル』と『EMリザードロー』をセッティング!ギタートルの効果でドロー!リザードローを破壊し、もう1枚ドロー!」

 

榊 遊矢 手札3→4→5

 

「そして『EMオッドアイズ・ユニコーン』をセッティング!バトルだ!『オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン』で雨四光に攻撃!」

 

「何ぃ……!?」

 

攻撃力の低いモンスターによる攻撃、これにランサーズ以外のメンバーがどよめくが、何も遊矢は自爆特攻する気は無い。むしろその逆、雨四光を仕留める気満々である。

 

「『EMオッドアイズ・ユニコーン』のペンデュラム効果!『オッドアイズ』モンスターの攻撃宣言時、『EMドクロバット・ジョーカー』を対象として発動!攻撃モンスターの攻撃力に、対象のモンスターの攻撃力を加える!」

 

オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン 攻撃力2500→4300

 

「螺旋のストライクバースト!」

 

『オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン』のアギトより赤黒の螺旋状のブレスが放たれ、雨四光へと迫っていく。これが決まればバーンと耐性が失われる。しかし――。

 

「罠発動!『札改め』!このターン、『花札衛』は戦闘では破壊されない!」

 

「ッ!だが『オッドアイズ』の効果により、ダメージは2倍となる!リアクション・フォース!」

 

徳松 長次郎 LP4000→3000

 

「チッ!」

 

そう簡単には届かない。徳松の発動したカードにより、雨四光が傘を盾にしてブレスを防ぐ。手強い相手だ。だがダメージは与えた。遊矢は前向きに考える。

 

「ちょっとヤバいけど……何とかなるか……!カードを3枚セットして、ターンエンドだ!」

 

「この瞬間、雨四光の効果!俺は次の相手のスタンバイフェイズまでこいつの効果を無効にするか、ドローフェイズをスキップするか1つの効果を選ぶ!」

 

「――そうか、これが、強力なバーンと超耐性の代わりのデメリット……!」

 

「当然――ドローフェイズをスキップ!」

 

「なっ――!?」

 

1500ものバーンに超耐性の代償、そして維持とは言え、簡単にドローを捨てる徳松に遊矢が驚愕する。何もおかしい事では無いが――デュエリストにとって、ドローは可能性、一体何がこの男をそうさせるのか――?

 

榊 遊矢 LP5500

フィールド『オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン』(攻撃表示)『EMドクロバット・ジョーカー』(攻撃表示)『EMペンデュラム・マジシャン』(守備表示)『EMインコーラス』(守備表示)『慧眼の魔術師』(守備表示)

セット3

Pゾーン『EMオッドアイズ・ユニコーン』『EMギタートル』

手札1

 

「思い出したぜ、あいつエンジョイ長次郎だ!」

 

「あっ、マジだ!サイン貰おうかな」

 

ここでうんうんと唸っていたシンジが漸く徳松の事を思い出し、隣のクロウも声を上げる。エンジョイ長次郎、それはクロウ達がまだ子供の頃、奇跡のドローで劣勢を覆し、勝利して来た、所謂遊矢と同じエンタメデュエリストなのだが――。

 

「その名で呼ぶんじゃねぇ!」

 

もう、あの頃の相手を知り、己を知り、デュエルで絆を繋いだ彼は、ここにはいない。

 

「今の俺は秋雨の長次郎、運に頼るドローなんざしねぇ!どう逆らっても運命は変わらねぇなら、俺はテメェの運命の自爆を待つ!何が楽しいデュエルだ、その笑顔は嘲笑に変わるんだよ!」

 

コモンズとトップスの垣根を無くし、真の平等を求め、トップスに挑んだ彼。しかし――その中で彼は惨敗し、笑顔は嘲笑へと変えられていく。ならば――最初から、笑顔なんていらない。ましてや再起を賭けたデュエルで、プレッシャーに呑まれ、イカサマに手を伸ばした自分に、その資格は無いと、彼はドローと共に捨てたのだ。辛い事があって、惨めな自分が嫌で目を反らす。

それは――昔の遊矢と同じ。ゴーグルを装着し、視界を狭くしていた遊矢と同じ。だけど――今の遊矢は、彼とは違う。頼もしい仲間がいる。それだけで――闘える。

 

「辛い事があったのは分かる。だから傷つきたくないのも分かる。だけど――だからこそ、進まなきゃいけないんだ!勇気を持って、一歩前へ!その涙の種だって、きっと笑顔の花を咲かせる!例え誰があんたを嘲笑っても――俺はあんたを笑ったりしない!」

 

手を差し伸べる――これが遊矢のデュエル。今まで彼が培って見つけたもの。敵だろうと理解して、友となる。無敵のデュエル。世界中の誰もと友となり、笑顔にする。それは果てしなく茨の道、だけど――こうして手を繋ぎ輪を広げていけば、きっと何とかなると遊矢は信じている。

 

「ッ――!うるせぇっ!俺のターン、雨四光と月花見の効果でドローフェイズをスキップ!だが月花見の効果でドローがロックされようと、ドロー出来る!」

 

「捨ててないじゃないか、未来を信じる事を!」

 

「黙れってんだよぉっ!例えカードが引けたって――俺の奇跡のドローは死んじまった!」

 

雨四光と月花見、2体のコンボによってデメリットを抑えつつ解消する。だけど――昔のような奇跡は起きないのだ。

 

「ドロー!」

 

徳松 長次郎 手札2→3

 

「ドローカードは『花札衛-桐に鳳凰-』!月花見の効果で召喚条件を無視して特殊召喚し、このターンダイレクトアタックを可能に!」

 

花札衛-桐に鳳凰- 攻撃力2000

 

「更にこいつの効果でドロー!」

 

徳松 長次郎 手札2→3

 

「チッ、やっぱ望んだカードは来やがらねぇ、墓地に送るぜ。そして墓地の『花積み』を除外し、墓地から『花札衛-桐-』を回収し、特殊召喚!」

 

花札衛-桐- 守備力100

 

「バトルだ!雨四光で『オッドアイズ』に攻撃ィ!」

 

「手札のバリアバルーンバクを捨て、戦闘ダメージを0に!」

 

雨四光が傘から針を飛ばし、『オッドアイズ』を串刺しにして破壊する。更に針は遊矢にも襲いかかるが、その前に紫色の風船のように膨らんだバクが現れ、遊矢を包み込んで守る。

 

「月花見でドクロバット・ジョーカーへ攻撃!」

 

「速攻魔法、『揺れる眼差し』!ペンデュラムゾーンの2枚を破壊し、相手に500のダメージを与え、『相生の魔術師』をサーチ!更に罠発動!『ダメージ・ダイエット』!ダメージを半分に!」

 

「今更何を――?」

 

榊 遊矢 LP5500→5000

 

徳松 長次郎 3000→2500

 

「『花札衛-桐に鳳凰-』でダイレクトアタック!」

 

榊 遊矢 LP5000→3000

 

「ぐっ……!」

 

「戦闘ダメージを与えた事でドロー!」

 

徳松 長次郎 手札2→3

 

雨のように降り注ぐ猛攻、強烈な攻撃を受け、それでも遊矢は防ぎ切る。だが――徳松もまたドローが出来ぬと言うのに手数を増やし、遊矢のLPは3000、後2回、雨四光のバーンを食らえば終わりだ。

 

「魔法カード、『アドバンスドロー』!」

 

徳松 長次郎 手札2→4

 

「カードを1枚セットして、ターンエンドだ!」

 

徳松 長次郎 LP2500

フィールド『花札衛-雨四光-』(攻撃表示)『花札衛-月花見-』(攻撃表示)『花札衛-桐-』(守備表示)

『一族の結束』セット1

手札3

 

ここが正念場――遊矢は覚悟を決め、デッキトップからカードを引き抜く。同時に雨四光より降り注ぐ光の雨。防げ、防げ、全力で防げ――。雨を通り過ぎれば――。

 

「俺のターン、ドローッ!」

 

「雨四光のバーンを受けろぉっ!」

 

「ッ、墓地の『ダメージ・ダイエット』を除外し、効果ダメージを半分に!」

 

榊 遊矢 LP3000→2250

 

虹のアークが、空に描かれる。

 

「魔法カード、『マジカル・ペンデュラム・ボックス』発動!2枚ドローし、その内のペンデュラムモンスターを手札に!ペンデュラムは1体、よって1枚のみを手札に加える!」

 

榊 遊矢 手札1→3→2

 

「墓地の『シャッフル・リボーン』を除外し、『慧眼の魔術師』をデッキに戻し、1枚ドロー!」

 

榊 遊矢 手札2→3

 

「『EMペンデュラム・マジシャン』をリリースし、アドバンス召喚!『光帝クライス』!」

 

光帝クライス 攻撃力2400

 

光を纏い、現れたのは沢渡も使う黄金の帝王。ペンデュラムと相性が良く、『ブレイブアイズ・ペンデュラム・ドラゴン』の素材にもなる為、投入されたカードだ。

 

「クライスとインコーラスを破壊し、2枚ドロー!」

 

榊 遊矢 手札2→4

 

「『相生の魔術師』と『相克の魔術師』でペンデュラムスケールをセッティング!ペンデュラム召喚!『オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン』!!『EMペンデュラム・マジシャン』!『EMリザードロー』!『カードガンナー』!『時読みの魔術師』!」

 

オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン 攻撃力2500

 

EMペンデュラム・マジシャン 攻撃力1500

 

EMリザードロー 守備力600

 

カードガンナー 攻撃力400

 

時読みの魔術師 守備力2300

 

次々と登場する遊矢のモンスター。これでフィールドに5体のモンスターが揃い踏み、ここから一気に攻めに転じる。

 

「『EMペンデュラム・マジシャン』でスケールを破壊し、『EMスプリングース』と『EMギッタンバッタ』をサーチ!さぁ、まだまだ盛り上げて行きましょうか!『カードガンナー』の効果でデッキトップのカード3枚を墓地に送り、攻撃力を1500アップ!」

 

カードガンナー 攻撃力400→1900

 

「魔法カード、『手札抹殺』!手札2枚を新たに得る!良し来た!魔法カード、『一時休戦』!互いに1枚ドロー、次のターン終了までダメージを0に!」

 

榊 遊矢 手札1→2

 

徳松 長次郎 手札4→5

 

「速攻魔法、『サイコロン』!サイコロを振り、出た目の効果を適用!」

 

「ギャンブルカードか……!」

 

「面白いだろう?さぁ、運命のダイスロール!」

 

何とここで発動されたのは汎用カードの『サイクロン』では無く、『サイコロン』。エンタメの為だろうが――分の悪い賭け、これが失敗すれば遊矢はダメージを受ける。サイコロがソリッドビジョンによって出現し、風に吹かれて飛翔、地に落ちる。結果は――5、最高の結果だ。

 

「『一族の結束』とセットカード破壊!そして魔法カード、『置換融合』!フィールドの『オッドアイズ』と『時読みの魔術師』で融合!融合召喚!出でよ!秘術ふるいし魔天の龍!『ルーンアイズ・ペンデュラム・ドラゴン』!」

 

ルーンアイズ・ペンデュラム・ドラゴン 攻撃力3000

 

融合召喚、青とオレンジの渦が発生し、その中に真紅の竜と白の『魔術師』が飛び込んで混ざり合い、ルーンの眼を輝かせる竜が天を駆ける。背負った三日月は満月となり、右目を金属で覆った真紅の竜。このドラゴンこそが、窮地を覆す鍵となる。

 

「バトル!『カードガンナー』で月花見へ攻撃!破壊された事で1枚ドロー!」

 

榊 遊矢 手札0→1

 

「そしてルーンアイズは効果で連続攻撃を可能としている!月花見、雨四光に攻撃!連撃のシャイニーバーストッ!」

 

「相撃ちだと――っ!?」

 

ルーンアイズの背のリングが2ヵ所輝き、2本の熱線が月花見に襲いかかり、爆散させる。しかし雨四光は最後の反撃にその傘を槍のように投擲し、ルーンアイズの胸の宝玉を砕く。

 

「『EMペンデュラム・マジシャン』で桐へ攻撃!」

 

「やらせるかよっ!桐の効果!バトルフェイズを終了し、ドローッ!」

 

徳松 長次郎 手札3→4

 

「カードを1枚セットし、ターンエンド!」

 

榊 遊矢 LP2250

フィールド『EMペンデュラム・マジシャン』(守備表示)『EMリザードロー』(守備表示)

セット1

手札0

 

激しい攻防、熱い駆け引き、見るも楽しいデュエル――この全てが観客達を盛り上がらせ、熱狂させる。ああ――これだ、これが求めていたデュエル。思い出す、込み上げる笑み。遊矢を見て、徳松の表情に光が差す。結局、この少年の思い通りか。

だが、悪くない。ここまでされて――黙っていては男が廃る。何より――自分もデュエルを、楽しみたくなって来た。さぁ、エンジョイ長次郎の復活だ――。

 

「面白い……!上等だぜ小僧!見せてやるよ、エンジョイ長次郎、奇跡のドローを!俺のターン、ドローフェイズはスキップされ――俺は『花札衛-松-』を召喚!」

 

花札衛-松- 攻撃力100

 

「効果でドロー!エンジョイ!」

 

徳松 長次郎 手札4→5

 

「ドローカードは『花札衛-桜に幕-』!効果発動!こいつを公開し、1枚ドロー!『花札衛』だった場合、桜に幕を特殊召喚!エンジョイ!」

 

徳松 長次郎 手札5→6

 

「ドローカードは『花札衛-萩に猪-』!よって特殊召喚!」

 

花札衛-桜に幕- 攻撃力1000

 

「そして松をリリースし、萩に猪を特殊召喚!」

 

花札衛-萩に猪- 攻撃力1000

 

「効果でドロー!エンジョイ!」

 

徳松 長次郎 手札4→5

 

「引いたのは芒!萩に猪の効果でリザードローを破壊!そして特殊召喚!」

 

花札衛-芒- 攻撃力100

 

「効果で手札の『花札衛』を公開し、戻してドロー!エンジョイ!」

 

恐ろしい回転力でドロー、ドロー、ドロー、強力なドローが炸裂し、奇跡が次々と巻き起こる。同時に上がるボルテージ、そして――。

 

「芒をリリースし、『花札衛-牡丹に蝶-』を特殊召喚!」

 

花札衛-牡丹に蝶- 攻撃力1000

 

「更にドロー!エンジョイ!」

 

徳松 長次郎 手札2→3

 

「ドローカードは柳!牡丹に蝶の効果でテメェのデッキトップから3枚を確認!……全てデッキボトムに戻すぜ。そして特殊召喚!」

 

花札衛-柳- 攻撃力100

 

「柳の効果ぁ!墓地の桐を戻し、ドロー!エンジョイ!」

 

徳松 長次郎 手札2→3

 

カカカカンッ、甲高い音を鳴らして繋がる『花札衛』。これでフィールドには5体のモンスター。とんでもない展開力とドロー。これが――エンジョイ長次郎――。

 

「へっ、俺の目を覚ましてくれた礼だ、特等席で楽しみな!蝶の効果で全員レベル2として扱い、レベル2の柳、桐、猪、桜にレベル2の蝶をチューニング!その神々しきは聖なる光。今、天と地と水と土と金となりて照らせ。シンクロ召喚!『花札衛-五光-』!!」

 

花札衛-五光- 攻撃力5000

 

5体を使用したシンクロ召喚、レベル10――フィールドを5つの光が照らし、現れたのは神々しき鎧を纏い、肩から腕にかけてリングを身につけ、波紋が広がる名刀を手にした究極の『花札衛』。攻撃力5000――正しく最強格のシンクロモンスターに相応しい。

 

「魔法カード、『打ち出の小槌』!手札を交換だ!……やっと来てくれたか……!くくっ、これだからデュエルはやめらんねぇ!魔法カード発動――『超こいこい』!!」

 

「ッ!来たぁーッ!!」

 

そして放たれる、エンジョイ長次郎の代名詞。最後の剣。このカードの発動に、監獄中が盛り上がる。

 

「こいつはデッキの上から3枚カードを捲り、その中の『花札衛』を可能な限り、召喚条件を無視し、効果を無効、レベル2として特殊召喚するカード。だが――ハズレを引けば、そのカードを除外し、LPを1000失う!」

 

「面白いッ!」

 

分の悪い、ハズレを引けば、負ける賭け。だが――だからこそデュエルは楽しくなる。この一瞬が、何よりも輝く。さぁ、勇気を持って、一歩前へ。徳松はデッキトップに手を添え、一気に引き抜く。

 

「「「こいこいこい!!」」」

 

「1枚目ぇ!エンジョイ!『花札衛-萩に猪-』!」

 

「「「こいこいこい!!」」」

 

「2枚目ぇ!エンジョイ!『花札衛-紅葉に鹿-』!」

 

「「「こいこいこい!!」」」

 

「3枚目ぇ!エンジョイ!『花札衛-牡丹に蝶-』!」

 

花札衛-萩に猪- 攻撃力1000 レベル7→2

 

花札衛-紅葉に鹿- 攻撃力1000 レベル10→2

 

花札衛-牡丹に蝶- 攻撃力1000 レベル6→2

 

猪鹿蝶、揃い踏み。圧倒的な豪運を見せつける徳松に監獄が震え上がる。エンジョイ長次郎、大復活。相対する遊矢も額から汗を流しながらニヤリと笑みを浮かべ、闘志を更に燃やす。眼前にいるのは紛れもなく、一流のエンタメデュエリスト。自らも目指す壁。これ以上に嬉しい相手はいない。

 

「越えて見せる……っ!」

 

「さぁ、レベル2となった猪と鹿にレベル2の蝶をチューニング!その猛き事猪の如く!その勇壮なる事鹿の如く!その美しき事蝶の如く!シンクロ召喚!『花札衛-猪鹿蝶-』!!」

 

花札衛-猪鹿蝶- 攻撃力2000

 

現れる最後の『花札衛』。昔、徳松の相棒として活躍したフェイバリットカードと、進化した彼の切り札が並び立つ。猪の顔を模した鎧、鹿の頭に角を伸ばした兜に杖、そして左腕に装着された蝶の籠手。このカードと五光が遊矢を封じる。

 

「装備魔法、『最強の盾』を猪鹿蝶に装備!攻撃力を守備力分アップ!」

 

花札衛-猪鹿蝶- 攻撃力2000→4000

 

「更に!墓地の『花札衛-月花見-』を除外し、次の相手ターン終了まで、相手は墓地のカード効果を使えず、蘇生が不可能となる!ターンエンドだ。言っておくが――五光には1ターンに1度、魔法、罠の効果を封じる効果がある。さぁ、どんな手で切り抜ける!」

 

徳松 長次郎 LP2500

フィールド『花札衛-五光-』(攻撃表示)『花札衛-猪鹿蝶-』(攻撃表示)

『最強の盾』

手札0

 

ペンデュラムモンスターは破壊してもエクストラデッキに戻り、蘇る。『一時休戦』でダメージが与えられない以上、下手に動いて『EMペンデュラム・マジシャン』を特殊召喚させる事を避けたのだろう、熱くなっている筈なのに冷静な判断だ。

モンスターが2体にバックが1枚。対する相手は攻撃力5000と4000のモンスター。しかも魔法、罠封じに墓地封じと来た。

ピンチもピンチ、大ピンチ。だが、それがどうした。この逆境が楽しくて仕方無い。ここを乗り越えれば――それこそ面白い。諦めるつもりは毛頭無い。負けるつもりも更々無い。

相手が奇跡のドローの持ち主なら、こちらは軌跡のドローで対抗する。

 

「さぁさぁ、ここ一番の大勝負!私が引けばまだまだ勝負は分からない!引けなければMr.徳松の勝利となるでしょう!半か丁か!一世一代の賭け、ご覧あれ!お楽しみはまだこれから!さぁ、皆様ご一緒に!こい、こい、こい――!」

 

「ハハッ、やるねぇ!だが――出来るかな!」

 

「フ、これが遊矢のデュエル、相手と同じ土俵に立ち、理解し、自らの力とする!奴だからこそ出来る芸当だ」

 

ニヤリ、口の端を大きく吊り上げ、徳松と同じように腰を据え、居合いのような構えでデッキトップに手を添える遊矢。これが遊矢の変幻自在、千変万化のデュエル。徳松のデュエルを吸収し、自分のものとした彼なりのエンジョイデュエル。その粋な姿に、徳松は笑みを浮かべ、囚人達が熱狂して声を合わせる。

 

「「「こいこいこい!!」」」

 

「こい、こい、こい――!」

 

「「「こいこいこい!!」」」

 

全神経を2本の指先に集中し――一瞬、閃光が煌めき、遊矢の指先から1枚のカードが抜刀される。

 

「エンジョォォォォォイッ!!」

 

このドローが描くアークは、奇蹟の軌跡。遊矢は引き抜かれたカードに視線を移し、すかさず発動して見せる。

 

「魔法カード発動!『ブラック・ホール』!」

 

「ハッ、それがおめぇさんの答えか!だけど残念だったな!五光の効果で無効だ!」

 

発動されたカードにより、フィールドに光を呑み込む『ブラック・ホール』が発生、徳松のモンスター全てを破壊しようとするも、五光の剣閃で切り裂かれる。逆転のカードも、終わったか――そう、誰もが思った時。

 

「やっぱり、ドロー勝負じゃ敵わないな……!だけど、勝負は貰う!」

 

「何――!?」

 

「俺のフィールドには、まだカードが残っている!リバースカードオープン!魔法カード、『龍の鏡』!」

 

『ブラック・ホール』が青とオレンジ、融合の渦へと変化、中から赤と緑、2つの光が大きく輝く。

 

「墓地のルーンアイズとクライスを融合!融合召喚!現れ出でよ!気高き眼燃ゆる勇猛なる龍!『ブレイブアイズ・ペンデュラム・ドラゴン』!!」

 

ブレイブアイズ・ペンデュラム・ドラゴン 攻撃力3000

 

嵐を潜り抜け、黄金の角と三日月を背負った竜が咆哮する。『オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン』を一回り大きくし、正当進化させたような、勇気を刻んだモンスター。これが遊矢の、最後のカード。

 

「ブレイブアイズの効果!融合召喚時、相手モンスター全ての攻撃力を0に!」

 

「何ぃ!?」

 

花札衛-五光- 攻撃力5000→0

 

花札衛-猪鹿蝶- 攻撃力4000→0

 

これで逆転、見事窮地を覆した遊矢。その光景を見て、徳松は呆然とした表情から目を細め、参ったとばかりに両手を上げる。

 

「やるじゃねぇか……小僧」

 

「ブレイブアイズで五光へ攻撃!灼熱のメガフレイムバースト!」

 

徳松 長次郎 LP2500→0

 

決着、勝者、榊 遊矢。見事彼はこのデュエルで、エンタメデュエリストとしての成長を見せた。

 

「へへっ、負けちまったよ……」

 

「ボス……」

 

「徳松さん……」

 

負けたと言うのに、晴れやかな気分となった徳松が笑みを浮かべる。やはり――デュエルは楽しい。胸に染みるような思いを噛み締める中、差し出される手が1つ。遊矢だ。徳松はフッ、と笑みを溢し、その手を取って立ち上がる。

 

「これからはおめぇがここのボスか……へへ、左塔との交流戦、楽しみにしてるぜ!」

 

「……へ?」

 

 

 

 

 

 

 




お待たせして申し訳ありません。やっとこさ用が片付き、通常投稿が可能になりました。
と言う訳で今回は徳松さん回。アニメでもやってたんですが、徳松さんの出番は少なくなりそうなのでデュエル展開を変えて書きました。
次回はコナミ君側の話になります。沢渡さんの子分は座っててね。

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