※この作品は全年齢向けの至って健全なものです。
孤児院の広場にて、簡素なデュエルコートとも言えるそこで、コナミVSユーゴ、ユートとユーゴの意地を賭けた代理デュエルは未だに続いていた。観客となった柚子やユート、ツァン、龍亞龍可が固唾を飲んで見守る中、こちらの方が気になったのか、教会よりセクトがひょこっと顔を出す。
「……何やってんだよお前等……アリ?ユーゴじゃねぇか」
「セクト……今なんかダニエルとユーゴがデュエルしてるんだよ」
「へぇー面白そうじゃん、見たところユーゴのピンチか、ターンは?」
「今ユーゴのターンに入る」
そう、丁度今コナミのターンが終了し、ターンプレイヤーはユーゴに移行する。フィールドには『クリアウィング』のみ、対するコナミはシンクロモンスター2体に上級モンスター1体の強力な布陣、ここからどう盛り返すか――
「俺のターン、ドロー!速攻魔法、『魔力の泉』を発動!2枚ドローし、1枚捨てる!」
ユーゴ 手札2→4→3
「よし――墓地の『スピードリバース』を除外し、ベイゴマックスを回収、更に魔法カード、『ヒドゥン・ショット』発動!墓地のタケトンボーグと赤目のダイスを除外し、メテオバーストとセイバーを破壊!」
「ッ!いや、ダメか……!墓地の『仁王立ち』を除外し、このターンの攻撃をメテオバーストに絞る!」
除外するコストが必要なものの、1枚で2枚を破壊する強力なカードが炸裂する。今のコナミにはこれを防ぐ手立ては無い。正確には『スターダスト』の効果があるが――バトルフェイズでは無い為、すかさず『クリアウィング』で無効にされる事になってしまう。せめて少しでも消費を抑える為、墓地のカードでこのターンを凌ぐ。
「ベイゴマックスを召喚!」
SRベイゴマックス 攻撃力1200
ここで変わらずベイゴマックス、召喚、特殊召喚問わずに『スピードロイド』をサーチ出来るこのカードは実に強力無比と言える。こうして再利用が容易いと言う点も含めて優秀だ。
「最後のタケトンボーグをサーチ、特殊召喚!」
SRタケトンボーグ 守備力1200
「リリースし、『赤目のダイス』をリクルート!」
SR赤目のダイス 守備力100
「効果でベイゴマックスのレベルを4に変更!」
SRベイゴマックス レベル3→4
「そしてレベル4となったベイゴマックスに、レベル1の赤目のダイスをチューニング!双翼抱く煌めくボディー、その翼で天空に跳ね上がれ!シンクロ召喚!現れろ!『HSRマッハゴー・イータ』!」
HSRマッハゴー・イータ 攻撃力2000
現れたのはピンク色の鮮やかなボディーの羽子板を模したシンクロモンスターだ。チャンバライダーやズールを出さなかったのは除去される事を考えてか、それともこのカードでコナミのエクシーズやシンクロの妨害を狙ってか、いずれにせよ、出しておいて損するカードでは無いか。
「カードを2枚セットし、ターンエンド」
ユーゴ LP1800
フィールド『クリアウィング・シンクロ・ドラゴン』(攻撃表示)『HSRマッハゴー・イータ』
セット2
手札0
「オレのターン、ドロー!魔法カード、『ペンデュラム・ホルト』!エクストラデッキにペンデュラムカードが3枚以上ある為、2枚ドロー!」
ダニエル 手札4→6
「ペンデュラム召喚!『刻剣の魔術師』!『竜脈の魔術師』!『慧眼の魔術師』!『ジャンク・コレクター』!」
刻剣の魔術師 攻撃力1400
竜脈の魔術師 攻撃力1800
慧眼の魔術師 攻撃力1500
ジャンク・コレクター 守備力2200
窮地のユーゴに対し、容赦なくその手を進め、追い撃ちをかけるコナミ。まずはペンデュラムで基盤を固める。フィールドに現れる5体のモンスター、そして――。
「『ジャンク・コレクター』と墓地の『エレメンタルバースト』を除外し、相手フィールドのカードを全て破壊!」
「その効果はモンスター効果だろう?なら無効にするぜ!ダイクロイック・ミラー!」
『ジャンク・コレクター』が光輝き、弾けてエレメントを解放、フィールドを蹂躙しようとしたその時、『クリアウィング』の双翼に紋様が走り、光の線が飛び出して『ジャンク・コレクター』を串刺しにして破壊する。既に除外されている為、破壊扱いにならず、攻撃力はアップしないが、これは止めるしかない。そしてこれは――コナミの思い通りだ。全ては『スターダスト』の効果を通す為、もしも『スターダスト』の効果を発動しようと、勘の良いユーゴの事だ。それを無視して『ジャンク・コレクター』に備えるだろう。
「『スターダスト』の効果で自身に1ターンに1度の耐性を与える!波動音壁!」
「成程、そう来たか……!」
「バトル!『スターダスト』で『クリアウィング』に攻撃!」
「墓地の三つ目のダイスを除外し、攻撃を無効にする!」
「構わん、速攻魔法、『ダブル・アップ・チャンス』!『スターダスト』の攻撃力を倍にし、再攻撃!流星突撃!」
閃光竜スターダスト 攻撃力2500→5000
「チッ、罠発動!『シンクロ・バリアー』!マッハゴー・イータをリリースし、このターンのダメージを0に!迎え撃て!旋風のヘルダイブスラッシャーッ!」
両シンクロドラゴン、一騎討ち、2人の指示を受け、漸くかと言った様子で2体の竜が飛び出し、天空でドッグファイトが繰り広げられる。飛び交う軌跡がまるで光の尾のように交差し、ぶつかり、火花を散らす。切り裂く剛爪、食らい合うアギト、衝突するブレス。最後に2体が己の体躯全てを投げ出し――ぶつかり合う。
『スターダスト』の星屑を纏い、高速で突き進む流星突撃、『クリアウィング』の翼に風を逆巻いて切り裂く旋風のヘルダイブスラッシャー。次元を越え、時を越えた勝敗は――『スターダスト』に軍配が上がる。
「ユーゴの『クリアウィング』が……!」
「破壊された……!」
今まで破壊されず、不敗神話を築いていた『クリアウィング』の破壊、それを見て、ツァンやセクトを動揺させる。まさかまさかの展開、負けはしても、『クリアウィング』を守って来たユーゴにとって、この一撃は何よりも重い。
「くぅぅぅぅッ!燃えるぜ!面白くなって来やがった!」
ところが――ユーゴ本人はあっけからんと笑い、益々このデュエルに闘争心を燃やす。全くもってデュエルバカと言う事か。楽しそうにデュエルをするユーゴを見て、コナミもまた、ニヤリと笑う。
「カードを1枚セットし、ターンエンドだ!」
「この瞬間、罠発動!『裁きの天秤』!俺の手札、フィールドのカードはこれ1枚!お前のフィールドのカードは7枚!よって6枚ドロー!」
ユーゴ 手札0→6
ここでユーゴが窮地を活かし、一気に手札を補充する。これでコナミに充分対抗出来る。ここで終わるつもりは無い。楽しいデュエルはまだまだ始まったばかりなのだ。
ダニエル LP4000
フィールド『閃光竜スターダスト』(攻撃表示)『刻剣の魔術師』(攻撃表示)『竜脈の魔術師』(攻撃表示)『慧眼の魔術師』(攻撃表示)
セット1
Pゾーン『竜穴の魔術師』『賤竜の魔術師』
手札3
「俺のターン、ドロー!魔法カード、『カップ・オブ・エース』!表ぇ!2枚ドロー!」
ユーゴ 手札6→8
「手札の『サンダー・ドラゴン』を捨て、同名カードを2体サーチ!魔法カード、『星屑のきらめき』を発動!墓地からレベル7になるようにモンスターを除外し、墓地の『クリアウィング』を蘇生!」
「ッ、チェーンして『スターダスト』の効果で自身を守る!」
「当然そうなるよなぁ!」
クリアウィング・シンクロ・ドラゴン 攻撃力2500
再びフィールドに舞い戻る白き竜。やっと破壊したと思ったらこんなにも簡単に復活するとは。いや、ユーゴのデッキがエースである『クリアウィング』を中核として活躍させる為に構築されているからか。たった1枚の好きなカードに全力を注ぎ込む。これもまたデュエリストとしての形であり、コナミとしても好ましく思う戦術だ。
「『SRアクマグネ』を召喚!」
SRアクマグネ 守備力0
次に現れたのは刃物のようなU字型の磁石の翼を広げた悪魔のようなモンスター。レベルは1、このモンスターでどう出て来るのか。
「アクマグネの召喚時、相手モンスター1体とこのカードでシンクロ召喚を行う!レベル4の竜脈にレベル1のアクマグネをチューニング!シンクロ召喚!『HSRチャンバライダー』!」
HSRチャンバライダー 攻撃力2000
相手モンスターを巻き込んでのシンクロ召喚。『シンクロ・マテリアル』を内蔵したような効果が炸裂し、コナミのモンスターを奪い取ってユーゴがチャンバライダーを再び繰り出す。これが最後のチャンバライダー、出来れば破壊される前に決着をつけたい所だ。
「まさかこちらのモンスターを利用するとは……!」
「更に魔法カード、『二重召喚』!『SRーOMKガム』を召喚!」
SRーOMKガム 攻撃力0
「フィールドに『スピードロイド』チューナーが存在する事で墓地の『HSRマッハゴー・イータ』を蘇生!」
HSRマッハゴー・イータ 攻撃力2000
「モンスターが特殊召喚された事で56プレーンを特殊召喚!」
SR56プレーン 攻撃力1800
「効果で『スターダスト』の攻撃力をダウン!」
閃光竜スターダスト 攻撃力2500→1900
「くっ――!」
大量のモンスターを展開しながらもコナミの戦術を越えて来るユーゴ。手強いデュエリストだ。だからこそ――彼を倒せば、コナミは成長出来る。負ける訳にはいかない。最早ユートの為と言う事も忘れ、彼と言う好敵手を越えるべく、コナミは思考を張り巡られ、戦略を練る。
『スターダスト』はこのターン、1度だけ破壊されない。つまり残るモンスター2体も合わせ、4度戦闘を行うとして、合計攻撃力は6700、傷一つついていないLPも合わせると10700、この数値が越えられれ少々不味い。多く見えるが、果たして安全圏と言えるかどうか。
「魔法カード、『手札抹殺』!手札を全て捨て、新たに3枚を引き込む!レベル5の56プレーンにレベル1のOMKガムをチューニング!シンクロ召喚!『HSR魔剣ダーマ』!」
HSR魔剣ダーマ 攻撃力2200
合計攻撃力8700――いや、チャンバライダーが2回攻撃出来、攻撃力アップを加味すれば11300。早速越えられた。何が安全圏だクソッタレと舌打ちを鳴らすコナミ。だがまだだ、ユーゴの手はまだ止まってない。
「デッキトップを墓地へ。チ、『スピードロイド』じゃねぇ。魔法カード、『スピードリバース』を発動!墓地の『HSR快刀乱破ズール』を蘇生!」
HSR快刀乱破ズール 攻撃力1300
無慈悲にも、5体のシンクロモンスターが揃う。しかもご丁寧に全て異なるモンスターだ。コナミも昔はブイブイ言わせてフィールドを真っ白に染めたものだが、彼もソリティアの血筋を引く者らしい。1人でシコシコ白いのを出す事に定評のある彼が認めるのだ、ユーゴもまた、1人で白いのをいっぱい出す事には秀でている。しかしこうして見ると壮観だ。
チャンバライダーのズール剥けな魔剣ダーマがマッハゴー・イータとは。
「何か知らねぇがスゲェ腹立って来た」
「タッちゃったのか」
「おい、何か知らんがそれ以上はやめろ、色々危うい気がする」
ここでユートの脳裏に電撃が駆け抜け、これ以上はいけないと言う謎の衝動が突き動かし、2人を止めに入る。まだセーフ、セーフである。
「まぁ、良いや、今まで世話になった分、返してやるぜ!ズールで『スターダスト』に攻撃!」
「返さんで良い、多分お前借りパクする性格だろ、ずっと取っておけ、こんな時だけ返さんで良い、罠発動!『ダメージ・ダイエット』!このターンのダメージを半分に!」
HSR快刀乱破ズール 攻撃力1300→2600
ダニエル LP4000→3650
一撃一撃が破滅への致命傷、命を削るカウントダウン、コナミはそれから逃れる為、自身の前にバリアを張り、少しでもダメージを軽くしようと足掻きに足掻く。ズールによる斬撃が『スターダスト』に襲いかかり、胸に大きな傷を残した。
「チャンバライダーで刻剣に攻撃!」
HSRチャンバライダー 攻撃力2000→2200
ダニエル LP3650→3250
破壊されたリベンジと言わんばかりにチャンバライダーがバイクを疾駆させ、2刀の剣を振るって刻剣をジリジリと追い詰める。防戦一方、剣で防ぐ刻剣が何とか隙を見つけ、その喉元を切り裂こうとしたが――その隙は作り出されたもの、刻剣を誘き出したチャンバライダーをその一振りを払い伏せ、もう1刀で切り裂く。
「2回目の攻撃!慧眼を倒せ!」
HSRチャンバライダー 攻撃力2200→2400
ダニエル LP3250→2800
更に続く猛攻、チャンバライダーが加速して今度は慧眼の下へ駆け、有無を言わさず一刀の下に切り伏せる。これで残るモンスターは――『スターダスト』1体のみ。
「リベンジだ!『クリアウィング』で『スターダスト』に攻撃!旋風のヘルダイブスラッシャーッ!」
「くっ、流星突撃!」
再び激突する2体の竜。覇王の因子と決闘竜のドッグファイト。上空で火花と爆風が舞い、互いに腕を掴み、相撲のように押し合いとなる。だが――ズキリ、『スターダスト』の胸の傷が動きを鈍らせ、『クリアウィング』がその隙を見逃さず、尾を振るって『スターダスト』の顎を跳ね上げて飛び退き、加速してその翼で『スターダスト』を切り裂く。
ダニエル LP2800→2500
「これでがら空き!ダーマとマッハゴー・イータでダイレクトアタック!」
ダニエル LP2500→1400→400
「ぐうっ、『ダメージ・ダイエット』の効果で半減する……!」
がら空きの所にダーマとマッハゴー・イータの一撃が突き刺さる。半減されているとは言え、重い一撃、状勢は一気に覆り、一転してコナミの不利となった。LPは3桁、モンスターは0、対するユーゴのフィールドには5体のシンクロモンスター。
「墓地の機械族モンスターを除外し、ダーマの効果で相手に500のダメージを与える!」
ダニエル LP400→150
「カードを1枚セットし、ターンエンドだ」
ユーゴ LP1800
フィールド『クリアウィング・シンクロ・ドラゴン』(攻撃表示)『HSR魔剣ダーマ』(攻撃表示)『HSRチャンバライダー』(攻撃表示)『HSR快刀乱破ズール』(攻撃表示)『HSRマッハゴー・イータ』(攻撃表示)
セット1
手札1
ここが正念場でラストターン、勝負を賭けたドロー。コナミはデッキトップに手を翳し、勝利を信じて大きく引き抜く。
「オレのターン、ドロー!魔法カード、『貪欲な壺』!墓地より『オッドアイズ・メテオバースト・ドラゴン』、『No.39希望皇ホープ』、『E・HEROエアーマン』、『E・HEROブレイズマン』、『V・HEROヴァイオン』を回収し、2枚ドロー!」
ダニエル 手札3→5
「手札の『曲芸の魔術師』を捨て、『竜穴の魔術師』のペンデュラム効果でセットカード破壊!ペンデュラム召喚!『竜脈の魔術師』!『慧眼の魔術師』!『貴竜の魔術師』!『ジャンク・コレクター』!」
竜脈の魔術師 攻撃力1800
慧眼の魔術師 守備力1500
貴竜の魔術師 守備力1400
ジャンク・コレクター 守備力2200
「またそれか……!」
再び揺れるペンデュラム。振り子の軌跡で光の柱がコナミのフィールドに降り注ぎ、5体のモンスターが現れる。全力全開、全身全霊をもってユーゴを迎え撃つ。
「マッハゴー・イータをリリースし、フィールドのモンスターのレベルを1つ上げる!メテオバーストはシンクロさせねぇ!」
クリアウィング・シンクロ・ドラゴン レベル7→8
HSR魔剣ダーマ レベル6→7
HSRチャンバライダー レベル5→6
HSR快刀乱破ズール レベル4→5
竜脈の魔術師 レベル4→5
慧眼の魔術師 レベル4→5
貴竜の魔術師 レベル3→4
ジャンク・コレクター レベル5→6
マッハゴー・イータがピンク色のボディーを眩き光と共に弾けさせ、中に眠っていた星をフィールドに散りばめる。これでシンクロどころかエクシーズも不可能となった。
「何かあると思っていた……だからこそこいつを残していたんだ!『賤竜の魔術師』のペンデュラム効果で刻剣を回収!召喚!」
刻剣の魔術師 攻撃力1400
「しまった――!」
「レベル3の刻剣に、レベル4となった貴竜をチューニング!シンクロ・召喚!『オッドアイズ・メテオバースト・ドラゴン』!!」
オッドアイズ・メテオバースト・ドラゴン 攻撃力2500
再び現れる赤き竜の星。打ち砕く竜が『クリアウィング』を睨み、星屑の竜の仇を討とうと咆哮する。
「くっ――!」
メテオバーストを見て、ユーゴが舌打ちを鳴らす。このカードはバトルフェイズ中、相手モンスターの効果発動を封じる効果を持っている。つまり手札の『SRメンコート』も使えなくなる。何より――『クリアウィング』の効果も通じない。
しかも、コナミのフィールドには――。
「バトルだ!『ジャンク・コレクター』と墓地の『エレメンタルバースト』を除外、効果をコピー!」
このカードがある。『ジャンク・コレクター』の身体が閃光に包まれ、弾けて『エレメンタルバースト』のエネルギーを解放する。襲いかかる天変地異。4つのエレメントが5体のシンクロモンスターを討ち滅ぼす。これで、道は開いた――。
「メテオバーストで、ダイレクトアタック!」
ユーゴ LP1800→0
「国へ帰るんだな、お前にも家族がいるだろう」
メテオバーストのアギトに集束した炎が撃ち出され、ユーゴを覆い尽くす――。勝者、コナミ――。
――――――
「ベッドがベットンベットン!」
「あっはっは!お前やるじゃねぇか!」
コナミとユーゴのデュエルが終了した後、彼等2人は見事に意気投合していた。むっつり天然クールなコナミとむっつり天然熱血のユーゴ。似ていないようでその実似ている2人がこうなるのは自然だったのかもしれない。それにコナミはユーゴを暗次に重ね、ユーゴはコナミをここのニートに重ねて見ているから打ち解けるのが早かったのだろう。
「当然お前もフレンドシップカップに出るんだろ?」
「?フレンドシップカップ……?」
「何だ、知らねぇのか?もうすぐシティで大会があるんだよ。優勝した奴があのキング、ジャック・アトラスと闘えるんだ!」
「――!ジャック・アトラス……!」
ユーゴの口から出たキングの名、それはコナミを驚愕させるには充分なものだ。ジャック・アトラス。まさか彼がここにいるとは。いや、シンクロ次元と言うのだ。当然か、しかしまさか、彼が就職しているとは。
「おい、俺達は大会に出る暇など無いんだ」
「い、いや、そうでもないかもしれないぜ」
ユートが大会出場を必要とは思わず、否定してその時――意外にもそこで口を挟んだのはセクトだった。
「?それはどう言う意味だ?」
「……もしかしたら――キングは、アカデミアと繋がってるかもしれねぇんだ」
その言葉と共に、孤児院は静寂に包まれた――。
――――――
そして時は再び戻り、場所は遊矢達がいる収容所へ。彼等は右塔の中心に集まっていた。
理由は――この場で右塔と左塔のボスが対決する祭りがある、と言う事だ。そしてこれこそが脱獄のチャンス、祭りで囚人が集まり、セキュリティで手薄となる事を利用し、脱獄する。そう思っていた時だった――。入り口より、何やら騒がしいかけ声が聞こえて来たのは。
「?何だ一体――」
「セイヤッ、セイヤッ、セイヤッ、セイヤッ、セイヤッ、セイヤッ!」
「え、え、ええぇぇぇぇぇっ!?」
現れたのは屈強で引き締まった肉体を持ち、褌を巻いた、如何にも祭りと言った出で立ちをした男達。そしてそんな彼等が担いだ御輿。いや、これは――玉座と言った方が良いだろう。豪奢で華美な玉座に腰かけているのは――。
「ハ、ハァハン!ハ、ハァハン!」
沢渡の姿であった――。
「……な、何やってんのお前ぇぇぇぇぇっ!?」
思わず遊矢の叫びが木霊する。それも当然だろう、屈強な男達が運ぶ玉座に腰かけている等、意味が分からない。それは彼の背後にいるランサーズメンバーも同じだ。皆唖然としている。
「本当に、本当に何をやってるんだあの馬鹿は……!」
「びっくりだよもう……!」
想像の斜め上を行く沢渡の行動に、権現坂とデニスが溜め息を吐く。もう何とも言えない。
「フ、久し振りだな遊矢。俺と闘うのは宿命のライバルであるお前だと思っていた!」
「って言う事はまさか……!」
「そうだ!俺様こそが左塔のボス!さぁ、今こそアクションデュエルで決着をつけてやるよぉ!」
「とうっ」と沢渡が玉座から飛び降り、宙でくるりと回転、想像通り着地する時にグキリと足を挫き、フゥーフゥーと毛を逆立てる猫のような表情で息を吐き、痛みを堪える。何時も通りの沢渡だ。遊矢は呆れ返りながらも沢渡の言葉に慌てる。
「えっ、ちょっ、ちょっと!?」
「アクションフィールド、発動ゥー!」
フィールドが光に包まれ、光のブロックを形成して姿を変える中、遊矢は困惑し、沢渡とその子分が口上を放つ。
「『クロス・オーバー』か……!行くぜ!戦いの殿堂に集いしデュエリスト達が!」
「モンスターと共に地を蹴り、宙を舞い!」
「フィールド内を駆け巡る!」
「見よ、これぞデュエルの最強進化形!」
「アクショーン、デュエル!!」
「話を聞けぇ!」
榊 遊矢VS沢渡 シンゴ――因縁の闘いが、今始まる。
次回、オッドアイズEM魔術師VS魔界劇団妖仙獣帝